生活するうえで数々の税金を納めていて、その中に「住民税」があります。人によっては、毎年納税している住民税の「納税額が高い」と感じることもあるかもしれません。
適切に納税しないと無申告や過少申告等の罰則、極端にいえば「脱税」の非難を浴びかねません。しかし、適切な手段で納税負担を抑える「節税」であれば犯罪行為にはなりません。では、住民税を節税する方法はあるのでしょうか?
本記事では、住民税の計算方法と地域ごとの住民税負担の差、住民税の節税対策法について解説します。
住民税はなぜ必要なの?
住民税は市町村などの行政サービスを運営していくための資金になっています。
住民税が徴収されているおかげで、その地域のゴミ収集や消防、救命活動、教育などが正常に機能しています。
そのため、削減してしまうと現在のサービスが提供できなくなり、住みにくい街になってしまう恐れがあるので、高いと感じていても仕方ないと言えるでしょう。
住民税の計算方法:「所得割額」+「均等割額」
住民税は、大きく分けて「都道府県民税」と「市町村民税」の2種類があります。
住民税を理解するうえで重要なのは、「所得割」と「均等割」という2種類の住民税の計算方法です。住民税は、細かく分けると以下の4種類があります。
- 都道府県民税の所得割
- 都道府県民税の均等割
- 市町村民税の所得割
- 市町村民税の均等割
所得割額とは
住民税の「所得割額」とは、各納税者の所得に依存して納税額が決まる税金です。厳密な計算方法は省きますが、納税者の収入からいくらか控除した課税所得額に、自治体ごとに定められている税率をかけて納税額が決まります。
そのため、簡単に言えば「収入が多いほど住民税の金額が増える納税額」です。
均等割額とは
住民税の「均等割額」とは、納税者ごとに異なる金額ではなく、同じ自治体に住んでいれば同じ金額を負担する税額です。金額は自治体ごとに定められており、納税者の収入がいくらであろうとも同じ金額を負担します。
住民税の徴収方法
住民税には下記の2種類の徴収方法があります。
- 個人事業主が対象の普通徴収
- サラリーマンが対象の特別徴収
あなたがどちらに該当しているのかを確認した上で内容をチェックしていきましょう。
個人事業主が対象の普通徴収
個人事業主(フリーランス)として働いている方は前年分の所得を2〜3月の間に確定申告を行い、昨年得た分の所得税を納税をします。
その後、住民税決定通知書兼納付書が5月〜6月に届き、一括または6月末・8月末・10月末・翌年1月末の4回に分けて住民税を普通徴収という形で納めます。
サラリーマンが対象の特別徴収
サラリーマンとして会社に所属して働いているという方は、給与から住民税が天引きされる特別徴収という方式が取られています。
普通徴収とは違い、自分で納める必要がないので手間が省けるのは嬉しいポイントでしょう。
6つの自治体別での住民税を徹底比較!
「住民税の地域格差」については、大きな差ではないにしても若干の地域差があります。
具体的に、6つの自治体の4種類の住民税を取り上げて比較してみましょう(データは2024年6月6日時点で各自治体のHPに掲載されているものを参照)。
都道府県民税 | 市町村民税 | |||
---|---|---|---|---|
自治体 | 所得割 | 均等割 | 所得割 | 均等割 |
北海道 札幌市 | 2% | 1,000円 | 8% | 3,000円 |
福島県 福島市 | 4% | 2,000円 | 6% | 3,300円 |
神奈川県 横浜市 | 2.025% | 1,300円 | 8% | 3,900円 |
大阪府 大阪市 | 2% | 1,800円 | 8% | 3,500円 |
鹿児島県 鹿児島市 | 4% | 1,500円 | 6% | 3,000円 |
沖縄県 那覇市 | 4% | 1,500円 | 6% | 3,500円 |
基本的に「所得割が合計で10%」「均等割が合計で4,000円」です。以前は均等割りは5,000円だったので減税になっていますが、自治体によっては森林環境税などの名目でわずかに増額されているところもあります。収める税金は年額なので、わずかに自治体差があるにとどまり、それほど大きな格差ではありません。
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「住民税が高い!」と感じる原因
住民税の自治体ごとの格差はそれほど大きくないと考えても、そのうえで「自分が負担している住民税の負担が大きいと感じる」ということもあるでしょう。
その原因としては「住民税計算における『控除』が少ない」ことが挙げられます。
住民税は一律の「均等割」と、納税者ごとに異なる「所得割」の2種類(それぞれ都道府県民税と市町村民税なので計4種類)があります。均等割の部分は納税者ごとの差はありませんが、所得割の部分は納税者ごとに金額が異なります。
所得割は納税者の所得金額に依存しており、その計算においては「各種控除」を収入から差し引いて課税所得額が算出されます。社会保険料や扶養家族などの理由により控除を受けられ、受けられる控除の合計額により同じ年収でも課税所得額が異なり、納税する住民税の金額も変わります。
個人住民税を下げるための節税対策法
住民税を下げるための方法として主に下記の3つの対策法が挙げられます。
- 所得控除
- ふるさと納税
- 個人住民税の減免
以下で詳細に解説していきます。
所得控除を受ける
所得控除とは、所得に対する課税を差し引くことができるものです。
所得控除が可能な背景には、一人一人の、支出状況や扶養状況等に応じて、所得金額から一定の金額を控除することで、税負担の公平性を図るためのものです。所得控除の事例として下記のようなものが挙げられます。
- 雑損控除
- 医療費控除
- 社会保険料控除
- 生命保険控除
ふるさと納税をする
ふるさと納税とは、自分が応援したい地方自治体に寄付をすることで、寄付金控除を受けられる制度です。寄付金控除を受けることで、所得税と住民税を減らすことができます。
大前提として、ふるさと納税制度は「ふるさと納税=返礼品を買う」ではなく「自治体へ寄附をすることで住民税・所得税の控除対象」になります。
住民税からの控除(基本分)の計算式は「(ふるさと納税額-2,000円)×10%」となります。
ただ、ふるさと納税制度による住民税からの控除額には上限があるため、上限を意識しながらふるさと納税を利用するようにしましょう。
個人住民税の減免
「個人住民税の減免」とは、収入が激減するなどの事情により、住民税の納付が経済的に困難である場合、住民税の負担額を減少させる制度のことです。
条件は自治体ごとに異なりますが、主に「生活保護」や「震災による影響で経済的に困窮している」などの条件が規定されています。
個人住民税の減免適用者については、明確に「収入が〇万円減少した」とか「震災等により〇万円以上の損害を受けた」といった規定はありません。そうした事情があっても必ずしも減免制度が適用できるわけではありません。
該当するような事情があり、住民税の納税が経済的に困難な際は、お住いの自治体の納税関係の担当窓口に相談してみましょう。
住民税が高い理由についてのよくある質問
住民税が高い理由についてのよくある質問についてここでは解説していきます。
- Q1. 住民税はなぜ6月だけ高いのですか?
- Q2. 住民税の最低ラインはいくらですか?
- Q3. 住民税が急に上がったのはなぜですか?
- Q4. 住民税は毎月引かれますか?
- Q5. 退職金にも税金がかかりますか?
Q1. 住民税はなぜ6月だけ高いのですか?
6月の住民税だけ少し高くなることがあります。その理由として、6月に月々支払う住民税の「端数」が合算されているためです。
Q2. 住民税を納める最低ラインの年収はいくらですか?
住民税については、住民税(所得割)の非課税限度額が45万円ですので、パート収入が100万円以下でほかに所得がない場合は、住民税(所得割)はかかりません。
引用元:家族と税 国税庁
Q3. 住民税が急に上がったのはなぜですか?
質問者様の状況によって異なりますが、原因として主に下記の二つが想定されます。
- 前年の所得の増加
- 控除額の減少
年末調整の控除明細書や確定申告書の控えを確認することで、前年の所得や控除額を確認できます。
Q4. 住民税は毎月引かれますか?
会社員の場合、基本的に6月から翌年5月の給与から毎月均等に天引きされるのが一般的です。ただ、お住まいの自治体によって異なるので確認しましょう。例えば、中央区であれば以下のように年に4回に分けて納付するパターンもあります。
- 6月(第1期)
- 8月(第2期)
- 10月(第3期)
- 翌年1月(第4期)
引用元:住民税の申告から納付まで
Q5. 退職金にも税金がかかりますか?
もちろん退職金にも税金がかかります。
通常の給料と同じように所得税や復興支援税、住民税の課税対象となっています。
退職をした際に会社側で手続きがされていれば源泉徴収はされているため、確定申告等の手間はありません。
まとめ:住民税が高いと思ったら減免制度を検討
本記事では、住民税の地域格差や減免制度について解説しました。以下の内容を押さえておきましょう。
- 住民税は「都道府県」「市町村」にそれぞれ「所得割」「均等割」合計額の住民税を納めている
- 住民税にはわずかながら地域差がある
- 経済的な事情を考慮してもらえれば減免制度を利用できる可能性がある
住民税は納税者ごとに負担額が異なり、何らかの事情によりその納税が経済的な負担に感じることもあるでしょう。住民税の納税によって、さらに経済的に困窮するようなことは好ましくありません。そのため、適法な手段である減免制度の適用を申請するなどして減免の手段がないかどうか、税金関係の窓口等に問い合わせて方法を模索してください。