数ある金融商品のなかでも、社債を購入するメリットやデメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。
個人投資家にとっては、株式や債券(国債や社債)、投資信託など多くの金融商品から投資手段を選ばなければなりません。
そこで本記事では、社債の基本を確認しながら、社債のメリットとデメリットおよび注意点を紹介します。
この記事を読めば、ご自身の資産形成の考え方や価値観などに合わせて社債に投資すべきかどうか適切に判断することができます。ぜひ投資判断にお役立てください。
社債の基本を確認
それではまず、社債の基本を確認していきましょう。
社債とは、会社がお金を借りるときに発行する債券のことです。事業債と呼ばれることもあり、同じ債券であっても、個人向け国債よりも利率が高いという特徴があります。
発行会社としては、金融機関からお金を借りる借入金と違い、毎月の返済負担がありません。そのため、長期の事業資金として活用されます。
以降では、社債の種類や発行条件、どのような企業が社債を発行しているのかについて解説します。
社債の種類
社債の種類として、一般的なものには以下のようなものがあります。
- 普通社債:満期まで利子が支払われ、満期には償還金額が支払われるシンプルな社債
- 転換社債(CB債):一定の条件を満たせば株式に転換できる権利がある社債で、利率は低め
- 劣後債:発行会社が債務不履行に陥ったときに返済順位が低い社債で、利率が高め
なお証券会社が取り扱っている社債のなかには、仕組債と呼ばれる複雑なものも多くなっています。
仕組債は一般的な債券にデリバティブ要素を含むもので、特定の株価指数の変動などによって、償還金額が減ったり利子が減ったりする不確実性(リスク)が高いものです。リスクが高いかわりに、リターン(利率)も高めに設定されています。
社債の発行条件
会社が社債を発行する方法は、以下3通りの条件があります。
- 公募債:50人以上に募集および勧誘を行う方法
- プロ私募債:銀行など金融機関のみに発行する方法
- 少人数私募債:50人未満の会社関連者のみに発行する
上記より、一般に個人投資家が投資できる社債は、50人以上に募集がかけられる公募債です。
会社が公募債を発行するときは、投資家を保護するために以下のような情報開示(ディスクロージャー)の義務を負ったうえで発行されます。
- 有価証券届出書・通知書
- 目論見書
社債発行企業
社債を発行している企業は、どのような企業でしょうか。以前は、会社が発行する社債の多くが額面1億円や100億円などと多額なため個人向けではありませんでした。
しかし、最近では個人向け社債を発行する会社も増えてきました。個人向け社債を発行している企業の具体例は、以下のとおりです。
- 第41回SBI債(10万円 0.6%)
- ソフトバンクグループ第56回無担保社債(100万円 1.38%)
- トヨタ自動車第25回無担保社債(100万円 0.1%)
- イオンモール第27回無担保社債(100万円 0.39%)
- クレディセゾン第85回無担保社債(10万円 0.24%)
- 楽天カード第4回無担保社債(50万円 0.49%)
社債を購入する投資家のメリット
個人投資家が社債を購入するメリットは、以下の2点があります。
- 国債や預金と比べて利率が高い
- 転換社債(CB債)なら値上がり益も狙える
国債や預金と比べて利率が高い
社債は、国債や銀行預金と比べて利率が高めです。なぜなら、債券は一般に発行体の信用度に応じて利率が決まるからです。
例えば国債は国が発行しており年利率0.05%、ソフトバンクグループが発行した第56回ソフトバンクグループ無担保社債は、年利率1.38%となっています。
参考:ソフトバンクグループ株式会社「第56回及び第57回無担保普通社債の発行に関するお知らせ 」
メガバンクの定期預金金利は0.002%ですので、社債は国債や預金と比べて利率が高いことがわかります。
- 定期預金金利:年0.002%
- 個人向け国債:年0.050%
- ソフトバンク社債:年1.380%
転換社債(CB債)なら値上がり益も狙える
転換社債(CB債)なら、値上がり益も狙うことができます。
転換社債でなくとも値上がり益を狙うのは不可能ではありませんが、売ろうと思っても、なかなか買い手が見つからないこともあります。
一方、転換社債は株式投資と債券投資の両方の性質を持った社債です。一定の条件を満たせば、債券を株式に転換できる権利がついており、株価が上昇していれば値上がり益を得ることができます。
さらに、発行会社の株価が上がれば社債の価格も比例して上がる傾向があるため、債券自体を途中で売却して値上がり益を狙うことも可能です。
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社債を購入する投資家のデメリット
社債は利率が高めですが、リターンが大きいため、リスクやデメリットも相応に大きくなります。個人投資家が社債を購入するときのデメリットは以下のとおりです。
- そもそも社債は購入しにくい
- 最低投資金額もやや高め
- 元本割れリスクが高め
- 途中売却がしにくい(流動性が低い)
そもそも社債は購入しにくい
個人向けに発行されている社債は、社債全体の一部であり絶対数が少ないです。また、人気のある個人向け社債は、いつでも簡単に社債を購入できるというものではありません。
実際、証券会社のホームページから取扱銘柄や取扱実績などを見ると、社債の取り扱いはそれほど多くなく、タイミングを逃すと購入は難しいといえます。
最低投資金額もやや高め
社債は、個人向け国債や株式、投資信託と比べると最低投資金額がやや高めです。
- 投資信託:100円以上
- 個人向け国債:1万円以上
- 株式投資(ミニ株除く):数万円以上
- 社債:10万円以上
さらに社債は数年以上元本が返ってこないため、中長期投資を前提として、より慎重な投資判断が重要といえます。
元本割れリスクが高め
社債は、銀行預金や国債と比べると、以下のように元本割れリスクが高めです。
- 銀行預金:預金保険で元本1,000万円までと利息が保護
- 個人向け国債:元本と利子の支払いは国が責任を持って保護
- 社債:元本と利子は保証されておらず、債務不履行によって減額または全額返ってこないことがある
利率(リターン)が高い分、全額の償還可能性が低めであることには注意しておきましょう。
途中売却がしにくい(流動性が低い)
社債は、売却することが難しい場合があります。
例えばせっかく債券価格が上がって売却しようとしても、なかなか買い手が見つからずに売れない場合があります。
なかには「流通市場の不存在」として以下のように説明されている社債もあるため、途中売却を考えている場合は注意しておきましょう。
本社債を中途売却するための流通市場が形成されると想定することはできず、流通市場が形成された場合でも、かかる流通市場に流動性があるという保証はない。発行会社、売出人及びそれらの関連会社は現在、本社債を流通市場に流通させることを意図していない。 本社債に投資することを予定している投資家は、満期償還日まで本社債を保有する意図で、かつそれを実行できる場合にのみ、本社債に投資されたい。
引用元:SBIホールディングス株式会社「発行登録追補目論見書」(PDF)
社債を購入するときの注意点
社債のメリットとデメリットを解説してきました。これらを踏まえて社債を購入するときは、以下の2点に注意しておきましょう。
- 目論見書で信用格付けを確認する
- 格付けがない場合は専門家に相談するのが無難
目論見書で信用格付けを確認する
社債に投資するということは、発行会社にお金を貸すということです。お金を貸すときに注意したいのは、お金を貸す相手の返済能力や信用力であり、これらを確認しなければなりません。
その返済能力や信用力を最も手軽に判断する方法として、信用格付が参考になります。一般にBBBまでが投資適格格付とされ、BB以下は投機的格付とされています。
格付符号 | 定義 |
---|---|
AAA | 信用力は最も高い |
AA | 信用力は極めて高い |
A | 信用力は高い |
BBB | 信用力は十分だが、注意すべき要素がある |
BB | 信用力は当面問題ないが、十分注意すべき要素がある |
B | 信用力に問題があり、絶えず注意すべき要素がある |
CCC | 債務不履行に陥っているか、またはその懸念が強い回収が十分には見込めない可能性がある |
CC | 債務不履行に陥っているか、またはその懸念が極めて強い回収がある程度しか見込めない |
C | 債務不履行に陥っており、債権の回収もほとんど見込めない |
格付は絶対ではないものの、プロが評価したという点で参考にできるもので、債券市場への影響は大きいものです。信用格付は、証券会社の商品ページや目論見書に記載されていることがあるため、確認しておきましょう。
格付けがない場合は専門家に相談するのが無難
発行会社自体の格付や、債券の格付けがない場合もあります。その場合には、目論見書に経営・財務情報が添付されていることが多いため、少し目を通すだけでも良いので確認しておきましょう。
ただし内容は難しいので、会計士や証券アナリスト、ファイナンシャル・プランナーなどの専門家に相談してみると良いでしょう。
まとめ:社債のメリットデメリットを把握して投資判断をしましょう
社債のメリットは利率が高いことであり、その分、発行会社の業績による元本割れや債務不履行などによる利子の支払遅延のリスクがあります。
また、社債は他の金融商品と比べると投資金額が高めなこと、換金性・流動性に欠けるというデメリットも考えなければなりません。
社債への投資を検討する際は、格付機関から付与されている格付なども参考にしましょう。