日本の年金制度は「3階建て」と表現され、1階部分は国民年金、2階部分は厚生年金が該当します。原則として65歳になった時に年金を受給することが可能です。
ただ、加入したことがあれば誰でも受給できるわけではありません。一定の要件を満たさない場合は、1円も受け取れません。
本記事では厚生年金の資格期間について、必要な期間の長さを解説します。加えて、現在進行形で資格期間を満たしていない場合に期間を満たすための対策も併せて紹介します。
厚生年金の「資格期間」とは?
厚生年金における「資格期間」とは、以下の期間の合計のことです。
- 国民年金保険料を納めた期間、または免除された期間
- 厚生年金・共済組合等に加入した期間
- 年金制度に加入していなくてもカウントできる期間
自営業・フリーランスとして働く人は国民年金に、会社員や公務員など企業や組織に属して仕事をする人は国民年金と厚生年金に加入し、毎月の年金保険料を納めます。
上記の期間が合計で10年以上になると、年金を受給する権利を得ることが可能です。
なお、「資格期間」は厚生年金の加入期間だけが対象ではありません。学生のときや会社を辞めて無職だった場合など、国民年金だけに加入していた期間も合わせて計算されます。
厚生年金とは
「常時5人以上を雇用している事業所」に雇用されている70歳未満の従業員の全員が加入する年金です。
日本の年金は一戸建ての構造になぞらえて「3階建て」と呼ばれることがあり、厚生年金は2階部分に該当します。1階は日本国内に住む20~60歳未満の全員が加入する国民年金(基礎年金)、3階は個人や企業が拠出・運用をする私的年金です。
厚生年金は「労使折半」によって企業が半分を納付してくれるため、実際に納める保険料は半分で済みます。
国民年金との違い
1階部分の国民年金と、2階部分の厚生年金の違いをまとめると、以下の通りです。
国民年金 | 厚生年金 | |
---|---|---|
加入対象 | 日本国内に住む20~60歳未満の方 | 70歳未満の会社員や公務員など |
保険料 | 一律16,520円/月 ※令和5年度 |
所得によって異なる |
保険料の支払い者 | 加入者が全額負担 | 労使折半 |
最低加入期間 | 10年 | 1ヶ月 ※老齢基礎年金の受給要件を満たしていること |
支給開始年齢 | 65歳 | 65歳 |
将来の給付額 | 加入期間に応じて決まる | 所得と加入期間に応じて決まる |
厚生年金の受給額の計算方法
今回はもっとも利用されている「老齢厚生年金」の受給額の計算式を紹介します。
1.報酬比例部分
報酬比例部分は、年金の加入期間や過去の収入によって金額が決められる部分です。以下の計算式によって求められます。
報酬比例部分=A+B
A:2003年(平成15年)3月以前の加入分
「平均標準報酬月額 × 7.125/1000 × 加入月数」
B:2003年(平成15年)4月以降の加入分
「平均標準報酬額(賞与を含む) × 5.481/1000 × 加入月数」
2.経過的加算
一定の生年月日の男女が60歳から64歳までのあいだに受け取れる「特別支給の老齢厚生年金」は、定額部分と報酬比例部分に分かれます。
65歳になると報酬比例部分は「老齢厚生年金」に、定額部分は「老齢基礎年金」に相当しますが、老齢基礎年金よりも定額部分のほうがわずかに高い金額です。その差額を埋めるために、65歳以降から「経過的加算」が加算されます。
3.加給年金額
厚生年金保険の被保険者期間が20年以上の人が65歳になったときに、扶養する配偶者または子どもがいる場合に老齢厚生年金に加算される制度です。
生計を維持する人の年齢については、配偶者は「65歳未満」、子供は「18歳到達年度の末日までの子(または1級・2級の障害がある20歳未満の子)」と決まっています。
自動で加算されるわけではなく、受け取るには申請手続きが必要な場合がある点に注意が必要です。
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年金を受け取るために取るべき4つの方法
10年の資格期間を満たさないまま老後を迎えると年金を受け取れないため、できるだけ若いうちに対策をして「10年」を確保しましょう。
ここからは、資格期間を確保するための4つのポイントを紹介します。
方法1.国民年金の「任意加入制度」を利用する
すでに国民年金の加入義務を過ぎている人(60歳以上の人)の場合、60歳から65歳未満であれば国民年金の任意加入が可能です。
65歳に達した時点で受給資格期間が10年に満たないときでも、1965年(昭和40年)4月1日以前に生まれた人に限り、特例によって65歳以上70歳未満まで任意加入し続けることもできます(高齢任意加入制度)。
方法2.カラ期間(合算期間)がないかを確認する
人によっては、「過去に年金制度に加入していなかった」「会社員の配偶者だった」といった期間(カラ期間)もカウントに含められる可能性があります。
これらの期間を含めれば、年金を受給できる可能性があります。自分にカラ期間があるか分からない場合は、年金事務所まで相談してみてください。
方法3.扶養から外れる場合は「特定期間該当届」を提出する
会社員である配偶者が退職したり、扶養されている人の年収が増えて扶養から外れたりした場合、国民年金の第3号から第1号への切り替えが必要です。
3号から1号への切り替えが必要になるケース
●会社員の夫が
・退職した
・脱サラして自営業を始めた
・65歳を超えた
・亡くなった
●会社員の夫と離婚した
●妻自身の年収が増えて夫の健康保険証の被扶養者から外れた 等
引用元:日本年金機構|年金Q&A (主婦(主夫)年金の改正)
過去に2年以上切り替えが遅れたことがある場合、切り替えが遅れた期間の記録が未納期間になっているため注意が必要です。
過去に切り替え漏れがあった場合、その部分について「特定期間該当届」を提出しましょう。年金を受け取れない事態を防止でき、納付する保険料金額が増加することで、将来に受けとる年金額を増やすことも可能です。
方法4.可能なら過去の未納分を「追納」する
国民年金の未納分のうち、可能な分は「追納」をして未納額を少しでも減らしましょう。
「追納」とは、免除・猶予制度を受けた期間や、保険料を納めていなかった期間の保険料を、後から納付することで年金額を増やせる制度です。
何の申請もせずに納付していなかった単なる未納状態の年金は過去2年分までしか追納できませんが、保険料の免除や猶予制度の対象者に限り、追納が認められた月からさかのぼって10年分の保険料なら追納できます。
まとめ:厚生年金の資格期間は国民年金も含めて「10年」を目標にする
厚生年金の資格期間が10年に満たない場合は、将来的に老齢年金を受給できないことは事前に把握しておきましょう。資格期間が1ヶ月でも不足していると受給できません。
何回も転職している方や厚生年金が適用されない企業に勤めていたなど、保険料の納付状況に不安がある場合は、日本年金機構の「ねんきんネット」、または毎年の誕生月に届く「ねんきん定期便」で年金の履歴を確認してみましょう。
年金の記録は非常に膨大であり、自分で記録をつけていたとしても管理することは大変です。絶対に間違いない資格期間を把握するためにも、日本年金機構からの通知には目を光らせておきましょう。