ワンルームマンション投資は、不動産投資のなかでも始めやすい方法の1つです。その一方で、「儲からない」「危険」「失敗する」「おすすめしない」などの口コミも見かけます。
家賃収入という安定したインカムゲインに魅力を持っていても、投資に不安を感じるのも当然です。しかし、きちんと情報収集できていない状況でワンルームマンション投資を諦めるようであれば、戸建てやアパート・マンションの一棟投資でも失敗する可能性が高いといえます。
なぜなら、ワンルームマンション投資に失敗する理由は、ワンルームマンションに限らず不動産投資全般に共通していえることだからです。つまり「ワンルームマンション投資だから」ではなく、知識やノウハウがない場合には当然投資に失敗する可能性があります。
この記事を読むと、ワンルームマンション投資の基本はもちろん、注意点やメリットなどがわかります。ぜひ知識を付けて成功するためにお役立てください。
目次
ワンルームマンション投資とは?基本を解説
まず、ワンルームマンション投資とは何かについて、投資家側の視点と経営者側の視点の2つに分けて解説します。
家賃収入などのためにワンルームマンションを購入する
ワンルームマンション投資とは、主に家賃収入(インカムゲイン)を得るためにワンルームマンションを購入する投資をいいます。
具体的には、自己資金(エクイティ)と借入金(デット)によりワンルームマンション(資産)を購入し、入居者に貸すことにより家賃収入を得ながら資産形成する方法です。ただし、ワンルームマンションのオーナーは家賃収入がそのまま手元に残るわけではなく、諸費用や借入金の返済負担があることを忘れてはいけません。
また、通常は家賃収入(インカムゲイン)を主な目的として投資を行う場合が多いですが、場合によっては土地や建物の値上がり益(キャピタルゲイン)が得られる場合もあります。
その他、年金や生命保険、節税などの効果を期待して不動産投資が行われる場合もあります。
ワンルームマンションへの投資は賃貸経営を始めるための投資
ワンルームマンション投資は、賃貸経営を始めるための投資です。ワンルームマンションという資産を持っているだけで、うまく運用しなければ維持費だけ負担することになってしまいます。
この点は、不動産投資が株式や投資信託などの金融商品と異なる大きなポイントです。もっとも、建物や入居者の管理業務は管理会社に委託することができます。
「ワンルームマンション投資はやめろ」と言われる理由は?デメリットとは
「ワンルームマンション投資はやめろ」と言われることもあるようです。なぜそのようなことが言われるのでしょうか。その理由(デメリット)について紹介していきます。
なお、前述のとおりこれから紹介する内容はワンルームマンションに限ったデメリットではありません。不動産投資を始めるにあたって知っておくべき知識として、ぜひ参考にしてください。
- 空室リスクを低減しにくい
- サブリース業者の家賃保証は減額や停止の可能性がある
- 家賃だけでローン返済や諸費用をまかなえず収支が赤字になる可能性がある
- 年金保険や退職金として有効かどうかは十分に検討する必要がある
- ワンルームマンションは節税効果を期待しにくい
空室リスクを低減しにくい
ワンルームマンション投資は、空室リスクが大きいと言われます。その理由は、1棟投資であれば1室に空きが出ても他の部屋から収入を得られるためです。
しかし、1つの建物に集中して比較的高額の資産を運用していることを考慮すると、むしろ一棟投資のほうがリスクは大きいとも言えます。
例えば、エリア自体の魅力や需要が低下した場合、ワンルームマンションは1室分の家賃収入を失いますが、一棟投資では2室以上の家賃収入を失う可能性があります。
通常は標準偏差で表されますが、金額ベースで資産運用におけるリスク(リターンのブレ)を見ると、例えば次のようになります。地震や火災などの災害リスクに対しても同様に考えられるでしょう。
- 1棟(全10室):0~100万円
- ワンルームマンション(1室):0~10万円
以上のように、ワンルームマンション投資だから「空室リスクが大きい」と認識するのではなく、不動産投資は空室リスクに対して最大限の対策が重要と認識すべきです。
サブリース業者の家賃保証は減額や停止の可能性がある
過去、一部のサブリース業者において契約内容の不透明さなどによりトラブルが生じていました。サブリースとは、簡単にいうとオーナーが直接入居者に物件を貸すのではなく、管理会社を通して貸す仕組みのことです。
空室が出たり入居者から家賃が支払われなかったりしても、管理会社との契約(マスターリース契約)はまた別個ですから、オーナーは収入を得ることができます。
引用元:国土交通省「賃貸住宅経営(サブリース方式)に関する契約を締結する前に」(PDF)
しかし、将来的には契約金額(家賃)や契約期間が減ってしまうことがあるため注意が必要です。
なお、2020年12月にはサブリース規制(賃貸住宅管理業法)が一部施行され、一定程度は物件オーナーを保護する仕組みはできました。とはいえ、サブリース業者との契約締結時には、契約書および重要事項説明書をよく確認するようにしましょう。
家賃だけでローン返済や諸費用をまかなえず収支が赤字になる可能性がある
ワンルームマンションに限らず、不動産投資では家賃収入の全額がそのまま手元に残るわけではありません。例えば次のような諸費用(運営費)が発生します。
- 管理委託費
- 火災保険料
- 修繕費(都度・長期)
- 借入金返済
- 固定資産税
家賃収入から上記のような諸費用を差し引き、残った額が手元に残るお金です。一方、もし借入金の返済負担などが重く、現金収支がマイナスになる場合には給料や預貯金などから費用をまかなわなければなりません。
もっとも、借入金完済まで収支赤字でも運用を維持できるのであれば、完済後は収支が改善し、最終的には黒字になる可能性があります。
現金収支は黒字になることが理想ですが、年収や資産状況からして運用維持が可能かどうか、築年数を考慮しつつ入居者確保のためには家賃がどれほど下落するのか、諸費用はどれほど増加するのかなどを総合的に勘案して判断すべきでしょう。
年金保険や退職金として有効かどうかは十分に検討する必要がある
不動産投資は年金保険や退職金のような性質を持っています。ただし、あくまでも付随する効果であるため、本当に有効かどうかは十分に検討しておく必要があります。
なぜ不動産投資が年金保険や退職金になると言われているかについては、以下の通りです。
- 年金保険:借入金の完済または万が一のことがあると、借入金の返済負担がなくなることから収支が大きく改善し、家賃収入を年金のように受け取れる
- 退職金:借入金の完済または万が一のことがあると、借入金の残債がなくなることから不動産の売却収入をそのまま受け取れる(税金等は別途負担)
ただし、借入金完済までの期間によっては家賃収入や物件価格の下落、老朽化による修繕コスト増加も懸念されます。結局、最初から保険に加入しておいたほうが良かったということもあり得ます。
物件の特性を踏まえながら、長期的な収支シミュレーションが必要です。
ワンルームマンションは節税効果を期待しにくい
不動産投資を節税のために行う人もいます。しかし、ワンルームマンションでは節税効果はあまり期待できません。
不動産投資における節税とは、実際には支出しない減価償却費(経費)によって会計上の赤字を作り、給与所得などと損益通算して課税所得を抑えるものです。厳密には、土地分の支払利息は損益通算の対象外のため、土地分の利息を超える赤字が必要となります。
ワンルームマンション(RC造)は構造上、減価償却費が低めになってしまう傾向があります。これは税法上の耐用年数は47年と長いためです。
木造であれば耐用年数は22年であり、仮に取得価額が同一だとすると、1年当たりの減価償却費は木造物件のほうが高くなります。
不動産投資における節税について詳しく知りたい場合は、ぜひ以下の記事を参考にしてください。
ワンルームマンション投資のメリットは?
ワンルームマンション投資(不動産投資)の注意点を紹介してきましたが、ワンルームマンション投資には魅力的なメリットがあります。
前述したような注意点を知り、正しい知識を持っていれば手間や費用を抑えて安定した家賃収入を狙えるのが不動産投資の大きなメリットです。
- 比較的少額の自己資金からでも始められる
- 節税効果を期待できる
- 手間をかけずに大きなインカムゲイン(家賃収入)を見込める
- 年金保険や生命保険として有効になるケースもある
比較的少額の自己資金からでも始められる
ワンルームマンション投資の大きなメリットが、比較的少額の自己資金からでも始められることです。
不動産投資を始めたくても、物件の購入資金が足りない場合、金融機関から融資を受けられないと諦めざるを得ません。その点、物件の購入価額が比較的少額であるワンルームマンションであれば、年収がそれほど高くなくても融資が付きやすいのです。
例えば、属性や資産状況、物件などによるものの、目安として年収450万円あればワンルームマンションの購入に融資を利用することができます。
節税効果を期待できる
不動産投資は、高所得者に人気のある節税方法の1つとして捉えられている面もあります。節税効果といっても、ワンルームマンションはその構造上減価償却費を大きく取りにくいため注意が必要であることは前述しました。
しかし、ワンルームマンション投資は相続税対策としても活用できます。現金で3,000万円持っているより、ワンルームマンションを購入したほうが、目安として時価の3分の1程度で評価されるため相続税を抑えられるのです。
ただし、相続税対策のために購入したワンルームマンション経営が赤字となり、資産が目減りしてしまうことは避けなければなりません。
また、法令改正により「3年以内貸付宅地等」は土地分の評価額を抑えられる特例(小規模宅地等の特例)が利用できなくなってしまいました。
手間をかけずに大きなインカムゲイン(家賃収入)を見込める
不動産投資では、入居者の募集から賃貸契約、退去立会い、原状回復などの管理業務を管理会社などに委託できます。
株式や投資信託などの金融商品は価格変動を気にしなければなりませんが、不動産投資では一度入居者が決まると手間をかけることは少ないのです。
この点は、本業が忙しいサラリーマンから不動産投資に人気が集まる理由の1つといえます。
年金保険や生命保険として有効になるケースもある
不動産投資は、年金保険や生命保険の代わりとして有効になるケースもあります。
ただし、前述のとおり経年によって家賃下落や修繕コストの増加などのおそれがあるため、不動産投資に付随する効果であることに注意しておかなければなりません。
ワンルームマンション投資で失敗しないための方法とは?
ワンルームマンション投資で失敗しないための方法を紹介しますので、ぜひ実践してみてください。
- 割高物件を買わないよう実質利回りを計算をする
- 新築ではなく中古ワンルームマンションを選ぶ
- 空室リスクの対応策を知っておく
- 修繕計画をよく確認しておく
割高物件を買わないよう実質利回りを計算をする
割高物件というのは、その物件の収益性や相場に対して価格が割高である物件のことを指します。割高物件を見極めるためには収益性や相場を判断できることが前提です。
投資物件が掲載されているサイトの多くは、満室想定の家賃収入を物件価格で割った表面利回りが表示されています。
これまで述べてきたとおり、空室リスクや諸費用、借入金の返済などを考慮して実質利回りを計算し、収益性があるか十分に検討しましょう。
新築ではなく中古ワンルームマンションを選ぶ
割高物件を買わないというポイントと共通した観点ですが、新築物件より中古物件のほうが収益性は高い(割安)傾向にあります。
新築は入居者が見つかりやすい反面、購入価格が高めで家賃もすぐに下落しやすい傾向があるからです。一概に新築ワンルームマンション投資はやめておくべきとはいえませんが、このような注意点があることは知っておきましょう。
これから不動産投資を始める人には、価格や家賃が安定している中古ワンルームマンションがおすすめです。
空室リスクの対応策を知っておく
不動産投資は、入居者からの家賃収入が主な収入源です。そのため、空室リスク対策は必ず知っておかなければなりません。
空室リスクの対応策には、例えば次のようなものがあります。
- 立地や周辺環境を事前に調べておく
- 周囲の競合物件と立地や居住条件を比較しておく
- 広告料(AD)やインターネットへの掲載料金を調べておく
- リーシング力の高い管理会社(賃貸仲介業者)を選ぶ
- すでに入居者がいるオーナチェンジ物件を選ぶ
- サブリース(家賃保証)を利用する
修繕計画をよく確認しておく
中古ワンルームマンションは、新築と比べると割安であるものの、想定外の修繕コストが発生する可能性もあります。ワンルームマンションのオーナーは長期的な修繕費をまかなうために修繕積立金を負担しますが、場合によっては修繕積立金の不足が生じる可能性もあるのです。
修繕計画が妥当かどうか、管理組合は適正に稼働しているかなどを専門家を交えて確認しておくことが理想といえます。
結局のところワンルームマンション投資は損するのか?
結論からいえば、ワンルームマンション投資で損する可能性はあります。しかし、これはワンルームマンション投資に限ったことではなく、不動産投資すべてに言えることです。
そのため、不動産投資(賃貸経営)の知識を付け、頼れる経験者や専門家、不動産業者と相談しながら進めることが成功のコツといえます。
不動産投資を通じてどのような目標を達成するかなど、目的を明確にしながら不動産投資(賃貸経営)を学んでいきましょう。
まとめ:ポイントを押さえてワンルームマンション投資を検討しましょう
ワンルームマンション投資(不動産投資)は、きちんと知識を身に付けて運用するとリスクを抑えながら安定した家賃収入を見込める魅力的な投資の1つです。実際、ワンルームマンション投資で成功している人も多くいます。
インターネットや周囲から「やめておけ」と言われても、勉強もせず諦めるのではなく、ぜひこの記事で紹介した内容を踏まえながらワンルームマンション投資を検討してみてはいかがでしょうか。