自分がバリバリ働く世代になると、いつのまにか親が現役を引退して年金生活に入っています。「親を自分の扶養に入れることができればお得になるのでは」と思う方もいらっしゃるでしょう。しかし、扶養にする条件や受けられる控除額など具体的な内容は知らないというケースも多いです。
そこで本記事では、2種類ある扶養の適用条件、控除額を含めた詳細な解説と、親を扶養に入れる際の注意点などをご紹介します。
自分が親を扶養にできるかどうかが判断でき、控除額や申請方法もわかるので、ぜひご一読ください。
扶養の種類は2つある
扶養とは「親族を経済的に援助する」という意味です。具体的には下記のケースがあります。
- 夫が妻の扶養に入る
- 妻が夫の扶養に入る
- 16歳以上の子どもが親の扶養に入る
- それ以外の親族が扶養に入る
扶養には「税制上の扶養」と「健康保険上の扶養」の2種類があり、それぞれ扶養の定義や条件が異なります。以下で各扶養に親を入れるとどのようなメリットがあるのか、簡潔にご説明します。
税制上の扶養
税制上の扶養に親を入れると、扶養者つまり子の所得控除の対象となり、各納税額が低くなります。扶養控除を適用することで課税所得が少なくなり、支払わなければならない所得税と住民税の額面が軽減されるしくみです。扶養する子にとって大きなメリットです。
健康保険上の扶養
健康保険の扶養に親を入れた場合は、子の健康保険で親の健康保険までカバーするため、親が自分の保険料を支払う必要がなくなります。扶養される親にとって大きなメリットです。
ただし、健康保険の扶養ができるのは子が会社員等で勤務先の健康保険に加入している場合です。子が自営業等で国民健康保険に加入している場合は、健康保険の扶養控除は受けられません。
税制上の扶養について詳しく解説
税制上の扶養について、次の3点に沿って詳しく解説します。
- 扶養が認められる条件
- 控除される金額
- 申請方法
子の職業が会社員でも自営業者でも利用できる税制上の扶養は、より多くの方が利用できる制度です。ぜひ条件や金額、申請方法についてしっかりとご確認ください。
扶養が認められる条件
親を税制上の扶養に入れるには、親が次の条件をすべて満たしている必要があります。
- 納税者である子と生計を一にしている
- 年間の合計所得金額が48万円以下(2019年分以前は38万円以下)である
- ただし、所得が給与のみの場合は給与収入が103万円以下である
- 青色申告者の事業専従者としてその年間は1度も給与を受け取っていない、または白色申告者の事業専従者でない
なお、親と同居していなくても、子が親に定期的に仕送りをして生計を支えている場合は、「生計を一にしている」とみなされます。
控除される金額
税制上の扶養では、所得税および住民税に対し控除を受けることができます。それぞれ、親の年齢と同居・別居で控除額が異なるのでご注意ください。各税の控除額について以下でご紹介します。
所得税の場合親を税制上の扶養に入れた場合、所得税の控除額は以下のとおりです。
- 親が70歳未満:38万円
- 親が70歳以上で同居している場合:58万円
- 親が70歳以上で離れて暮らしている場合:48万円
親の年齢が70歳に達すると控除額が上がります。また、70歳以上の親と同居している場合は、控除額が大きくなります。
住民税の場合親を税制上の扶養に入れた場合、住民税の控除額は以下のとおりです。
- 親が70歳未満:33万円
- 親が70歳以上で同居している場合:45万円
- 親が70歳以上で離れて暮らしている場合:38万円
住民税控除も所得税控除と同様、親が70歳になったかどうかで控除額が変わります。また、70歳を超えた高齢の親と同居すると控除額が大きい点も同じです。
申請方法
親を税制上の扶養に入れるためには申請が必要です。年金生活者の親と同居し生活を支えているからといって、自動的に税制上の扶養になるわけではありません。申請手続きは簡単で、年末調整で「給与所得者の扶養控除等申告書」に記入し提出するだけです。
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健康保険上の扶養について詳しく解説
では、健康保険上の扶養について、次の3点に沿って詳しく解説します。
- 扶養が認められる条件
- 控除される金額
- 申請方法
健康保険上の扶養は、条件や控除額、申請方法のすべてが税制上の扶養と異なっています。混同しないようご注意ください。
扶養が認められる条件
親を健康保険上の扶養に入れるためには、親が満たすべき条件があります。その条件は、子が親と同居しているか離れて暮らしているかで異なります。それぞれの場合について以下でご確認ください。
親と同居している場合子が親と同居している場合は、次の2点を親が満たしていると健康保険の扶養の対象になります。
- 年間収入が130万円未満(親が60歳以上、または障害厚生年金を受けられる程度の障害者である場合は180万円未満)※
- 年間収入が、子である被保険者の年間収入の2分の1未満
※一定規模以上の会社では106万円以上
上記2点を満たさない場合でも、親の年間収入が130万円未満(60歳以上なら180万円未満)で子の収入を上回らない場合、その世帯の生計の状況を果たしていると認定されれば扶養に入れる場合があります。
親と離れて暮らしている場合子が親と離れて暮らしている場合は、次の2点を親が満たせば扶養に入れられます。
- 年間収入が130万円未満(親が60歳以上、または障害厚生年金を受けられる程度の障害者である場合は180万円未満)※
- 年間収入が、子である被保険者からの援助額より少ない
※一定規模以上の会社では106万円以上
離れて暮らしている場合は、子からの仕送り額が親の収入より多いことが扶養に入れる条件に定められています。
控除される金額
親を健康保険の扶養に入れた場合、親の社会保険料の支払い義務がなくなります。子の勤務先の健康保険によって、親の保険料までカバーされるためです。いっぽう、子は直接には控除の恩恵を受けません。この点が税制上の扶養とは異なります。
申請方法
親を健康保険の扶養に入れるための申請方法は、加入している健康保険によって手続きが異なります。そのため、勤務先などにご確認することをおすすめします。
親が遺族年金を受け取っていても、扶養に入れることは可能
片親が遺族年金を受給している場合、子の扶養に入れることはできるのでしょうか。税制上の扶養と健康保険の扶養で、状況が異なります。
税制上の扶養の場合、子の扶養に入ることができます。適用条件は「年間の合計所得金額が48万円以下である」ことです。
遺族年金は非課税所得であり、所得金額として計算されません。そのため、遺族年金を受給しても年間の合計所得金額は0円として扱われ、税制上の扶養の適用条件を満たします。
一方で、健康保険の扶養に入ることは難しいです。健康保険の扶養の適用条件は「年間収入が130万円未満(60歳以上の場合は180万円未満)」です。この「収入」には遺族年金も含まれます。
遺族年金に老齢年金もあわせて受給している場合は、規定の年間収入を超えてしまいがちです。そのため、健康保険の扶養の適用条件から外れてしまいます。
親の介護保険の負担金が大きくなる可能性が高いので注意
親を扶養に入れるのは良いことずくめに思えますが、注意点もあります。親を自分の扶養に入れると、親の介護費用の負担が大きくなる可能性があることです。介護保険制度は、低所得であるほど金銭的負担が軽減される仕組みに設計されています。
介護保険制度下での「所得」は個人所得だけではなく、世帯所得も対象です。親を扶養に入れていない状態、つまり親が別世帯である状態なら、親の所得で判断されて負担軽減措置の対象になり得ます。
しかし、収入がある子の扶養の状態つまり子と同じ世帯の場合は、世帯所得が高くなり負担軽減措置から外れてしまうことも。結果、自己負担額が増えるおそれがあります。
まとめ:親を扶養するメリットとデメリットを理解しておこう
2種類ある扶養の適用条件、控除額を含めた詳細な解説と、親を扶養に入れる際の注意点などをご紹介しました。
親を扶養すると節税できるメリットがありますが、世帯所得次第では介護保険の負担が大きくなりかねません。自分の収入や家庭状況を考慮したうえで、扶養制度を活用しましょう。