育休中のお金に関して、以下のようなことを心配していないでしょうか。
- 育休中は給料がないけど、どうなってしまうのか
- 育休中も社会保険料を支払うのか
- 育休復帰後に給料は下がるけど、社会保険料はどうなるのか
実は、育休中の社会保険料は手続きによって免除となり、さらに育休中も育休前の手取り額の約80%が支給されます。また、育休復帰後の社会保険料を4ヶ月目から減額する方法もあります。
しかし、社会保険料の免除や減額をするためには、手続きが必要です。
本記事では、厚生労働省のパンフレットをもとに、育休中のお金についてわかりやすく解説します。手取りを減らさないためにもぜひ参考にしてください。
【一覧表】育休中・育休復帰後に関わるお金
育休中や育休復帰後のお金に関することについて、収入はどうなるのか、社会保険料はどうなるのかについて一覧表にまとめました。
期間 |
収入 |
社会保険料 |
産前産後休業 |
・出産育児一時金42万円 |
申出により免除 |
育児休業 |
給料の約67%(※1) |
申出により免除 |
育休復帰後 |
時短勤務等の制限により減少 |
申出により減額できる場合がある |
参照:厚生労働省「育児休業や介護休業をする方を経済的に支援します」(PDF)
以上のように、育休中も給料の約67%(※1)が非課税で支給されます。社会保険料も申出により免除となるので、育休中の手取りは給料の約80%(※2)です。
※1:育休中の給料が育休前6ヶ月の平均給料の13%以下の場合で、6ヶ月経過後は50%支給
※2:住民税は前年の所得で計算された税額を6月から納めるため、住民税は納める場合があります
「社会保険料を支払わないと将来もらえる年金が減るのでは」と不安に感じる人もいるかもしれません。
しかし、子が3歳までの間に社会保険料を払わなかったり減額したりしても、養育前の社会保険料を支払ったものとして年金が計算されます。つまり、年金が減ることはありません。
産休や育休中の税金については、以下の記事を参考にしてください。
育休復帰後の社会保険料はいつから発生するのか?
本章では、育休復帰後の社会保険料について以下の2項目で解説いたします。
- 引かれ始めるとき
- 最初に引かれる金額
上記の2項目は、多くの人が盲点になりやすい傾向にあります。本章で正しい知識を学んで、抜け漏れがないようにしましょう。
育休復帰後の最初の給料から引かれる
「育児休業の終了予定日の翌日が含まれる月の一ヶ月前まで」が社会保険料の免除期間となります。つまり、育休から復帰後の初めての給与から社会保険料が差し引かれます。
また、社会保険料は日割りでの計算は行われず、月単位での計算となる点をご注意ください。
最初に引かれる金額はいくらなのか?
育休前にフルタイムで働いていた場合、社会保険料はそのときの給料に基づいて算出されます。
育休からの復帰時に、短時間勤務を選ぶ親も多いため、給与は短時間勤務により減少しているにも関わらず、社会保険料は産前産後休業前のフルタイムの給与と同じ金額が引かれることになります。
短時間勤務による復帰後、手取りが大幅に減少する可能性があることは留意しておきしょう。
育休復帰後の社会保険料は4ヶ月目で変わる
本章では、育休復帰後の社会保険料の移り変わりについて以下の2項目から解説します。
- 育休復帰後の社会保険料を軽減できる制度は?
- 育休復帰後の社会保険料はどのように変わる?
育休復帰直後に社会保険料が引かれるため、慌ててしまった方も多いと思います。しかし、本章の内容を活かせば社会保険料の負担を軽くできます。
育休復帰後の社会保険料を軽減できる制度を利用できる
短時間勤務を選択すると、出産前と比べて給与が減ることが一般的です。しかし、社会保険料は産休前の標準報酬月額に基づいて算出されるため、給与全体に対する社会保険料の比率が増えます。
これにより、育児休業後の保険料の負担が大きくなり、家計に影響を及ぼし、育児休業や短時間勤務の選択を難しくする可能性があるでしょう。これを緩和するために「育休等終了時改定」という制度が存在します。
この制度は、育児休業後の保険料の負担を少しでも軽くするために「標準報酬月額」の改定を容易にするものです。「育休等終了時改定」の詳細は次章で説明いたします。
育休復帰後の社会保険料はどのように変わる?
「育休等終了時改定」が適用されれば、育休復帰から3ヶ月間の給料の平均額をもとに、4ヶ月目から適正な社会保険料に改定されます。育休前に給与が減額されている人は、4カ月目以降は少し手取りの額が増えるでしょう。
育休復帰後の社会保険料を減らす制度
本章では、育休等終了時改定制度の意味と注意点について解説します。育休等終了時改定制度は、育休後の親の負担を減らせます。
しかし、良い面ばかりに着目しているとデメリットを見落としてしまい、後に損をすることになります。注意点も理解したうえで、制度を利用するか吟味しましょう。
育休等終了時改定制度とは?
「育児休業等終了時報酬月額変更届」とは、育児休業から復職後、短時間勤務に切り替えることで給与が減少した場合に、社会保険料の支払額を減らすための制度です。この制度を利用することで、時短勤務によって下がった3か月の平均給与から算定した標準月額報酬に改定できます。
ただし、制度を利用するためには一定の要件を満たす必要があります。具体的には、以下の条件を満たす必要があります。
- 3歳未満の子どもを養育していること
- 育児休業前の標準報酬月額と改定後の額に1等級以上の差があること
- 育休明けに勤務した3か月間で基礎日数が17日以上ある月が少なくても1か月あること
また、この制度は従業員が希望した場合のみ適用されます。そのため、従業員が制度を理解し、適切に申請することが重要です。
育休等終了時改定制度の注意点
育休等終了時改定制度を利用する際には注意が必要です。具体的には、将来受け取る年金額が減少する可能性があります。
これは、社会保険料が減額されると、それに伴って厚生年金保険料の支払額も減少するためです。また、出産手当や傷病手当の額も減少する可能性があります。
この記事の内容の他にも、「お金が貯まる29の知恵」を1冊にまとめました。
今ならLINE登録するだけで、無料でプレゼントしています。
この機会に是非一度LINE登録して、特典を今スグ受け取ってください。
社会保険料を減らしても年金が減らない制度
本章では、社会保険料を減らしても年金が減らない制度である「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」について紹介します。育休等終了時改定制度との関係も紹介します。
養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置とは?
「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」とは、子どもが3歳になるまでの期間において、社会保険料の支払いが減少しても、将来の年金額が変わらないようにする制度です。具体的には、「養育期間標準報酬月額特例申出書」を提出することでこの制度を利用できます。
この制度が適用されると、産休・育休を取得した人でも、常に働いていた場合と同じ年金の額を受け取ることができます。また、この制度は「育児休業終了時改定」と併用することが可能で、その結果、時短勤務の給料に応じた社会保険料の支払額となり、一方で将来受け取れる年金は、産休・育休前の給料に応じた額のままになります。
育休等終了時改定制度と併用できる
「育休等終了時改定制度」と「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」は、併用することが可能です。これにより、時短勤務の給料に応じた社会保険料の支払額になりつつ、将来受け取れる年金は、産休育休前の給料に応じた額のままになります。
つまり、社会保険料の負担を軽減しつつ、将来の年金受給額を確保することが可能となります。ただし、これらの制度を利用するためには、必要な申請が必要となるため、所属する会社の総務部門や年金事務所に確認することが重要です。
育休中の社会保険料はどうなる?
育休中の社会保険料は、申出によって免除されます。しかし、申出がない場合には、育休中でもこれまでと同じ社会保険料を支払わなければなりません。
申出とは、事業主を通じて「育児休業等取得者申出書」を年金事務所または健康保険組合に提出することです。
ちなみに、なぜ給料をもらっていないのに社会保険料を払わなければならないかというと、社会保険料は「標準報酬月額」に保険料率を掛けて算出されるからです。
標準報酬月額とは?
標準報酬月額とは、給料を1等級から32等級(健康保険では50等級)までに区分した金額です。例えば給料が30万円だと、厚生年金保険は19等級(健康保険では22等級)となり、標準報酬月額は30万円です。
標準報酬月額は以下表のような場合に変更(決定もしくは改定)されますが、育休中は「支払基礎日数」が足りず、どの決定・改定要件も満たしません。
つまり、働いた日数が少ないときは標準報酬月額が変わらず、社会保険料も変わらないのです。
資格取得時決定 |
入社時に決定 |
定時決定 |
4月から6月(支払基礎日数17日以上)の報酬をもとに決定 |
随時改定 |
固定賃金の変動で継続した3ヶ月間(支払基礎日数17日以上)を平均し2等級以上の差が生じると改定 |
育休等終了時改定 |
届出により、育休終了日の翌月以後3ヶ月間(支払基礎日数17日以上)の報酬に1等級以上の差があれば4ヶ月目から改定 |
保険者決定 |
資格取得時決定や定時決定が困難・不当であるとき決定 ※病欠などで、4月から6月に無報酬である場合など |
育休中の社会保険料は申出によって免除されるので、忘れずに申出を行いましょう。
育休中の社会保険料免除にデメリットはあるのか?
育休中に社会保険料の免除を受けても、デメリットはありません。なぜなら、社会保険料を払わなくても、実際には払ったものとして取り扱われるからです。
具体的には、年金額を計算する際、育休中で社会保険料を免除された期間は「保険料納付済期間」として取り扱われます。
したがって、社会保険料の免除を受けても、デメリットはありません。
育休中の共働き家庭が活用するべき3つの所得控除(節税)
最後に、育休中の共働き家庭が活用すべき3つの所得控除(節税)を紹介します。
共働きだと受けられなかった所得控除も、育休中には受けられることがあるため、しっかり確認しておきましょう。
- 所得控除①配偶者(特別)控除
- 所得控除②生命保険料控除
- 所得控除③医療費控除
所得控除①配偶者(特別)控除
その年の12月31日時点で、配偶者の年収が201.6万円未満であれば、配偶者(特別)控除を受けられます。
配偶者(特別)控除を受けるには、年収の高い配偶者が、会社の年末調整において「配偶者控除等申告書」を提出しなければなりません。
このとき、本人と配偶者の収入(所得)金額の記入は「見積額」です。
忘れないように記載して提出しましょう。
※参考:国税庁「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」(PDF)
所得控除②生命保険料控除
育休中に限ったことではありませんが、生命保険料控除をうまく利用することも検討してみましょう。
例えば、妻の生命保険料であっても、夫が支払えば夫が生命保険料控除を受けられます(※1)。
年収の高いほうが生命保険料を支払うことで、所得控除の効果は税率に応じて大きくなります。ぜひ利用できるか検討してみてください。
控除を受けるには、年末調整で支払額を「保険料控除申告書」(※2)に記載し、提出します。
※1:国税庁「妻が契約者の生命保険料」
※2:国税庁「給与所得者の保険料控除申告書」
所得控除③医療費控除
医療費控除も、年収の高いほうが医療費を支払うことで節税効果を高められます。
なぜなら、医療費控除の対象となる医療費は、生計を一にしている配偶者やその他の親族のために支払った医療費も対象となるためです。
医療費控除について、詳しくは以下の記事を参考にしてみてください。
まとめ:育休中や育休復帰後の社会保険料負担を抑えるために制度を利用しましょう
育休中や、育休復帰後のお金のことを解説してきました。さまざまな制度があるため、最後に概要をまとめておきます。
- 育休中は、育休前の手取りの約80%が支給される
- 育休中の社会保険料は申出によって免除され、支払ったものとされる
- 育休復帰後の社会保険料は申出によって、4ヶ月目から抑えられる場合がある
- 子が3歳になるまでに社会保険料が減っても、申出によって年金だけは育休前の社会保険料で計算してくれる
- 育休中に配偶者の年収が201.6万円未満なら、配偶者(特別)控除を受けられる
社会保険料の各種措置については、申し出がなければ受けられません。忘れずに申出を行いましょう。
ただし、今後も出産の予定がある場合には、育休復帰後の社会保険料を抑えることによって次回以降もらえる出産手当金が減る可能性もあります。
出産予定の人は、育休復帰後に「育休等終了時改定」を利用するかどうか慎重に検討しましょう。