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年金

年金には「●●年金」といろいろな種類があります。そのひとつが加給年金です。

「聞いたことはあるけれど、具体的にはよくわからない」という人もいらっしゃるのではないでしょうか。老後の支えとなる加給年金は誰でもが受け取れるわけではありません。「どんな人がどのくらい受け取れるのか」と疑問をお持ちになるでしょう。

そこで本記事では、加給年金の概要と対象条件、金額、手続き方法をご紹介します。自分が加給年金を受給可能なのか、受給できる場合金額はいくらなのかがわかり、手続きもスムーズに処理できます。

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加給年金とは

加給年金とは年金の家族手当みたいなものです。

たとえば、夫が会社員で家計のおもな担い手であり、妻より年齢が上のケースを考えてみましょう。夫が年金受給者になった時、夫婦は夫の年金のみで生活することになり、くらしが厳しくなります。

夫1人分の年金で家族が生きるのは大変なため、家族分の手当を余分に受け取れる仕組みが加給年金です。しかし、加給年金は誰でも受給できる年金ではありません。複数の条件を満たした人だけが受給できます。具体的な条件については、次の章でご紹介します。

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加給年金の対象条件を確認しよう

加給年金を受給するために必要な条件は次の2点です。

  • 厚生年金保険に20年以上加入している
  • 65歳の時点で生計を維持している配偶者もしくは子どもがいる

それぞれについて以下でご説明します。

厚生年金保険に20年以上加入していること

まず必要な条件は、加給年金受給者が厚生年金保険に20年以上加入していることです。つまり、サラリーマンや公務員として20年以上勤務していた人が対象です。残念ですが、自営業者や農業・漁業者は対象になりません。

65歳の時点で生計を維持している配偶者もしくは子どもがいること

もうひとつ必要な条件は、加給年金受給者が65歳の時点で生計を維持している配偶者もしくは子どもがいることです。つまり、厚生年金保険に20年以上加入していても、単身者は加給年金を受け取れません。

ただし、配偶者と子どもにはそれぞれ年齢制限があります。配偶者は65歳未満、子どもは18歳到達年度の末日までならば、加給年金の対象者です。それぞれ年齢を超えると加給年金は支給されません。

「生計を維持している」の定義とは?

加給年金の受給対象として「生計を維持している配偶者もしくは子ども」と紹介しましたが、「生計を維持している」とはどのような定義でしょうか。

次の2点と定義されています。

  • 同居している。別居の場合も、仕送りをしているまたは健康保険の扶養に入れている。
  • 配偶者や子どもの前年収入が850万円未満(所得が655万5,000円未満)。

これら2点を満たしていると、生計を維持している配偶者もしくは子どもと判断され、加給年金の対象者になります。

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加算される加給年金の金額はいくら

多くの人が気になるのが「加給年金はいくら受け取れるのか」という点でしょう。配偶者および子どもによって加算される金額を以下にまとめました。子どもは第1子・第2子と、第3子以降では金額が異なります。

対象者 加給年金額
配偶者 22万4,900円
1人目・2人目の子 各22万4,900円
3人目以降の子 各7万5,000円

既述のとおり、加給年金が支給されるのは配偶者が65歳未満、子どもが18歳到達年度の末日までです。第1子~第3子以降を問わずすべての子どもに適用されます。

配偶者加給年金額の特別加算額

配偶者の加給年金額は22万4,900円と説明しました。実は、老齢厚生年金を受けている人、つまり受給権者の生年月日に応じて、配偶者の加給年金額はさらにプラスされます。

プラスされる金額を特別加算額と言います。受給権者の生年月日と特別加算額、結果受け取れる合計額を以下の表にまとめました。どの程度加算されるのか、ご確認ください。

配偶者加給年金額の特別加算額(令和2年4月から)

受給権者の生年月日 特別加算額 加給年金の合計額
昭和9年4月2日~昭和15年4月1日 3万3,200円 25万8,100円
昭和15年4月2日~昭和16年4月1日 6万6,400円 29万1,300円
昭和16年4月2日~昭和17年4月1日 9万9,600円 32万4,500円
昭和17年4月2日~昭和18年4月1日 13万2,700円 35万7,600円
昭和18年4月2日以降 16万6,000円 39万900円
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配偶者が65歳に到達すると振替加算に移行する

「加給年金の対象となる配偶者は65歳未満」とご紹介しました。では、配偶者が65歳に達するとどうなるのでしょうか。配偶者が65歳になると、加給年金は打ち切られます。65歳は、配偶者自身の老齢基礎年金を受給できる年齢だからです。

しかし、配偶者が65歳になっても一定の基準を満たすと、配偶者の老齢基礎年金に振替加算がプラスされます。加給年金から振替加算に移行するので65歳になっても安心です。

振替加算の対象者

配偶者が振替加算の対象者になるためには、以下の条件を満たす必要があります。

  1. 大正15年4月2日から昭和41年4月1日までの間に生まれていること
  2. 配偶者が老齢基礎年金以外に老齢厚生年金や退職共済年金を受けている場合は、厚生年金保険および共済組合等の加入期間があわせて240月未満であること
  3. 配偶者の共済組合等の加入期間を除いた厚生年金保険の35歳以降の(男性は40歳以降の)加入期間が、次の表未満であること
生年月日 加入期間
昭和22年4月1日以前 180月(15年)
昭和22年4月2日~昭和23年4月1日 192月(16年)
昭和23年4月2日~昭和24年4月1日 204月(17年)
昭和24年4月2日~昭和25年4月1日 216月(18年)
昭和25年4月2日~昭和26年4月1日 228月(19年)

これらを満たしていると、振替加算を受給できます。 

振替加算される金額

配偶者が65歳になると加給年金は停止されます。そして、配偶者の老齢基礎年金に振替加算がおこなわれます。

振替加算額は配偶者の生年月日によって異なります。以下の表が、配偶者の生年月日と振替加算額の一覧です。

配偶者の生年月日 振替加算額
昭和30年4月2日~昭和31年4月1日 5万1,007円
昭和31年4月2日~昭和32年4月1日 4万4,940円
昭和32年4月2日~昭和33年4月1日 3万8,873円
昭和33年4月2日~昭和34年4月1日 3万3,031円
昭和34年4月2日~昭和35年4月1日 2万6,964円
昭和35年4月2日~昭和36年4月1日 2万897円
昭和36年4月2日~昭和37年4月1日 1万5,055円
昭和37年4月2日~昭和38年4月1日 1万5,055円
昭和38年4月2日~昭和39年4月1日 1万5,055円
昭和39年4月2日~昭和40年4月1日 1万5,055円
昭和40年4月2日~昭和41年4月1日 1万5,055円
昭和41年4月2日~

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加給年金を受け取るための手続きをチェックしよう

加給年金について「普通に厚生年金に加入しているだけでもらえるなんてラッキー」と思うかもしれません。しかし、注意点がひとつあります。

加給年金は自動的に加算されません。自分で申請の手続きをする必要があります。

条件を満たしているのに受け取り損ねてしまうと、もったいないです。以下で、加給年金を受け取るための手続きをご紹介します。受給資格のある人は、忘れず申請してください。

必要な書類

加給年金申請に必要な書類は、以下の3点です。

  1. 受給権者の戸籍抄本または戸籍謄本(記載事項証明書)
  2. 世帯全員の住民票の写し(続柄・筆頭者が記載されているもの)
  3. 加給年金額の対象者(配偶者や子)の所得証明書または非課税証明書のどちらかひとつ(加算開始日からみて直近のもの)

いずれも、「配偶者または子であることの確認」「同居の確認」「所得の確認」等、加給年金の対象条件をチェックするために必要な書類です。なお、これらの書類は原本を提出してください。

提出先

申請書類の提出先は、お住まいのお近くの年金事務所または街角の年金相談センターです。こちらで検索できます。

振替加算も別途手続きが必要な場合がある

加給年金だけではなく、振替加算も申請手続きが別途必要な場合があります。加給年金は「配偶者の生計維持をしていた人」が手続きをしますが、振替加算は配偶者が手続きをおこないます。配偶者の老齢基礎年金に振替加算がなされるためです。 必要な書類は以下のとおりです。

  1. 受給権者の戸籍抄本または戸籍謄本(記載事項証明書)
  2. 世帯全員の住民票の写し
  3. 受給権者の所得証明書または非課税証明書のいずれかひとつ(加算開始日に直近のもの)

これらの書類を、年金事務所または街角の年金相談センターへ提出してください。

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加給年金を申請する前に注意しておくこと

加給年金を申請する前に、次の2点をチェックしておく必要があります。

  • 配偶者の厚生年金被保険者期間が20年を超えていないか
  • 老齢厚生年金の繰り下げ受給をしている場合は加給年金が支給されない

いずれの場合も、加給年金を受給できず老後の家計に大きな影響を与えます。しっかり確認しておいてください。

配偶者の厚生年金被保険者期間が20年を超えていないか

配偶者自身の厚生年金被保険者期間が20年を超え、その老齢厚生年金を受給している間は、加給年金の支給は停止されます。加給年金受給のために、厚生年金被保険者期間が20年未満であるよう調整する必要があります。

ただ、加給年金受給よりも配偶者自身の老齢厚生年金受給の方が高額の場合もあるため、シミュレーションをしてみるのもおすすめです。

老齢厚生年金の繰り下げ受給をしている場合は加給年金が支給されない

加給年金の受給権者が、老齢厚生年金の繰り下げ受給をしていると加給年金は支給されません。

老後の家計のために、繰り下げ受給をすることを選ぶ人もいるでしょう。しかし、繰り下げ受給をすると、本来受け取れたはずの加給年金がまったくもらえなくなるので注意してください。

「どうしても生活のために繰り下げたい」という場合は、老齢基礎年金のみを繰り下げ受給し、老齢厚生年金は繰り下げないのがおすすめです。この方法なら加給年金が受給できます。

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まとめ:加給年金の対象であれば忘れずに手続きを

加給年金の概要と対象条件、金額、手続きについてご紹介しました。加給年金額は自分で調べ、手続きする必要がある年金です。

一般の年金受給額は「ねんきんネット」や誕生月に送られる「ねんきん定期便」で確認できますが、そこに加給年金額は反映されません。加給年金の受給資格があっても、日本年金機構から加給年金を受給できる旨を知らせることはないのが実情です。

そのため、自分が加給年金を受給できるか調べたうえで、申請手続きをおこなってください。よりよい老後のためにも、手間を惜しまず取り組みましょう。

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