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年金

家族を経済的に養ってきた人が亡くなった時、残された家族の生活を支えるのが遺族年金です。しかし、誰がどの程度受け取れるのかについては、案外知らない人も多いのではないでしょうか。なんとなくもらえると思っていると、予想外の事態に陥りかねません。

そこで本記事では、遺族年金の概要と、各遺族年金の受給資格とよくある受給できない原因をご紹介します。自分が遺族年金をもらえるかどうか、もらえる場合いくら受け取れるのかがわかるため、生活の見通しが立てやすくなります。

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2種類の遺族年金

家族のくらしを経済的に支えてきた人が亡くなった時に、遺族年金が家族に支給されます。この遺族年金は大きく分けて2種類あります。遺族基礎年金遺族厚生年金です。

遺族基礎年金は国民年金の加入者(たとえば自営業者)が亡くなった時に、遺族に支給されます。一方、遺族厚生年金を受け取れるのはサラリーマンなど厚生年金の加入者の遺族です。遺族基礎年金と遺族厚生年金の受給金額について、以下でご説明します。

遺族基礎年金

遺族基礎年金は、国民年金の加入者の遺族が受け取る年金です。受給額は「基本額78万1,700円+子の加算額」で求められます。子の加算額は第1子・第2子にはそれぞれ22万4,900円、第3子以降にはそれぞれ7万5,000円加算されます(2020年4月以降)。

子が1人~3人の場合に、配偶者の受給額がどうなるかを下表にまとめました。

子の数 基本額 加算額 受給額
1人 78万1,700円 22万4,900円 100万6,600円
2人 78万1,700円 22万4,900円+22万4,900円 123万1,500円
3人 78万1,700円 22万4,900円+22万4,900円+7万5,000円 130万6,500円

遺族基礎年金は子育て年金ともいわれるように、遺児に対し配慮されているのがわかります。一方、子がいないまたは、子が18歳以上(障害等級1級または2級の子の場合、20歳以上)になった配偶者は、遺族基礎年金をまったく受け取れないのでご注意ください。

遺族厚生年金

厚生年金加入者(たとえばサラリーマン)の遺族が受け取る年金が、遺族厚生年金です。自営業者など厚生年金に加入できない人の遺族はもらえません。

受給額は、老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3です。報酬比例部分は加入期間中の報酬および加入期間の長さにもとづいて決まるため、人によって遺族厚生年金受給額が異なります。

例として、子が1人のサラリーマン世帯で平均標準報酬額が30万円と50万円の場合における配偶者の受給額を表にまとめました。今回の計算では被保険者期間がすべて平成15年4月以降、加入期間を25年(300か月)とみなして計算していますが、実際の年金額とは諸条件により異なる場合もあります。

※標準報酬額とは、被保険者が事業主から受け取る給料などの報酬の月額を区切りのよい幅で区分したもの。

平均標準報酬額 遺族厚生年金 遺族基礎年金 合計
30万円 39万186円(従前保障額・令和2年度分) 100万6,600円 139万6,986円
50万円 65万311円(従前保障額・令和2年度分) 100万6,600円 165万6,911円

表からわかるように、亡くなった人が厚生年金の加入者で夫の死亡時に子がいた場合、配偶者は遺族厚生年金に加えて遺族基礎年金も受給できます。

遺族基礎年金の3つの受給資格

では、亡くなった人が自営業者であれば遺族基礎年金を受給できるのかというと、そうではありません。遺族基礎年金の受給資格として、次の3要件を満たす必要があります。

  • 亡くなった人に関する要件
  • 遺族に関する要件
  • 保険料の納付に関する要件

これらの要件が欠けると遺族基礎年金を受給できません。それぞれどのような要件なのか、以下でご紹介します。

亡くなった人に関する要件

亡くなった人が次の4つの要件のいずれかを満たしていることが必要です。

  • 国民年金の被保険者である
  • 国民年金に以前加入していた60歳以上65歳未満の人で、日本国内に住所がある
  • 老齢基礎年金の受給権者である
  • 老齢基礎年金の受給資格期間(25年以上)を満たしている

遺族に関する要件

出典:日本年金機構「遺族年金ガイド 令和2年度版」

遺族基礎年金を受け取れる遺族は、次の2者です。

  • 子がおり、亡くなった人に生計を維持されていた配偶者
  • 亡くなった人に生計を維持されていた子

「生計を維持される」とは、遺族の前年年収が850万円未満(または前年所得が655万5,000円未満)で亡くなっていた人と同居していた状況です。別居であっても仕送りをされていたり健康保険の扶養親族であったりする場合、「生計を維持されていた」と認められます。

また、「子」は18歳になった年度の末日まで、もしくは障害等級1級・2級の20歳未満を指します。たとえ18歳未満であっても既婚であれば、遺族の対象外です。

保険料の納付に関する要件

亡くなった人が老齢基礎年金の受給権者になっていない場合、保険料の納付に関して次の2点のいずれかを満たす必要があります。

  • 亡くなった日の前々月までに保険料滞納期間が被保険者期間全体の3分の1を超えていない(原則)
  • 亡くなった日の前々月までの直近1年間に保険料未納がない(特例)

以下の記事では、遺族年金をもらえる条件を解説しているので参考にしてください。

遺族基礎年金がもらえない2つのケース

「亡くなった夫は自営業者だったのに、遺族基礎年金をもらえなかった」というケースはあります。どうして遺族基礎年金をもらえないのか、理由は2点あります。

  • 保険料の未納または滞納
  • 遺族基礎年金の受給権を失っている

それぞれについて、以下でご説明します。

保険料の未納または滞納

前述の遺族基礎年金の受給資格において「保険料の納付に関する要件」がありました。「納付期間において滞納期間が被保険者期間全体の3分の1を超えていない」または「死亡日の前々月までの直近1年間に保険料の未納がない」ことが受給のために必要です。

つまり、保険料が未納または滞納の場合は遺族年金を受け取れません遺族にとっては大変な事態です。国民年金は未納・滞納保険料を、2年分さかのぼって後から納付できます。万一の時の家族のためにも滞納や未納がないように気をつけておきましょう。

遺族基礎年金の受給権の失効

遺族基礎年金は、子がいる配偶者を支えるための年金です。そのため、子もしくは配偶者が受給権を失うと、支払われません

子がどういう事態になれば、受給権がないまたは受給権を失うのかをまとめました。

  • 18歳になった年度の3月31日を過ぎた
  • 結婚した
  • 死亡した
  • 養子になった
  • 配偶者と別居し生計が別となった

また、配偶者に受給権がないまたは失うケースとしては、配偶者が結婚するまたは死亡するという状況が挙げられます。上記の理由により、子と配偶者のいずれかが受給権を失うと遺族基礎年金は支給されません。

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遺族厚生年金の3つの受給資格

遺族厚生年金にも受給資格があり、亡くなった配偶者がサラリーマンや公務員であっても受給できるとは限りません。次の3つの要件を満たす必要があります。

  • 亡くなった人に関する要件
  • 遺族に関する要件
  • 保険料の納付に関する要件

それぞれどのような要件なのか、以下でご紹介します。

亡くなった人に関する要件

亡くなった人は次の5つの要件のいずれかを満たしておかねばなりません

  • 厚生年金の被保険者である
  • 被保険者期間の傷病が原因で、初診日から5年以内に死亡した
  • 障害等級1級・2級の障害厚生年金を受けられる人である
  • 老齢厚生年金の受給権者である
  • 老齢厚生年金の受給資格期間(25年以上)を満たしている

遺族に関する要件

出典:日本年金機構「遺族年金ガイド 令和2年度版」


遺族厚生年金の支給対象となるのは、亡くなった人に生計を維持されていた家族です。受給できる順位は次のように定められています。

  1. 子がいる配偶者(夫は55歳以上、妻は年齢制限なし)、または子
  2. 子のない妻または55歳以上の夫
  3. 父母(55歳以上)
  4. 祖父母(55歳以上)

遺族基礎年金と比べて、遺族厚生年金は支給対象が孫から祖父母までと広いです。「子・孫」は18歳到達年度の末日まで、または障害等級1等・2等なら20歳未満までが対象年齢です。また、子や孫は結婚すると遺族厚生年金の対象から外れます。

保険料の納付に関する要件

亡くなった人が老齢厚生年金受給権者になっていなかった場合、国民年金保険料について次の2点のいずれかを満たす必要があります。

  • 亡くなった日の前々月までに保険料滞納期間が被保険者期間全体の3分の1を超えていない
  • 亡くなった日の前々月までの直近1年間に保険料未納がない

厚生年金保険料は会社で天引きされるので、滞納や未納はありません。しかし、国民年金保険料に関しては就職前や退職後に納付し損ねていることもあります。

遺族厚生年金を受け取るためには、国民年金も納付しておかねばなりません。納付し忘れがないか確認しておきましょう。

遺族厚生年金がもらえない3つのケース

亡くなった配偶者がサラリーマンや公務員であっても、遺族厚生年金を受給できないケースがあります。次の3点のいずれかに該当すると、遺族厚生年金をもらえません

  • 保険料が未納または滞納中である
  • 遺族厚生年金の受給権を失っている
  • 年齢に関する制限に引っかかっている

「夫はサラリーマンだったのに、どうして」とあせる事態は避けたいです。各状況について事前に確認しておきましょう。

保険料の未納または滞納

既に述べたように、遺族厚生年金を受給するためには国民年金保険料も納付しておく必要があります。国民年金保険料の未納や加入期間全体の3分の1以上の滞納があると、厚生年金保険料を納めていても遺族厚生年金は支給されません。

残された家族のためにも、国民年金保険料の納付は前もって確認しておいてください。

遺族厚生年金の受給権の失効

遺族厚生年金の受給者である配偶者や子どもが受給権を失うケースを、別々に見ましょう。配偶者の受給権がないまたは受給権を失うケースは、次の通りです。遺族基礎年金と異なり、子の有無は受給権には関係ありません。

  • 結婚した
  • 死亡した
  • 離縁により、亡くなった被保険者との親族関係が終わった

一方、子の受給権がないまたは受給権を失うケースを紹介します。

  • 結婚した
  • 死亡した
  • 離縁により、亡くなった被保険者との親族関係が終わった
  • 18歳到達年度の3月31日を超えた

年齢制限

遺族厚生年金は対象者が幅広いですが、各遺族に対して年齢に関する制限がありますその年齢に関する制限に引っかかると、遺族厚生年金を受給できません。夫と父母、祖父母の場合は55歳以上が受給要件であり、実際に受給できるのは60歳からです。

妻には年齢に関する受給要件はないため、無条件に受給できます。しかし、夫の死亡時に妻が30歳未満かつ子がいない場合は受給期間が5年のみです。妻が30歳以上または夫の死亡時に子がいた場合は、一生受給できます。

遺族年金がもらえない場合の救済策

「遺族年金がもらえないととても困る」という人がいるかもしれませんが、救済策があります。寡婦年金と死亡一時金です。遺族基礎年金は子を養育する目的が強く、子がいない場合は残された配偶者にまったく支給されません。

それでは残された配偶者が特に妻の場合、生活困難に陥るおそれがあります。そのような窮状にならないように支えるのが、寡婦年金や死亡一時金です。それぞれについて以下でご説明します。

寡婦年金

寡婦年金は、妻が60歳から65歳になるまでの間、亡くなった夫の老齢基礎年金の4分の3を支給する年金です。夫が国民年金のみに加入している場合、子がいないと妻には遺族年金が支給されません。寡婦年金があることで、一定時期妻の生活を支えることができます。

寡婦年金を受けられるためには、亡くなった夫の要件と妻の要件の両方を満たさねばなりません。どのような要件なのか以下でご紹介します。

亡くなった夫の要件

亡くなった夫側の要件は次の2点です。両方ともに満たす必要があります。

  • 老齢基礎年金の受給資格を得ている
  • 老齢年金や障害年金を受給していない

妻の要件

妻が寡婦年金を受け取るためには、次の4点をすべて満たす必要があります。

  • 結婚期間が10年以上ある内縁や事実婚でも可
  • 亡くなった夫が妻の生計を維持していた
  • 夫の死亡時に65歳未満
  • 遺族基礎年金の受給資格がない
     

死亡一時金

残された妻が遺族基礎年金だけではなく寡婦年金も受給できない場合は、死亡一時金を受け取れます。国民年金の被保険者が年金をもらわず死亡した場合に、生計が同じだった遺族に支払われます。

死亡一時金の受給要件は、次の2点を満たすことです。

  • 国民年金保険料の納付済期間が36カ月以上ある
  • 老齢基礎年金も障害基礎年金も受けていない

なお、寡婦年金と死亡一時金はどちらかのみを受給できます。両方を受給することはできません。

労災保険による補償

配偶者の死亡が労働災害(労災)であると認められた場合、労災保険による補償が受けられます。労災とは、労働者が労務中に被った怪我や病気、死亡のことです。

工事現場での怪我といった代表的な例YA通勤中の怪我や過労死、過労自殺なども労災として認められる場合があります。どのようなケースで労災保険補償が受けられるのか、しっかりと確認しておきましょう。

労災保険では、遺族特別支給金として一律300万円、遺族年金として5~8ヶ月分の給料に相当する額を年金として受け取れます。

遺族年金に関するよくある質問

遺族年金に関するよくある質問は以下のとおりです

  • 遺族年金がもらえるまでの期間とは?
  • 遺族年金の手続きは誰でもできるのか?
  • 遺族年金は65歳になったらどうなるのか?

それぞれ回答していくので参考にしてください。

遺族年金がもらえるまでの期間とは?

遺族年金は、手続きをすればすぐに受け取れるわけではありません。まず、手続きを開始してから約60日後に、年金証書・年金決定通知書が日本年金機構から届きます。

年金証明・年金決定通知書は「遺族年金を受け取れることになりました」という証明書・通知書です。その後、実際に遺族年金を受け取れるまでに約50日かかります。つまり、手続き開始から年金の受け取りまで最短でも110日、4ヶ月程度の時間が必要です

年金を受け取れる間にも家賃や食費などの生活費は当然かかるので、できるだけ早く年金受け取りの手続きを行うようにしましょう。

遺族年金の手続きは誰でもできるの?

遺族年金の手続きは、必ずしも遺族自身が行う必要はありません。遺族本人の委任状や本人確認書類など、必要な書類を用意すれば代理人が手続きを行えます。代理に必要な書類は日本年金機構のHPで確認でき、委任状の雛形もダウンロード可能です。

すべての手続きを社会保険労務士や行政書士などの専門家に依頼する方法もあります。3万円~5万円程度の費用がかかってしまいますが、面倒な手続きは専門家に任せることも1つの方法です。

遺族年金は65歳になったらどうなるのか?

日本の年金制度では、65歳になると老齢年金を受け取れます。しかし、遺族年金を受け取っている人は、老齢年金を併せて受け取れる場合と、どちらかしか受け取れない場合があります。

遺族年金には、遺族基礎年金と遺族厚生年金の2種類が存在しますが、遺族基礎年金は老齢年金と同時に受け取れません。

したがって、遺族基礎年金を受け取っている場合は、65歳になった時点でどちらの年金を受け取るかを選択する必要があります。一方、遺族厚生年金を受け取っている場合は、老齢年金と合わせて受け取れるため、65歳時点でどちらかを選択する必要はありません。

まとめ:遺族年金の要件を理解することが大切

遺族年金の概要と、各遺族年金の受給資格ともらえないケース、遺族年金がもらえない場合の救済策をご紹介しました。配偶者が亡くなった状況を考えるのは気持ちのいいものではありません。しかし、万が一のために確認しておく必要があります。

遺族基礎年金と遺族厚生年金それぞれに受給要件があり、満たしていないと受け取れません。遺族年金がないと残された家族の生活は苦しくなりかねません。受給要件と国民年金の納付状況を確認し、未納や滞納があれば早急に解消しておきましょう。

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