買い物をしていて「実質値上げ」がされていることに気づいたことはないでしょうか。実質値上げとは、価格はそのままなのにサイズや量を小さくして、実質的に値上げ(同じ量当たりの値段が高くなっている)をすることをいいます。実質値上げを見つけると、良い印象を持たない人も多いのではないでしょうか。
しかし実は、企業からすると「値上げしないための努力はすべてやったけど、どうしても実質値上げをしなければならなくなった」という状況もあります。
本記事を読むと、実質値上げとは何か、実質値上げが行われる理由、消費者としてどのように対応すべきかなどがわかります。
ぜひ実質値上げを理解し、家計を守るための参考としてください。
実質値上げ(ステルス値上げ)とは?
実質値上げとは、価格を変えずに内容量を減らすことをいいます。
さらに、近年目立ったのが、価格を据え置いたまま内容量を減らす「実質値上げ」(ステルス値上げ)です。
引用元:消費者庁「実質値上げ(ステルス値上げ)に関する消費者の意識(物価モニター調査結果より)」
内容量 | 値段 | 単価(1g当たり) |
500g | 500円 | 1.00円 |
450g | 500円 | 1.11円 |
例えば上表のように、値段が同じでも内容量が減ると、1g当たりの単価が増えます。これが実質値上げです。
消費者庁もかっこ書きで「ステルス値上げ」と記載しているとおり、実質値上げはステルス値上げと呼ばれることもあります。「ステルス」が付く言葉として、「ステルス戦闘機」があります。ステルス戦闘機はレーダーで検知されないため、ステルスとは「気付かれない」という意味だと考えて良いでしょう。
また、ステルスマーケティング(ステマ)も消費者に気付かれないように商品を宣伝する行為をいいます。
つまりステルス値上げは、消費者に気付かれないように値上げをすることです。
実際には、実質値上げに際して企業が消費者に告知する場合もあります。その場合にはステルス値上げと呼ぶのは適当ではないかもしれません。
また、実質値上げを経済現象として表現するときは、シュリンクフレーションといいます。
なぜ実質値上げがされるのか?
価格を変えずに内容量を減らすことが実質値上げですが、なぜ実質値上げがされるのでしょうか。企業側の事情が表に出ることは少ないですが、以下4つの理由が考えられます。
- 理由①円安が進み原材料費が高騰したため
- 理由②値段より量で調整すると消費者離れを防げるため
- 理由③世帯人員が減少しているため
- 理由④値上げしなければ賃上げもできないため(人件費)
理由①円安が進み原材料費が高騰したため
考えられる理由の1つ目は、円安が進んで原材料費が高騰したためです。当然、材料費が高くなれば商品を作るための費用も高くなり、同じ値段で商品を売れば利益が少なくなってしまいます。
下表のように、円安になると同じ5ドルの材料を買うにも500円から600円と高くなってしまいます。
円高(ドル安) | 円安(ドル高) | |
為替レート | 1ドル100円 | 1ドル120円 |
5ドルの材料費 | 500円 | 600円 |
売価 | 800円 | 800円 |
粗利益 | 300円 | 200円 |
※加工費・物流費・その他人件費等は未考慮
円安になっても利益を確保するためには、その他様々なところでコストを抑えなければなりません。
しかしコスト削減にも限界がくると、利益を確保するためには原材料費の高騰を売価に上乗せするか、実質値上げをせざるを得ません。
理由②値段より量で調整すると消費者離れを防げるため
2つ目の理由は、値段より量で調整すれば、消費者離れを防ぎやすいためです。先ほど紹介したように、材料費が高くなれば利益が減ってしまいます。
利益を得るためには値段を上げるのが手っ取り早い方法だと考えられますが、値段を上げると消費者が買わなくなってしまうかもしれません。
そこで、値段ではなく量を減らせば、消費者は実質値上げに気付く可能性が少なくなります。
実質値上げがされているのは、このような消費者心理をついているというのが理由の1つです。
理由③世帯人員が減少しているため
消費者心理をついて実質値上げするという理由だけでは、やはり企業に対して「不誠実」というイメージを持ってしまうでしょう。
しかし、現在は世帯人員が減少しているため、需要にあわせて内容量を減らしている場合もあります。例えば野菜や果物、精肉などの生鮮食品は新鮮さが求められるため、一度に買う量は世帯人員(消費量)に応じて変わるでしょう。
現在は世帯人員が減少傾向にあるため、大容量商品は購入されず、小容量商品が購入されやすい状況だといえます。そのため企業側が、消費者のニーズに合わせて、内容量の少ない商品に徐々に変更していったということも考えられます。
理由④値上げしなければ賃上げもできないため(人件費)
考えられる理由の4つ目は、実質的にでも値上げしなければ、企業は従業員の給料を上げることができないという理由です。
企業にとっては、利益がなければ給料や賞与などの人件費を上げることはできません。さらに、給料を上げることは一時的な経費の増加ではないため、今後の事業見通しが良くなければ、賃上げに踏み切ることはなかなか難しいのです。
例えば、利益が上がらなくても株式を発行したり借入金を増やしたりすれば賃上げの財源にすることもできますが、結局は利益を上げなければ投資家や融資元に返せません(利益の還元・返済)。
そのため、いくら賃上げを求められても、一度賃上げをすると下げることは難しく、企業にとっては慎重な判断をしなければなりません。とはいえ、従業員の暮らしを守るのも企業が担う社会的責任の1つです。
以上のような状況を踏まえ、賃上げに向けて安定した利益を得るために実質値上げがされている場合もあるでしょう。
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実質値上げにはどう対応すればいい?
実質値上げされると、当然、消費支出が多くなり家計を圧迫します。それでは、どう対応すれば良いのでしょうか。
以降では、実質値上げに対応する方法3つを紹介します。
- 対策①同じ商品は単価で比較する(消費視点)
- 対策②現金以外の資産で運用を始める(インフレ視点)
- 対策③収入源を増やす(可処分所得視点)
対策①同じ商品は単価で比較する(消費視点)
実質値上げに対する直接的な対策は、買い物するときに値段ではなく単価で比較することです。
商品の価格は「単価×数量」ですから、単価は「価格/数量」で計算できます。また、商品ではなくサービスであれば、「料金/時間」で時間単価を比較しても良いでしょう。
このように単価で比較すれば、内容量を減らして実質値上げされていても気付くことができ、よりお得な商品を探すことができます。
対策②現金以外の資産で運用を始める(インフレ視点)
実質値上げに対する間接的な対策となりますが、現金以外の資産で運用を始めると良いでしょう。
実質値上げは物価が上昇している(インフレ)ことを示しており、同じ1万円でも買える量が少なくなってしまいます。つまり、お金(現金)の価値が減ってしまうのです。
そこで、物価上昇(インフレ)には現金を他の資産に変えて運用することが1つの対策となります。
例えば、物価が上昇すると一般的に企業の売上高も上がるとされるため、株式投資を始めるのも1つの手です。株式に投資する株式投資信託や、不動産投資でも良いでしょう。
対策③収入源を増やす(可処分所得視点)
実質値上げだけを考えると、物価が上昇し、お金の価値が減ります。そのため、収入源を増やしながら収入を増やすことも対策の1つです。
物価上昇に負けない資産運用とともに、副業や兼業などを通じて収入を増やすことも検討すべきでしょう。
まとめ:実質値上げへの対応を検討しましょう
実質値上げとは、価格を変えずに内容量を減らすことです。消費者に告知せず、気付かれないように実質値上げを行う場合はステルス値上げと呼ばれ、このような経済現象はシュリンクフレーションと呼ばれます。
消費者からすると、実質値上げは隠すように値上げしていると感じ、良いイメージを持てないかもしれません。しかし企業にとっては、コスト削減の努力を最大限行ったうえで、苦肉の策として実質値上げ(ステルス値上げ)を行わざるを得なかった背景も考えられます。
いずれにしても、実質値上げをぼんやりと眺めていても良いことはありません。以下のような対策をしながら、生活が苦しくならないような対策を検討してみてはいかがでしょうか。
- 買い物の際は、値段ではなく単価で比較する
- 物価上昇への対策として、現金以外の資産を運用する
- 副業や兼業などで収入源を多角化し、収入を増やす