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税金

父母や祖父母が元気なうちに、子どもや孫の世代に財産を渡す際などに利用される「生前贈与」。贈与された金額は贈与税の対象ですが、一定額までは基礎控除や特別控除で非課税になります。

本記事では相続時精算課税制度に焦点を当て、制度の概要や暦年課税との違い、実際の手続きの流れなどについて紹介します。

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相続時精算課税制度とはどんな制度?

相続時精算課税制度は、贈与税の計算方法の1つです。

合計2,500万円まで非課税で贈与を受けることが可能で、2,500万円を超える場合でも贈与税は2,500万円を超えた金額に一律20%しか課税されません。

贈与時には軽減された贈与税を納税し、相続の際に生前贈与を受けた贈与財産とその他の財産を合計した価額から計算した「相続税額」から、既に支払った贈与税額を精算することになります。

一定の条件を満たした「贈与者」「受贈者」のあいだで財産の贈与を行った場合に、贈与税の暦年課税に代えて選択できます。

制度を利用できる対象者

相続時精算課税制度は、年齢要件を満たした「父母」「祖父母」から「子」「孫」の生前贈与について、贈与を受け取る側(子・孫)の選択によって利用できます。

相続時精算課税制度は、贈与する側と贈与を受ける側で、以下のような条件をクリアする必要があります。

贈与する側の条件 60歳以上の父母や祖父母などであること
贈与を受ける側の条件 18歳以上の子や孫であること※2022年3月31日以前の贈与で財産を取得した場合は20歳以上

※年齢要件は「贈与の年の1月1日現在」の満年齢

暦年課税との違い

贈与税の計算方法には、「暦年課税(れきねんかぜい)」という制度もあります。相続時精算課税制度と暦年課税は併用できず、どちらか1つを選択する必要があるため、2つの制度の違いを押さえておきましょう。

「暦年課税」とは?

通常の贈与に対する課税方式。
年間110万円を超える贈与財産の額に対し、贈与税が課税される。

 

暦年課税は1年間で110万円の基礎控除額があり、1月1日から12月31日までの1年間に贈与された財産の合計額が110万円以下なら贈与税の申告をする必要がありません。

贈与者・受贈者について制限はなく誰でも利用でき、贈与財産の種類にも制限がありません。

暦年課税と相続時精算課税制度の違いをまとめると、以下のとおりです。

  暦年課税 相続時精算課税制度
贈与者 誰でもOK 贈与をした年の1月1日に60歳以上である父母または祖父母
受贈者 誰でもOK 贈与を受けた年の1月1日に18歳以上の推定相続人・孫
非課税額 受贈者1人につき年110万円 贈与者ごとに2,500万円
非課税額を超えた場合の扱い 超過累進課税(10~55%)で課税 一律20%で課税

相続時精算課税制度のメリット

相続時精算課税制度にどのような魅力があるか分からず、選択できない方もいるのではないでしょうか。

ここでは暦年課税にはないメリットを紹介します。

1.通算2,500万円まで非課税で贈与ができる

暦年課税と違い、通算で2,500万円まで非課税で贈与ができます。

たとえば年齢要件を満たした祖父Aと孫Bのあいだの贈与で相続時精算課税制度を選んだとしましょう。

祖父Aから贈与される財産が2,500万円以下であれば、祖父が亡くなって相続税が発生するまでは贈与税がかかりません。また、2,500万円を超えた贈与があった場合でも、超過分の税率は一律20%しか課税されません

暦年課税を選択した場合の贈与税率では2,500万円以上の金額に50~55%が課税されることを考えても、贈与税の節税につながる制度といえます。

2023年から内容が拡充して更に使いやすくなる

「令和5年度 税制改正大綱」によると相続時精算課税制度の改正によって、特別控除2,500万円とは別に「基礎控除110万円」が利用できるようになります。

現行の相続時精算課税制度の控除額は前述のとおり特別控除額の2,500万円までです。同制度を選択した年分以降は、すべての贈与財産を相続財産に加算することになります。

一方、改正後は1年で110万円までは相続財産に加算されなくなります

2.相続時のトラブルを事前に防止できる

多額の特別控除によって多くの財産を生前贈与してしまうことにより、相続時のトラブルを未然に防ぐ効果も期待できます

仮に生前贈与を全くせず、遺言も残していない場合は、法定相続人で遺産分割協議が行われます。そうなると、希望した通りに財産の相続が進められるかは分かりません。

2人以上の子どもがいて特定の子どもに多く財産を引き継がせたい場合、相続時精算課税制度を使って先に生前贈与することによって相続時の争いを防ぎ、贈与者が元気なうちに渡したい人に財産を渡すことができます。

3.贈与者ごとに制度を利用できる

受贈者は、「贈与者ごと」に暦年課税とどちらを利用するか決めることができます。

例えば祖父Aと祖母Bの2人からの贈与について相続時精算課税制度を選択する場合、最大で5,000万円までの贈与税が非課税になります。

相続時精算課税制度のデメリット

相続時精算課税制度にはメリットだけでなく、暦年課税にはないデメリットもある点に注意が必要です。

1.一度選択すると暦年課税に戻せない

最大のデメリットは、一度選択すると従来の暦年課税に戻すことができない点です。

祖父Aからの贈与について相続時精算課税制度を決めた場合、祖父Aから今後受け取る贈与については二度と暦年課税制度には戻りません。

ただし、他の贈与者からの贈与に関しては、祖父Aからの贈与で相続時精算課税制度を選択していたとしても、暦年課税を利用し続けることは可能です。

2.贈与された財産の時価が下がると余分な税金が発生する

相続時精算課税制度で贈与を受けた財産は、相続開始時に「相続財産の額に加算」されます。単に非課税になる制度ではなく、あくまでも贈与税を相続まで先送りする制度である、ということは把握しておきたい部分です。

相続財産の額に加算される額は「贈与時の評価額」になります。

相続開始時点で、贈与された当時よりも価値が低下している場合でも、贈与時の高い価額が加算されて相続税を計算することになるため、暦年課税と比べて相続税は高くなる傾向にあります。

対策として、生前贈与する財産に「将来時価の低下を招くものを含めない」といった線引きが必要になるでしょう。

3.小規模宅地等の特例を利用できなくなる

相続時精算課税制度で土地を贈与した場合、その土地に「小規模宅地等の特例」を適用できなくなるというデメリットもあります。

「小規模宅地等の特例」とは?

一定の要件を満たすと土地の相続税評価額を最大80%減額できる制度

 

大幅に評価額を減額できる制度ですが、あくまでも相続の際に利用できる制度です。よって生前贈与した土地には適用できません。

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暦年課税よりも相続時精算課税が向いているケース

2023年現在は暦年課税と比較してデメリットが多い印象の制度ですが、相続時精算課税制度を利用した方が有利になるケースも確かに存在します。

ケース1.今後の価値上昇が見込まれる財産がある場合

前述したとおり、相続時精算課税制度で贈与した財産が相続時に相続財産に加算される際、「贈与時の価額」で計算されます。

よって、贈与時よりも価値が増大するものを生前贈与することで節税に繋がります。

ケース2.一定のタイミングでまとまった贈与がしたい場合

相続時精算課税制度には2,500万円という大きな特別控除額が設定されていて、早期にまとまった金額を生前贈与できる点がメリットです。

将来の相続まで待つことなく、住宅購入費用などの大きな金額を贈与する場合には有効な制度といえるでしょう。

相続時精算課税の計算例と計算のポイント

相続時精算課税の仕組みを利用して生前贈与を行った場合にかかる、贈与税をシミュレーションしてみましょう。

【前提条件】
85歳の祖父から25歳の孫への生前贈与
1年目に1,400万円、2年目に900万円、3年目に500万円を贈与
【贈与税の計算】
贈与税の課税価格:(1,400万円+900万円+500万円)-2500万円=300万円
贈与税額:300万円×20%=60万円

特別控除額は2,500万円ですが、前年までに使われた分がある場合は控除後の金額がその年の限度になります。

上記の例では1・2年目で2,300万円まで控除額を使っており、3年目の500万円のうち300万円は控除額を超えた金額になります。

その300万円に対して20%の税率で計算した60万円が贈与税として課税されます。

相続時精算課税を手続きする方法

実際に相続時精算課税制度を利用する際の手続きの流れをご紹介します。

ステップ1.関連書類を用意する

まず、大前提となる相続時精算課税選択届出書と関連書類を集めましょう。

受贈者が贈与者の直系卑属である推定相続人または孫である場合の必要書類は以下のとおりです。

受贈者の戸籍の謄本または抄本その他の書類で、次の内容を証する書類
イ 受贈者の氏名、生年月日
ロ 受贈者が贈与者の推定相続人である子または孫であること
引用元:国税庁|No.4304 相続時精算課税を選択する贈与税の申告書に添付する書類

ステップ2.必要事項を記入して添付書類と提出

「相続時精算課税選択届出書」を国税庁のホームページから入手し、必要事項を記入しましょう。

書き方については国税庁「【事例4】相続時精算課税を適用する場合(PDF)」を参照ください。

作成後は添付書類を付け、制度を選択しようとする贈与者から最初の贈与を受けた年の翌年「2月1日から3月15日」までの間に、受贈者の納税地を所管する税務署に提出するということが一連の流れです。

まとめ:相続時精算課税は人によって有利・不利が異なる

相続時精算課税制度は2,500万円の特別控除額があり、大きな金額を生前贈与したい場合に選択肢になり得る制度です。今後は制度が改正されて年間110万円の特別控除がつくなど、更に使い勝手よく生まれ変わることも決まっています。

一方、あくまでも相続時までに贈与税を先送りする制度であり、単純な節税制度ではない点は事前に理解しておく必要があります。

暦年課税とどちらが有利かをよく考えたうえで制度を選択することが大切です。

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