老後に必要な資金額が話題になるなど、年金に関する世間の関心は非常に高くなっています。お金のこととなると、どうしても「税金」が頭をよぎる人も多いのではないでしょうか。
年金を受け取ることに興味がある人は多いものの、「受け取る年金に係る税金」について適切に理解している人は少ないはずです。
今回は年金受給者の所得税について、その計算方法や払い方を含め詳しく解説します。確定申告が不要になるケースについても理解しておくことで、受給開始後の負担を減らすことができます。
年金の受け取りにはまだ時間があるという人こそ、速算表を使って受給額をイメージしてみましょう。
所得税とは
国の財源の1つでもある所得税とは、1年間に得た個人の所得に対する税金のことを指します。毎年1月1日から12月31日までの所得が所得税の対象です。
所得にはさまざまな種類があります。「給与」は所得の代表例ですし、他にも「不動産所得」や「事業所得」など、合計10つに分類することができます。これらの所得に所定の税率をかけて税額を計算しますが、日本は所得が多くなるほど税率も高くなる「累進税率」が適用されています。
ここで注意したいのが、「所得」と「収入」の違いです。所得の金額を算出するには、その年の収入金額から必要経費や控除額を差し引く必要があります。所得=収入ではないので、混同しないように注意しましょう。
老齢年金は所得税の課税対象
老後の資産形成の一助となる老齢年金は、「収入」としてみなされるため原則として課税対象です。「収入」には所得税と住民税がかかります。年金収入は10種類に分類される所得のうち、「雑所得」として扱われます。
しかし、年金にも種類があり、さらに年金を受給する人の年齢によってもその金額は異なることに注意しましょう。年金ごとの課税状況や、雑所得の算出方法について以下で解説します。
障害年金や遺族年金は対象外
国からもらえる公的年金には主に3種類あります。老齢年金の他に、障害年金と遺族年金があります。これらは非課税所得になり、死亡や障害を理由に支給される年金(遺族が受け取るものも含む)には税金がかかりません。
確定申告の際に間違いやすい項目ですので注意しましょう。
年金に係る雑所得の計算方法
続いて、老齢年金にどの程度課税されるのかについて確認します。公的年金に係る雑所得の計算は、以下の表を参考にしてください。65歳未満、もしくは65歳以上と年齢によって2つに分けられているのが特徴です。
公的年金等に係る雑所得の速算表
公的年金等の収入金額 | 公的年金等に係る雑所得の金額 | |
---|---|---|
65歳未満の人 | 60万円以下 | 0円 |
60万円超130万円未満 | 収入金額-60万円 | |
130万円以上410万円未満 | 収入金額×0.75-27万5千円 | |
410万円以上770万円未満 | 収入金額×0.85-68万5千円 | |
770万円以上1,000万円未満 | 収入金額×0.95-145万5千円 | |
1,000万円以上 | 収入金額-195万5千円 | |
65歳以上の人 | 110万円以下 | 0円 |
110万円超330万円未満 | 収入金額-110万円 | |
330万円以上410万円未満 | 収入金額×0.75-27万5千円 | |
410万円以上770万円未満 | 収入金額×0.85-68万5千円 | |
770万円以上1,000万円未満 | 収入金額×0.95-145万5千円 | |
1,000万円以上 | 収入金額-195万5千円 |
出典:国税庁「高齢者と税」
上記の速算表は公的年金に係る雑所得の金額を計算するものです。他に所得がある場合は、合算する必要があります。
老齢年金にかかる税金の納税方法について
原則として老齢年金には税金がかかりますが、納税方法についても理解しておくと安心です。
公的年金の納税方法には、原則、「源泉徴収」という方法が採用されています。源泉徴収の対象となる場合、原則として自分自身で税額の計算をしたり、別途払い込んだりする必要はありません。
会社員時代の給与と同じように、年金の受け取り額に応じた所得税が源泉徴収されることになります。収入金額から各種控除額を差し引いたあとに5.105%(扶養親族等申告書を提出した場合)を乗じた金額が源泉徴収されています。
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【2020年以降】年金に所得税がかかるのはどんなとき?
年金には原則として所得税がかかるとはいえ、全ての年金受給者が課税対象になるわけではありません。
2005年から2020年までは、65歳未満に対する公的年金等への控除金額は70万円、65歳以上では120万円と決められていました。2020年の法改正により、公的年金等の控除金額はそれぞれ10万円引き下げられています。
65歳未満で108万円以上受け取っているとき
65歳未満の場合、公的年金等の収入金額が年間108万円以下であれば課税対象となる所得金額はゼロとなり、税金がかかりません。 108万円は、公的年金等に対する控除額「60万円」と、基礎控除「48万円」の合計です。
逆に、年間108万円を超える年金を受給している場合は、所得税がかかります。
65歳以上で158万円以上受け取っているとき
65歳以上では、公的年金等の収入金額の合計が158万円を超える場合、所得税がかかります。
法改正によって公的年金等の控除金額は10万円引き下げられましたが、同時に基礎控除が10万円引き上げられているため、所得税のかかる年金収入額の基準に変化はありません。
年金受給者の確定申告の負担を減らす制度もある
年金受給者は、原則として毎年確定申告が必要です。確定申告は、税金の過不足を精算する目的で設けられています。しかし、煩雑な確定申告は高齢者にとって負担も大きいものとなっています。
そこで、条件次第では毎年の確定申告を免除できる制度が存在します。この制度を「確定申告不要制度」と呼びます。
以下のいずれの条件にも当てはまる場合、確定申告不要制度が利用できます。
- 公的年金等の合計収入が400万円以下
- 公的年金等に係る雑所得以外の所得が20万円以下
条件①公的年金等の合計収入が400万円以下
公的年金等の収入の合計金額が400万円以下であり、さらにそのすべてが源泉徴収の対象になることが1つ目の条件です。ここでいう「公的年金」とは、老齢年金や確定給付企業年金契約に基づきもらえる年金のことを指します。
条件②公的年金等に係る雑所得以外の所得が20万円以下
①の条件を満たし、さらに公的年金等に係る雑所得以外の所得額が20万円以下である場合に確定申告不要制度が利用できます。この場合の「公的年金等に係る雑所得以外の所得金額」とは、給与所得や不動産所得、個人年金保険から受け取る年金、生命保険の満期金などを言います。
仮に、公的年金等の収入の合計金額が400万円以下であった場合でも、公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円を超える場合は、確定申告が必要です。
確定申告不要制度の対象であっても、上記のように確定申告が必要になるケースもあります。詳細は以下のページでご確認ください。
参考:政府広報オンライン「ご存知ですか?年金受給者の確定申告不要制度」
まとめ:老齢年金には税金がかかるが確定申告が不要になる場合も
老齢年金はセカンドライフの柱にもなる大切なお金です。老齢年金には原則、所得税がかかります。ただし、年金受給者ごとに課税されるのか、非課税になるのかは異なります。また、煩わしい確定申告も、条件次第では必要でないこともあります。
老齢年金と所得税の関係を正しく理解しておくと、受給後に慌てることがありません。速算表を用いて税額の概算を計算するなど、常に税金を意識した暮らしを心がけてみましょう。