皆さんは「配偶者加給年金」という制度についてご存知ですか?もしかしたら、聞いたこともないという方もいらっしゃるかもしれません。
年金には、よく調べないとわからない制度や、普段馴染みのない言葉や表現が少なくありません。知らないために、本来受け取れるお金を受け取れないのはもったいないことです。
本記事では、年金制度の「配偶者加給年金」という制度について解説します。これから年金を受給する方や、将来を見据えて年金を含めた人生設計を見直している方にとって参考になる情報です。
配偶者加給年金の意味
「配偶者加給年金」とは、厚生年金の「加給年金」という制度のうち、被保険者に配偶者がいる場合に適用される制度です。
会社などに雇用されている方は「厚生年金」に加入し、国民年金における「第2号被保険者」に該当します。
厚生年金加入者が65歳になった時点、または65歳未満で、特別支給の老齢厚生年金の「定額部分」の支給開始年齢になった時点で特定の条件を満たしている場合、もらえる年金額が加算されるのが配偶者加給年金という制度です。
加算額は、基本額として22万4700円(令和3年度)が支給されます。なお、受給権者の生年月日によって以下の金額がさらに加算されます(加算額は令和3年度の金額)。
- 昭和9年4月2日~昭和15年4月1日:3万3200円
- 昭和15年4月2日~昭和16年4月1日:6万6300円
- 昭和16年4月2日~昭和17年4月1日:9万9500円
- 昭和17年4月2日~昭和18年4月1日:13万2600円
- 昭和18年4月2日以後:16万5800円
配偶者加給年金を受給する条件
配偶者加給年金は、一定の条件を満たさなければ加算されません。その条件は、大きく分けて以下の2つが挙げられます。
- 厚生年金の加入期間が20年以上あること
- 生計を維持されている65歳未満の配偶者がいること
条件①厚生年金の加入期間が20年以上ある
1つ目は、厚生年金の被保険者本人に関する条件「厚生年金の加入期間が20年以上であること」です。
厚生年金は、厚生年金に加入している事業所に雇用されている限り全員が加入します。つまり、会社などに勤めている間は厚生年金に加入していますが、会社を退職している間は厚生年金に加入していません。
厚生年金に加入できる可能性がある期間は約40年間なので、その間に会社勤めしていない期間がある場合は、20年の条件を満たせない可能性があります。
条件②生計を維持されている65歳未満の配偶者がいる
2つ目は、「厚生年金の受給者の配偶者」(受給時に退職しており加入者でない場合があるため)に関する条件です。その条件には「厚生年金被保険者に生計を維持されている」ことと「65歳未満である」ことの2つがあります。
ここで重要なのは「生計を維持されているとは、どういうことか?」ということです。日本年金機構では、2つの条件を定めています。
- 同居している・仕送りをしている・健康保険の扶養親族である等
- 前年の収入が850万円未満である、または所得が655万5千円未満であること
一般的な専業主婦であれば、上記の条件を満たすことが多いでしょう。しかし、配偶者本人に収入がある場合は、2つ目の条件を満たせない可能性があります。
配偶者加給年金の受給のための手続き
上記の条件を満たしても、自動的に配偶者加給年金が支給されるわけではありません。配偶者加給年金を受け取るためには、所定の手続きを済ませる必要があります。
以下の書類(コピーは不可)を用意して、お近くの「年金事務所」または「街角の年金相談センター」にて手続きを行ってください。
- 受給権者の戸籍抄本または戸籍謄本
- 世帯全員の住民票の写し(続柄・筆頭者が記載されているもの)
- 配偶者の所得証明書、非課税証明書のいずれかひとつ(加算開始日からみて直近のもの)
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配偶者加給年金が支給停止になる条件
条件を満たして手続きしても、ずっと配偶者加給年金を受給できるわけではありません。
以下の条件が発生した場合、配偶者加給年金が支給停止されます。
- 配偶者が被保険者期間20年以上の老齢厚生年金や退職共済年金、障害年金を受給する時
- 配偶者が65歳になった時
- 配偶者と離婚した時
- 配偶者が亡くなった時
- 生計維持の条件を満たさなくなった時
振替加算についても理解しておこう
配偶者加給年金について理解するうえでは、他にも「振替加算」という制度について理解しておく必要があります。
本記事では下記の3点で、振替加算について簡単にご説明します。
- 対象者
- 金額
- 手続き・届出
より詳しく知りたいという方はこちらの記事もご覧ください。
振替加算の対象者
「振替加算」とは、夫婦が所定の条件を満たした場合に老齢基礎年金に加算される制度です。
老齢厚生年金や障害厚生年金の加給年金の対象者である配偶者が65歳になると、支給されていた加給年金が打ち切りになります。このとき、配偶者が老齢基礎年金を受けられる場合、以下の条件を満たすことでその老齢基礎年金に一定額が加算されます。
- 大正15年4月2日~昭和41年4月1日に生まれていること
- 配偶者が老齢基礎年金の他に「老齢厚生年金」や「退職共済年金」を受けている場合、厚生年金保険および共済組合等の加入期間をあわせて240ヶ月未満であること
- 配偶者の共済組合等の加入期間を除く厚生年金保険の35歳以降(妻の場合。夫の場合は40歳以降)の加入期間が、生年月日ごとに以下の基準未満であること
- 昭和22年4月1日以前:180ヶ月
- 昭和22年4月2日~昭和23年4月1日:192ヶ月
- 昭和23年4月2日~昭和24年4月1日:204ヶ月
- 昭和24年4月2日~昭和25年4月1日:216ヶ月
- 昭和25年4月2日~昭和26年4月1日:228ヶ月
振替加算の金額
振替加算で加算される年金額は、配偶者の生年月日により異なります。配偶者が昭和2年4月1日までに生まれている場合は最大の年額22万4700円(令和3年度の金額、配偶者加給年金額と同額)であり、年齢が若くなるほど安くなります(最低は昭和40年4月2日~昭和41年4月1日に生まれの年額1万5055円、昭和41年4月2日以後生まれは支給対象外で0円)。
振替加算の手続き・届出
振替加算は、年金を請求する際の裁定請求書に必要事項を記入するだけで手続きできるので、別途特別な手続きは必要ありません。ただし、妻(夫)が65歳になって老齢基礎年金の受給を開始した後、夫(妻)の厚生年金保険・共済組合等)の加入期間が240ヶ月(20年)以上になったケースなどでは、「老齢基礎年金額加算開始事由該当届」を年金事務所に提出することで振替加算を新たに受けることができます。
年金でわからないことがあれば相談を
この記事でも、年金制度に関するさまざまな制度や条件、手続きの有無などについて解説しました。年金制度には、配偶者加給年金や振替加算以外にもさまざまな制度や条件が設定されており、自分はどんな特例に当てはまり、どんな手続きが必要なのかわからないことも多いでしょう。
年金は、将来のセーフティネットの1つであり、人生設計において無視できない要素の1つです。不安や疑問を残しては、将来設計を正しく計画できません。配偶者加給年金や振替加算、その他の年金制度でわからないことがあれば年金事務所などの専門の窓口に相談しましょう。
まとめ:配偶者加給年金は厚生年金の追加支給
本記事では、配偶者加給年金やそれに関連する制度などについて解説しました。
以下の3つのポイントを押さえておきましょう。
- 配偶者加給年金は厚生年金の加算
- 配偶者加給年金は被保険者だけでなく配偶者側の条件もある
- 配偶者加給年金は支給停止になる可能性がある
もらえる年金を増やすことは、将来への備えを盤石にするために欠かせない要素の1つです。条件など複雑だと感じる部分もあるかもしれませんが、加算してもらえる年金があるのであればしっかりと手続きをして、年金額を増やしましょう。
年金制度は複雑な部分も少なくありません。正しく手続きしないと損をしたり、不正受給などのトラブルに見舞われる可能性があります。不明なことや気になる点があれば、年金事務所などの窓口に相談して不安を解消しましょう。