「大学進学に向けて準備してきた教育資金では足りない」といった場合に利用したいのが奨学金制度です。
しかし、奨学金制度は誰でも利用できる制度ではなく、利用可否の判断には世帯収入が大きく影響することをご存知でしょうか。
本記事では奨学金を利用する際の収入基準を、給付型と貸与型それぞれの収入基準について解説します。利用したい奨学金の収入基準を確認し、自分に合う奨学金を判断してください。
奨学金制度は学生の修学支援
経済的な不安を抱える学生は、進学や修学を諦めないために奨学金制度を利用できます。奨学金は返済義務のない給付型と、返済する義務のある貸与型に大別することが可能です。
貸与型は、さらに無利子と有利子に分けることができ、それぞれ利用条件や貸与金額が異なります。
奨学金の種類と支給金額は以下の通りです。
奨学金の種類 | 金額 | ||
---|---|---|---|
給付奨学金 | 月額 | 支給月額は、学校の種別(大学、専修学校等)、設置者(国公立・私立)、通学形態(自宅・自宅外)等により異なる | |
貸与奨学金 | 第一種奨学金 (無利子) |
月額 | 貸与月額は、学校の種別(大学、専修学校等)、設置者(国公立・私立)、通学形態(自宅・自宅外)等により異なる |
第二種奨学金 (有利子) |
月額 | 2~12万円(1万円単位)の範囲で選択可能 | |
入学時特別増額貸与奨学金 (有利子) |
一時金 | 10~50万円(10万円単位)の範囲で選択可能 |
在籍している(進学予定の)学校の種別や自宅から通学しているかどうかによって、利用できる月額や利子の有無が異なります。特に貸与型奨学金の場合は卒業後に返済しなければならない点を考慮した上で利用しましょう。
奨学金を利用する際の収入基準
貸与型奨学金・給付型奨学金それぞれにさまざまな利用要件が設けられており、要件の1つに収入基準があります。収入の確認方法を理解した上で、給付型・貸与型奨学金それぞれの収入基準を把握しましょう。
収入の確認方法
奨学金を利用する際の収入の考え方は、給与所得者の場合と給与所得以外の所得も含む場合で異なります。年間の収入(所得)金額は所得証明書や市県民税(所得・課税)証明書、住民税非課税証明書のいずれかで確認することができます。
給与所得者の場合
給与所得者の所得証明書には給与収入と給与所得が併記されており、奨学金の利用に際しては給与収入金額(もしくは給与支払金額)が審査対象です。
給与所得以外の所得も含む場合
事業所得など、給与所得以外の所得を含む場合は、合計所得金額(または総所得金額)が審査の対象です。課税総所得金額は審査の対象ではないため注意しましょう。
給付型奨学金を利用する際の収入基準
返済の必要がない給付型奨学金を利用する場合の収入基準(目安)は以下の通りです。
世帯人数 | 想定する世帯構成 | 給与所得者の世帯 | 給与所得者以外の世帯 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
第Ⅰ区分 | 第Ⅱ区分 | 第Ⅲ区分 | 第Ⅰ区分 | 第Ⅱ区分 | 第Ⅲ区分 | ||
2人世帯 | 本人、母(ひとり親) | 207万円 | 298万円 | 373万円 | 125万円 | 176万円 | 230万円 |
3人世帯 | 本人、親、中学生 | 221万円 | 298万円 | 373万円 | 137万円 | 178万円 | 234万円 |
4人世帯 | 本人、親①、親②(無収入)、中学生 | 271万円 | 303万円 | 378万円 | 172万円 | 191万円 | 255万円 |
なお、給付型奨学金の利用には、上記の収入基準の他に資産基準が設けられています。申込者と生計維持者の資産の合計が2,000万円未満(生計維持者が1人の場合は1,250万円)でなければならないため、申し込み前に収入と資産の双方を確認しましょう。
貸与型奨学金を利用する際の収入基準
貸与型の奨学金を利用する場合の収入基準(目安)は以下の通りです。無利子の第一種と有利子の第二種の両方を利用することもできるため、併用貸与の基準も一緒に確認しておきましょう。
世帯人数 | 想定する世帯構成 | 給与所得の世帯 (年間収入) |
給与所得以外の世帯 (年間所得) |
||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
第一種 | 第二種 | 併用貸与 | 第一種 | 第二種 | 併用貸与 | ||
2人世帯 | 本人、親 | 779万円 | 1,036万円 | 707万円 | 371万円 | 628万円 | 321万円 |
3人世帯 | 本人、親、中学生 | 657万円 | 1,009万円 | 599万円 | 286万円 | 601万円 | 245万円 |
4人世帯 | 本人、親①、親②(無収入)、中学生 | 747万円 | 1,100万円 | 686万円 | 349万円 | 692万円 | 306万円 |
奨学金がもらえない・借りられない!その理由とは?
奨学金がもらえなかったり、借りられなかったりする場合に考えられる理由は3つあります。具体的な理由は以下の通りです。
奨学金がもらえない・借りられない理由
- 収入制限・所得制限をオーバーしているから
- 在学中の成績が条件に達していないから
- 連帯保証人及び保証人がいないから
奨学金がもらえない・借りられない理由は、あなたが思うほどに多くなく、さほど厳密でもありません。そのため、奨学金がもらえない・借りられない理由を正しく把握して、奨学金の対象となるチャンスを自らつぶさないようにしましょう。
理由1:収入制限・所得制限をオーバーしているから
奨学金制度の家計基準を超えていると、奨学金をもらえなかったり、借りられなかったりする場合があります。奨学金制度は、そもそも経済的理由による進学をあきらめないように学生を支援する制度だからです。
具体的な家計基準は前述の通り、給与収入金額、もしくは、合計所得金額で設けられています。給与所得者であれば年間収入、給与所得者以外であれば年間所得で判断するため、注意が必要です。
ただし、家計基準は奨学金の対象学生を選択するための一つの目安であり、家計基準を超えていても、その他の条件で奨学金の適用対象になる可能性はあります。よって、奨学金を受けたいなら、まず申請してみるのもいいでしょう。
理由2:在学中の成績が条件に達していないから
奨学金制度の学力条件に達していないと、奨学金の対象として判定されない場合があります。給与型と貸与型のそれぞれの奨学金における学力条件は以下の通りです。
以下の1.もしくは2.のいずれかに該当する必要があります。 ・1.高等学校等における全履修科目の評定平均値が、5段階評価で3.5以上であること(※1) ・2.将来、社会で自立し、及び活躍する目標をもって、進学しようとする大学等における学修意欲を有すること(※2)
引用元:日本学生支援機構「進学前(予約採用)の給付奨学金の学力基準」
次の(1)または(2)のいずれかひとつに該当すること。 (1)高等学校等における申込時までの全履修科目の評定平均値が、5段階評価で3.5以上であること。 (中略) (2)高等学校卒業程度認定試験合格者であること。
引用元:日本学生支援機構「進学前(予約採用)の第一種奨学金の学力基準」
確かに、いずれの奨学金の学力基準でも、5段階評価で評定平均値が3.5以上と明記されています。しかし、この条件は必須条件ではありません。
給与型奨学金の場合、面談やレポートで「将来活躍する目標をもって学修意欲を有する」と判断されたら学力基準を満たす可能性も。また、貸与型奨学金の場合も、評定平均値が3.5未満でも一定の条件に合致する場合には、学力基準を満たせます。成績が足りないと諦めず、基準を満たすための条件をしっかり確認しましょう。
理由3:連帯保証人及び保証人がいないから
貸与型奨学金は返済する必要がある奨学金です。そのため、あなたに連帯保証人や保証人がいないと、貸与型奨学金の対象になれない場合があります。日本学生支援機構の貸与型奨学金における連帯保証人と保証人の条件は以下の通りです。
(1)あなた(奨学生本人)が未成年者の場合は、その親権者(親権者がいない場合は未成年後見人)であること。 (2)あなた(奨学生本人)が成年者の場合は、その父母。父母がいない等の場合は、あなた(奨学生本人)の兄弟姉妹・おじ・おば等の4親等以内の親族であること。 (3)未成年者および学生でないこと。 (4)あなた(奨学生本人)の配偶者(婚約者を含む)でないこと。 (5)債務整理中(破産等)でないこと。 (6)貸与終了時(貸与終了月の末日時点)にあなた(奨学生本人)が満45歳を超える場合、その時点で60歳未満であること。
引用元::日本学生支援機構「第一種奨学金の人的保証制度|3.連帯保証人について」
(1)あなた(奨学生本人)および連帯保証人と別生計であること。 (2)あなた(奨学生本人)の父母を除く、おじ・おば・兄弟姉妹等の4親等以内の親族であること。 (3)返還誓約書の誓約日(奨学金の申込日)時点で65歳未満であること。また、返還誓約書の提出後に保証人を変更する場合は、その届出日現在で65歳未満であること。 (4)未成年者および学生でないこと。 (5)あなた(奨学生本人)または連帯保証人の配偶者(婚約者を含む)でないこと。 (6)債務整理中(破産等)でないこと。 (7)貸与終了時(貸与終了月の末日時点)にあなた(奨学生本人)が満45歳を超える場合、その時点で60歳未満であること。
引用元::日本学生支援機構「第一種奨学金の人的保証制度|4.保証人について」
しかし、貸与型奨学金の保証制度は2つで構成されており、原則は以下のいずれかを選択する必要があります。
- 機関保証に加入する機関保証
- 連帯保証人と保証人を選任する人的保証
つまり、連帯保証人や保証人が必要になる人的保証を選択できなくても、機関保証を利用すれば貸与型奨学金に申請可能です。実際、令和3年度の日本学生支援機構の貸与型奨学金利用者のうち、53.8%が期間保証を選択しています。(参照元:日本学生支援機構「奨学金事業への理解を深めていただくために」)
機関保証の利用で発生する保証料は毎月の奨学金から差し引かれるため、あなたが個別に支払う必要はありません。人的保証を選択できない場合には、機関保証を選択して奨学金を申し込みましょう。
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奨学金がもらえない・借りられない際の4つの対処法
進学時に日本学生支援機構の奨学金制度の対象に選ばれなくても、進学を諦める必要はありません。少しでも学費の負担を減らす方法がいくつもあるからです。ここからは、進学時に奨学金制度の対象に選定されなかった場合の対処法を4つご紹介します。
奨学金がもらえない・借りられない際の対処法
- 在学中に再度奨学金を申し込む
- 日本学生支援機構以外の奨学金を利用する
- アルバイトなどで自分で学費を稼ぐ
- 国の教育ローンを活用する
学費の負担を減らす方法を知れば、進学後にその選択肢が増えます。進学後でも取れる方法を進学前から把握しておけば、万一進学前の選考に漏れても焦る必要はありません。
対処法1:在学中に再度奨学金を申し込む
日本学生支援機構の奨学金制度は、入学時に奨学金の対象になれなくても在学中に改めて申し込めます。進学前に申し込むケースを予約採用と呼ぶのに対し、進学後に申し込むケースは在学採用と呼びます。在学採用も予約採用も所定の学力基準と家計基準をクリアしていることが、奨学金を受けるための前提です。
ただし、2つの基準の内容は進学前後で変わります。特に学力基準は、在学採用だと進学後の成績で見られる点が大きな違いです。予約採用で選定されなくても、在学採用で選定される可能性は大いにあります。在学採用を狙うならば、改めて必要な基準を把握しておきましょう。
対処法2:日本学生支援機構以外の奨学金を利用する
日本学生支援機構以外の奨学金を利用することでも、学費負担を軽減できます。具体的には、下記のような機関が提供する奨学金制度があります。
- 大学独自
- 民間団体
- 地方公共団体
進学先・在学中の学校の奨学金の窓口となる部署に問い合わせれば、申し込み可能な奨学金制度について案内を受けられます。今は学校のホームページでも掲載していることがあります。学校のホームページから担当部署を調べるならば、併せてWebページ上で利用可能な奨学金の種類も確認しましょう。
対処法3:アルバイトなどで自分で学費を稼ぐ
奨学金を受けることができないならば、アルバイトで学費をまかなうのも1つの方法です。アルバイトを行う上で、基本的に学力や家計の基準は関係ありません。また、現在は在宅でできる仕事もあるため、勉強で忙しくても自宅や外出先からスキマ時間にコツコツ稼げます。
アルバイトの働き次第では、奨学金以上に稼いで、学費だけでなく生活費にも充当できます。アルバイトの経験は就職活動時にも活かせる点を考えれば、一石二鳥の取り組みです。
対処法4:国の教育ローンを活用する
学費を借りる方法として、国の教育ローンを利用する手もあります。教育ローンは奨学金とは異なり、一度にまとまった金額を借りられます。金利は年1.95%で固定で、最大350万円まで借入可能。さらに、ひとり親や世帯年収200万円など家庭の状況によっては金利が優遇される制度もあります。
ただし、返済タイミングが奨学金と異なる点は注意が必要です。貸与型奨学金は卒業後から返済が始まります。一方、教育ローンは借り受けた直後から返済が必要です。奨学金を受けられず、アルバイトをしても学費が補えない場合には、教育ローンの利用も考えましょう。
奨学金の利用に関する4つの疑問点を解説
奨学金の利用には収入基準が設けられており、利用前に各基準を確認しておく必要があります。しかし、奨学金の利用を検討している人の中には、世帯収入が基準額を超過していたり、各種公的年金を受給している場合に奨学金が利用できるのか判断に悩むこともあるでしょう。
ここでは奨学金を利用する際に抱くことの多い疑問点を4つ解説します。
- 収入が上限額を超えている場合は一律対象外?
- 遺族年金や障害年金は収入に含まれる?
- 奨学生本人の収入も関係するの?
- 家計が急変した場合はいつ申し込めばいい?
疑問点1:収入が上限額を超えている場合は一律対象外?
先述のように、奨学金の利用には収入条件が設けられていますが、家計・収入基準は、家計支持者の年収だけで判断するものではありません。家計支持者の所得金額の合計から特別控除額を差し引いたあとの金額が、世帯人数ごとに決められた収入基準額以下であるかどうかで判定されます。
この場合の特別控除とは、就学者の控除や単身赴任に関する控除などがあり、世帯の特別な事情について控除が認められているものを指します。収入基準だけで一律不採用にはなりませんので申請時に詳細を確認しましょう。
疑問点2:遺族年金や障害年金は収入に含まれる?
さまざまな事情で遺族年金や障害年金を受給していることもあるでしょう。奨学金の申し込み時点でこれらの公的年金を受給している場合は年金収入として収入に含める必要があります。
奨学金の利用には収入要件が設定されているため、漏れなく申告しましょう。
疑問点3:奨学生本人の収入も関係するの?
学生によっては、アルバイトなどで収入を得ているかもしれません。奨学金を利用する本人の収入(所得)も奨学金の利用可否や支援区分の判定に影響するため、正しく申し出る必要があります。
年間の給与収入が100万円(未成年の場合は給与収入で約200万円)を超えると住民税が課されることがありますが、この場合には本人の支給額算定基準額が奨学金の利用判定に関係します。奨学金の利用を検討している人がアルバイトをする場合は、利用判定基準に影響がない程度に留めましょう。
疑問点4:家計が急変した場合はいつ申し込めばいい?
生計維持者の死亡や失業などにより、家計状況が急変することも考えられます。災害など予期できない理由によって緊急で経済的な支援が必要な場合は、家計急変に対する救済として給付型奨学金の随時申し込みが可能です。
家計急変を理由に申し込む給付型奨学金は、生計維持者の収入が減少している場合に要件を満たすと支給されます。家計が急変してから原則3ヶ月以内の申し込みが必要になるため、学校から提示される期限内に必要書類を揃えて速やかに申請しましょう。
まとめ:給付型・貸与型それぞれの収入基準を確認して奨学金の利用を
今回は奨学金を利用する際の収入の基準を、給付型・貸与型それぞれ解説しました。奨学金の種類ごとに収入基準は異なり、さらに給付型奨学金の場合は資産基準が設けられています。
収入の確認方法や、利用を検討している奨学金が利用対象かどうかを確認した上で奨学金制度を利用しましょう。奨学金が借りられない場合は、今回紹介した方法をぜひ検討してみてください。