平均寿命が伸びている日本では、確定拠出年金制度を利用して運用を行う人が増えています。一方、実際に確定拠出年金を受け取る際には税金がかかることを知らずに運用している人が少なくありません。
今回は確定拠出年金の受け取り時に必要となる税金について解説します。受け取り方法によって課税金額は大きく異なり、自分自身に合う受け取り方法を選ぶことが大切です。
いざ確定拠出年金の受け取り段階になって慌てることのないよう、確定拠出年金制度の受け取り方法については必ず確認しましょう。
確定拠出年金は2種類
加入義務のある公的年金制度とは違い、加入者(もしくは事業者)が任意で加入する年金制度を私的年金と言います。豊かなセカンドライフを迎えるために自助努力が必要と感じ、確定拠出年金を利用する方が増加しています。
確定拠出年金とは、加入者が自ら出したお金を自らで運用し、その実績に応じて受け取り額が決定する制度です。企業型確定拠出年金と個人型確定拠出年金の2つがあり、それぞれ異なる特徴があります。
それぞれの年金制度の特徴を以下で解説していきます。
個人型確定拠出年金
個人型確定拠出年金は、別名iDeCo(イデコ)と言います。iDeCoと言う呼び方のほうが馴染みがある人も多いのではないでしょうか。
個人型確定拠出年金の特徴は、以下の2点です。
- 加入者自身がお金を拠出し、加入者個人で運用を行う
- 掛金は所得控除の対象になる
確定拠出年金において、お金を出すことを拠出と言います。自分自身で拠出額を決め、運用先も自身で決定する必要があります。
掛金が所得控除の対象になり、税金が軽減されるというメリットがあります。セカンドライフの資金確保のために、少額投資の非課税制度であるNISAと並行して始める人が増えています。
企業型確定拠出年金
企業型という名前の通り、企業(事業者)がお金を拠出し、従業員が個人の責任で運用する制度を企業型確定拠出年金と言います。これは退職時点の給付額を企業が事前に決めておき、個人がその運用責任を負うものです。
企業によっては、掛金を個人で任意に上乗せするマッチング拠出ができることもあります。企業型確定拠出年金の特徴は、以下の2点です。
- 勤務先が拠出したお金を従業員個人が資産運用を行う
- マッチング拠出が可能な企業もある
企業型確定拠出年金制度を採用している企業の従業員しか加入できない点が、個人型との相違点です。
確定拠出年金の受け取り方法は3パターン
老後の資金準備のために利用者が増えている確定拠出年金ですが、制度を利用する前に受け取り方法について確認しておく必要があります。
受け取り方法には、一括で受け取る一時金の他に、年金という形で毎年一定額を受け取る方法があります。それらに加え、一時金と年金を組み合わせて受け取ることもでき、確定拠出年金の受け取り方には3種類あることを覚えておきましょう。
それぞれの受け取り方について以下で解説します。
一時金
一時金でお金を受け取ると、退職所得控除が使えます。これは退職金に係る税金を免除してくれるもので、まとまった金額を控除として差し引くことができます。
場合によっては、退職所得控除のおかげで全額非課税になることもあります。
年金
年金での受け取りの場合、金融機関によって受け取り方法が異なります。一般的には、5年・10年・15年・20年から選ぶ、もしくは5年から20年の間で1年刻みで受け取り期間を設定するという2パターンです。
また、何年間かけて受け取るかという点に加えて、1年に何回受け取るかを設定できるケースもあります。ライフスタイルに応じた受け取り方が可能です。
一時金と年金の組み合わせ
受け取る金額の一部は一括で、残りは年金形式でというように、一時金と年金の両方で受け取ることも可能です。
税制面については、一時金で受け取るお金は一時金に係る税制、年金で受け取るお金は年金に係る税制がそれぞれ適用されます。
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一時金で受け取る場合
ここでは一時金で受け取る場合の課税の仕組みと課税金額の計算方法について解説します。先述の通り、一時金で受け取るメリットは、退職所得控除が使えるという点です。勤続年数に応じた控除額が設定されていますので、ご自身の控除額についてシミュレーションしてみるのも良いでしょう。
退職所得として分離課税される
一時金は退職所得とみなされ、分離課税されます。所得税には「総合課税」と「分離課税」があります。分離課税が適用される所得は退職所得の他にもいくつかありますが、他の所得とは合算されません。
その所得に応じた独自の税率で所得税が算出されるため、税金額が低く抑えられるという特徴があります。
退職所得控除の対象
退職所得として分離課税される一時金ですが、これには退職所得控除が適用されます。退職所得控除額は、勤続年数によって異なる計算式が用いられています。
- ①勤続年数が20年以下の場合
- ②勤続年数が20年超の場合
①の勤続年数が20年以下の場合は40万円×勤続年数で算出した金額が退職所得控除額となります。一方、②の勤続年数が20年を超える場合は、70万円×(勤続年数-20年)+800万円が退職所得控除額となります。
受け取り時の勤続年数が20年超かどうかが、控除額算出のポイントとなります。
退職所得の計算方法
退職所得控除額を算出できれば、実際の退職所得を求めることができます。
退職所得金額の算出方法は以下の通りです。
退職所得金額=(退職金としての収入額-退職所得控除)÷2
この式によって算出した金額が課税対象額となります。勤続年数によっては退職所得控除額が大きく膨らむことで、全額非課税で受け取ることができるケースが生じます。
年金で受け取る場合
数年間に分けてお金を受け取る場合、一時金で受け取る場合と比べ、課税される所得額や控除の方法も大きく異なります。
雑所得として総合課税される
年金で受け取る場合、雑所得とみなされます。年金制度において最も馴染みのある雑所得と言えば公的年金があります。その他にも、オークションや中古品販売などの収入から経費を差し引いた金額も雑所得に該当します。
この雑所得は、総合課税という方法で税金額が算出されます。総合課税は、他の所得と合算し、その合計額に所定の税率を適用して課税金額を算出します。
公的年金控除の対象
退職所得控除が適用される一時金受け取りと違い、年金での受け取りには公的年金等控除の対象です。
公的年金等控除額の計算は、以下の早見表で確認してください。控除額は、地方自治体などによって異なりますので、本早見表は参考としてご覧いただき、必ずご自身の公的年金等控除額をお住まいの自治体で確認ください
年齢 |
公的年金収入額 | 公的年金等に係る雑所得 |
65歳未満 | ~60万円以下 | 0円 |
60万円超~130万円未満 | 収入-60万円 | |
130万円以上~410万円未満 | 収入×0.75-27.5万円 | |
410万円以上~770万円未満 | 収入×0.85-68.5万円 | |
770万円以上~1000万円未満 | 収入×0.95-145.5万円 | |
1000万円以上 | 収入-195.5万円 | |
65歳以上 | ~110万円以下 | 0円 |
110万円超~330万円未満 | 収入-110万円 | |
330万円以上~410万円未満 | 収入×0.75-27.5万円 | |
410万円以上~770万円未満 | 収入×0.85-68.5万円 | |
770万円以上~1000万円未満 | 収入×0.95-145.5万円 | |
1000万円以上 | 収入-195.5万円 |
雑所得の計算方法
雑所得は以下の式で算出できます。
公的年金等に係る雑所得=公的年金等の収入額-公的年金等控除額
一時金で受け取った場合、まとまったお金が手元に入るため、初期に多額のお金が必要な場合は良いものの、支出が増えて無駄遣いをしてしまう懸念があります。しかし、年金受け取りの場合はそのようなことはなく、お金の使いすぎを防ぎ計画的な支出を実現できるというメリットがあります。
まとめ:確定拠出年金の受け取り方法を理解し、自分に合う方法を選ぼう
拠出額や運用方法、さらにお金の受け取りの時期や方法まで自分で選択できる確定拠出年金。非常に自由度が高い一方で、受け取り時の方法次第では課税されるケースもあります。
課税方法は、勤続年数や公的年金の受け取り状況などによっても異なるため、最適な受け取り方法は人によって異なります。それぞれの受け取り方の特徴や課税内容を理解し、自分自身に合う受け取り方法を選ぶことが大切です。
大切な老後のお金を少しでも多く受け取ることができるよう、受け取り前には税金額のシミュレーションを行うことが大切です。