働く女性がめでたく妊娠し、産休と育休を取得した場合、原則として給与は支払われません。産休および育休で、労働者に与えられた「休業する権利」を行使しているからです。
しかし、給与がないにもかかわらず、納税義務のある税金があります。「どの税金をどう支払えばいいの」と不安な方もいらっしゃるでしょう。
そこで本記事では、産休や育休中に納めるべき税金や、社会保険料の支払い、配偶者の扶養に入る選択肢、出産関連費用の医療費控除などについてご紹介します。払うべき税金や納税方法だけではなく、利用できる優遇措置もわかるので家計のやりくりがしやすくなります。
産休・育休中に納めなければいけない税金は住民税
産休および育休中は無給であっても、住民税は納める必要があります。「給与がないのになぜ?」と思うかもしれません。住民税は前年所得に基づいて税額が算出されています。そのため、現時点は無収入でも前年に所得がある方には住民税が課税されます。
住民税は、勤務して給与を受け取っている時は天引きで納税されています。しかし、産休・育休中は給与がないため天引きされません。市区町村から納付書が送付されるので、金融機関やコンビニエンスストアで自分で支払います。支払い期限を確認し、期限厳守で支払いましょう。
なお、自治体によっては一定条件下で住民税の減免や猶予など特例措置を設けています。出産前後は費用がかさむことも多いです。特例措置を利用したい方は、ぜひお住まいの自治体に問い合わせてみてください。
所得税は課税されない
いっぽう、所得税は納める必要がありません。産休・育休ではほとんどの場合、給与が支払われません。つまり所得がないため、所得税が発生しないのです。
また、産休・育休時には「出産手当金」「出産育児一時金」「育児休業給付金」等の各種手当が支給されます。これらの手当は非課税のため、所得税の課税対象外です。そのため、税引きされることなく受け取れます。
社会保険料の支払いについて
産休および育休中の社会保険料の支払いはどうなるのでしょうか。「健康保険」「厚生年金」「雇用保険」のそれぞれについて、以下でご紹介します。
康保険と厚生年金は免除の制度を利用できる
産休・育休中は、健康保険と厚生年金の保険料納付免除の制度を利用できます。しかも、免除期間も納付期間にカウントされるため、未納期間にはなりません。そのため、将来受給できる年金額が減らずに済みます。
この健康保険と厚生年金を免除するためには、事業主、つまりあなたが勤めている会社が日本年金機構に申請する必要があります。早めに産休・育休取得の申し出をしておくと、会社側もスムーズな手続きが可能です。
なお、個人事業主や自営業者の方が加入する国民年金は、出産予定月の前の月から4カ月間保険料の支払いが免除されます。
雇用保険は無給の場合は発生しない
産休・育休中に給与が支払われていない場合、雇用保険の納付は不要です。雇用保険は給与にかけられる保険料なので、無休の場合は発生しません。
この記事の内容の他にも、「お金が貯まる29の知恵」を1冊にまとめました。
今ならLINE登録するだけで、無料でプレゼントしています。
この機会に是非一度LINE登録して、特典を今スグ受け取ってください。
産休・育休中に配偶者の扶養に入ることが可能
夫婦がどちらも給与所得者でそれぞれ年間103万円を超える収入がある場合、お互いを扶養に入れることはできません。しかし、産休・育休を取得すると収入がなくなるまたは減るため、配偶者の扶養に入ることが可能です。
妻が産休および育休を取得した事例で考えてみましょう。夫の扶養に入るためには、まず次の4つの条件を満たす必要があります。
- 夫の合計所得額が1,000万円以下
- 民法の規定による配偶者である(つまり、内縁関係や事実婚は不可)
- 生計を同じくしている
- 青色申告者の事業専従者としてその年に給与の支払いをまったく得ていない、または白色申告者の事業専従者ではない
4つの条件を満たしたうえで、妻の所得が年間48万円以下なら配偶者控除、48万円~133万円以下なら配偶者特別控除を受けられます。夫の収入にもよりますが、最大38万円が夫の所得から控除されます。
もっと詳しく知りたい方は下記の記事も参考にしてください。
なお、夫が産休や育休を取得し妻の扶養に入る場合も同様です。
出産で出費した費用は医療費控除の申請が可能な場合も
妊娠中や出産時には、診察や入院など何かと医療費がかかります。「収入が減っているのに費用が増えて大変」という方におすすめなのが、医療費控除です。
医療費控除とは、自分または生計を同一にする家族の医療費を支払った際に、一定金額の所得控除を受けられる制度です。
出産関連の出費は医療費控除を申請できる可能性があります。どのような費用が医療費控除となり得るのか、また医療費控除の対象となる金額はいくらなのかを以下でご紹介します。
医療費控除の対象となる医療費の要件
医療費控除の対象となる医療費の事例を以下に挙げます。
- 妊娠と診断されてからの定期検診や検査、通院費用
- 入院の際に公共交通機関利用が困難なため利用したタクシー代
- 入院中の食事代
定期検診や検査など直接医療に関わる費用だけではなく、タクシー代や入院中の食事代まで対象に含まれます。妊娠・出産関連の費用は領収書を保管し、こまめに記録しておきましょう。
医療費控除の対象となる金額
医療費控除の対象となる金額は、以下の計算式で求められます。
医療費控除対象額=医療費の総額ー保険金等で補てんされる金額ー10万円
なお、その年の総所得金額等が200万円未満の場合は、総所得金額等の5%相当額が医療費控除の対象額になります。
医療費控除の申請の方法
医療費控除を受けるには確定申告の手続きが必要です。医療費控除の対象となる領収書を用いて「医療費控除の明細書」を作成し、確定申告を行います。なお、確定申告は申告書の提出の代わりに電子申告(e-tax)でも可能です。
また、確定申告後すぐに領収書を捨てないように注意してください。確定申告期限から5年間は、国税庁が申告内容を確認するために領収書の提示や提出を求めることがあるためです。提示が必要になった際に慌てることがないように、保管しておきましょう。
まとめ:産休・育休は優遇制度を活用しよう
産休・育休中に納める税金や、社会保険料の支払い、配偶者の扶養に入る選択肢、出産関連費用の医療費控除などについてご紹介しました。
産休・育休中に負担すべき税金もありますが、有利に利用できる制度も多いです。ぜひ優遇措置を活用して、よりよい産休・育休期間をお過ごしください。