自分の1年間の手取り収入はいくらか、ご存知でしょうか。
「収入や所得、手取りなどよく似た言葉があるのでわからない」
「源泉徴収票で見た気がする」
「毎月の振込額で大雑把な金額はわかる」
大体の見当はつくが、正確な手取り収入を理解している人は案外少ないものです。
今回の記事では、源泉徴収票の見方と手取り収入の計算方法について解説します。徴収票の内容が理解できれば、1年間の収入や各種控除、所得税の仕組みなどが分かるため、計画的な収支計画や節税対策が立てやすくなります。
源泉徴収票の役割と記載内容
毎年1月頃に交付される源泉徴収票には、1年間の収入や源泉徴収された税額だけではなく、各種所得控除の内容や課税所得についても記載されています。
まずは、源泉徴収票についての基礎知識について説明します。
源泉徴収票は源泉徴収したことを税務署に報告するためのもの
会社は従業員に支払う給与の中から所得税と復興特別所得税を源泉徴収し、税務署に納付することが義務付けられています。
年末調整した上で、1年間の所得と源泉徴収税額を税務署に報告するために発行されるのが「給与所得の源泉徴収票」です。従業員にも源泉徴収票が交付され、確定申告や所得の証明などに使われます。
給与所得を含めて源泉徴収した税金は、以下のいずれかを用いて税務署に報告しなければなりません。
- 給与所得の源泉徴収票
- 退職所得の源泉徴収票
- 公的年金等の源泉徴収票
- プロスポーツ選手の報酬や弁護士・税理士の報酬などは支払調書 など
源泉徴収票には1年間の収入や所得、各種控除が記載されている
源泉徴収票に記載されているのは、主に収入と所得控除に関する事項です。また、所得控除後の所得も記載されているので、「年収」と「所得」の違いを理解しましょう。
源泉徴収票の概要
源泉徴収票は1枚ものの帳票で、記載内容は大きく4つに分けられます。
①「支払いを受ける者」
対象となる従業員の氏名や住所などの基本情報
②「種別」など
1年間の給与支給額や課税対象金額、源泉徴収された所得税 など
③「控除対象配偶者の有無等」など
配偶者控除や扶養控除の対象者情報や、生命保険料控除など各種所得控除の内訳 など
④「支払者」
給与を支払う会社の名前や住所など
源泉徴収票をもらったとき、最低限確認しておきたいのは②の各項目です。詳細は次で解説します。
源泉徴収票の詳細な記載内容
前述の②の各項目と③の一部について、記載内容を確認します。
①種別
「給与・賞与」など収入の種類
②支払金額
給与の支払い総額(税金などを控除する前の金額)
③給与所得控除後の金額
②から「給与所得控除」を差し引いた金額
④所得控除の額の合計額
③から「各種所得控除」を差し引いた金額
⑤源泉徴収額
年末調整で精算した後の所得税額
⑥社会保険料等の金額
健康保険料や厚生年金保険料などの社会保険料の合計金額(全額所得控除)
⑦生命保険料の控除額
支払った生命保険料などのうち所得控除できる金額
⑧地震保険料の控除額
支払った地震保険料などのうち所得控除できる金額
⑨住宅借入金等特別控除の額
いわゆる住宅ローン減税で所得控除できる金額
上記の②支払金額を「収入(年収)」、③給与所得控除後の金額を「給与所得」、④所得控除の額の合計額を「課税所得」といいます。
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源泉徴収票と手取り収入
手取り収入については源泉徴収票に記載されていませんが、源泉徴収票などを使って計算できます。
源泉徴収票を使って手取り収入を計算
手取り収入とは、給与から強制的に控除される次の3つの税金・社会保険料を差し引いた金額です。
- 所得税額
- 住民税額
- 社会保険料(厚生年金保険料や健康保険料 など)
つまり、手取り収入は次の式で計算できます。
手取り収入=給与総額ー所得税額ー住民税額ー社会保険料
1年間の給与は源泉徴収票の「②支払金額」、所得税額は「⑤源泉徴収額」、社会保険料は「⑥社会保険料等の金額」です。
住民税額は源泉徴収票には記載されていないため、毎月の給与から天引きされている「住民税額」から計算するか、毎年5~6月ごろに勤務先から渡される「住民税課税決定通知書」で確認しましょう。住民税額は毎年6月に改定されるので覚えておきましょう。
源泉徴収票の記載項目を使って、次の計算で手取り収入を算出します。
手取り収入=「②支払金額」ー「⑤源泉徴収額」ー住民税額ー「⑥社会保険料等の金額」
手取り収入の計算例
次に、モデルケースで手取り収入を概算してみましょう。
ケース収入が同じでも扶養親族や所得控除によって税金や社会保険料は異なります。
- ②支払金額:500万円
- ⑤源泉徴収額:14万円
- ⑥社会保険料等の金額:71万円
- 住民税額:24万円
手取り収入=500万円-14万円-24万円-71万円=391万円
手取り収入は年収の8割前後です。家計の収支計画を立てるときは、給与の約2割は税金や社会保険料で天引きされることを前提に考えましょう。
また、所得税率の高い高所得者以外の人は、税金よりも社会保険料が大きな負担となります。この理由は、税金は各種所得控除後の所得に課税されるのに対し、社会保険料の計算では所得控除は考慮されないためです。
加入する健康保険や介護保険の加入の有無などで異なりますが、社会保険料は概ね給与の15%前後と覚えておきましょう。
源泉徴収票と所得税
手取り収入は、給与から天引きされる税金や社会保険料の金額で決まります。最後に、税金と所得控除について説明します。
源泉徴収票で所得控除額を確認
源泉徴収票を見れば、各種所得控除額がわかります。
源泉徴収票の「②支払金額」から「③給与所得控除後の金額」を差し引けば、給与所得控除額がわかります。
また、「③給与所得控除後の金額」から「④所得控除の額の合計額」を差し引けば、給与所得以外の所得控除額が計算できます。所得控除の内訳についても、源泉徴収票に記載されています。
2020年に所得税の控除について改正があったので、以下の記事で確認してみましょう。
所得控除の仕組みがわかれば、所得税について理解が深まります。年末調整の意味や医療費控除など確定申告の必要性がわかるため、節税対策にも役に立ちます。
課税所得がわかれば所得税を計算できる
課税所得は源泉徴収票の「④所得控除の額の合計額」に記載されています。この金額に税率を掛ければ所得税を計算できます。
所得税の計算は、次の速算表で計算できます。 (所得税の速算表)
課税所得金額 | 所得税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円未満 | 5% | 0円 |
195万円以上330万円未満 | 10% | 9万7,500円 |
330万円以上695万円未満 | 20% | 42万7,500円 |
695万円以上900万円未満 | 23% | 63万6,000円 |
900万円以上1,800万円未満 | 33% | 153万6,000円 |
1,800万円以上4,000万円未満 | 40% | 279万6,000円 |
4,000万円以上 | 45% | 479万6,000円 |
所得控除の内訳がわからなくても源泉徴収票があれば所得税を計算できますが、源泉徴収票の発行は年末調整が終わった翌年の1月です。所得控除の内訳が理解できれば、事前に還付金を計算したり、節税対策を考えたりできます。
まとめ:源泉徴収票がわかれば、税金や社会保険の理解が深まる
源泉徴収票を見れば、手取りの年収を計算できます。手取り収入は給与の総額の8割前後ですが、年収が高いほど手取りの割合は下がります。
手取り収入=給与総額ー所得税額ー住民税額ー社会保険料
源泉徴収票がわかるようになると、年収や手取り収入を確認できるだけでなく、税金や社会保険の仕組みの理解も深まります。社会人として知っておいて損はないため、一度確認してみましょう。