私たちの暮らしと税金は密接に関わっており、誰しも「税金をできるだけ抑えたい」と思うものです。特に所得税は収入にかかる税金のため、少しでも手取り額を増やしたいと考える人も多いのではないでしょうか。実はこの所得税に関して、2020年に大きな改正がありました。
本記事では2020年の所得税の改正点を解説します。基礎控除や給与所得控除の内容が変更され、新たな制度が設けられるなど必ずチェックしておきたい改正内容です。
本記事を読むことで今回の改正内容を正しく理解し、所得税の負担を軽減する方法がわかります。
所得税についておさらい
所得税は個人の所得に対して課される税金です。所得税の算出にあたっては、1年間の全ての所得から所得控除を差し引いた残りの課税所得に所定の税率をかけます。
所得は性質によって以下の10種類に分けることができます。
- 利子所得
- 配当所得
- 不動産所得
- 事業所得
- 給与所得
- 退職所得
- 山林所得
- 譲渡所得
- 一時所得
- 雑所得
会社員の場合、毎月の給与から所得税が差し引かれます。ただし、差し引く金額は大まかな金額であるため、12月の年末調整を利用して、税の過不足を調整します。
所得控除とは
一定の要件を満たす場合に、所得の合計金額から一定の金額を差し引く制度を所得控除と言います。例えば扶養親族が何人いるかなど個人的な事情を加味して税を軽減するもので、基礎控除や扶養控除など全部で15種類の所得控除があります。
【2020年から】所得税の控除に関する3つの改正点
所得税は、収入から各種控除を差し引いた「所得」によって計算されます。つまり、控除額が大きい場合、所得税の納税額は少なくなります。2020年に実施された所得税の改正で、主に以下の3点が改正・変更されました。政府が推進する働き方改革やフリーランスとして働く人が増えるなど、働き方が多様化していることが改正の背景にあります。
それぞれの改正点について1つずつ解説します。
- 基礎控除の見直し
- 給与所得控除の見直し
- 所得金額調整控除の新設
①基礎控除の見直し
所得控除の1つである基礎控除は、これまで一律38万円でした。しかし、今回の所得税の改正により控除額が10万円引き上げられて原則48万円になりました。改正後の基礎控除額は以下の通りです。
合計所得金額 | |||||
---|---|---|---|---|---|
2,400万円以下 | 2,400万円超2,450万円以下 | 2,450万円超2,500万円以下 | |||
控除額 | 改正前 | 一律38万円 | |||
改正後 | 48万円 | 32万円 | 16万円 |
出典:国税庁「基礎控除」
高所得者は控除額を引き下げ
基礎控除額が引き上げられた一方、所得が2,400万円を超える高額所得者は段階的に控除額が減額されています。上記の表からも分かる通り、所得が2,500万円を超えると基礎控除が適用されない点には注意しましょう。
なお、年収によってどれくらいの所得税がかかるのかについては、以下の記事を参考にしてください。
②給与所得控除の見直し
会社員など給与所得者の給与から一定額を控除する仕組みが給与所得金額です。給与所得を算出する際は、収入から給与所得控除を差し引きますが、今回の改正によって給与所得控除額が10万円引き下げられました。
令和2年分以降の給与所得控除は以下の表を確認してください。
給与等の収入金額 | 給与所得控除額 |
---|---|
1,625,000円まで | 550,000円 |
1,625,000円から1,800,000円まで | 収入金額×40%-10,000円 |
1,800,001円から3,600,000円まで | 収入金額×30%+80,000円 |
3,600,001円から6,600,000円まで | 収入金額×20%+440,000円 |
6,600,001円から8,500,000円まで | 収入金額×10%+1,100,000円 |
8,500,001円以上 | 1,950,000円(上限) |
出典:国税庁「給与所得控除」
「控除額の10万円引き下げ」と聞くと、税負担が増したと感じるかもしれません。しかし、一般的な会社員の場合、この給与所得控除額の引き下げ(-10万円)は先述の基礎控除の増額(+10万円)で相殺されます。つまり、実質的な税負担は変わらない点を覚えておきましょう。
③所得金額調整控除の新設
給与控除所得金額の引き下げに伴い、所得税の負担が増す人もいるでしょう。そのため、今回の改正で増税となる高額所得者に対する緩和策として、所得金額調整控除が新設されました。
所得金額調整控除は、一定の給与所得者の総所得金額を算出する際に、一定の金額を給与所得から控除します。
適用対象者
所得金額調整控除は、その年の給与等の収入金額が850万円を超える給与所得者で、以下のいずれかの条件を満たす場合に適用されます。
- 本人が特別障害者に該当する
- 23歳未満の扶養親族がいる
- 特別障害者である同一生計配偶者または扶養親族がいる
所得金額調整控除額
所得金額調整控除額は以下の式を用いて算出します。
所得金額調整控除額={給与等の収入金額(1,000万円を超える場合は1,000万円)-850万円}×10%
なお、上記の式で算出した所得金額調整金額に1円未満の端数が生じる場合は、端数を切り上げます。また、この控除制度は夫婦ともに給与等の収入金額が850万円を超えており、上記で解説した条件を満たす場合、夫婦双方がこの控除を利用可能です。
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手取り額が減少する場合の対応策はあるの?
2020年の所得税の改正に伴い、場合によっては手取り額が減少する可能性があります。今回の税制改正に対して各種控除を積極的に利用し、手取り額の減少を極力おさえましょう。
利用したい控除の一例は以下の通りです。
- 生命保険料控除
- 寄付金控除(ふるさと納税)
- 医療費控除
- 小規模企業共済等掛金控除(iDeCo)
例えばiDeCo(個人型確定拠出年金)は掛金が全額所得控除の対象です。活用することで課税所得を減らし、所得税と住民税を軽減することができます。
家族状況やライフスタイルに合わせて、適切な所得控除を選びましょう。
まとめ:基礎控除額も変更!2020年の所得税の改正点を確認しよう
今回は、2020年の所得税改正について解説しました。以下の3つのポイントを押さえておきましょう。
- 基礎控除が10万円引き上げられ原則48万円に
- 給与所得控除が10万円引き下げに
- 高額所得者に対する緩和策として所得金額調整制度が新設
一般的な会社員は基礎控除の引き上げと給与所得控除の引き下げで、実質的な税負担は変わりません。2020年の所得税の改正を受けて、手取り額が減少する場合は医療控除など各種控除を活用して課税所得を減らせないか検討しましょう。