平均寿命は男女共に80歳を越えるようになり、老後資金への関心はさらに高まっています。老後資金を考える際に、まず頭に浮かぶのは国からの年金についてではないでしょうか。
年金を受け取ることができるという点は理解しているものの、具体的な受給開始年齢を把握していないという人もたくさんいます。
今回は年金の受給開始年齢について解説します。年金には大きく分けて2種類あるので、それぞれの特徴について今一度、理解を深めておきましょう。年金受給の手続き方法についてもお伝えします。
受給開始にはまだ時間があるという人も、年金の受給開始年齢を知っておくことで将来設計がしやすくなります。
受給できる年金の種類は?年金の基本知識をおさらい
豊かな老後生活を送るための原資になる年金。一口に年金といっても、大きく分けて2種類の老齢年金があります。「いつから」年金がもらえるのかという点と併せて、「どのような」年金の受給資格があるのかを把握しておくことも大切です。
加入している年金保険ごとに、受給できる年金について解説します。
国民年金に加入していた人は老齢基礎年金を受給
日本の公的年金制度は、「2階建て・3階建て」と例えられることも多く、複数の年金保険から成り立っています。その基礎とも言えるのが国民年金です。日本に住んでいる20歳以上60歳未満の人は原則、国民年金に加入する必要があります。
国民年金に加入していた人がもらえる年金が「老齢基礎年金」で、年金制度の1階部分と言われています。
たとえば、自営業などで国民年金のみに加入している場合は、65歳以降に受給できるのは年金の1階部分にあたる「老齢基礎年金」だけとなります。
厚生年金・共済年金に加入していた人は老齢厚生年金を受給
会社員は厚生年金、公務員は共済年金に加入し、老後は「老齢厚生年金」という形で受給することになります。国民年金保険料と厚生年金の保険料の合算が、給与天引きという形で勤務先を通して徴収されています。
厚生年金・共済年金のことを年金制度の2階部分と呼ぶことが多く、国民年金のみに加入している場合と比べ、保障は手厚くなっています。
老後の年金はいつからもらえる?
では、実際にそれぞれの老齢年金は、いつからもらえるのでしょうか。老齢基礎年金と老齢厚生年金それぞれの受給開始時期について解説します。
老齢基礎年金
保険料納付済期間と保険料免除期間の合計が10年以上ある場合、原則として65歳になったときに受給可能です。
なお、保険料納付済期間と保険料免除期間の合計が10年に満たない場合でも、保険料免除期間および合算対象期間、保険料納付済期間を合わせた期間が10年以上あれば、老齢基礎年金を受け取ることができます。
平成29年7月31日までは資格期間が原則25年必要でしたが、受給のための要件が10年に変更されています。
老齢厚生年金
老齢厚生年金の受け取り開始年年齢については、昭和16年4月1日以前生まれか、そうでないかによって異なります。
以下でそれぞれ解説します。
昭和16年4月1日以前に生まれた人
受給開始年齢は原則として60歳からとなります。
ただし、以下の受給要件を満たす必要があるため注意してください。
- 老齢基礎年金の受給要件を満たしていること
- 厚生年金保険の被保険者期間が1ヵ月以上あること
昭和16年4月2日以後に生まれた人
男性であれば、昭和36年4月2日、女性であれば昭和41年4月2日以降に生まれた場合、老齢厚生年金の受け取りは原則65歳となり、老齢基礎年金と同様です。
昭和16年4月2日以後、昭和36年4月1日(男性)もしくは昭和41年4月1日(女性)の期間に生まれた方には上記よりも前に生まれた人は、「特別支給の老齢厚生年金」を受け取ることができます。特別支給の老齢厚生年金の受け取りには、さらに細かく開始時期が設定されています。
理由として、過去の法律改正があります。昭和60年の法律改正により、厚生年金保険の受給開始年齢が60歳から65歳に引き上げられました。受給開始年齢を徐々に、スムーズに引き上げることができるよう設けられたのが、「特別支給の老齢厚生年金」です。
特別支給の老齢厚生年金には、さらに報酬比例部分と定額部分があります。性別・生年月日で受給開始年齢が細かく決められていますので、しっかりと確認しておくことが大切です。
詳細は以下の日本年金機構のページでご確認ください。
特別支給の老齢厚生年金についての詳細はこちら
この記事の内容の他にも、「お金が貯まる29の知恵」を1冊にまとめました。
今ならLINE登録するだけで、無料でプレゼントしています。
この機会に是非一度LINE登録して、特典を今スグ受け取ってください。
年金の受け取り時期はずらすことができる
老齢基礎年金と老齢厚生年金は原則65歳から受給開始ですが、受給者本人の意思により、受け取り開始時期をずらすことができます。具体的には、60歳から65歳になるまでの間に受け取る場合は「繰り上げ」、66歳以降70歳になるまでの間に受け取る場合は「繰り下げ」と言います。
繰り上げ、繰り下げいずれの場合も、本来の年金受給開始年齢からもらえる金額とは異なります。それぞれのケースについて具体的に解説します。
繰り上げ受給
60歳~64歳の間に年金の受給を始める場合、本来受け取ることができる金額よりも少なくなります。減額率=0.5%×繰り上げ請求月から65歳になる月の前月までの月数となり、たとえば60歳0ヵ月の時点で受け取りを始める場合の減額率は30%になります。
さらに、この減額率は一生変わることがないため、安易な気持ちで早めに年金を請求すると後悔することにもなりかねません。受け取ることができる金額をよく考えた上で繰り上げ請求を行うようにしましょう。
繰り上げ方法には全部繰り上げと一部繰り上げがあります。受給開始時の資産状況に応じて適切な方法を検討してください。
繰り下げ受給
繰り上げ年金とは逆に、65歳時点では請求せずに66歳以降、70歳までに間で繰り下げ請求が可能です。最大60ヵ月の繰り下げが可能で、1ヵ月の繰り下げごとに0.7%が増額されます。
つまり、繰り下げができる最長年齢である70歳0ヵ月で受給をスタートさせた場合、42%の増額となります。老後資金に余裕がある場合は、繰り下げ受給も賢い選択肢の1つと言えます。
年金受給の手続き方法
年金受給の際には、「65歳になれば年金が自動的に振り込まれる」ということではない点に注意しなければなりません。受給開始年齢に到達したのであれば、年金を受け取るために自分自身で請求手続きを進めなければなりません。
年金受給にあたっては以下の3つのステップがあります。
- 年金請求書を記入
- 必要書類の準備
- 年金請求書と必要書類の提出
それぞれの手順に必要なものを以下で解説します。
①年金請求書を記入
受給開始年齢に到達する約3か月前に、日本年金機構から「年金請求書」が送られてきます。
受給する本人の情報の他に、受給開始時点の雇用保険への加入状況も問われます。
また、年金請求書には、過去の年金加入記録の記載があります。誤りがある場合は最寄りの年金事務所に問い合わせる必要があります。ねんきん定期便や年金手帳などを予め手元に用意しておくと、スムーズに確認ができます。
②必要書類の準備
年金の請求手続きに必要な書類を準備します。必要書類は家族状況や勤務状況によって異なるため、年金事務所などに詳細を問い合わせると良いでしょう。
請求に必要な主な書類として、以下のものがあります。
- 基礎年金番号通知書(または年金手帳)
- 戸籍抄本、戸籍記載事項証明書(受給権発生後6か月以内のもの)
- 住民票(受給権発生後6か月以内のもの)
- 雇用保険受給資格者証(雇用保険に加入したことがある場合)
- 配偶者の年金証書(配偶者が年金を受給している場合)
- 印鑑(認印可)
③年金請求書と必要書類の提出
年金請求書を記入した上で必要書類を準備し、受給開始年齢の誕生日の前日以降に年金事務所に提出します。
適切な手続きをせず、年金受給開始年齢から5年を過ぎた場合、法律に基づき、5年を過ぎた分の年金については時効によって受け取ることができなくなることがあります。早めに手続きを済ますようにしましょう。
年金の受け取り
年金請求を提出してから約1~2か月後に、「年金証書・年金決定通知書」が送付されます。さらにその1~2か月後に、年金の支払い案内(年金振り込み通知書・年金支払い通知書または年金送金通知書)が送付され、年金受け取りがスタートします。いずれの書類も受給のための大切な書類ですので、適切な方法で保管しておくと良いでしょう。
年金は、偶数月の15日に振り込まれます。なお、15日が土日、または祝日である場合は、直前の平日が支払い日です。
まとめ:年金の種類を確認し、受給時期を検討しよう
豊かなセカンドライフを送るための大切な資金である老齢年金。老齢年金には老齢基礎年金と、老齢厚生年金の2種類があります。受給開始年齢になるのを心待ちにする一方、受給開始時期を後ろにずらすことで受給額が加算されるメリットがあります。
自分自身の資産状況を鑑み、適切なタイミングでの受給開始を検討することが大切です。