奨学金に限らず、お金を借りたら利息を上乗せして返済しなければなりません。奨学金を借りている人や利用を検討している人は、利息はいくらになるのか不安を感じている人も少なくないはずです。
日本学生支援機構(JASSO)のシミュレーションページでは、利率「0.010%」単位でしかシミュレーションができませんが、実際の利率とは大きく数字が離れています。例えば2021年3月卒業者の利率は0.268%または0.004%です。そのため、利息がいくらになるか詳細のシミュレーションができず、困っている人も多いでしょう。
そこで本記事では、日本学生支援機構の奨学金の概要、利息がいくらになるか、利息を抑えるためにはどうすれば良いかを解説します。
ぜひ、奨学金を検討している人は参考にしてください。
日本学生支援機構の奨学金の種類
日本学生支援機構の奨学金は、大きく分けて以下の3種類があります。それぞれの概要を下表にまとめましたので、参考にしてください。
給付型奨学金 | 貸与型奨学金 | ||
---|---|---|---|
第一種 | 第二種 | ||
家計基準 | 以下「いずれにも」該当すること ①住民税の課税標準額×6%-(調整控除額+調整額)が51,300円未満 ②資産合計2,000万円未満 |
父母の年収・所得が世帯人数ごとに設定された基準以下であること | |
学力基準 | 以下「いずれか」に該当すること ①高校評定平均値3.5以上 ②高校面談やレポートで学修意欲が認められる |
高校評定平均値3.5以上 | 学習成績平均水準以上 |
支給額 | 学校種別・設置者・通学形態に応じて定まる金額 月額9,800~75,800円 |
学校種別・設置者・通学形態に応じた金額から選択 月額20,000~64,000円 |
以下の範囲内にて1万円単位で選択 月額20,000~120,000円 |
金利 | なし | なし | 財政融資資金の利率に応じる ※上限年利3% |
参照:
日本学生支援機構「給付型奨学金案内」(PDF)
日本学生支援機構「貸与型奨学金案内」(PDF)
以下に大まかな違いや特徴をまとめています。
- 給付型奨学金:家計基準が厳しい(住民税非課税世帯と準じる世帯)が返済不要
- 第一種奨学金:家計基準は緩めで、評定平均値3.5以上なら利息なしの貸与額のみ返済
- 第二種奨学金:家計基準は最も緩く成績平均以上なら受けられるが、利息がつく
日本学生支援機構の奨学金の金利はいくら?
日本学生支援機構の奨学金のうち、第二種奨学金は家計基準や学力基準が緩めです。比較的利用しやすい奨学金ですが、上限年利3%の範囲内で金利が付いてしまいます。
日本学生支援機構の奨学金の金利は以下参照ページで掲載されており、例えば2021年3月の金利は、利率固定方式で年利0.268%です。
利率見直し方式では年利0.004%で、利率見直し方式のほうが67倍も低金利となっています。
貸与終了月 | 固定金利 | 変動金利 |
---|---|---|
2017年3月 | 0.33% | 0.01% |
2018年3月 | 0.27% | 0.01% |
2019年3月 | 0.14% | 0.01% |
2020年3月 | 0.07% | 0.00% |
2021年3月 | 0.27% | 0.00% |
※利率固定方式を固定金利、利率見直し方式を変動金利として表記しています。
参照:日本学生支援機構「平成19年4月以降に奨学生に採用された方の利率」
参考として、日本政策金融公庫の教育一般貸付(国の教育ローン)と、消費者金融の金利を比較してみます。
- 教育一般貸付:年利1.66%(※)
- 消費者向け無担保貸付:年利15.04%
- 消費者向け住宅貸付:年利2.77%
※2021年5月6日現在
参照:
日本政策金融公庫「金利・ご返済方法」
金融庁「貸金業関係資料集(3.業態別貸付金利)」(PDF)
民間の消費者向けローンより国の教育ローンのほうが低金利で、日本学生支援機構の奨学金はさらに低金利であることがわかります。
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奨学金の利息と総返済額がいくらになるか計算
日本学生支援機構の奨学金は超がつくほどの低金利といえますが、利息と総返済額がいくらになるか気になることでしょう。
また、日本学生支援機構の「奨学金貸与・返還シミュレーション」では、利率「0.010%」単位でしかシミュレーションできません(2021年5月末時点)。
今回は、2021年3月の固定金利0.268%および変動金利0.004%の計算例を紹介します。計算の流れは以下のとおりです。
- 貸与総額と返還回数を確認する
- 金利を確認する
- 据置期間利息を計算する
- 毎月返済額を計算する
- 利息と総返済額を計算する
なお本記事で紹介する計算結果は、端数処理の都合などで実際の返還額とは差が生じる場合があります。そのため、あくまでもおおよその目安を知るための参考としてください。
①貸与総額と返還回数を確認する
計算に必要な情報として、まずは貸与総額と返還回数を確認します。
日本学生支援機構の「貸与奨学生のしおり」で目安を確認することができます。
例えば4年課程(48ヶ月)の大学で貸与月額10万円を選択したとすると、貸与総額は480万円、返還回数は240回(20年)です。
参照:日本学生支援機構「2021年度 貸与奨学生のしおり」(PDF)
②金利を確認する
奨学金の金利は、貸与終了時に決定されます。今回は、2021年3月の固定金利0.268%および変動金利0.004%と仮定して計算していきます。
③据置期間利息を計算する
第二種奨学金は在学中無利息で、最初の返還日は貸与終了の翌月から7ヶ月目の27日です。利息は貸与終了月(卒業月)の翌月1日から発生します。
据置期間利息は、最初の返還日の前月27日までに発生する利息を指します。以上の関係をまとめると以下のとおりです。
- 貸与終了:3月
- 利息付与開始:4月1日
- 据置期間利息:4月1日~9月27日
- 初回返還日:10月27日
※9月27日から10月27日までに発生する利息は、通常通りの毎月返済額に組み入れられる。
貸与総額は480万円で、年利は0.268%と0.004%、据置期間は約6ヶ月ですので、据置期間利息は以下のように求められます。
- 貸与総額480万円×月利(0.268%/12月)×6月=据置期間利息6,432円
- 貸与総額480万円×月利(0.004%/12月)×6月=据置期間利息96円
以上の据置期間利息は、返還回数の240回で割って毎月の返還額に上乗せするため、上乗せ額は以下のとおりです。
- 据置期間利息6,432円/240回=上乗せ額26円
- 据置期間利息96円/240回=上乗せ額0円
※1円未満の端数は切り捨てています。
④毎月返済額を計算する
日本学生支援機構の奨学金は元利均等返済方式であるため、毎月の返済額は以下の式で求められます。
- 借入残高×月利×(1+月利)^返済月数/((1+月利)^(返済月数)-1)
なお、表計算ソフトにて「PMT(ペイメント)」関数で求めることも可能です。
- PMT(月当たりの利率, 返済回数, 貸与総額)
複雑な式ですが、計算するとそれぞれ以下のとおりです。
- 年利0.268%:20,543円
- 年利0.004%:20,008円
ただし、この値は据置期間利息の上乗せを考慮していませんので、実際の毎月返済額は以下です。
- 年利0.268%:毎月返済額20,543円+据置期間利息上乗せ額26円=20,569円
- 年利0.004%:毎月返済額20,008円+据置期間利息上乗せ額0円=20,008円
⑤利息と総返済額を計算する
毎月返還額が求められたら、利息と総返済額も計算できます。具体的には以下のとおりです。
- 総返済額:毎月返済額×返済月数
- 利息:総返済額-貸与総額
これまでの計算結果を下表にまとめました。
年利 | 0.27% | 0.00% |
---|---|---|
貸与総額 | ¥4,800,000 | |
据置期間利息 | ¥6,432 | ¥96 |
毎月上乗せ額 | ¥13 | ¥0 |
毎月返済額 | ¥20,543 | ¥20,008 |
(据置期間利息未考慮) | ||
毎月返済額 | ¥20,556 | ¥20,008 |
総返済額(端数未考慮) | ¥4,933,440 | ¥4,801,920 |
利息(端数未考慮) | ¥133,440 | ¥1,920 |
結果として、年利0.268%は利息133,440円、年利0.004%なら利息は1,920円です(概算)。
このように、超低金利ともいえる現在の年利率で計算すると、利息はそこまで大きな額とはなりません。特に利率見直し方式(変動金利)であれば、貸与総額480万円に対して利息は約2,000円です。
ただし前述のとおり、ここで紹介した利息や総返済額は、簡易的に求めた目安額となります。
具体的には、実際計算をするときには最終返還時に端数調整が行われます。日本学生支援機構の端数処理の細部はわからないため、実際の返還額とは差が出ることがあります。あくまでも参考値としてください。
奨学金の利率算定方法はどちらがいい?
奨学金の利率算定方法とは、利率固定方式や利率見直し方式のことです。一般的には前者を固定金利、後者を変動金利と呼びます。奨学金における変動金利は、原則5年ごとに利率が見直されます。
固定金利と変動金利どちらがお得なのかについては、結論からいえば誰にもわかりません。将来、金利が上がるか下がるかは予測がつかないからです。
ただし、同じように固定金利と変動金利を選択できる住宅ローンにおいては、変動金利を選択している人が多い実績があります。実際のところ、上限3%までの金利上昇リスクを許容できるかどうかが1つの判断ポイントだといえるでしょう。
また、利息負担を抑えるためには、余裕があるうちに繰り上げ返済をすることが効果的です。繰り上げ返済については以下の記事を参考にしてみてください。
奨学金の利率算定方法は変更できる?
奨学金の利率算定方法は、変更できます。具体的には、奨学金を申し込む時に選択し、貸与が終了する年度の一定期間前まで変更可能です。
利率の算定方法を変更するには、「第二種奨学金『利率の算定方法』変更届」を、学校を通じて日本学生支援機構に提出します。「一定期間前」については、学校へ確認してください。
貸与が終了してしまうと変更できないため、貸与終了が近くなったら利率を確認し、慎重に判断しましょう。
まとめ:奨学金の利息を抑えるにはリスク許容度に応じた算定方法の選択と早期返済
奨学金の利息は年利3%が上限と定められているため、通常の借入金と比べると負担は低いです。
そのため、国の教育ローン(教育一般貸付)やその他民間ローンを利用するよりは、日本学生支援機構の奨学金を利用することをおすすめします。
実際の利息計算では、貸与終了から6ヶ月間に発生した利息(据置期間利息)を毎月の返済額に上乗せして返済します。
奨学金の利息負担を抑えるためには、金利上昇リスクを許容できるかどうかで利率算定方法を選択し、可能な限り早めに繰り上げ返済をすることが重要です。
ぜひ本記事を参考に、奨学金の利息負担を抑えることについて検討してみましょう。