夫が亡くなった時の遺族年金について少し確認したことのある人は以下の疑問を持つ場合もあるでしょう。
「遺族年金については大体わかったけれど寡婦加算って何?」
「私も寡婦加算がもらえるの?もらえるとしたら金額はいくら?」
今回の記事では、夫が亡くなって妻が遺族年金を受取るときに受給できる寡婦加算について、受給要件やその金額を解説します。寡婦加算の有無や受給できる金額を知ることで、遺族年金の総額を概算できます。
寡婦加算の対象は遺族厚生年金をもらえる妻だけ
寡婦加算は夫と死別した妻(寡婦)の遺族厚生年金に加算されます。妻を亡くした夫には支給されないので、男性からみれば不公平に感じるかもしれません。しかし、日本では男女の賃金格差は根強く残っており、遺族年金による保障は女性の方が手厚くなっているのです。
寡婦加算は遺族厚生年金へ加算されるものであり、そもそも遺族厚生年金を受け取れない妻には支給されません。そのほかの要件については、後ほど詳しく解説します。
遺族厚生年金とは
寡婦加算は遺族厚生年金のみに加算されるので、遺族厚生年金について簡単に確認しておきましょう。
遺族厚生年金は、所定の要件を満たした厚生年金加入者などが死亡した時、その遺族に支給されます。遺族には死亡者との続柄によって優先順位があり、最優先されるのは妻です。
死亡した厚生年金加入者の要件は次のいずれかに該当することです。
- ①厚生年金加入中の病気やけがで初診日から5年以内に死亡した(保険料の納付要件を満たしていること)
- ②老齢厚生年金の受給資格期間が25年以上あった
- ③障害等級1級または2級に該当し、障害厚生年金を受給する資格があった
参考:日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・支給開始時期・計算方法)」
寡婦加算には2種類ある
寡婦加算には以下の2種類があり、妻の年齢によってもらえる種類が異なります。
- 中高齢寡婦加算:40歳以上65歳未満の妻
- 経過的寡婦加算:65歳以上の妻
経過的寡婦加算の「経過的」という言葉は、いずれなくなる制度であることを意味します。具体的には、昭和31年4月1日以前に生まれた妻までが対象で、それ以降に生まれた妻は経過的寡婦加算はもらえません。
中高齢寡婦加算は40歳以上65歳未満の妻が対象
中高齢寡婦加算は遺族厚生年金を受給する40歳以上65歳未満の妻に支給されます。受給要件や加算額などについてみていきましょう。
中高齢寡婦加算の受給要件
受給要件は、遺族厚生年金を受給できる妻が以下のいずれかに該当することです。
- 夫が亡くなったとき妻40歳以上65歳未満で、子ども(※)がいない
- 子どもが18歳の年度末を迎えたなど、子の要件(※)を満たさなくなったことで、遺族基礎年金と遺族厚生年金を受け取っていた妻が遺族基礎年金を受給できなくなった
つまり、遺族基礎年金をもらえない妻と遺族基礎年金がもらえなくなった妻が対象です。また、夫が死亡したとき「子のない40歳未満の妻」には中高齢寡婦加算がありませんので覚えておきましょう。
※対象となる子どもの要件
①18歳になった後3月31を経過していない子
②20歳未満で障害等級1級または2級の障害状態にある子
参考:日本年金機構「中高齢寡婦加算」
中高齢寡婦加算の金額
令和3年度の加算額は年額585,700円です。加算額は遺族基礎年金満額の3/4で年金額改定によって毎年金額が変更になります。
子どもがいて遺族基礎年金受給中は満額の780,900円(令和3年度)で、子どもが要件を満たさなくなり中高齢寡婦加算に切り替わると金額が3/4になる、という仕組みです。
中高齢寡婦加算の受給期間と支給停止
受給期間は40歳から65歳までです。40歳以降も、遺族基礎年金を受け取っている間は中高年寡婦加算の支給は停止されます。65歳になると「昭和31年4月1日以前に生まれた妻」は経過的寡婦加算に切り替わり、「昭和31年4月2日以後に生まれた妻」は打ち切りになります。
また、妻が障害厚生年金を受給するなどして遺族厚生年金が支給停止されると、中高齢寡婦加算も同時に支給停止されます。
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経過的寡婦加算は65歳以上の妻が対象
経過的寡婦加算は遺族厚生年金を受給する65歳以上の妻(昭和31年4月1日以前に生まれた妻)に支給されます。受給要件や加算額などについてみていきましょう。
経過的寡婦加算の受給要件
受給要件は、遺族厚生年金を受給できる昭和31年4月1日以前生まれの妻が以下の要件に該当することです。
- 妻が65歳以上で遺族厚生年金の受給をスタートしたとき
- 中高齢寡婦加算を受給していた妻が65歳になったとき
経過的寡婦加算の金額
令和3年度の加算額は、妻の生年月日によって以下のとおりです。
経過的寡婦加算の金額
生年月日(妻) | 加算額 |
---|---|
昭和2年4月1日以前 | 585,700円 |
昭和2年4月2日~昭和3年4月1日 | 555,665円 |
| | | |
昭和27年4月2日~昭和28年4月1日 | 78,115円 |
昭和28年4月2日~昭和29年4月1日 | 58,592円 |
昭和29年4月2日~昭和30年4月1日 | 39,070円 |
昭和30年4月2日~昭和31年4月1日 | 19,547円 |
経過的寡婦加算の金額は、中高齢寡婦加算の満額(585,700円)-老齢基礎年金額で計算されます。
専業主婦は昭和61年3月まで国民年金の強制加入ではなかったため、たとえば、昭和2年4月1日以前の専業主婦は任意加入してなければ昭和61年3月までの期間に相当する老齢基礎年金は受け取れません。そのため、任意加入期間が長く、年金額が少なくなりやすい高齢者ほど、経過的寡婦加算の金額は大きくなります。
経過的寡婦加算の受給期間と支給停止
経過的寡婦加算の受給期間は、65歳から一生涯です。
遺族厚生年金が支給停止にならない限り、一生涯もらえる加算です。ただし、遺族厚生年金の受給者が障害基礎年金を受給できる場合、経過的寡婦加算の支給は停止されます。
また、遺族厚生年金の受給者が結婚したり養子になったりした場合は、失権と言って権利が消滅するので、寡婦加算はもらえません。
夫が国民年金の妻には寡婦年金
夫が国民年金しか加入していなければ遺族厚生年金はもらえないので寡婦加算もありません。
ただし、所定の要件を満たした夫が亡くなった場合に、妻が60歳から65歳までの間は「寡婦年金」を受給できます。
寡婦年金の支給要件と年金額
寡婦年金がうけられるのは、以下の要件を満たした妻です。
- 死亡した夫が国民年金第1号被保険者として保険料を納付した期間と保険料免除期間の合計が10年以上
- 夫との婚姻期間が10年以上
- 死亡時に夫に生計を維持されていた
- 60歳以上65歳未満
寡婦年金の年金額は夫が生前に老齢基礎年金や障害基礎年金を受け取っていた場合、妻が老齢基礎年金の繰り上げ受給している場合には、上記の要件を満たしていても寡婦年金は支給されません。「夫の第1号被保険者期間だけで計算した老齢基礎年金受給予定額の3/4」です。
まとめ:寡婦加算の対象は遺族厚生年金を受給する40歳以上の妻
寡婦加算の対象は遺族厚生年金を受給する40歳以上の妻です。 会社員の夫が死亡した場合、子どものいる妻は遺族厚生年金に加え、次の年金を受け取れます。
- 子どもが18歳となる年度末まで :遺族基礎年金
- 子どもが18歳となる年度末以降妻65歳まで:中高齢寡婦加算
- 妻65歳以降 :経過的寡婦加算(対象者のみ)
これから65歳になる妻に経過的寡婦加算の対象ではないため、遺族厚生年金への加算は65歳で打ち切りになります。