成年後見制度は、認知症や知的障害、精神障害などで正しい判断ができない可能性がある人が、不利益を被らないようにするための制度です。
成年後見制度で業務をサポートする成年後見人には、仕事内容に応じて報酬を支払う必要がありますが、その報酬相場は意外と知られていません。
そこで、今回は成年後見人に対する報酬額相場と、支払いが難しい場合の助成制度について詳しく解説していきます。
成年後見制度は2種類存在する
成年後見制度により、後見人に現預金の出納や財産の管理業務をサポートしてもらえます。成年後見制度とは、認知症や知的障害、精神障害などで十分な判断が行えない場合に備える制度です。
成年後見制度は、「法定後見制度」と「任意後見制度」の2パターンがあります。詳しくは以下の表を参考にしてください。
法定後見制度 | 任意後見制度 | |
---|---|---|
後見人の決定方法 | 判断力低下後、家庭裁判所が決定。 | 判断力低下前、被後見人自身が依頼。後見監督人を家庭裁判所が決定。 |
後見人に求められる資格 | 司法書士や弁護士など専門家、家族・親族・友人など一般人。 | 司法書士や弁護士など専門家、家族・親族・友人など一般人。ただし、後見監督人は専門家から選任。 |
法定後見制度の報酬相場
法定後見制度の報酬相場は0円から月額6万円程度です。法定後見制度では、後見人から報酬付与の申し立てを受けて、家庭裁判所が報酬額を決定します。親族や家族が後見人となる場合は、報酬を受け取らないケースも少なくないようです。
法定後見制度の報酬には、定例業務に対する「基本報酬」と非定例業務に対する「付加報酬」の2種類があります。それぞれの業務内容と報酬について、以下の表にまとめました。
基本報酬 | 付加報酬 | |
---|---|---|
業務内容 | 定例業務(現預金の管理や財産の管理) | 非定例業務(遺産分割・調停や不動産売買・賃貸契約など) |
報酬相場 | 0円〜月額6万円 | 個別で決定 |
任意後見制度の報酬相場
任意後見制度の報酬相場は0円から月額6万円程度です。任意後見制度においては、被後見人と後見人の間で契約書を交わすことで、報酬額を自由に決定できます。
任意後見制度の報酬には、定例業務に対する「月額報酬」と遺産分割・調停や不動産売買・賃貸契約などの「特別な業務に対する報酬」があります。将来的に特別な業務が見込まれる場合は、なるべく詳細かつ具体的に契約書を作成しておきましょう。
任意後見制度では後見監督人がつく
任意後見制度では、本人が未成年であることなどの特別な場合を除き、家庭裁判所の選任により後見監督人をおきます。
後見監督人には、後見人に権限の濫用がないか監督する役割があります。後見監督人は司法書士や弁護士といった専門家です。後見監督人には、月額2万円〜6万円を相場として報酬を支払う必要があります。
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成年後見人の報酬が多くなってしまう3つのケース
成年後見人に多くの報酬を支払わなければいけないのは、以下のようなケースです。
- 特別な業務を行う場合
- 被相続人の金融資産が多い場合
- 司法書士や弁護士など専門職に依頼する場合
それぞれどのくらい報酬が必要なのか確認していきましょう。
特別な業務を行う場合
特別な業務とは、遺産分割や調停、不動産売買、賃貸契約など専門的な知識と時間を要する複雑な仕事のことです。要した時間と業務の複雑さに応じて報酬金額は変化します。
例えば、住居用の不動産を任意売却して被支援人の治療費を3,000万円確保するとします。売却報酬として、約40万円から70万円の報酬が支払われることが一般的です。
被相続人の金融資産が多い場合
金融資産が多ければ多いほど、月額報酬も増加する傾向にあります。理由は業務量に伴って、事務作業が煩雑になるためです。
以下の表は、被後見人の管理財産額と後見人の報酬額の関係を表しています。参考にしてみてください。
管理財産額 | 報酬の参考額(月額) |
---|---|
1,000万円以下 | 〜2万円 |
1,000万円を超え5,000万円以下 | 3万円〜4万円 |
5,000万円を超える | 5万円〜6万円 |
司法書士や弁護士などの専門職に依頼する場合
専門家に依頼した場合、定例業務に対する月額報酬は2万円〜6万円が相場です。ただし、前述のように遺産分割や調停、不動産の整理など特別な業務を依頼した場合は、別途費用がかかります。
成年後見制度の報酬が支払えないときはどうしたらいいの?
もし、成年後見人への報酬が支払えないときは、以下のような手段で解決できます。
- 成年後見制度利用支援事業
- 公益信託成年後見助成基金
成年後見制度利用支援事業を活用する
身寄りがいないなどの事情があって成年後見人をたてられない人や成年後見人への報酬を支払うことが困難な方のために、市区町村では「成年後見制度利用支援事業」を整えていることがあります。
詳しい事業内容は市区町村により異なるため、一度お近くの役所の窓口に相談してみましょう。
公益信託成年後見助成基金を活用する
公益社団法人成年後見センター・リーガルサポートでは、「公益信託成年後見助成基金」を設立しています。寄付を資金源として、成年後見人制度の費用支援を行っているのです。
申し込みや詳しい助成内容を知りたい方は、公益社団法人成年後見センター・リーガルサポートのHPをご確認ください。
公益社団法人成年後見センター・リーガルサポートのHPはこちら
まとめ:成年後見制度の相場は0円〜6万円+α
本記事では、成年後見制度を活用した場合の報酬および助成制度について詳しく解説しました。
法定後見制度・任意後見制度どちらを利用した場合でも、0円〜6万円が月額報酬の相場です。ただし、遺産分割・調停や不動産売買・賃貸契約など特別な業務については、その都度+αの報酬を支払う必要があります。
支払い能力が十分でない場合には、市区町村の助成制度の利用も検討しましょう。
なお、家族・親族は成年後見人になれるかなど、詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてみてください。