- 「ドル建て保険って円安や円高で損するのかな?」
- 「今解約したほうがいいのか、それとも続けたほうがいいのか迷っている」
- 「メリットとデメリットを整理して、自分に合っているか知りたい」
このように考えている方もいるでしょう。
結論から言うと、ドル建て保険は為替の影響を強く受けるため、加入や解約を判断する際にはメリットとデメリットを冷静に比較することが大切です。
具体的には以下のとおりです。
メリット | 米ドルや豪ドルの高金利を活かして資産を積み立てられる 円安時には受取額が増える可能性がある |
---|---|
デメリット | 円高のときには返戻金が目減りする 解約のタイミングによっては元本割れや損失が発生する |
本記事では「ドル建て保険の仕組み」「円安・円高による具体的な影響」「解約判断の基準」「税金の取り扱い」まで初心者でも理解できるよう整理しています。
ドル建て保険が気になっている方、すでに加入していて解約を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。
ドル建て保険とは?円安・円高の影響を受ける仕組み

まずはドル建て保険の仕組みを始め、円安・円高の影響を受ける仕組みについて解説します。
米ドル・豪ドルなど外貨で運用される生命保険
ドル建て保険は、米ドルや豪ドルといった外国のお金で運用されるタイプの保険です。
毎月の保険料や、将来受け取る保険金の金額は外貨で計算されます。
円安は保険料が高いが受取額増える
円安が進行すると、同じだけの外貨を用意するのに、より多くの日本円が必要になります。
たとえば、10万ドルをまとめて払う保険に入る場合、1ドル=100円なら1,000万円で済みますが、1ドル=150円だと1,500万円かかってしまいます。逆もしかりで、将来の保険金を受け取り時には円安が有利に働く可能性があります。
払込時には不利に見える円安ですが、将来の受取においてはプラスに作用する可能性を持つことが魅力のひとつです。
円高は保険料が安いが返戻金目減り
円高のときは、同じ金額の外貨を用意するのに必要な円が少なくて済むので、保険料の負担が軽くなります。
仮に10万ドルをまとめて払う場合、1ドル=80円なら800万円で済みます。1ドル=100円なら1,000万円です。円安のときと比べると大きな差が出るため、契約時にはおトクに感じやすいかもしれません。
ただし、将来保険金を受け取るときにも同様に注意が必要です。場合によっては払込額を下回る「元本割れ」が生じるリスクも否定できません。
為替の変動によって結果が大きく変わることを十分に理解しておく必要があります。

ドル建て保険の主な種類

ドル建て保険未加入の方に向け、主な種類と特徴を紹介します。
終身保険は一生涯の保障だが返戻金は変動
ドル建て終身保険は、被保険者が亡くなるまで死亡保障が継続する保険商品です。
契約時に定めた保障額が外貨で保証されるため、長期的な備えとして活用できるのが特徴です。
ただし、途中で解約したときに戻ってくるお金(解約返戻金)は、為替レートの影響を受けます。保障内容そのものは変わらないものの、円に換算した場合の返戻金額は市況に左右されるのです。

養老保険は満期と死亡保障が同額だが為替リスクあり
ドル建て養老保険は、10年満期や20年満期など所定の契約期間が満了すると満期保険金を受け取れる商品です。
万が一のときでも、満期まで生きた場合でも、同じ金額が支払われるように設計されています。
ただし、受け取るときに円に換える必要があり、その金額は為替レートによって変わってきます。

個人年金保険は老後資金になるが円高で目減り
ドル建ての個人年金保険は、コツコツ積み立てたお金を将来年金のように分けて受け取る保険です。
一般的に円建てよりも利率が高く設定されていることが多く、老後資金を長期的に形成したい方に利用されています。
ただし、年金として受け取るときには、外貨を円に換える必要があります。円高が続いていると、そのぶん受け取れる円の金額が減ってしまうこともあるため注意が必要です。

ドル建て保険の契約方法別の特徴

主なドル建て保険の契約方法は以下のとおりです。
一時払いは為替次第で差が大きい
一時払いは、契約時にまとまった資金を一括払いする方式です。たいていは数百万円単位の金額を用意する必要があり、払ったあとはすぐに外貨での運用がスタートします。
予定利率が比較的高く設定されているため、効率的な資産形成が期待できる点が魅力です。一方で、契約時の為替レートが損益に直接影響を与える点には注意が必要です。
平準払い・前期前納は分散効果あるが保険料高い
平準払いは毎月または毎年ごとに保険料を支払う方法で、前期前納は数年分の保険料をあらかじめ一括で支払う方法です。
どちらも一度に全部払うわけではないので、支払うタイミングが分散され、円高や円安の影響を平均化できます。いわゆる「ドルコスト平均法」の考え方が働くので、為替が大きく動く時期にも安心しやすい支払い方です。
ただし、総支払額は一時払いに比べて高くなる傾向があります。支払期間中に円安が進行すると、その都度の支払額が円換算で増加し、結果的に負担が膨らむこともあります。
外資系の変額は利率+為替でダブルリスク
外資系の保険には、ドル建てで運用成果によって受取額が変わる「変額保険」があります。積み立てたお金を株や債券といった投資信託で運用し、うまくいけば返戻金や年金額が増えます。
一方で、運用成績が振るわない場合は元本割れのリスクもあります。さらに、受取時には為替レートの影響も受けるため、「運用」と「為替」の二重リスクが存在するのです。

ドル建て保険の円安・円高による影響をシミュレーション

ドル建て保険は、契約後の為替レートによって、支払う保険料や将来の受取額が大きく変わります。
ここでは「1万ドル契約」「毎月300ドルの支払い」を例に、1ドル=150円で契約した場合のシミュレーションを紹介します。
項目 | 円安(1ドル=170円) | 契約時(1ドル=150円) | 円高(1ドル=120円) |
---|---|---|---|
契約時の保険料 | – | 150万円 | – |
解約返戻金・満期金(1万ドルの場合) | 170万円(多く受け取れる) | 150万円 | 120万円(受取額が減る) |
毎月の支払額(300ドル) | 約51,000円(円安で負担増) | 約45,000円 | 約36,000円(円高で負担減) |
途中解約時 | 円安で解約すると、円に換算した金額が増えるため有利になることも(ただし元本割れの可能性あり) | – | 円高で解約すると、換算額が減って損を感じやすい |
契約時が150円と比較的円安水準なので、さらに円安に進んだ場合(170円)は解約・満期受取に有利です。一方で、円高に戻った場合(120円)には受取額が大きく目減りする可能性があります。

ドル建て保険は解約すべきか?損をしない判断基準

続いては、すでにドル建て保険に加入している方向けに解約の判断基準を紹介します。
途中解約は元本割れや大損リスクが高い
契約から数年以内に解約すると、解約返戻金が払込保険料を下回るのが一般的です。返戻率はおおむね70〜80%程度にとどまり、満額にはほど遠い金額しか戻ってきません。
さらに、解約するタイミングで円高が進んでいると外貨を円に換えるときに不利になり、受け取れる金額がもっと少なくなってしまいます。

円安解約は得にも損にもなる
契約したときより円安が進んでいれば、ドル建ての解約返戻金を円に換算したときの金額は多くなります。
しかし、円安局面では契約時の払込額自体が割高であった可能性が高く、実際には大きな利益が出ていないことも少なくありません。見かけ上は得をしているようでも、為替の影響を差し引いた実質的な損益はプラスマイナスゼロ、もしくはわずかな利益にとどまることも十分あり得ます。
「円安だから今がチャンス」と決めつけるのではなく、これまでの払込額や為替の動きをふまえて、総合的な視点で判断することが大切です。

満期後・払い済み継続は有利な場合あり
保険料を満期まできちんと払い終えたのに、今の為替レートのせいで、円に換算した金額が元本を下回ってしまっている状況では、すぐに解約してしまうのはもったいないかもしれません。
払い済みや据え置きに切り替えれば、新たな保険料負担は発生せず、保険契約自体は維持されます。

ドル建て保険のメリットとデメリット

ドル建て保険には、金利の高さや外貨での資産運用といった魅力がありますが、その一方で為替によるリスクや税金の注意点もあります。
主なメリット・デメリットは以下のとおりです。
項目 | メリット | デメリット |
---|---|---|
金利 | 米ドル・豪ドルは日本より高金利で、さらに金利上昇局面では効率的に資産を積み立てられる | 外貨金利が下落すれば、予定利回りも低下するリスクがある |
為替 | 円安時に受け取ることで、円換算額が増えやすい | 円高時は返戻金や年金が目減りし、元本割れの可能性がある |
資産分散 | 外貨建てで保有することで、円資産だけでなくインフレへの備えにもなる | 為替リスクを常に抱えることになる |
保障 | 死亡保障や医療保障を備えつつ、資産形成も可能 | 円建て保険に比べて保険料が高額になる傾向がある |
税制 | 条件を満たせば一時所得や相続税の優遇が活用できる | 為替差益が雑所得として課税される場合もあり、税負担が増えることがある |

ドル建て保険と他の資産運用・保険との違い

続いては、ドル建て保険と他の資産運用・保険との違いを以下に沿って解説します。
円建て生命保険との違い
円建て生命保険は、保険料の払込から保険金や解約返戻金の受取に至るまで、すべて日本円で完結します。
契約したときに決まっている金額を、将来そのまま受け取れるというわかりやすさと安定感が特徴です。
総じて、安定性を重視する場合は円建てが適しており、一定のリスクを許容してでもリターンを狙いたい方にはドル建てが向いていると言えるでしょう。
iDeCo・新NISAとの違い
iDeCoや新NISAは「投資でお金をふやすこと」が目的の制度です。株や投資信託を使って運用し、その利益に税金がかからないのがメリットです。
それに対して、ドル建て保険は「保障」がベースにある商品です。外貨で積み立てていきながら、万が一のときの死亡保障なども備えています。

ドル建て保険に関するよくある質問

ドル建て保険に関するよくある質問は以下のとおりです。
ドル建て保険は今はいるべきか?
為替リスクを理解し、資産を円に偏らせたくない人が分散の一部として利用するならおすすめといえるでしょう。
ドル建て保険で「儲かった」と感じるのはどんなケース?
返戻金が増えるのは為替が円安に進んだ場合です。たとえば1ドル=150円で契約し、満期時に1ドル=170円まで円安が進めば、同じドル額でも円に換算すると大きくなります。
ドル建て保険が「やばい」と言われる理由は?
元本割れが起こりやすい点が「やばい」と言われる一因です。解約のタイミングを誤ると払込額より大きく減って戻ることもあります。
外貨建保険の意味は資産分散?投資?生命保険?
外貨建て保険は生命保険としての保障を持ちながら、外貨での運用を行います。そのため投資の要素を含み、資産運用の一部として扱う側面もあります。
解約返戻金に税金はかかる?
払込額を上回った分は課税対象になります。一時金で受け取る場合は一時所得扱いとなり、50万円の特別控除が適用されます。
まとめ:メリットとデメリットを比較して冷静に判断しよう
この記事では、ドル建て保険の仕組みや円安・円高による影響、解約の判断基準について整理しました。
為替の動きによって受け取れる金額が増えることもあれば、逆に損を抱える可能性もあります。
大切なのは短期の損得に惑わされず、ライフプランと照らして判断することです。焦って解約するのではなく、まずは冷静にメリットとデメリットを見比べて、自分に合った形で資産を守ってください。