医療費が高額になったとき確定申告で医療費控除を受けられて助かりますが、慣れないと手続きが面倒に感じられるかもしれません。また、夫婦共働きの場合は、どちらが確定申告すればいいのか迷うケースもあります。
今回の記事では、夫婦共働き家庭でのお得な確定申告方法について解説します。年末調整や確定申告の仕組みがわかると、効率的な節税が可能になります。
確定申告と所得控除
会社員の中には、年末調整は毎年やっているけれど確定申告についてはよくわからないという人も多いでしょう。まずは、確定申告と所得控除について基本事項を確認しましょう。
確定申告の意味と対象者
確定申告とは、1年間の所得金額と所得控除額などから課税所得を計算し納めるべき税金の金額を確定し税務署に報告することです。
個人事業主などは確定申告により納税し、会社員は既に源泉徴収されている税金の過不足を精算することになります。
税金の過不足がない会社員は確定申告不要ですが、以下の場合では会社員でも確定申告が必須です。
- 給与の年間収入金額が2,000万円を超える人
- 副業(給与所得と退職所得以外)の合計所得額が20万円を超える人
- 給与を2か所以上から受けていて所定の要件を満たす人
- 外国企業から受け取った退職金など、源泉徴収されないものがある人 など
所得控除を受ける方法は2つ
所得控除を受けて払い過ぎた税金の還付してもらうには、確定申告と年末調整の2つの方法があります。
年末調整は、会社に所定の届けをすることで税務署への手続きは会社がやってくれるため楽ですが、対象は以下の所得控除に限定されています。
- 基礎控除
- 配偶者(特別)控除
- 扶養控除
- 社会保険料控除
- 小規模企業共済等掛金控除
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除 など
上の所得控除について年末調整で申告漏れがある場合や、以下の控除を受ける場合は、会社員でも税務署で確定申告(電子申請も可)する必要があります。
- 医療費控除
- 雑損控除
- 寄附金等控除
所得控除を受けるための確定申告の期間
確定申告の期間は一般的に申告年度の翌年2月16日~3月15日ですが、2021年度(2020年度分)は新型コロナウイルス感染症対策で4月15日まで延長されます。
しかし、医療費控除を受けるための確定申告は還付申告(払い過ぎた税金を還付してもらうための申告)といい、申告年度の翌年1月1日から5年間、手続きが可能です。
医療費控除のお得な確定申告方法
医療費控除を受けるためには、年末調整ではなく確定申告が必要です。共働き家庭が医療費控除を受ける場合、以下のポイントに気をつけて確定申告すれば税金の還付金額が多くなる可能性があるので覚えておきましょう。
- 医療費控除は1人にまとめる
- 所得の高いほうが確定申告する
それぞれについて解説します。
お得な方法①医療費控除は1人にまとめる
医療費控除の金額は、以下のとおり計算します。
(医療費控除の金額)=(医療費総額)-(生命保険・健康保険からの補てん額)-10万円
※総所得金額等が200万円未満の人は総所得金額等の5%の金額
※200万円が限度
夫婦が共働きならそれぞれが確定申告すると思う人も多いでしょう。しかし、誰が医療費控除を受けるかについて、所得税法第73条第1項では「医療費控除は、自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族に係る医療費を支払った場合に適用する」と定められています。
配偶者やその他の親族について所得金額の要件はないため、夫または妻の一方が家族の医療費をまとめて確定申告することができるのです。
夫と妻が使った医療費がそれぞれ12万円のケースで、夫婦が別々に確定申告した場合とどちらか一方がまとめて確定申告した場合、それぞれの所得控除額は次の通りです。
- 夫婦が別々に確定申告:(所得控除額)=(12万円-10万円)✕2人=4万円
- 夫婦の一方が確定申告:(所得控除額)=(12万円✕2人-10万円)=14万円
つまり、医療費控除は、夫婦の一方がまとめて確定申告した方が所得控除額が大きいので、お得な方法であるといえます。
お得な方法②所得の高い方が確定申告する
前述のケースで、夫婦の一方が14万円の医療費控除を受ける場合、夫婦のどちらが確定申告すればよりお得なのでしょうか。
お得な方法は、所得の高い方が確定申告することです。夫のほうが高収入で所得税率20%、妻は10%の場合、医療費控除によって安くなる所得税額は次の通りです。
- 夫が確定申告した場合:14万円✕20%=2.8万円
- 妻が確定申告した場合:14万円✕10%=1.4万円
安くなる所得税額は「所得控除額✕税率」で決まるので、税率の高い高所得者ほど節税効果は高くなります。
なお、医療費控除の確定申告方法については以下の記事をご覧ください。
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その他の所得控除のお得な申告方法
前述の医療費控除では、お得な確定申告方法として所得の高い方が確定申告することを紹介しました。同じことが以下の所得控除でもいえます。
- ①雑損控除
- ②寄附金等控除
- ③年末調整のときの所得控除
お得な方法①雑損控除
自然災害や盗難にあって損害を受けた人は、確定申告によって雑損控除を受けられます。控除対象となる損害の原因は以下に限定されます。
- 震災、風水害、冷害、雪害、落雷などの自然災害
- 火災、火薬類の爆発など人為的な災害
- 害虫などによる異常災害
- 盗難
- 横領
所得控除額は以下のうち多いほうの金額です。
- 損失額-総所得金額等の10%
- 損失額のうち災害関連支出の金額-5万円
※損害額は、実際の損害額から保険金などを控除した金額
損害が発生した場合も医療費控除と同様、所得の高いほうが確定申告することで節税効果は高くなります。
お得な方法②寄附金等控除
ふるさと納税や以下のような寄附を行った人には、寄附金等控除が適用されます。
- 国または地方公共団体に対する寄附
- 指定寄附(公益社団法人などへの寄附)
- 認定NPO法人等に対する寄附
- 政治活動に関する寄附
所得控除額は寄附金額から2,000円を引いた額で、所得金額の40%相当が限度です。
寄附金等控除も、所得の高いほうが確定申告した方がお得です。
お得な方法③年末調整のときの所得控除
医療費控除など確定申告で所得控除できるものについて紹介してきましたが、年末調整で所得控除を行う場合も、ケースによっては以下の2点が成り立ちます。
- 所得控除は1人にまとめる
- 所得の高いほうが年末調整で所得控除を受ける
具体的には、以下のようなケースです。
- 扶養控除(夫婦以外の子どもや親)
- 社会保険料控除(子どもの国民年金保険料など)
- 小規模企業共済等掛金控除
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
ただし、厚生年金や健康保険の社会保険料は、夫婦それぞれの給与から控除されているため勝手に控除対象者を変えることはできません。
まとめ:確定申告のポイントは賢くもれなく申告すること
会社員は年末調整や確定申告によって所得控除を受け、源泉徴収で払い過ぎた保険料の還付を受けられます。年末調整のほうが手続きは楽ですが、確定申告でしか受けられない所得控除もあるので、必要に応じて確定申告が必要です。
夫婦共働き家庭の確定申告のポイントは、所得の高いほうがまとめて所得控除を受けることです。毎年、複数の所得控除をもらさず、かつ工夫して申告することで大きな節税効果を得られます。