連帯保証人と保証人は、どちらもよく聞く言葉です。言葉としては「連帯」がついているかどうかしか変わりませんが、実際にどのような違いがあるか説明できるでしょうか。
実は、連帯保証人と保証人では責任の重さなど性質がまったく異なります。
この記事では、連帯保証人と保証人の具体的な違いや、もし債務者が自己破産してしまったらどうなるのかなどを解説します。
この記事を読めば、連帯保証人と保証人の違いをなぜ知らないと危険なのかわかるでしょう。連帯保証人と保証人の違いを説明できるように理解しておきましょう。
連帯保証人と保証人の違いとは?
連帯保証人と保証人には共通点があります。それは、お金を借りた人が返済できなかったとき、代わりに返済する責任を持つ点です。
つまり、連帯保証人と保証人は担保としての役割があります(人的担保)。
連帯保証人と保証人の違いを簡単に説明しますと責任の重さです。連帯保証人は一緒にお金を借りているのとほとんど同じで、保証人はお金を借りた人が返済できなかったときのみ返済する責任があります。
下表に違いを大まかにまとめましたので、参考にしてみてください。
比較項目 | 連帯保証人 | 保証人 |
---|---|---|
責任 | ほぼ主債務者と同じ | 保証債務(主債務者と別) |
返済時期 | 請求された時 | 主債務者が返済困難であるとき |
危険範囲 | 借りたお金の全額 | 保証人の人数で割った金額 |
差押え | 反論できない | 主債務者の後 |
連帯保証人と保証人では責任の重さが異なることをイメージできたでしょうか。以降では、さらに詳しく連帯保証人と保証人の違いを解説します。
主債務であるか保証債務であるか
連帯保証人も保証人も、保証契約によって成立し、保証債務という義務(責任)を負います。
保証債務とは?
保証債務とは、もともとお金を借りた人(主債務者)がお金を返さないとき、代わりにお金を返す義務のことです。民法第446条に規定されています。
一方、連帯保証人は、ほとんどお金を借りた人(主債務者)と同じ扱いを受けます。連帯して主債務を負担するため、ほとんど主債務を負っているのと変わりません。
催告の抗弁権を有するかどうか
保証人は、「主債務者が返済しなかったとき」に返済する責任が生じます。
そのため、「お金を返せ」と保証人にいきなり請求されても、「まずは主債務者に請求してください」と反論できる権利があります。
この権利を催告の抗弁権(民法第452条)といいますが、連帯保証人は催告の抗弁権がありません。
つまり、連帯保証人は請求されたら主債務者よりも先にお金を返さなければならない場合が生じます。
検索の抗弁権を有するかどうか
主債務者に催告してもなお返済されなかったとき、お金を貸した人(債権者)が保証人に「お金を返せ」と請求したとしましょう。
保証契約は、「お金を借りた人がお金を返さないとき」に代わりにお金を返す責任がありました。つまり、この段階で保証人の財産が差し押さえられる可能性があります。
しかし、保証人が「主債務者にお金があって差し押さえが容易」だということを証明すれば、保証人はこのタイミングで差し押さえられることを防げます。
これが、民法第453条に規定されている検索の抗弁権です。ただし、この検索の抗弁権も連帯保証人にはありません。
そのため、場合によってはお金を借りた本人(主債務者)よりも先に財産を差押えられる可能性があります。
分別の利益を有するかどうか
もしお金を借りた本人(主債務者)にお金がなく差押えもできなかった場合、保証人が返済する義務(債務)を履行しなければなりません。
仮に返さなければならないお金が1,000万円であったとき、保証人が2人いれば、1人あたり500万円を返済する責任となります(民法第456条および427条)。
これは分別の利益と呼ばれますが、連帯保証人は、分別の利益がありません。
つまり、1,000万円返さなければならないとき、連帯保証人が5人いても、1人あたり1,000万円を連帯して返済する義務があります。
このように、連帯保証人と保証人では、分別の利益の有無によって危険を負う範囲が異なります。
債務者が自己破産したら連帯保証人や保証人はどうなる?
自己破産とは、債務を免除される代わりに、高価な財産をお金に換えて債権者に配当する手続きです。自己破産しても、税金や社会保険料、養育費などは返済の必要があります(非免責債権)。
債務を免責してもらうわけですから、自己破産した主債務者本人は、お金を返さずに済む場合があります。しかし、保証人の保証債務は継続するため、代わりにお金を返さなければなりません。
お金を貸した人からすると、保証人からもお金を返してもらえないとなると保証契約の意味がないので、当然ともいえます。
すると保証人は、この時点で主債務者が返済できるわけもなく、催告の抗弁権も検索の抗弁権も当然に意味を成しません。
つまり、主債務者が破産の決定を受けた時点で、連帯保証人も保証人も同じ立場だといえます。
しかし、分別の利益の有無を考えると、連帯保証人または保証人が複数いるとき、返さなければならない金額が変わります。
いずれにしても保証人は、主債務者が自己破産してもお金を返す義務が継続します。
最悪の場合、主債務者と(連帯)保証人が揃って自己破産するケースもあるため、保証契約には慎重な判断が必要です。
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奨学金(JASSO)の保証の種類
保証契約といっても、会社に入社する時の身元保証や賃貸物件を契約するときなど、保証人を求められるときはさまざまです。
今回は、日本学生支援機構(JASSO)による奨学金の保証について概要を解説します。
日本学生支援機構の奨学金を受けるときには保証人が必要となります。保証には人的保証と機関保証の2種類があります。
人的保証:連帯保証人と保証人が2人必要
日本学生支援機構の人的保証では、連帯保証人1人と保証人1人で合計2人必要です。
学生本人がお金を借りる契約となるため、主債務者は学生本人となります。
そして連帯保証人は原則として父母で、保証人は生計を別にするおじ・おば・兄弟姉妹などの4親等内の親族から選ばなければなりません。なお、未成年や学生は保証人になることができません。
日本学生支援機構「債権管理・回収等検証委員会 報告書」(PDF)によれば、3ヶ月以上延滞している人の割合は2018年度で約3.6%です。延滞9ヶ月以上には法的処理を実施しているとの記載もあります。
つまり、人的保証を選択している場合、最悪の場合には強制執行がかけられ、主債務者、連帯保証人、保証人の財産が差し押さえられる可能性があります。
機関保証:保証料を払って機関保証してもらう
日本学生支援機構の機関保証を選択すると、「公益財団法人 日本国際教育支援協会」が連帯保証人となります。
家族を連帯保証人や保証人にしなくても済みますが、保証料を支払わなければなりません。保証料は貸与月額、貸与機関、返還期間をもとに計算され、毎月の奨学金から天引きされます。
機関保証は連帯保証であるため、返済できなかった場合は、保証機構が一時的に肩代わりして、日本学生支援機構に返済が行われます(代位弁済)。
しかし、今度は保証機構に対して返済しなければなりません。
それでも万が一のことを考えると家族に迷惑がかからない機関保証のほうが安心です。保証料の目安は以下のページに掲載されていますので、一度検討してみると良いでしょう。
まとめ:連帯保証人と保証人の責任を知ってリスクを回避しましょう
保証人は、主債務者の財産が差し押さえられてでも返済しきれないときに、主債務者に代わって返済する責任を持ちます。
一方、連帯保証人はほとんど自身がお金を借りているのと同じ立場で、請求されたら反論できず、主債務の全額を返済する責任があります。
このことは、連帯保証人には催告の抗弁権、検索の抗弁権、分別の利益がないとして民法では規定されています。
今回は日本学生支援機構の奨学金を一例として挙げましたが、その他の場面で求められる連帯保証人や保証人も同様の扱いを受けます。
連帯保証人と保証人の違いを知り、リスクを知ったうえで保証人になるかどうかを検討しましょう。