皆さんは「トンチン年金」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?なんとなく年金の一種なのだろうというイメージはできると思います。
しかし、具体的にどんな年金なのか、その概要や制度について知っている方はそれほど多くないでしょう。
本記事では、トンチン年金の基本的なことから説明し、メリット・デメリットを比較して将来に備える方法について解説していきます。トンチン年金について詳しく知りたい方にとって役立つ情報を盛り込んでいるので、ぜひご覧ください。
トンチン年金とは
まずは、トンチン年金がどんな制度であるのか、基本的なことについて解説します。
- トンチン年金の本来の意味
- 日本でのトンチン年金について
- 3種類の個人年金保険を比較
トンチン年金の本来の意味
トンチン年金とは、イタリアの銀行家であるL・トンチが考案した、終身年金制度の一種です。
終身年金制度とは、その年金制度に加入している被保険者が、亡くなるまで年金を受給できる年金制度です。つまり、被保険者が80歳まで生きれば80歳まで年金を受給でき、100歳まで生きれば100歳まで年金を受給できます。
より正確にトンチン年金について説明すると、出資者が亡くなった場合に、その人が持っていた「年金を受け取る権利」が、生存している他の出資者に移るという制度です。
トンチン年金の基本的な仕組みを簡単に説明すると、10人が100万円ずつ計1,000万円を出資し、年金受取開始時に5人生存していれば、生存した5人はそれぞれ200万円受け取れ、死亡した5人は何も受け取れない(掛け捨てになる)というものです。
実際には亡くなる時期により、早く亡くなった出資者ほど年金を受け取れる期間が短くなって年金受給額が少なくなり、より長生きした出資者ほど年金を長く受け取れるため年金受給額が多くなります。
日本でのトンチン年金について
日本では、「公的年金制度」や「個人年金保険」の一部の商品でトンチン年金の仕組みが取り入れられています。
現在では、一般的な個人年金保険よりも解約時、年金受取前の死亡時の払戻金(解約返戻金、死亡給付金)を低く設定した「低解約返戻金型の個人終身年金保険」のことを主に「トンチン年金」または「トンチン性のある個人年金保険」といいます。
一般的な年金保険の場合、受給開始前に被保険者が死亡した場合の払込保険料に相当する金額が「死亡給付金」として支払われます。しかし、トンチン年金は、トンチン性のない一般的な個人年金保険における解約返戻金と比較して払戻金の金額が少なめに設定されていることが多いです。
3種類の個人年金保険を比較
先ほど「終身年金」というキーワードについて触れましたが、個人年金保険にはこの他に2つのタイプがあります。
- 終身年金:被保険者が亡くなるまで年金を受け取ることができるタイプ
- 確定年金:被保険者の生死に関係なく一定期間だけ年金を受け取ることができるタイプ
- 有期年金:「被保険者が生きている」ことを条件として一定期間年金を受け取ることができるタイプ
それぞれ「年金をどのくらいの期間だけもらえるのか」と「その条件として被保険者の生死が関係するか」が異なる点になります。
トンチン年金のメリット
日本では個人年金保険の一種として利用する可能性のあるトンチン年金ですが、このタイプの個人年金保険には主に、以下3つのメリットがあります。
- 生きている間ずっと年金を受け取れる
- 長生きするだけ多くの年金がもらえる
- 保証期間が付いている
メリット①生きている間ずっと年金を受け取れる
トンチン年金は、被保険者が生きている限りにおいて、年金を受け取り続けることができるというメリットがあります。
年金を受け取ることができる期間が設定されているタイプの年金の場合、例えば60歳から受給開始して20年間だけ受給できるとします。この場合、80歳以降はその年金を受け取ることができないので、別の方法で生活のためのお金を確保しなければなりません。
人間、生きている限り生活のためのお金は必要不可欠です。生きている間ずっと年金を受け取ることができるトンチン年金であれば、生活のための収入源を、亡くなるまでずっと確保できます。
メリット②長生きするだけ多くの年金がもらえる
トンチン年金は、長生きするほど多くの年金を受け取れます。
トンチン年金は、被保険者の生存を条件として、亡くなるまでずっと年金を受け取ることができる制度です。人間いつ死んでしまうかわかりませんが、医療技術の発達した現代日本においては長生きできる可能性は一昔前よりも高くなっています。
払い込んでいる保険料は一定で変わらないので、長生きするだけ保険料に対する受給額の割合が大きくなり、得をする結果になります。
メリット③保証期間が付いている
現在日本で販売されている終身年金タイプの個人年金保険(≒トンチン年金)には、基本的に被保険者の生死に関わらず年金を受け取れる「保証期間」が設定されています。
本来のトンチン年金は、完全な「掛け捨て」になる可能性がある年金制度であり、年金を受け取る前に被保険者が亡くなってしまった場合、遺族には1円たりとも年金が支給されることはありません。
例えば5年間の保証期間付終身個人年金保険の場合、被保険者が早くに亡くなっても5年分の年金は受け取ることができます。
この記事の内容の他にも、「お金が貯まる29の知恵」を1冊にまとめました。
今ならLINE登録するだけで、無料でプレゼントしています。
この機会に是非一度LINE登録して、特典を今スグ受け取ってください。
トンチン年金のデメリット
さまざまなメリットがあるトンチン年金ですが、デメリットもあるものです。本当の意味でトンチン年金の特徴を知るためには、デメリットにもしっかりと目を向ける必要があります。
ここでは、以下の3つのデメリットについて説明します。
- 保証期間を設定すると1年あたりの年金額は少なくなる
- 早くに亡くなった場合は保険料>受給額になりやすい
- 将来いくら年金を受け取れるかわからない
デメリット①保証期間を設定すると1年あたりの年金額は少なくなる
先ほど「保証期間」について説明しました。保証期間があるので完全な掛け捨てにはならないという点は、本来のトンチン年金の特徴と比較すると安心感があり、大きなメリットだといえます。
しかし、保証期間だけでは払い込んだ保険料に相当する年金を受け取ることはできず、払込保険料総額の同じ確定年金や有期年金と比べると、1年あたりに受け取れる年金額は少なくなります。
デメリット②早くに亡くなった場合は保険料>受給額になりやすい
トンチン年金は、保険商品によって具体的な内容は異なりますが、早くに亡くなると払い込んだ保険料よりも年金受給額が少なくなりやすい点がデメリットです。
トンチン年金は、満了期間まで保険料を負担し、受給開始してから被保険者が亡くなるまで年金を受け取ることができるという仕組みです。
例えば、50歳~70歳まで毎月5万円の保険料を負担し、70歳から毎年60万円の年金を受給できるトンチン年金を利用する場合を想定してみましょう。
払い込み満了時の保険料総額は1,200万円です。70歳からは年間で60万円もらえますので、1,200万円の保険料を回収できるのは20年後の90歳となります。とはいえ、90歳まで生きられるかどうかはわからず、それまでに亡くなった場合は保険料の方が高額になります。
長生きするほどお得なトンチン年金ですが、逆に言えば早くに亡くなると損をしやすいという特徴があります。
デメリット③将来いくら年金を受け取れるかわからない
将来受け取れる年金の総額がわからない点もトンチン年金のデメリットといえます。
確定年金タイプの個人年金保険の場合、支払う保険料に対して将来受け取れる年金額が契約時にわかります(定額型商品の場合)。いくら保険料を負担すれば、いくら年金を受け取れるかを確認した上で、加入できるのです。
しかし、「亡くなったら受給できなくなる」という特徴があるトンチン年金は、将来的な受給総額が不透明なので、保険料が妥当であるかどうかを判断することが難しくなります。
人間、何歳まで生きられるか明確にわかる人はいませんから、トンチン性のある年金(終身年金)は、確定年金に比べ不確実性(リスク)が高くなるのです。
トンチン年金以外に老後に備える選択肢
トンチン年金は「生きている間の生活費を確保する」という点は魅力かもしれませんが、金銭面で将来に備える方法はそれ以外にも数多く存在します。
将来に備えて行動しようと考えている方は、以下のような選択肢も含めて検討するとよいでしょう。
- 公的年金の「繰り下げ受給」を利用する
- トンチン年金以外の民間保険を利用する
- 資産運用を行う
選択肢①公的年金の「繰り下げ受給」を利用する
1つ目の選択肢は「公的年金制度の繰り下げ受給を利用する」という方法です。
国民年金の場合、老齢基礎年金は基本的に65歳から受給できますが、この受給開始タイミングを最も遅くて70歳まで繰り下げることができます。当然ながら、繰り下げたタイミングまで年金を受給できませんが、「受給できる年金が増える」という点がメリットです。
老齢年金を繰り下げ受給する場合、最大で42.0%が増額されます。その間のお金の問題をクリアできるのであれば、年金額が増える繰り下げ受給の利用も検討してみてください。
選択肢②トンチン年金以外の民間保険を利用する
2つ目の選択肢は「トンチン年金以外の民間保険を利用する」ことです。
日本では、さまざまな保険商品が提供されています。保険商品ごとに異なる特徴を有し、それぞれのライフスタイルやライフプランなどに応じた最適な保険商品を選択して加入することで、将来に備えることができます。
確かにトンチン年金は「生きている間ずっと年金を受け取ることができる」というメリットがありますが、何歳まで生きられるかで受け取れる年金総額が変動するリスクも伴います。複数の保険商品を比較して、ご自身の希望にマッチする商品を見つけてください。
選択肢③資産運用を行う
3つ目の選択肢は「資産運用を行う」という方法です。
保険商品と同じく、日本ではさまざまな方法で資産運用が可能です。うまく資産運用できれば、手持ちの資金を元手にお金を増やすことができます。運用方法次第では、相応の水準で不労所得を得られるようになるでしょう。
ただし、資産運用には失敗のリスクもつきものです。資産運用を始めるにあたっては専門家のアドバイスをしっかりと聞き、運用方法ごとの特徴やメリット・デメリットを把握してから運用開始してください。
まとめ:トンチン年金は個人年金保険の一種
トンチン年金について解説しました。以下のポイントを押さえてきましょう。
- トンチン年金はイタリア発祥、日本では個人年金保険の一種
- トンチン年金は被保険者が亡くなるまで受給できる、亡くなったらほぼ掛け捨ての場合も
- トンチン年金以外にも将来に備える方法はある
これから高齢期を迎える方にとって、ご自身が亡くなるまで年金を受け取り続けることができるトンチン年金に魅力を感じるかもしれません。しかし、日本にはトンチン年金以外にもさまざまな制度や商品があり、それらを選択することで将来に備えることができます。
重要なことは「将来に備える方法を正しく理解して、適切に利用する」ことです。さまざまな方法の中からご自身の人生・生活にマッチする方法を選択できるかどうか不安な方は年金事務所や保険会社の担当者などの専門家に頼って知識を深めてください。