株式投資をする際、よく目にする「PER」「PBR」「ROE」という指標。「名前は聞いたことがあるけれど実際にどう投資に反映するのかはわからない」という方も多いのではないでしょうか。
株式投資を行うにあたって、この3つの指標は株価の基本的な考え方としても押さえておきたい内容です。
今回は、3つの指標の具体的な内容と実践的な算出方法、活用する際の注意点などを解説します。それぞれの指標をどのように参考にして株式投資をすべきかわかります。
PER、PBR、ROEとは
PER、PBR、ROEとは、株価を評価する際に指標となる数値を表す言葉です。 それぞれの正式な名称と日本語の意味は以下です。
- PER(Price Earnings Ratio):株価収益率
- PBR(Price Book value Ratio): 株価純資産倍率
- ROE(Return On Equity): 自己資本利益率
PERとPBRは、株価を企業の経営成績や財政状況と比較した際に割高か割安かを示す数値で、 ROEは、株式資本に対してどれだけ利益を出したかを示す数値です。それぞれの指標は計算によって算出することができます。
株価の値動きを予測することは容易ではありません。企業が公開している情報と計算式を当てはめて指標を算出し、賢く株式投資を行いましょう。
PER(株価収益率)
PER(株価収益率)とは、その時の株価が企業の1株当たりの純利益の何倍に相当するかを示す指標です。
PERの数値によって「株価が1株ごとの当期純利益の何倍まで買われているか?」を調べることができます。株式投資の際には、銘柄ごとにPERを比較してみるといいでしょう。
PERの計算式
PERは、株価を1株当たりの利益で割って求めます。
PER(倍) = 株価 ÷ 1株当たり純利益
株価が800円の場合、その会社の1株当たりの利益が100円であればPERは8倍(800÷100)です。
この計算式の1株当たりの利益というのは、一般的に実績値だけではなく予測値を用いることもあります。
PERの目安
明確な指標はありませんが、日経平均の場合、PERが15倍程度であれば、適正な株価であるといわれています。
なお、1社のみのPERだけでは参考情報として不十分ということに注意が必要です。例としてPERが5倍の会社があったとして、競合他社も5倍程度であれば高い低いの判断はできません。
PERの活用方法
PERによってわかることは、「現在の株価が割安か割高か」です。
PERが低ければ会社の利益に対して株価が割安であり、高ければ株価が割高であると判断できます。株価が割高であるということは、投資効率が悪いので買い時ではないと考えられます。
PBR(株価純資産倍率)
PBR(株価純資産倍率)は現在の株価がその企業の1株当たりの純資産に対して何倍に相当するかを表す指標です。
PERと同様に、株価が適正かどうかを判断するための数値になります。
PBRの計算式
PBRは株価を1株当たりの純資産で割って求めることができます。
PBR(倍)=株価÷1株当たり純資産
株価が1200円で純資産が1000円の会社の場合、PBRは1.2倍(1200÷1000)となります。
PBRの目安
一般的な判断基準として、PBRが1倍以上であれば割高、1倍未満であれば割安だと考えられます。
PBRが1倍以上であるということは株価と1株当たりの純資産が等しいということです。つまり、理論上は会社が解散した場合、株主に投資額がそのまま戻ってくる株価であるといえます。
逆に、PBRが1倍未満のケースは、株価は適正水準を割り込んでいるので「割安=買い時」であるという判断材料にできます。
PBRの活用方法
PBRは、「PERと組み合わせることで株価が適正かどうかをより正確に判断する」ことができます。
2つの指標の違いはPERは会社の「利益」を基準に判断し、PBRは会社の「資産」を基準に判断するという点です。投資家として、会社の収益性に期待するのか、会社の資産を重視するのかによってこの2つの指標を使い分けましょう。
ROE(自己資本利益率)
ROE(自己資本利益率)とは、株主が企業に拠出した資本を使ってその企業がどれだけの利益を獲得したかという指標です。
すなわち、企業が資本をどれだけ有効に活用しているかを示しており、この数値によって収益性を可視化できます。
ROEの計算式
ROEの単位は%で、当期純利益を自己資本で割って100を掛けて算出します。
ROE(%)=(当期純利益÷自己資本)×100
ROEの目安
ROEの目安は10%ほどで、一般に、20%を超えると優良企業と評価されることが多いです。
ROEが高いほど、株主資本を有効活用して利益を上げられているため、投資に適している会社であると判断できます。
ROEの活用方法
自己資本(株主資本)とは企業が株主から預かっているお金です。株主にとって、基本金を使って企業が効率よく利益を上げてくれることは直接自分の資産の利回りに関係するため重視する場合が多いでしょう。
ROEとは、投資家が投資先を選定する際に「企業の稼ぐ力を測ることができる」数値と言えるでしょう。
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PER、PBR、ROEの関係性
株価が割高か割安かを測るPER(株価収益率)・PBR(株価純資産倍率)と、自己資本の収益率を測るROE(自己資本利益率)は一見すると無関係に思えるかもしれません。しかし、株式投資において3つの指標の関係性をおさえておくことは重要です。
損をしない株式投資をする上で大切なのは、「少ない自己資本で大きな利益を出せる優良企業」を、「自己資本よりも安い株価」で買うということです。
高ROEの企業は成長期待が高いため、PBRが高くなる傾向があります。そして結果的にPERが割高になるというわけです。
また、3つの指標の関係を表すときに、PBR=ROE×PERという計算式を用いることができます。この計算式から、3つの指標がお互いに作用しあっている関係であることがわかります。
ROEが高いとなぜ株価が上がりやすい?
一般的に、ROEが高い企業の株価は上昇しやすい傾向にあると言われています。
ROEは企業が株主資本に対していかに利益を上げられているかを示す数値なので「当然では?」と思われるかもしれません、しかし、ROEの数値自体は直接株価には関係がなく、PERとPBRとの関係性が重要になるのです。
ROEと株価の関係を、前項の「PBR=ROE×PER」という計算式を用いて説明します。
式を変形して、「PER=PBR÷ROE」としてみましょう。この式から、ROEが高くなればPERが低くなることがわかります。
ROEが高くてPERが低いとはつまり、「会社として稼ぐ力があり、尚且つ株価の上昇が期待できる」という投資家にとって理想的な状況です。買い手が増え、株価は上がるでしょう。
このことから、ROEが高い状態は株価が上昇する傾向にあると言えます。
PER、PBR、ROEから導き出す「投資すべき銘柄」
ここまでで、PERとPBRを見ることで株価の適正価格がわかり、ROEによって企業の伸びしろがわかるという仕組みが見えてきました。
この指標をうまく利用して、投資すべき銘柄を選出しましょう。もっともわかりやすいのは、「高ROEで低PBRである」ということです。
ROEが高くて、PBRが低ければ、将来的に収益が上がることが期待できます。現状の株価が低くても、将来への期待値が高いためPERが上昇して株価も上がることが見込めます。
投資判断をする際、割安に放置されている企業を指標を用いてスクリーニングをします。その際に、「高ROEで低PBR」の企業があれば、その企業は割安と見て積極的な投資を検討しましょう。
PER、PBR、ROEだけで投資銘柄を決めるのは高リスク
株価の指標による株式投資選定を行う上で、重要な考え方があります。それは「指標はあくまで目安であり、成果を保証するものではない」ということです。ここまでご紹介した3つの指標とセオリーだけで確実な株式投資ができるとは限りません。
例えば、PERの低さを見込んで割安だと判断して株式を購入した場合。実はその企業はただ業績が悪いだけで、今期の決算は大幅に減益をした……という可能性もあります。結果、PERが低く株価は下がったまま上昇することなく、いわば「塩漬け状態」になってしまうということが起きるのです。
ROEに頼った企業評価には落とし穴もあります。ROEはあくまで収益率(%)なので、自己資本の少ない企業もROEが高くなります。自己資本が少ないということは、負債の比率が多いという一面もあるのです。
上記はあくまで一例ですが、PER、PBR、ROEだけで銘柄を選定することはリスクが高いです。
対象の企業の業績や今後の経営方針など、数値以外の点も必ず注視して検討するようにしましょう。
まとめ:PER、PBR、ROEだけにとらわれない総合的な判断が大切
PER、PBR、ROEは確かに投資判断の材料として有効な指標です。しかし、指標だけにとらわれて視野が狭くなってしまうという危険性もあります。
投資判断の際に、投資する価値が高い企業を選ぶ場合は、まずその企業の利益の継続性や持続性も見るようにしましょう。指標が全てではなく、あくまで有効な参考値として考えることが大切です。
現状が全てではありません。これらの指標の過去3年ほどの推移を見た上で判断することで投資成果がより理想的になるでしょう。
投資に必要な「総合的な視点」というのはこの3つの指標に限らず、投資対象である企業の状況や今後の動向を幅広く見通すことです。1つ1つの判断材料の知識を深め、より確実な株式投資を目指していきましょう。