老後の生活費として頼りになるのが公的年金です。しかし、年金制度は社会情勢等に応じて頻繁に改正されるため、「保険料はいつまで払い続けるの?」「年金は何歳からもらえるの?」など、基本的な制度内容について疑問を持つ人もいるでしょう。
本記事では、公的年金の「保険料の支払い期間」と「支給開始時期」について解説します。
支給要件や受給手続きについても紹介するので、公的年金の基礎知識として確認しましょう。
国民年金と老齢基礎年金
国民年金を支払った人が受け取る年金が「老齢基礎年金」です。まずは、国民年金の支払い期間と老齢基礎年金の支給開始時期について説明します。
国民年金の支払いは20歳から60歳
国民年金は、「日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人」が加入しなければなりません。つまり、国民年金の支払い期間は20歳から60歳までです。
国民年金の被保険者は次の3つに分類されます。
- 第1号被保険者:自営業者や学生、無職の人など
- 第2号被保険者:会社員や公務員など
- 第3号被保険者:第2号被保険者の配偶者
第1号被保険者は「国民年金保険料」を自分で直接支払い、第2号被保険者は給料天引きされる「厚生年金保険料」の一部が保険料に充てられます。第3号被保険者の保険料は、配偶者が加入している厚生年金保険から支払われます。
60歳以降の国民年金任意加入
国民年金の加入が義務付けられているのは20歳から60歳までですが、60歳以降も任意で加入できます。国民年金に任意加入する主な理由は、次の2つです。
- 将来受け取る老齢基礎年金額を増やすため
- 老齢基礎年金の受給要件(10年)を満たすため
ただし、国民年金に任意加入するには次の要件を満たさなければなりません。
- 日本国内に住所を有する60歳以上65歳未満の人
- 老齢基礎年金の繰上げ支給を受けていない人
- 20歳以上60歳未満までの保険料の納付月数が480月未満の人
- 厚生年金保険、共済組合等に加入していない人 など
国民年金の「保険料納付月」は最大480月であるため、20歳から60歳までに完納した人は任意加入できません。また、65歳以降も会社に勤務して厚生年金に加入している人も同様です。
40年間支払えば老齢基礎年金は満額支給
老齢基礎年金の年金額は次のとおり計算します。
- 老齢基礎年金額=77万7,800円(令和4年4月から)×保険料納付月数/480か月(40年)
つまり、保険料を40年間完納すれば、年金額は満額の77万7,800円(毎年更新)です。年金額は保険料納付月数に比例するため、簡単に概算できます。
老齢基礎年金の受給要件は10年以上の保険料納付
老齢基礎年金を受給するには、受給資格期間が10年以上必要です。受給資格期間は、実際の保険料納付期間や保険料免除期間、合算対象期間(※)を合計して計算します。
※年金額には反映されないが受給資格期間としてみなせる期間のことです。海外居住で任意加入しなかった期間などが該当します。
なお、平成29年7月31日までは受給資格期間が25年以上必要でしたが、法改正により10年に短縮されました。
厚生年金と老齢厚生年金
会社員や公務員は厚生年金保険料を支払い、老齢基礎年金と老齢厚生年金を受給します。次に、厚生年金について保険料の支払い期間と支給開始時期について説明します。
厚生年金の支払いは70歳まで
厚生年金保険料の支払いは70歳までです。勤務時間が減って短時間労働者として適用除外になるケースもありますが、原則70歳まで支払いが続きます。
保険料の給与天引きや脱退の手続きは会社がしてくれるため、自分で行う手続きはありません。
また、高校を卒業して20歳前に就職した人も厚生年金に加入しなければなりません。
老齢厚生年金額は収入と加入月数で決まる
老齢厚生年金の金額は、次の通り計算します。
- 老齢厚生年金額=平均標準報酬月額×5.481/1,000×加入月数
平成15年4月以降、初めて厚生年金に加入した人は上記で計算できますが、賞与からの保険料引き去りがなかった平成15年3月以前については計算方法が異なります。
平均標準報酬月額の詳しい説明は省略しますが、厚生年金加入中の平均年収を12で割った金額(賞与を含む月収)に近い金額です。年金額の計算方法について詳しく知りたい人は、次の式を参照ください。
厚生年金額を自分で計算するのは難しいですが、上記計算式より「年金額は収入と加入月数に比例する」ことを覚えておきましょう。
保険料を支払いながら年金をもらうこともある
老齢年金の支給開始は原則65歳です。そのため、65歳以上の会社員は厚生年金保険料を支払いながら、年金を受け取ることになります。
65歳以降に支払った保険料が無駄になると心配になるかもしれませんが、将来の年金額に反映されるので安心してください。
老齢厚生年金の支給停止
老齢厚生年金の一部または全額が、支給停止される場合があります。主なケースは次の3つです。
- 報酬と年金の合計が一定金額を超えたとき
- 失業保険を受け取るとき
- 高年齢雇用継続給付を受け取るとき
働きながら受け取る年金を「在職老齢年金」といい、報酬と年金の合計が一定金額(支給停止基準額)を超えたときに年金の一部または全額が支給停止されます。
また、「失業保険」を受け取ると年金の全額が、「高年齢雇用継続給付」を受け取ると年金の一部が支給停止されます。失業保険と高年齢雇用継続給付の支給対象は65歳までであるため、支給停止されるのは後述する「特別支給の老齢厚生年金(65歳前の年金)」の受給者だけです。
この記事の内容の他にも、「お金が貯まる29の知恵」を1冊にまとめました。
今ならLINE登録するだけで、無料でプレゼントしています。
この機会に是非一度LINE登録して、特典を今スグ受け取ってください。
老齢年金の支給開始
保険料の支払いを中心に解説してきましたが、年金はいつからもらえるのでしょうか。老齢年金の支給開始時期について説明します。
老齢年金は原則65歳から支給
支給開始時期は、老齢基礎年金も老齢厚生年金も原則65歳からです。
受給権が発生した日(65歳の誕生日の前日)の翌月から年金が支給されます。たとえば、65歳の誕生日が4月2日の人は、4月1日に受給権が発生し支給開始は5月です。また、4月1日生まれの人は3月31日に受給権が発生し、4月から支給が始まります。
特別支給の老齢厚生年金
老齢年金の支給開始は原則65歳ですが、生年月日と性別によっては65歳より前に厚生年金が支給されます。これを「特別支給の厚生年金」といいます。
昭和60年の法改正により、支給開始年齢が60歳から65歳に引き上げられました。急な変更を避けるために設けられたのが、特別支給の厚生年金です。
特別支給の厚生年金が受けられるのは、次の生年月日の人です。
- 男性:昭和36年4月1日以前に生まれた人
- 女性:昭和41年4月1日以前に生まれた人
繰上げ・繰下げなら60~75歳スタートも可能
65歳の支給開始時期を、受給者の任意で早めたり、遅くしたりできます。支給開始時期を早めることを「繰上げ」、遅くすることを「繰下げ」といいます。
繰上げの下限年齢は60歳、繰下げの上限年齢は75歳(令和4年3月までは70歳)です。繰上げすると年金額が減ってしまうため、慎重に検討しましょう。また、65歳時点で十分な収入がある人や年金額を増やしたい人は、繰下げを選択してもいいでしょう。
老齢年金の支給手続
最後に、老齢年金の支給手続きを紹介します。
65歳の誕生日以降に年金事務所で手続き
老齢年金の請求書は、65歳の誕生日前に日本年金機構から郵送されます。郵送でも手続き可能ですが、最寄りの年金事務所で手続きするのがおすすめです。
年金事務所では、これまでの加入記録が間違いないかチェックしてくれたり、請求書の記入方法を案内してくれます。
また、手続き予約のときに必要書類も教えてくれるため、書類の添付漏れなどを防げます。手続きできるのは、65歳の誕生日(正確には誕生日前日)以降です。
支給手続きの必要書類
年金事務所に行くときの必要書類は受給者ごとに異なりますが、全員に必要なのは次の通りです。
- 本人確認書類(免許証やマイナンバーカードなど)
- 年金振込口座の通帳(銀行で口座確認した場合を除く)
- 住民票(マイナンバーが分かれば省略可能)
配偶者の加算(加給年金)がつく場合の「戸籍謄本」や「配偶者の所得証明」など、その他の書類が必要になるケースもあります。日本年金機構から郵送される案内を読んでも正しく理解するのは難しいため、手続き予約のときに確認しましょう。
まとめ:年金の支給開始時期を確認して老後の資金計画を立てよう
国民年金の支払いは20歳から60歳までで、日本国民全員が加入を義務付けられています。また、会社員が定年後も仕事を続ける場合、70歳まで厚生年金保険料の支払いが必要です。
老齢基礎年金と老齢厚生年金の支給開始は、どちらも原則65歳からです。
ただし、繰上げや繰下げによって開始時期を変更できます。老齢年金は老後の生活を支える貴重な収入であるため、支給開始時期を把握して老後の資金計画を立てましょう。