いわゆる国民年金第1号被保険者に該当する人は、国民年金保険料を納めなくてはなりません。しかし、令和2年度の国民年金の保険料は16,540円で、決して安い金額ではありません。
社会人として仕事を始めて間もない頃や、事業がなかなかうまくいかず経済的に苦しいといった時期は誰にでもあります。そんなとき、保険料を未納状態にしておくのではなく、適切な制度を利用することで優遇措置を受けることができます。
ここでは若年者納付猶予制度について解説します。保険料負担を一時的に猶予してくれ、期限付きとはいえ金銭的な負担が軽くなる制度です。制度のメリット・デメリットを正しく理解し、必要な場合は制度の利用を検討しましょう。
若年者納付猶予制度とは
国民年金の保険料負担が重く支払えない場合や、数か月以上未納の状態が続いている場合、保険料の納付を猶予してもらえる制度があります。この制度を若年者納付猶予制度といいます。
「若年者」という名前から若い人向けの制度だと思われることが多いものの、対象者の年齢幅が広がり、より多くの人が利用できる制度に変わっています。まずは若年者納付猶予制度の概要を解説します。
若年者納付猶予制度の特徴
本人もしくは配偶者の前の年の所得が規定額を下回っている場合には、保険料納付を猶予してもらえます。ただし、納付が猶予されるだけで、後から必ず保険料は納める必要があります。
似た制度として保険料免除制度があります。免除とは、保険料の一部、もしくは全額を支払わなくてよいとするものです。免除と猶予を混同しないよう注意しましょう。
若年者納付猶予制度の対象者
2016年6月まで、この若年者納付猶予制度は30歳未満が対象でしたが、2016年7月より50歳未満に対象者が拡大されました。
これまで対象外だった人も、今回の制度改正で対象となっていることもあるため必ず確認しましょう。なお、学生は「学生納付特例制度」の対象となり、若年者納付猶予制度の対象外です。学生納付特例制度については後ほど解説します。
若年者納付猶予制度の所得基準
「国民保険料の支払いが厳しい」という人に向けた制度ですが、利用するためには所得基準があります。本人もしくは配偶者の前の年の所得が、以下で算出した金額を下回っている場合に限り、適用されます。
22万円+(扶養親族等の数+1)×35万円
単に「支払いが厳しい」「保険料の負担が重い」というだけでは利用できませんので注意しましょう。
若年者納付猶予制度の3つのメリット
若年者納付猶予制度は、単に保険料納付が猶予されるだけでなく、いくつかのメリットがあります。ここでは代表的な3つのメリットを解説します。
メリット①受給資格期間に含まれる
将来年金を受け取るには一定の受給資格期間を満たしていなければなりません。受給資格期間として合算される期間には、以下があります。
- 国民年金保険料の納付済月数
- 若年者納付猶予制度の対象月数
- 国民年金保険料の免除月数
- 学生納付特例制度の対象月数
上記4つの月数の合計が120ヵ月(10年)を超えていれば、要件を満たしていることになります。若年者納付猶予制度の対象期間は、年金の受給資格期間に合算されるというメリットがあります。
未納状態が続くようであれば、若年者納付猶予制度の利用を検討しましょう。
メリット②督促を受けない
申請なしに国民年金保険料の未納状態が続くと、督促状が届きます。さらにこの督促状が届いてからも、2年間納付をしなかった場合、強制徴収となり、財産が差し押さえられてしまうケースもあります。
一方、若年者納付猶予制度の利用を申請し認められると納付が猶予されることになり、督促を受けません。ただし、督促を受けないとしてもいずれは支払う必要がある保険料です。できるだけ早期に支払うよう心がけましょう。
メリット③追納できる
一時的に経済状況が悪化したものの、その後は保険料が負担できるほど回復すると、猶予されていた保険料をあとから納めることができます。この制度を追納と言い、過去10年分は遡ってあとから支払います。
追納制度を利用するためにも申請し、許可をもらう必要があります。金銭的に余裕ができたときは、早めに追納申請をするようにしましょう。
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若年者納付猶予制度の2つのデメリット
金銭的に厳しい状況にある場合、国民保険料の納付を猶予してもらえるありがたい制度ですが、デメリットも存在します。特に、将来の年金額への影響がある点については制度を利用する前に必ず確認しましょう。
デメリット①老齢基礎年金額に影響
支払いを猶予されている期間の保険料をあとから納めない(追納しない)場合は、支払いを猶予され支払わなかった期間の老齢基礎年金の年金額がゼロになります。
保険料免除制度と違って、「支払いを猶予」されているだけであって、支払いの義務が消えたわけではありません。支払う義務がある保険料を未納とした場合、当然のことながら年金額も減ります。
一時的な未納のために将来の年金額まで左右されてしまうため、若年者納付猶予制度は慎重に活用しましょう。
デメリット②付加保険料が納められない
将来の年金額を増やす目的として、付加保険料を支払うという方法があります。令和2年度は16,540円となっている国民年金保険の定額保険料に、追加で支払う月額400円の保険料を付加保険料と言います。
この付加保険料は任意負担のため、個人が申請することで利用できる制度です。
しかし、若年者納付猶予制度の対象となっている間は、付加保険料を納めることができません。これは、年金の増額を目的とした加算額を払うよりも、納付を猶予されている保険料の支払いが優先されるためです。
若年者納付猶予制度の利用者は、まずは定額保険料部分をきちんと納めるようにしましょう。
学生なら学生納付特例制度が利用できる
若年者納付猶予制度は50歳以下が対象者ですが、学生には学生納付特例制度が適用されます。経済的に自立している学生は少ないため、本制度が適用されると、大学や大学院、短期大学といった学校に在籍中に限り保険料の支払いを猶予することが認められます。
この制度は学生本人の所得のみが関係しているため、保護者の所得は不問です。
この制度の利用には、学生等であることを証明する書類が必要です。学生証や在学証明書を事前に準備しておくと手続きがスムーズにできます。
まとめ:国民年金の納付に困ったら若年者納付猶予制度の活用を!
毎月支払う必要のある国民年金保険料ですが、時には支払いが滞ることもあります。納付書が届いているのにそのまま放置していると、将来の年金額に影響があるほか、財産の差し押さえに発展するかもしれません。
若年者納付猶予制度を理解し、必要に応じて制度の利用を検討しましょう。ただし、免除制度とは違い、いずれは保険料を納める必要があります。経済状況が改善すれば、すみやかに猶予分の保険料を納めることが大切です。