ひとり親家庭に支給される児童扶養手当には所得制限があります。所得によって手当の有無や支給額が決まりますが、「所得制限はいくら?」「所得によって支給金額はどれだけ違う?」「養育費をもらっている場合、所得の計算方法は?」など、疑問を持つ人もいるでしょう。
今回の記事では、児童扶養手当を受給できる所得金額を中心に解説します。所得の計算方法も紹介しますので、自分が支給対象になっているかどうかを確認しましょう。児童扶養手当は自分で手続きしないともらえないので、該当していればすぐに申請手続きしましょう。
児童扶養手当とは
児童扶養手当は、児童扶養手当法に定める国から「ひとり親」への給付金です。元々は収入の少ない母子家庭に対する給付金でしたが、2010年からは父子家庭も支給対象になりました。
また、児童扶養手当と混同されやすい国の子育て支援給付に「児童手当」がありますが別のものなので以下のページで確認しましょう。
児童扶養手当の対象者
児童扶養手当は、子どもを育てるひとり親に支給されます。対象となる子どもの年齢条件は次の通りです。
- 18歳に達する日以降の最初の3月31日までの子ども(高校卒業前の子どもなど)
- 一定以上の障害の状態にある場合は20歳未満の児童
児童扶養手当を受け取る場合、次の状態にある子どもを養育するひとり親などです。孤児の養育者なども要件に該当すれば手当を受給できます。
- 父母が離婚して、父または母と生計を同じくしていない子ども
- 父または母が死亡した子ども
- 父または母が政令で定める障害の状態にある子ども
- 父母が不明な子ども(棄児) など
(参考)児童扶養手当の受給状況
2015年度末の受給者は100万名以上で、母子世帯がその9割近くを占めます。また、母子世帯となった原因の大半は離婚によるものです。
児童扶養手当の受給者数:
受給者数 | うち.離婚が原因 (受給者数に占める割合) |
|
---|---|---|
母子世帯 | 94万4,309名 | 82万9,066名(87.8%) |
父子世帯 | 6万0,537名 | 5万2,798名(87.2%) |
その他の世帯 | 3万2,799名 | - |
合計 | 103万7,645名 | - |
児童扶養手当の支給額
児童扶養手当の支給額は、ひとり親の所得によって「全部支給」と「一部支給」に分かれます。また、子どもが2人以上いれば加算されます。
児童扶養手当の月額支給額:
子どもの数 | 全部支給 | 一部支給 |
---|---|---|
子ども1人 | 4万3,160円 | 4万3,150円~1万0,180円 |
子ども2人(加算) | 1万0,190円 | 1万0,180円~5,100円 |
子ども3人以上 (1人当たりの加算) |
6,110円 | 6,100円~3,060円 |
※支給額は物価スライドで毎年改定される。
参考:横浜市「児童扶養手当」
児童扶養手当の年収の目安と所得制限
児童扶養手当には所得制限があり、所得によって手当は「全部支給」「一部支給」「不支給」の3つに分かれます。
ひとり親(全部支給・一部支給)の年収の目安と所得制限
ひとり親に児童扶養手当が支給される所得の限度を、「所得制限限度額」といいます。限度額と収入の目安は次の通りです。
児童扶養手当の所得制限限度額と収入の目安:
子どもの数 | 全部支給 | 一部支給 | ||
---|---|---|---|---|
所得制限限度額 | 収入の目安 | 所得制限限度額 | 収入の目安 | |
0人(※) | 49万円 | 122.0万円 | 192万円 | 311.4万円 |
1人 | 87万円 | 160.0万円 | 230万円 | 365.0万円 |
2人 | 125万円 | 215.7万円 | 268万円 | 412.5万円 |
3人 | 163万円 | 270.0万円 | 306万円 | 460.0万円 |
4人 | 201万円 | 324.300万円 | 344万円 | 507.5万円 |
5人 | 239万円 | 376.3万円 | 382万円 | 555.0万円 |
※「子ども0人」は、前年末に子どもが生まれていないケースなど
孤児の養育者の年収の目安と所得制限
孤児の養育者などに対する所得制限は、ひとり親に対する制限よりも緩く設定(所得制限限度額が高い)されています。
孤児の養育者などに対する所得制限限度額と収入の目安:
子どもの数 | 所得制限限度額 | 収入の目安 |
---|---|---|
0人 | 236万円 | 372.5万円 |
1人 | 274万円 | 420.0万円 |
2人 | 312万円 | 467.5万円 |
3人 | 350万円 | 515.0万円 |
4人 | 388万円 | 562.5万円 |
5人 | 426万円 | 610.0万円 |
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児童扶養手当の年収の計算方法
児童扶養手当の「所得制限限度額」について、所得より逆算した「収入の目安」を紹介しましたが、自分が手当をもらえるかどうかは収入から所得を計算して判断します。以下で、収入から所得を計算する方法を解説します。
基本的な計算方法
児童扶養手当で使う所得の計算式は次の通りです。
所得の金額=(収入-必要経費)+(養育費相当分)-8万円-諸控除
(収入-必要経費)は、所得から所得に応じて設けられた控除を差し引いた金額です。給与所得者なら、(給与-給与所得控除)で計算できます。また、「8万円」は児童扶養手当の所得を計算するときにすべての人が一律に控除される金額です。
また、養育費相当分は養育費の8割となります。
養育費の取り扱いや諸控除の計算については後述します。上記の加減算で算出した所得が、所得制限限度額未満ならば手当が支給されます。
所得は前年度(1月から12月)の収入から算出し、その年度(11月から翌年の10月まで)の児童扶養手当に反映します。また、手当は年6回奇数月に2か月分(11月・12月分は1月支給)ずつ支給されます。
養育費の計算(所得への加算)
養育費とは、養育費や仕送り、生活費、家賃、教育費など、子どもの養育に関わる経費として支払われた金銭や有価証券(小切手や株券など)のことです。
所得税の計算において養育費は所得とは見做されませんが、児童扶養手当の計算上は収入と同様に加算要因になります。ただし、受け取った養育費全額を加算するわけではなく、養育費の8割を加算して計算します。
諸控除の金額(所得からの減算)
諸控除とは、所得を計算する時に収入から差し引ける費用のことです。主な控除は次の通りです。控除金額によって手当の金額が増減することもあるので、漏れのないように確認しましょう。
- 障害者控除:27万円
- 特別障害者控除:40万円
- 勤労学生控除:27万円
- 小規模企業共済等掛金控除:地方税法で控除された額
- 配偶者特別控除:地方税法で控除された額
- 医療費控除:地方税法で控除された額 など
【状況別】児童扶養手当のシミュレーション
本章では、児童扶養手当を状況別にシミュレーションします。
- 児童1人・給与所得控除後150万円・養育費月5万円
- 児童1人・給与所得控除後250万円・養育費なし
本章では、上記の2例を取り扱います。また、計算式は以下のものを使用します。
児童1人のときの月額
=一部支給の上限額-(受給資格者の所得額–全部支給の場合の所得制限限度額)×所得制限係数
それぞれ詳しく見ていきましょう。
児童1人・給与所得控除後150万円・養育費月5万円
児童1人・給与所得控除後150万円・養育費月5万円の場合、以下のような計算式となります。
受給資格者の所得額=年間の養育費×0.8+給与所得控除後の金額
=60×0.8+150
=198(万円)
198万円が児童1人あたりにおける所得上限の金額であり、全部支給は87万円未満、一部支給は230万円未満となります。所得額は、全部支給の所得上限を超えてしまうため、全部支給は受けられません。一方、所得額が一部支給の所得制限限度額を下回るため、一部支給が受けられます。
よって児童1人のときの月額は以下のようになります。
児童1人のときの月額=4万4,130-(198万–87万)×0.0230559
=1万8,537円
児童1人のときにもらえる児童扶養手当は、1万8,537円です。
計算はあくまで参考の一例であり、具体的な手当の額は各自治体や所得の変動、家族の状況などにより異なります。
児童1人・給与所得控除額後250万円・養育費なし
児童1人・給与所得控除後250万円・養育費なしの場合を計算します。
所得額は、養育費がないため、250万円です。
児童1人の場合の所得制限限度額は、全部支給額87万円未満、一部支給230万円未満なので、所得額が上回っていることがわかり、支給の対象外となります。
まとめ:児童扶養手当の有無を判断するために所得の計算をしましょう
児童扶養手当は、国から低収入のひとり親(父または母)などへの給付金です。ひとり親家庭の生活支援などを目的に設けられたため、所定の所得制限限度額以上の所得がある人はもらうことができません。
手当をもらうことができるかどうかを判断するには、ひとり親の所得を正しく計算する必要があります。ここでの判断の参考となるひとり親の所得は、所得税の計算基礎となる所得とは、養育費の取り扱いや一律8万円の控除など、計算方法が少し異なるため注意が必要です。
申請が遅くなると手当の受給も遅れるため、受給できるかわからずに手続きを躊躇している人は、すぐに地方自治体の相談窓口で相談しましょう。