勤務先で企業型確定拠出年金(企業型DC)に加入している場合、「マッチング拠出」という言葉を耳にしたことがあるのではないでしょうか。「マッチング拠出がお得だと聞いたけれど、制度についてあまり知らない」という人は多いです。
そこで本記事では、マッチング拠出についての概要とメリット、デメリットをご紹介します。マッチング拠出の内容を理解すると、今の自分が利用すべきか否かがわかります。
マッチング拠出とは?
企業型確定拠出年金(企業型DC)は、企業が掛金を拠出して従業員が運用し60歳以降に受け取る制度です。企業が掛金を負担して従業員の老後資産を作っています。
それに対しマッチング拠出は、企業型確定拠出年金(企業型DC)で会社が拠出している掛金に加入者が一定の範囲で上乗せして拠出できる制度です。
マッチング拠出の場合も、運用商品をそれぞれ選んで自分で運用し、60歳以降に年金または一時金として受け取ります。ただし、マッチング拠出の加入者掛金は、その全額が課税対象となる所得から控除されるので、税金面でメリットがあります。
マッチング拠出ができる条件
「お得そうだからマッチング拠出をやってみたい」と思うかもしれません。
しかし、マッチング拠出をするためには条件が2つあります。
- 勤務先に企業型確定拠出年金があること
- 勤務先がマッチング拠出を導入していること
ご自分の勤務先の状況について事前に調べておいてください。
なお、企業年金連合会が2019年に実施した調査によると、企業型確定拠出年金制度を利用している企業のうち53.8%がマッチング拠出を導入しています。マッチング拠出の利用率の平均は30.6%です。
マッチング拠出の掛金の上限額
「マッチング拠出の掛金が全額控除になるのであれば、掛金を増やすとよりお得では」と思いついた人もいらっしゃるでしょう。
しかし、マッチング拠出の掛金には上限があり、以下の2つの条件を満たす必要があります。
- 加入者掛金+事業主掛金をあわせて月額55,000円まで (厚生年金基金、確定給付企業年金など他の企業年金にも加入している場合は月額27,500円まで)
- 加入者掛金が事業主掛金を超えないこと
たとえば、勤務先の事業主掛金が月10,000円なら従業員本人の加入者掛金も月10,000円までしか認められません。また、加入者掛金は毎月定額拠出するため、ボーナス時の上乗せ等はありません。自分の好きなように掛金を設定できるわけではないことを、ご理解ください。
マッチング拠出をするメリット
マッチング拠出は、税制面で優遇をうけて節税をしながら老後のために資産運用ができる制度です。
具体的なメリットは次の3点です。
- 加入者掛金が全額所得控除されて節税できる
- 運用益が非課税になり資産形成しやすい
- 給料天引きで所得控除の手続きまで会社におまかせできる
マッチング拠出を利用できる場合はぜひ加入について考慮してみてください。それぞれのメリットについて具体的にご紹介します。
メリット①加入者掛金が全額所得控除されて節税できる
従業員本人が払う加入者掛金は全額所得控除されます。その結果課税所得が減額され、所得税と住民税の減額につながります。「自分の老後のための積み立て」がすべて非課税になるという、税制面の優遇措置です。
給与から毎月10,000円を積立預金した場合は、その10,000円も課税対象に含まれます。一方、マッチング拠出の場合は同様に月10,000円を拠出すると、10,000円は課税対象となる所得から控除されます。
老後のための資産形成として、預金とは税制面で全く異なるメリットを得られるのがマッチング拠出です。
マッチング拠出をするといくら節税できる?節税効果をシミュレーション
マッチング拠出を利用したときに具体的にいくらの節税効果があるか知りたい人は、ろうきんの「マッチング拠出の節税効果確認シミュレーター」で試算してみましょう。
年齢・扶養者情報・年収・マッチング拠出の月額を入力するだけで、所得税と住民税をあわせて年間でいくら節税できるかカンタンに分かります。マッチング拠出の予定額をいろいろ変えてシミュレーションすることで、無理のない効果的な金額が算出できます。
メリット②運用益が非課税になり資産形成しやすい
事業主掛金のみで行なわれる企業型確定拠出年金と同様に、マッチング拠出も運用益については非課税です。株式投資や投資信託等通常の資産運用では、運用益に20.315%課税されます。しかし、マッチング拠出で運用し得られた利益は、運用期間中課税されません。
また、運用を10年、20年と長期継続するほど約20%と0%の差が蓄積されます。老後のために投資信託等で資産運用をしようと考える場合、マッチング拠出なら税制面の優遇を受けながら資産形成ができるので、ご一考ください。
メリット③給料天引きで所得控除の手続きまで会社におまかせできる
マッチング拠出の掛金は給料から天引きされ、所得控除の手続きも会社が行ないます。控除を受けるために年末調整や確定申告をする必要はなく、面倒くさがりな人も安心です。
個人型確定拠出年金のiDeCoは掛金の所得控除や運用益への税制優遇措置を受けられる点では共通しています。ただし、iDeCoは毎月の掛金支払いを自分で行なう必要があります。また、所得控除を受けるためには年末調整や確定申告が必要です。
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マッチング拠出をするデメリット
ここまではマッチング拠出のメリットをご紹介してきました。しかし、マッチング拠出には3つのデメリットがあります。
- 60歳まで掛金を引き出すことができない
- 拠出できる金額に上限がある
- 金額の変更は1年に1回しかできない
これらのデメリットを知らずにマッチング拠出をすると、後悔する可能性もあるでしょう。それぞれのデメリットについて、以下でご紹介します。
デメリット①60歳まで掛金を引き出すことができない
マッチング拠出は老後のための資産形成という目的の制度なので、60歳まで掛金を引き出すことができません。
預金や一般証券口座なら必要額を引き出したり、解約して全額引き出したりできます。しかし、マッチング拠出した積み立てたお金は、原則60歳まで引き出せません。
病気や事故による負傷といった不慮の事態や、住宅リフォーム、子どもの教育費等でまとまった金額が必要になっても、マッチング拠出の掛金は使えません。非常時にも対応できる一定の金額を預金や現金で準備しておき、生活に支障のない範囲でマッチング拠出を行ないましょう。
デメリット②拠出できる金額に上限がある
記事冒頭で説明したとおり、マッチング拠出には拠出できる金額に上限があります。
企業型確定拠出年金は企業年金のひとつであり、メインの拠出者はあくまでも会社という考え方に基づいた制度です。そのため、マッチング拠出での掛金は会社の掛金を上回ることができません。
会社の掛金が少額の場合、マッチング拠出できる金額も少ないため税制メリットを実感しづらいこともあるでしょう。会社によっては掛金が月1,000円程度というケースもあるので、上限額が少なすぎると節税効果が得にくい可能性があります。
デメリット③金額の変更は1年に1回しかできない
マッチング拠出の金額の変更は1年に1回しかできないため、要注意です。ただし、やむを得ない事情により掛金拠出を中断し0円にすること、0円から戻すことはいつでも認められます。
家計に無理のない金額に設定するのが基本です。
まとめ:無理のない範囲でマッチング拠出制度を活用しよう
マッチング拠出の概要とメリット、デメリットについてご紹介しました。先述のとおりデメリットはありますが、適切な掛金に設定しておくとメリットを享受できます。
掛金の所得控除に運用益の税制優遇措置、会社が手続きを全部処理という、老後の資産形成として恵まれた条件にある制度です。勤務先に企業型確定拠出年金がありマッチング拠出も備えている場合、無理のない範囲でマッチング拠出を活用することを推奨します。