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家計

勤めている会社にライフプラン手当(選択制DC)があるという人は、ライフプラン手当がどのようなものか知りたいと考えていることでしょう。

ライフプラン手当(選択制DC)とは、老後の資産形成を支援するための年金制度の一部です。ライフプラン手当を利用すれば、税金や社会保険料を抑えながらお得に老後の資産形成が可能です。

しかし、出産・育児・傷病休職・失業時などに受けられる社会保障の給付額が下がることは知っておかなければなりません。

本記事では、ライフプラン手当のメリットやデメリット、そしてライフプラン手当で企業型DCに拠出すべきなのかについて、具体的なシミュレーション結果をもとに解説します。ぜひ将来の家計を考えるために参考としてください。

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ライフプラン手当とは?

ライフプラン手当とは、給料の一部を企業型確定拠出年金(企業型DC)に拠出するかどうかを選択できるものです。

DC(確定拠出年金)の中では、通常の企業型DCに対し、選択制企業型DCやライフプラン支援制度と分類され、手当自体はシニアライフプラン手当やライフプラン支援金、ライフプラン年金とも呼ばれます。

企業型確定拠出年金(企業型DC)とは?

企業型確定拠出年金(企業型DC)とは、会社のお金で将来の年金のために投資できる制度です。具体的には、会社が月額5.5万円を限度に拠出し、従業員自身が投資信託などの商品を選びながら運用します。原則として60歳以降に、拠出額と運用益の合計額を受け取れます。

参照:厚生労働省「確定拠出年金制度の概要」

要約すると、給料の一部を、将来のために運用した後で受け取るか、給料として今受け取るかを選べるものです。

なお同じ企業型DCでも、ライフプラン手当は形式上事業主拠出で、マッチング拠出は従業員拠出という点で性質が異なります。

ライフプラン手当のメリット

まずは、ライフプラン手当のメリットを確認していきましょう。

ライフプラン手当で企業型DCに拠出する場合、給与とみなされないため、税金と社会保険料を抑えることができます。給与とみなされないとはいえ、将来的には拠出額と運用損益を含めて受け取れるお金です。

つまり、企業型DCに拠出した金額は税金と社会保険料の負担が軽減された上、資産として運用できる点が非常に大きなメリットといえます。

その他の私的年金制度では、税金と社会保険料が天引きされた後に拠出します。掛金が所得控除の対象となっているため年末調整や確定申告の後に税金は還付されるものの、社会保険料は抑えられません。

その他、確定拠出年金共通のメリットとして、運用益が非課税で受取時も税金の負担を軽減できるという点があります。

ライフプラン手当2つのデメリット

ライフプラン手当で企業型DCに拠出すると、税金と社会保険料を引かれずに運用できるメリットがありました。しかし、デメリットもあります。

社会保障給付が減ってしまう

ライフプラン手当で企業型DCに拠出すると、給与が減るため、給与を計算基礎とする社会保障給付が減ってしまいます

厚生年金保険 健康保険 労働保険
老齢厚生年金 傷病手当金 労災給付
障害厚生年金 出産手当金 失業給付
遺族厚生年金   育児休業給付金
    介護休業給付金

ただし、企業型DC(私的年金)は厚生年金(公的年金)の上乗せという位置づけです。拠出して給与が減ると公的年金の給付も減りますが、拠出した分、確定拠出年金の給付が増えます。

すると、実質的には健康保険や労働保険(雇用保険と労災保険)の給付が影響するわけですから、影響の程度については以下のように考えても良いでしょう。

  • 出産・育児・介護で会社を休む予定がなく、定年退職までの期間が短い人は影響が少ない
  • 出産・育児・介護で会社を休む予定があり、定年退職までの期間が長い人は影響が大きい

現役期間が長い人ほど、労災や失業、傷病休職のリスクが高いためです。

なお、拠出前後で標準報酬月額が同じなら、厚生年金保険と健康保険の保険料や給付額は変わりません。例えば月収42万円の人が月額2万円拠出して月収40万円となっても、標準報酬月額はどちらも41万円です。

参考:全国健康保険協会(協会けんぽ)「令和3年度保険料額表(東京)」(PDF)

60歳になるまで受け取れない(流動性)

企業型DCに限らず、確定拠出年金は、原則として60歳になるまで受け取れません。

そのため、「今の手取りを増やす」のか、「老後の資産運用をする」のか、自分にあった方法を検討する必要があります。

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ライフプラン手当でDCに拠出すべきかシミュレーション

企業型DCに拠出すると、税金と社会保険料の負担を軽減しながら老後資産を運用できます。しかし、給付金は60歳になるまで受け取れず、社会保障の給付額が減ってしまうというデメリットがありました。

簡単にこれらの関係をまとめたものが以下です。

  • 利益:拠出した分、税金と社会保険料が発生しない
  • 利益:拠出した分、企業型DCで収益を上げられる可能性がある
  • 損失:拠出した分、将来の老齢厚生年金が減る
  • 損失:拠出した分、その他社会保障の給付が減る

以降では、月収40万円(年収480万円)の人が、月額2万円のライフプラン手当を企業型DCに拠出した場合としない場合をシミュレーションしていきます。

①税金と社会保険料の削減効果

1年間の税金や社会保険料の関係は以下のとおりです。

  拠出しない場合 拠出した場合
年収 ¥4,800,000 ¥4,560,000
月収 ¥400,000 ¥380,000
健康保険料 ¥286,344 ¥265,392
厚生年金保険料 ¥450,180 ¥417,240
雇用保険料 ¥14,400 ¥13,680
所得税 ¥71,900 ¥64,800
住民税 ¥153,400 ¥139,600
手取り ¥3,823,776 ¥3,659,288
積立資産 ¥0 ¥240,000
手取り+積立資産 ¥3,823,776 ¥3,899,288

※40歳以上で、配偶者1人と高校生の子1人を扶養していると仮定
※健康保険料は介護保険料を含む
※健康保険料の計算は、協会けんぽ東京支部の令和3年度保険料額表(PDF)を使用

以上より、ライフプラン手当で企業型DCに拠出すると、手取りは約16.45万円ほど減りますが、積立資産を考慮すると約7.55万円ほど多くなります(すべて年額)

この差は、税金と社会保険料の負担を抑えた部分です。

仮に40歳から60歳まで20年間拠出したとすると、「年額7.55万円×20年=151.00万円」の税金と社会保険料の負担が軽減されます。

②拠出分の企業型DC運用成果

次に、拠出した企業型DCの運用成果を試算します。

金融庁のシミュレーション(PDF)によれば、20年間の長期積立分散投資をしたときの投資収益率は、少なくとも年率2%です。

そこで毎月2万円を240ヶ月(20年間)拠出すると、年率2%の仮定で、積立総額(運用益含む)は以下のように試算できます。

毎月積立額20,000円×(((1+(年率2%/12月))^240月)-1)/(年率2%/12月)=589万5,937円

参考:金融庁「資産運用シミュレーション」

積立総額589万5,937円から元本480万円を差し引くと、運用益は109万5,937円となります。

複雑な計算式ですが、表計算ソフトでは「fv(将来価値)」関数を使って計算可能です。

③老齢厚生年金減額分

老齢厚生年金(報酬比例部分)の計算式は、大まかには下式のようになります。

{平均標準報酬額(再評価後)×0.005769×被保険者期間月数}×0.999

参照:日本年金機構「老齢厚生年金(昭和16年4月2日以後に生まれた方)」

ただし、実際には期間ごとに賃金や物価の上昇率に応じた再評価率を乗じて求めるため、本試算は概算です。

老齢厚生年金(昭和16年4月2日以後に生まれた方)

平均標準報酬額は拠出額の2万円として、再評価率は0.900(2021年4月~2022年3月)に固定、期間は40歳から65歳までの300ヶ月とすると、以下のとおりです。

{平均標準報酬額(拠出有無の差額)2万円×再評価率0.900×0.005769×被保険者期間300月}×0.999=3万1,121円

参照:日本年金機構「年金額の計算に用いる数値」

仮に65歳時点の平均余命を簡易生命表をもとに20年とすると、拠出による減額分は以下のようになります。

1年あたり減額分3万1,121円×20年=62万2,420円

参考:厚生労働省「主な年齢の平均余命」(PDF)

今回は65歳から85歳まで生きることを前提としましたが、85歳以降、長生きすればするほど減額分は大きくなってしまいます。

④その他社会保障給付の減額分

少し極端ですが、出産・育児・傷病休職による休業と失業をすべて経験する前提で計算します。

給付減額分は大まかに「拠出額×67%×受給月数」で求められるため、受給月数を以下のように仮定すると(合計46ヶ月)、拠出額2万円による減額分は61万6,400円です(概算)。

  • 産前産後休業(健康保険の出産手当金):3ヶ月
  • 育児休業(雇用保険の育児休業給付金):20ヶ月
  • 傷病休職(健康保険の傷病手当金):18ヶ月
  • 失業(雇用保険の失業給付における基本手当):所定給付日数5ヶ月(150日)

健康保険組合によっては、出産手当金と傷病手当金は平均標準報酬月額の85%まで支給されるなど付加金がある場合もあります。その場合は影響が大きくなるため、注意しておきましょう。

シミュレーションまとめ

まとめると以下のとおりで、ライフプラン手当に拠出したほうが、136万7,117円お得となりました

  • 税金と社会保険料の削減効果:151万円(手取り減額▲329万円+拠出合計額480万円)
  • 拠出分の企業型DC運用成果:109万5,937円
  • 老齢厚生年金減額分:▲62万2,420円
  • その他社会保障給付の減額分:▲61万6,400円
  • 利益-損失:136万7,117円

仮に企業型DCに拠出して積立てただけ(運用益0)であっても、税金と社会保険料の削減による利益が大きいといえます。

ただし、本シミュレーションはあくまでも概算です。以下の点に注意し、参考情報として活用してください。

  • 本試算では所得税率5%であり、高所得者はさらに税金の削減効果が高くなる
  • 拠出額によっては標準報酬月額が変わらず、社会保障給付の減額と社会保険料の削減影響を受けない
  • 企業型DCの運用成果は、本試算より高い場合も低い場合もある
  • 実際の老齢厚生年金(報酬比例部分)の計算は、賃金や物価などの変動により変わる

まとめ:ライフプラン手当をうまく利用して老後に備えましょう

ライフプラン手当は、企業型DCに拠出し運用するか、給与として受け取るかを選べる選択制の企業型DCです。

今回のシミュレーションでは、出産・育児・傷病・失業・老齢による社会保障給付の減額より、拠出による税金や社会保険料の削減効果と企業型DCの運用成果のほうが高くなりました

また、今後のライフプランによっては、社会保障給付を受ける可能性が低い人もいるでしょう。さらに、高所得者は所得税率が高いため、今回のシミュレーションより節税効果は高くなります。

ただしその一方で、60歳までに受け取る金額は少なくなってしまい、物価上昇(インフレ)で価値が目減りするリスクがあります。現役時代の手取りをより多くして、自己投資などで収入を得る力を上げたほうが良いと考える人もいるでしょう

これらの点を踏まえ、ライフプラン手当で企業型DCに拠出するかどうかは、以下のように検討してみてはいかがでしょうか。

  • 生活を圧迫しない程度に拠出する
  • 標準報酬月額が変わらない範囲で拠出する
  • 出産や育児が終わったら拠出する
  • 子どもの学費が工面できたら拠出する
  • 高所得者などで社会保障に頼る必要がないなら拠出する
  • 老後より現役時代のお金を増やしたいなら拠出しない

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