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家計

額面の年収と実際の手取り収入は異なります。会社員の中には「額面と手取りの違いは?」「何が給与から天引きされるの?」「手取り収入の計算方法は?」などの疑問を感じる人もいるでしょう。

今回の記事では、額面収入と手取り収入の違いについて解説します。手取り収入の計算方法や給与から引かれる税金、年収を増やす方法も紹介するので、将来の生活設計を考えるときの参考にしてください。

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額面収入と手取り収入の違い

まず最初に、額面収入と手取り収入の違いについて解説します。

額面収入とは

額面収入とは、会社が従業員に対して支払う報酬の総額です。毎年1月から12月までに支給される給与とボーナスなどの総額を「年収(1年間の額面収入)」といいます。

額面収入には基本給や役職手当、残業代などのほか、住宅手当や家族手当など福利的な各種手当も含まれます。通勤交通費を額面収入に含めることもありますが、一般的に年収などには含めません。

手取り収入とは

手取り収入とは、額面収入から税金や社会保険料などを差し引いた金額です。一般的には、実際に口座に振り込まれる給与やボーナスの金額が該当します。給与から差し引かれる税金や社会保険料は次の通りです。

  • 税金:所得税や住民税
  • 社会保険料:厚生年金保険料や健康保険料、介護保険料、雇用保険料

額面収入と手取り収入の確認方法

次に、額面収入と手取り収入を確認する方法について解説します。

月収は給与明細で確認する

毎月の額面収入(額面月収または額面給与)と手取り収入(手取り月収または手取り給与)は「給与明細」で確認できます

額面月収は、給与明細の「総支給額」欄や「支給総額」欄の金額です。手取り月収は、「差引支給額」の欄に記載されています。総支給額と差引支給額の関係を式で表すと次の通りです。

  • 差引支給額(手取り月収)=総支給額(額面月収)‐控除額(税金や社会保険料等)

給与明細のイメージ:

年収は源泉徴収票で確認する

1年間の額面収入(額面年収)と手取り収入(手取り年収)は「源泉徴収票」などで確認できます

額面年収は、源泉徴収票の「支払金額」の金額です。手取り年収は記載されていないため、支払金額から税金や社会保険料を差し引いて計算します。

所得税は「源泉徴収税額」欄、社会保険料は「社会保険料等の金額」欄に記載されていますが、住民税は記載されていません。毎年5~6月ごろに勤務先から交付される「住民税課税決定通知書」などで確認して計算しましょう。

  • 手取り年収=支払金額(額面年収)-源泉徴収税額-住民税額-社会保険料等の金額

源泉徴収票のイメージ:

額面収入から控除される社会保険料と税金

手取り収入を計算するとき、額面収入から差し引く社会保険料や税金について計算方法などを個別に解説します。

控除①:厚生年金保険料

給料天引きされる厚生年金保険料は、額面収入のおよそ10%です。

毎年の保険料は9月に改定される「標準報酬月額(※)」に基づいて決まり、企業と従業員が折半して負担します。保険料率は18.3%で、従業員の負担は標準報酬月額の9.15%です。

※保険料や年金額を計算するために、4~6月の報酬を基に算出した金額です。1等級(8万8,000円)から32等級(65万円)までの32等級に分けられます。

標準報酬月額が41万円ならば、従業員が負担する保険料は月額3万7,515円です。標準報酬月額と額面収入(給与)の金額は同じくらいなので、額面収入の10%近い金額が給与天引きされることになり、負担が大きいと感じる人もいるでしょう。

控除②:健康保険料・介護保険料

給料天引きされる健康保険料や介護保険料は、額面収入のおよそ5~6%です。

厚生年金保険料と同じように、保険料は標準報酬月額に基づいて決まり、企業と従業員が折半して負担します。ただし、等級については厚生年金とは異なり、1等級(5万8,000円)から50等級(139万円)までに区分されるので覚えておきましょう。

健康保険や介護保険の保険料率は、毎年改定されます。介護保険料率は全国一律(令和4年3月からは1.64%)ですが、健康保険料率は加入する健康保険組合などで異なります。また、介護保険は40歳以上の人が対象となるため、40歳未満の人の保険料負担はありません。

健康保険料率は10%前後が目安で、従業員が負担する健康保険料と介護保険料の合計金額は、標準報酬月額の約5~6%になります。

控除③:雇用保険料

雇用保険料は額面収入の1%未満で、それ程大きな金額ではありません。

雇用保険料率は事業の種類によって異なり、従業員は「失業給付や育児休業給付などに充当する部分」の雇用保険料を企業と折半して負担します。

従業員が負担する雇用保険料(令和4年10月~)は、通勤交通費も含めた「額面給与」に次の率を掛けて計算します。標準報酬月額を計算基礎とする厚生年金や健康保険などとは計算方法が異なるので注意しましょう。

  • 一般の事業:0.5%
  • 農林水産・清酒製造の事業:0.6%
  • 建設の事業:0.6%

控除①~③の保険料を合計すると、社会保険料の総額は額面給与の約15%になります。

控除④:所得税

所得税は、額面給与や扶養親族、所得控除の金額などによって異なります。国税庁の「令和4年分 源泉徴収税額表」より、毎月給与から源泉徴収される所得税額は、額面給与や扶養親族の数に応じて次の通りです。

所得税額:

社会保険料などの控除後の額面給与 扶養親族の人数
0人 1人 2人 3人
10万円 720円 0円 0円 0円
20万円 4,770円 3,140円 1,530円 0円
30万円 8,420円 6,740円 5,130円 3,510円
40万円 1万6,510円 1万3,270円 1万0,040円 7,560円
50万円 2万9,890円 2万3,430円 1万8,370円 1万5,140円
60万円 4万7,100円 4万0,640円 3万4,160円 2万7,700円

社会保険料が額面給与の15%だと仮定すると、「社会保険料などを控除後の額面給与」が40万円の人の額面給与は約47万円です。額面給与に占める源泉所得税の割合は、扶養親族0人の場合でも約3.5%で、額面給与の額が少ない人や扶養親族の多い人の割合はさらに低くなります。

額面給与に占める所得税の割合は人によって大きく異なりますが、給与が高額でなければ社会保険料と比較して負担感は少ないと言えます。

控除⑤:住民税

住民税の税率は地方自治体によって異なりますが、目安は前年度の所得の約10%(所得金額に応じた「所得割」)です。住民全員に一律課税される「均等割」もありますが、税額は年間5,000円とあまり大きな額ではありません。

10%というと高額に感じられますが、額面収入ではなく所得に対して課税されることに注意しましょう。収入から社会保険料や扶養控除、生命保険料控除などの各種所得控除を差し引いた金額が所得です。

また、社会保険料や所得税と異なり、住民税は前年の所得に対して課税され、その年の6月から翌年5月にかけて給与天引きされます。

控除⑥:その他

勤務先によっては、組合費や互助会費などが給与から差し引かれるケースもあります。原則任意加入ですが、希望しなくても加入せざるをえないこともあるでしょう。また、人によっては社内貸付の返済や社宅費、団体扱いの生命保険料などが差し引かれるケースもあります。

個別事情によるケースや家計支出の一部がたまたま給与控除されたケースであるため、手取り収入を計算する上でこれらの給与控除は考慮しないで解説します。

手取り年収の早見表

額面年収から手取り年収を確認するための早見表を紹介します。次の前提で計算しているため、個々人の状況次第で手取り年収は異なります

  • 報酬は給与のみでボーナスなし
  • 額面年収720万円までの社会保険料は標準報酬月額の15%
  • 額面年収840万円以上の社会保険料は厚生年金保険料の上限(約71万)+標準額標準報酬月額の5%
  • 標準報酬月額は額面年収÷12ヶ月
  • 独身者で所得控除は社会保険料控除と基礎控除(48万円)、給与所得控除(55~195万円)のみ
  • 前年度の所得は今年と同額で住民税率は10%

手取り年収の早見表 ※1万円未満は四捨五入して表示:

額面年収a 社会保険料b 所得税c 住民税d 手取り年収a-b-c-d
120万円(10万円) 18万円 0万円 0万円 102万円
240万円(20万円) 36万円 4万円 8万円 193万円
360万円(30万円) 54万円 4万円 14万円 287万円
480万円(40万円) 72万円 12万円 22万円 374万円
600万円(50万円) 90万円 17万円 30万円 463万円
720万円(60万円) 108万円 34万円 38万円 540万円
840万円(70万円) 113万円 54万円 49万円 624万円
960万円(80万円) 119万円 77万円 60万円 704万円
1,080万円(90万円) 125万円 100万円 71万円 784万円
1,200万円(100万円) 131万円 126万円 83万円 860万円

上記の早見表より、年収の低い人ほど手取り年収の計算の際に差し引かれる金額に占める社会保険料の割合が高く、年収が高くなるにつれて所得税の割合が高くなることがわかります。額面年収1,200万円の人と600万円の人の年収差は600万円ですが、手取り年収の差は約400万円まで縮小します。

この原因の1つは、所得税は累進課税で高所得者ほど所得税率が高くなることです。

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手取り年収と生活レベル

手取りの年収を把握したら、その収入でどんな生活ができるかを確認してみましょう。一般的な生活費と平均年収の人の生活レベルを紹介します。

平均的な生活費

平均的な生活費は、年代や家族の人数によって異なります。厚生労働省の家計調査(表番号4)によると、令和3年度の勤労世帯1世帯当たりの平均生活費とその内訳は、年代別・世帯人数別で次の通りです。

年代別の平均生活費・円:

世帯主の年齢 29歳以下 30歳代 40歳代 50歳代 60歳代 70歳以上
食料 3万7,955 5万9,319 7万4,919 7万0,512 7万0,019 5万9,654
住居 3万0,052 3万0,924 2万2,138 1万9,315 2万0,185 1万5,480
光熱・水道 8,688 1万5,059 1万9,600 1万9,690 2万0,179 1万8,036
家具等 6,670 1万0,770 1万1,546 1万0,394 1万1,890 8,620
被服など 6,213 9,753 1万0,795 9,387 7,300 5,436
保健医療 5,858 9,422 1万0,595 1万1,860 1万4,512 1万1,875
交通・通信 2万2,102 3万4,010 4万4,073 4万9,208 4万6,254 2万8,890
教育 416 5,710 2万1,915 2万0,958 4,241 106
教養娯楽 1万7,182 2万5,112 2万8,636 2万6,536 2万3,154 1万5,832
その他 2万4,139 3万3,744 4万9,420 6万2,052 5万6,343 4万2,009
生活費合計 15万9,276 23万3,822 29万3,636 29万9,911 27万4,077 20万5,939

50歳代までは世帯主の年齢が上がるに従い平均生活費は増加し、40歳・50歳代で約30万円と最も高くなります。毎月手取りで30万円(年額360万円)を確保するには、前述の「手取り年収の早見表」では約480万円の額面年収が必要です。

世帯人数別の平均生活費・円:

世帯人数 1人 2人 3人 4人 5人 6人以上
食料 3万9,884 6万7,170 7万6,289 8万6,019 9万0,937 10万2,972
住居 2万9,637 2万4,273 2万0,291 1万7,432 1万5,379 7,645
光熱・水道 1万0,225 1万8,476 2万1,344 2万2,773 2万4,857 2万8,791
家具等 6,151 1万1,829 1万2,455 1万3,347 1万4,130 1万3,199
被服など 5,932 7,955 9,959 1万2,454 1万2,450 1万4,435
保健医療 6,540 1万3,452 1万3,815 1万2,824 1万1,686 1万0,475
交通・通信 2万3,734 4万8,715 4万9,899 4万9,962 4万8,253 5万4,324
教育 14 1,023 1万6,872 3万2,931 3万2,994 4万2,694
教養娯楽 1万9,710 2万3,424 2万6,446 3万0,713 3万0,546 3万6,310
その他 2万9,988 6万6,492 5万8,361 5万0,546 4万5,017 6万1,847
生活費合計 17万1,816 28万2,807 30万5,731 32万8,999 32万6,248 37万2,692

世帯人数が増えるほど、平均生活費も増加します。1人世帯から2人世帯になると生活費は10万円以上増加しますが、夫婦共働きなら世帯収入も増えるでしょう。上表より子どもが生まれた後の生活費は32万円前後が目安になります。

平均年収(男性545万円)の人の生活レベル

国税庁の民間給与実態統計調査によると、令和3年の平均年収は次の通りです。

  • 男性:545万円
  • 女性:302万円
  • 男女計:443万円

男性の平均と同じ年収545万円の人は、「手取り年収の早見表」と同条件で試算すると手取り年収が約400万円(月33万円)になります。

単身者で生活費が平均的ならば、家計の収支は毎月約16万円(=33万円ー17万円)の黒字になる計算です。一定額を貯蓄しながら、趣味や自分への投資、贅沢な生活も可能でしょう。

専業主婦(夫)の配偶者や子どもがいる場合、平均的な生活はできそうですが貯蓄や贅沢な生活は難しいでしょう。子どもの大学進学などで教育費がかかる時期は、家計が厳しくなる可能性もあります。

夫婦共働きの場合、本人の収入を全て生活費に充てても、配偶者の収入が余裕資金になります。配偶者がフルタイムかパートタイムかで余裕資金の額は異なりますが、ある程度ゆとりのある生活が期待できます。

会社員が年収を増やす方法

手取り収入で生活が厳しい場合、収入を増やすか支出を抑えることを検討しましょう。ここでは、会社員が収入を増やす方法を紹介します。

収入を増やす方法①:現在の仕事で収入を増やす

会社員が収入を増やす1つ目の方法は、現在の仕事で昇進や昇給で収入を増やすことです。

昇進や昇給するには、仕事で成果を出して会社に認めてもらう必要があります。与えられた仕事をきちんとやりきることはもちろんですが、迅速に仕事をこなす、営業目標を大幅に達成する、新しい分野を開拓する、など人より秀でた実績などが求められます。

また、資格取得手当などが支給される場合、該当の資格を取ることも給与アップにつながります。職種や勤務場所によって給与が異なる場合、給与水準の高い職種や勤務場所に異動を希望するというのも選択肢の1つです。

ただし、会社からの評価や職種の異動などが、希望通りになるとは限りません。努力することは大事ですが、確実に収入アップできる方法とは言えないでしょう。

収入を増やす方法②:副業をする

2つ目の方法は、副業をして新しい収入を得ることです。

政府が推進する働き方改革の一環で、副業を認める企業が増えています。休日にアルバイトをしたり、帰宅後にインターネットを使って在宅ワークを行うなど、副業の種類はさまざまです。また、雇われて仕事をするだけでなく自分で起業するという選択肢もあります。

ただし、副業のために本業がおろそかになると本末転倒です。また、副業禁止の会社の場合、副業がばれて懲戒処分を受けるなどのリスクもあります。

収入を増やす方法③:資産運用する

3つ目の方法は、資産運用でお金を増やすことです。

資産運用の対象は、株式や債券、FX、不動産などさまざまです。デイトレードなど時間がかかる投資は会社員には難しいですが、積立型の投資信託など、投資先を決めて一度手続きすれば運用商品売却までは手間のかからない投資もあります

投資にはリスクがつきものですが、投資先を分散して長期的に運用するなどしてリスクを減らすことも可能です。銀行預金などは低金利が続いているため、長期的な資金準備には資産運用がおすすめです。

まとめ:手取り収入の計算方法を理解し生活設計や資金計画に役立てよう

手取り収入は、額面収入から税金や社会保険料などを差し引いて計算します。社会人の基礎知識として、税金や社会保険料の計算方法を大雑把にでも理解しておきましょう。

手取り収入が計算できるようになると、将来の生活設計や資金計画を立てるときに活用できます。お金に関してあまり詳しくないと感じている人は、本記事を参考に、家計の収支や将来のことを考えるきっかけとしてください。

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