30代は、マイホームの購入や子供の教育資金など、お金のかかるイベントが多い年代ですが、老後の資金準備も気になるころです。「そろそろ個人年金に加入した方がいいのかな?」「個人年金を利用するメリットは?」などの疑問を感じている人もいるでしょう。
今回の記事では、30代で個人年金に加入すべきかどうかについて解説します。加入時のポイントやiDeCoとの比較も紹介するので、老後資金の準備を考えるきっかけとしてください。
個人年金とは
まず最初に、個人年金の内容とその種類について解説します。
老後の生活資金として年金を受け取る保険
個人年金とは、老後の生活費として年金を受け取るために、毎月一定額の保険料を積み立てる貯蓄型の保険です。
個人年金に加入するときは、年金額や年金の受け取り期間などを決めます。変額年金などを除く一般的な個人年金では、年金額は加入時に確定します。
保険料の払込途中で死亡した場合に支払われる死亡給付金は、これまでに払い込んだ保険料総額とあまり変わらないため、死亡保障としては期待できません。
生命保険文化センターの令和元年度調査によると、30代の人の個人年金の加入率は、男性が23.3%、女性が20.4%で、20代の人と比べて大幅にアップしています。
年齢別の個人年金加入率:
20代 | 30代 | 40代 | 50代 | 60代 | 全年齢 | |
---|---|---|---|---|---|---|
男性 | 13.2% | 23.3% | 24.6% | 27.8% | 17.6% | 21.5% |
女性 | 12.2% | 20.4% | 20.7% | 30.3% | 21.1% | 21.8% |
参考:生命保険文化センター「令和元年度 生活保障に関する調査.pdf.P108」
個人年金の種類
個人年金は、年金の受け取り期間によって3種類に分類できます。個人年金の種類と受け取り期間は次の通りです。
- 終身年金:一生涯
- 確定年金:契約時に決めた期間(10年、15年など)
- 有期年金:一生涯。年金受給中に死亡したときは一定期間分(10年、15年など)保障
また、保険料積立金の運用実績に応じて年金額が変動する「変額個人年金」、海外の通貨で保険料の支払いや年金受け取りする「外貨建て個人年金」などもあります。
個人年金のメリットとデメリット
次に、個人年金のメリットとデメリットについて解説します。
個人年金のメリット
個人年金のメリットは、長期間にわたり計画的に老後資金を積立できることです。保険料は給与や銀行口座から自動的に引き落とされるため、意識することなくお金を貯められます。解約しないとお金を引き出せないため、銀行で貯めるより継続できる可能性は高いでしょう。
また、支払った保険料は「個人年金保険料控除」の対象になり、税制上の優遇措置が受けられます。個人年金保険料控除について詳しく知りたい人は、次の記事をご覧ください。
個人年金のデメリット
個人年金のデメリットは、途中解約すると元本割れすることです。元本割れとは、解約返戻金が支払った保険料を下回ることです。お金を貯めるために個人年金に加入したのに損をすることになります。
また、インフレによってお金の価値が下がったとき、契約時に確定している年金額の価値も下がることになります。
30代で個人年金に加入するメリット
個人年金のメリットについて解説しましたが、30代で個人年金に加入するメリットについても紹介します。
メリット①:返戻率が高い
30代で加入するメリットの1つ目は、返戻率が高いことです。返戻率とは、年金の受け取り総額を支払った保険料の総額で割った値です。返戻率が高いほど、効率よくお金を増やせたことになります。
- 返戻率=年金の受け取り総額÷支払った保険料の総額
30代で加入すると返戻率が高いのは、40代以降で加入するより積み立てた保険料を運用する期間が長くなるからです。A生命保険会社の保険料シミュレーションサイトで加入年齢別の返戻率を比較すると次の通りです。(男性、65歳払込完了の10年確定年金で試算)
- 30歳加入:105.2%
- 40歳加入:103.0%
- 45歳加入:101.9%
メリット②:年金額を大きくできる
メリットの2つ目は、年金額を大きくできることです。30代など早目に個人年金に加入することで支払期間や支払う保険料の総額が増えるため、年金額も増加します。
前述のシミュレーションサイトで加入年齢別の年金額を比較すると次の通りです。(男性、保険料2万円、65歳払込完了の10年確定年金で試算)
- 30歳加入:年額約88.3万円
- 40歳加入:年額約61.8万円
- 45歳加入:年額約48.9万円
月10万円(年額120万円)の年金を準備したい場合、30歳加入なら保険料は約2.7万円で済みますが、45歳加入なら約4.9万円も必要になります。
メリット③:個人年金保険料控除を長期間利用できる
メリットの3つ目は、個人年金保険料控除を長期間利用できることです。
個人年金保険料控除は、保険料を支払った年度(1月~12月)ごとに毎年受けられます。所得税を計算するとき、所得から最大4万円(平成23年12月31日以前に加入した個人年金は5万円)控除できます。
65歳払込完了の個人年金に30歳で加入した場合、個人年金保険料控除が受けられるのは35年です。
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30代の個人年金の選び方ポイント
30代で個人年金に加入するときの選び方のポイントについて紹介します。
無理のない保険料で加入する
ポイントの1つ目は、無理のない保険料で加入することです。
もらえる年金額は多いほうがいいですが、保険料の負担は大きくなります。途中解約すると元本割れして損をする可能性が高いため、最後まで保険料を払えるかを慎重に検討しましょう。
老後資金の準備も大事ですが、マイホームの資金や子どもの教育費などお金が必要なケースは他にもあります。また、30代で加入する場合、保険料の支払いは30年を超えることもあるため、不測の事態も考えて余裕を持った資金計画が必要です。
返戻率の高い商品を選択する
ポイントの2つ目は、返戻率の高い商品を選択することです。
将来受け取る年金額は、支払った保険料の総額と返戻率で決まります。より多くの年金を受け取るためには、返戻率の高い商品に加入しなければなりません。
加入する前に、保険の比較サイトや保険ショップなどで、具体的な加入条件を設定して返戻率を比較してみましょう。
個人年金保険料税制適格特約を付加する
ポイントの3つ目は、「個人年金保険料税制適格特約」を付加することです。
個人年金保険料控除が使えるのは、「個人年金保険料税制適格特約」がついた個人年金だけです。保険会社から同特約を付加して提案されることが一般的ですが、念のために契約時に確認しましょう。
なお、同特約を付加するには次の条件を満たす必要があります。
- 受取人が契約者または配偶者
- 受取人が被保険者と同じ
- 保険料の払込期間が10年以上
- 確定年金・有期年金の場合、年金開始が60歳以降かつ受取期間が10年以上
老後資金準備はiDeCoもおすすめ
老後資金準備には、個人年金のほかにiDeCo(個人型確定拠出年金)もおすすめです。
iDeCoは、国民が老後生活資金を準備しやすいように国が設けた任意加入の私的年金制度です。掛け金が全額所得控除されるなど、個人年金より税制上のメリットは大きいといえます。
また、投資信託などで運用した場合、一定のリスクはありますが個人年金よりも高い利回りが期待できます。
まとめ:個人年金のメリットとデメリットを理解してiDeCoと比較検討しよう
個人年金は、長期間にわたり計画的に老後資金を積立するのに適した商品です。また、30代で加入すると「返戻率が高い」、「個人年金保険料控除を長期間利用できる」などのメリットもあります。
しかし、老後資金準備に適した金融商品としては、個人年金より税制上のメリットの大きいiDeCo(個人型確定拠出年金)も選択肢の一つです。年金額が確定している個人年金も安心ですが、一定のリスクがあっても高い利回りを狙う人にはiDeCoがおすすめです。
個人年金とiDeCoのメリットとデメリットをきちんと理解して老後資金の準備を検討しましょう。