少ない資金で手軽に投資できるソーシャルレンディングを利用する人が増えています。ソーシャルレンディングで初めて利益を得た人の中には、「ソーシャルレンディングにはどんな税金がかかるの?」「確定申告は必要?」などの疑問を感じる人もいるでしょう。
今回の記事では、ソーシャルレンディングにかかる税金と確定申告の要・不要について解説します。納税手続きを怠ると税金が加算されることもあるため、本記事で確認の上、確定申告が必要な人は忘れずに手続きをしましょう。
ソーシャルレンディングの分配金は雑所得として総合課税
ソーシャルレンディングで得た分配金(利益)は所得となり、所得税が課されます。まずは、所得の種類と課税方法について見ていきましょう。ソーシャルレンディングの分配金については、次の記事を参照ください。
ソーシャルレンディングの分配金は雑所得になる
所得税法では次の10種類の所得が定められていて、ソーシャルレンディングの分配金は「雑所得」に該当します。
- 利子所得
- 配当所得
- 不動産所得
- 事業所得
- 給与所得
- 退職所得
- 山林所得
- 譲渡所得
- 一時所得
- 雑所得
ソーシャルレンディングの利用者の中には、分配金が「利子所得」や「配当所得」に該当すると勘違いしている人もいます。融資で得た利子が分配金に充てられるから「利子所得」、分配金は投資によって得られた利益であるため「配当所得」、と考えられるからです。
しかし、ソーシャルレンディングの分配金は、所得税法で定義する利子所得(公社債や預貯金の利子など)や配当所得(株式や投資信託による収益など)には該当しません。
所得の種類によって課税方法が異なるため、まずは「分配金は雑所得」であることを覚えておきましょう。
ソーシャルレンディングの分配金は総合課税される
ソーシャルレンディングの分配金は雑所得になるため総合課税の対象です。総合課税とは、各種所得を合計して所得税を算出する課税方法で、合算する所得は前述の10種類の所得から「退職所得」や「山林所得」、「分離課税された所得」などを除いたものです。
分配金を雑所得として他の所得と合算するとき、次の2点を覚えておきましょう。
- 他の雑所得と損益通算(※1)できる
- 必要経費(※2)があれば分配金から控除できる
※1:複数の所得がある場合、黒字の所得から赤字の所得を差し引いて計算することです。
※2:入出金の手数料などソーシャルレンディングのためにかかった費用のことです。
また、分配金は配当所得ではないため、以下2点の注意が必要です。
- 株式の収益(損失)など、他の所得と損益通算できない
- ソーシャルレンディングで損失が出ても、翌年以降に繰越(繰越控除)できない
ソーシャルレンディングには確定申告が必要
ソーシャルレンディングの分配金にかかる所得税は、どのようにして納税すればいいでしょうか。分配金に対する所得税の納税方法について説明します。
ソーシャルレンディングの分配金は源泉徴収されている
納税方法を説明する前提として確認しておきたいのが、投資家の口座に振り込まれたソーシャルレンディングの分配金は源泉徴収されていることです。
分配金の明細を見ると、源泉徴収された税額と税引き後の振込額が記載されています。源泉徴収される税金は分配金の20.42%(所得税20%+復興特別所得税0.42%)です。
すでに所得税が源泉徴収されていることを前提に、納税方法を説明します。
確定申告によって源泉徴収された所得税を精算する
ソーシャルレンディングの分配金は総合課税されるため、他の所得と合算した課税所得額や所得控除によって分配金にかかる税率や所得税額は違ってきます。そのため、一律で源泉徴収された所得税額は、実際の所得税額と過不足のある可能性があります。
源泉徴収された所得税額と実際の所得税額の過不足を精算するための手続きが確定申告です。確定申告で過不足精算しないと、余分な税金を支払ったり必要な税金を支払っていないことになります。
所得税の税率や計算方法の詳細は次の記事を参照ください。
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ソーシャルレンディングで確定申告が不要なケース
会社員など確定申告に慣れていない人にとって、申告手続きは難しく感じるかもしれません。そこで、確定申告が不要なケースを紹介します。
確定申告が不要な3つのケース
ソーシャルレンディングで確定申告をしなくていいのは、主に次の3つのケースです。
1つ目のケースは、給与所得者で1年間の分配金が20万円以下の場合です。所得税法では、給与所得者について、給与所得と退職所得を除く各種所得の合計が20万円を超える場合には確定申告が必要、と定められているため、20万円以下なら確定申告不要です。
ただし、給与収入が2,000万円を超える人は確定申告が義務付けられているため、分配金が20万円以下でも確定申告しなければなりません。
2つ目のケースは、事業所得者で事業所得と分配金の合計が48万円以下の場合です。事業所得は事業収入から必要経費を差し引いた金額ですが、青色申告した場合、分配金と合計する事業所得は青色申告特別控除を差し引いて計算します。
所得が事業所得と分配金のみで所得控除できるのが基礎控除だけの場合、両所得の合計が48万円以下なら、基礎控除額48万円を差し引いて所得は0円となるため確定申告は不要です。
3つ目のケースは、主婦で分配金が48万円以下の場合です。事業所得者と同様、その他の所得や所得控除がない場合、基礎控除額48万円以下の所得に対して税金はかかりません。
確定申告不要でも確定申告すれば節税になるケース
確定申告が不要なケースを説明しましたが、確定申告をすることによって節税できるケースもあります。ソーシャルレンディングの分配金は所得税率を20%として源泉徴収されるため、税金を納め過ぎている場合があるからです。
ソーシャルレンディングの分配金とその他の所得を合算して所得税を計算(総合課税)したとき、所得税率が20%未満ならば税金は還付されます。前述の確定申告が不要な事業所得者や主婦には本来所得税はかからないため、源泉徴収された税金は全額還付されます。
また、他の雑所得で損失がある場合は損益通算、ソーシャルレンディングの必要経費があれば分配金からの控除によって税金を抑えることができます。
ソーシャルレンディングの確定申告手続き
最後に、ソーシャルレンディングの確定申告手続きについて説明します。
確定申告の手続き方法
確定申告の手続方法は主に次の3つです。
- 税務署で申告する
- 必要書類を郵送して申告する
- e-TAX(インターネットを利用した申告手続き)で確定申告する
前年の1月1日から12月31日までの所得から1年間の所得税額を算出し、すでに支払った税金との差額を精算します。確定申告期間は毎年2月16日から3月15日の1ヵ月間ですが、令和2年度分の確定申告は新型コロナウイルス感染症の影響で4月15日まで延長されました。
確定申告の必要書類
確定申告に必要な書類は、所得の種類や適用される所得控除によって異なります。収入が給与とソーシャルレンディングの分配金のみの会社員の場合、必要書類は次の通りです。
- 確定申告書A(事業所得者は確定申告書B)
- 個人番号確認、本人確認できるマイナンバーカードなど
- 給与所得者の源泉徴収票
- ソーシャルレンディングの分配金と源泉徴収額がわかる支払調書や年間取引報告書
- ソーシャルレンディングの必要経費がある場合、支出を証明する領収書など
年末調整で所得控除できなかった医療費控除などを同時に申告する場合は、控除の種類ごとに必要となる書類も併せて準備しましょう。
まとめ:分配金が20万円を超える給与所得者は確定申告が必要!
ソーシャルレンディングの分配金は雑所得として総合課税されます。源泉徴収される税額は一律分配金の20.42%(所得税20%+復興特別所得税0.42%)で、実際の所得税額と相違することがあるため、確定申告によってその差額を精算します。
所得税法上、雑所得(分配金)が20万円を超える給与所得者は確定申告が義務付けられています。また、20万円以下なら確定申告不要ですが、所得税率が20%未満ならば確定申告によって税金の還付を受けられます。
慣れない確定申告を面倒に感じるかもしれませんが、将来副業で収入が増えたり年末調整で控除できない所得控除を利用するときに必要になるため、本記事をご参考いただき、確定申告にお役立てください。