日本は国による公的制度が充実しているとはいえ、万が一の際の備えは自分自身で準備しておかなければなりません。一般的に生命保険や損害保険に加入している人が多く、これらの保険料は所得控除の対象です。
会社員であれば年末調整で保険料控除制度を利用できますが、うっかり忘れることや控除証明書を紛失することも想定されます。ここでは保険料控除証明書を出し忘れた場合の対処法を解説します。
それぞれの保険料控除の仕組みや控除額を理解した上で保険料控除を活用しましょう。
保険料控除について
病気やケガ、死亡時などの万が一の事態を想定して加入する生命保険や、地震による損害時の補填を目的として加入する地震保険は一定の金額の所得控除を受けることができます。このことを保険料控除と言います。
保険料控除は生命保険料控除と地震保険料控除に大別でき、いずれの保険料控除も1月1日から12月31日までに支払った保険料をもとに計算します。実際に支払った保険料については、毎年保険会社から郵送される控除証明書を確認してきちんと把握しておくことが大切です。
以下で、生命保険料控除と地震保険料控除の詳細をそれぞれ解説します。
生命保険料控除
医療保険や死亡保険といった生命保険に加入した場合、支払った保険料は生命保険料控除の対象です。生命保険料控除は、保障の内容や種類によって3つの区分が設定されています。長ければ加入から数十年にわたって保険料を支払うことになるため、加入前にどの控除区分の対象になるのか確認しておくと安心です。 生命保険料控除は3つの区分が設定されています。
- 一般生命保険料控除
- 介護医療保険料控除
- 個人年金保険料控除
それぞれの控除区分について以下で解説します。
①一般生命保険料控除
生死に関して保険金や給付金が発生する保険に支払った保険料は、一般生命保険料控除の対象です。被保険者の死亡時に保険金が支払われる死亡保険などがこれに該当します。
②介護医療保険料控除
介護医療保険料控除は、入院や通院時に給付金が支払われる保険に加入している場合に利用できます。病気やケガが原因で入院する場合に備える医療保険などが介護医療保険料控除の対象です。
③個人年金保険料控除
一般的に老後資金を貯める目的に利用される年金保険のうち、個人年金保険料税制適格特約が付加されている契約は個人年金保険料控除に該当します。
個人年金保険料税制適格特約を付加するには年金の受け取り開始年齢や支払い期間に制限があるため、加入時に必ず確認しましょう。仮に個人年金保険料税制適格特約が付加されていない個人年金保険の保険料は、一般生命保険料控除の区分となります。
地震保険料控除
損害保険契約などで、地震による損害の補償を受けるために保険料を支払った場合は地震保険料控除の対象です。
2006年の税制改正によって、翌年の2007年からそれまで損害保険料控除と呼ばれていた制度が廃止され、地震保険料のみ控除が受けられるように変更されました。
なお、地震保険は単独で加入することができず、火災保険に付加します。
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保険料控除額について
生命保険料や地震保険料として支出したお金は、控除という形で税金面のメリットを享受できます。続いては各保険料控除を利用する場合の実際の控除額について解説します。
契約した時期によって控除額算出に用いる表が異なりますので、注意しましょう。
【新契約】生命保険料控除額
生命保険料控除制度は2012年の契約分より、控除金額が変更されています。2012年1月1日以降の契約分を税制上の新契約と呼び、控除額は以下の表の計算式を用いて算出します。
年間の支払保険料等 | 控除額 |
---|---|
20,000円以下 | 支払保険料等の全額 |
20,000円超40,000円以下 | 支払保険料等×1/2+10,000円 |
40,000円超80,000円以下 | 支払保険料等×1/4+20,000円 |
80,000円超 | 一律40,000円 |
【旧契約】生命保険料控除額
2011年12月31日以前に契約した保険の保険料は、税制上の旧契約と呼ばれます。旧契約の控除額は以下の表の計算式を用いて算出します。
年間の支払保険料等 | 控除額 |
---|---|
25,000円以下 | 支払保険料等の全額 |
25,000円超50,000円以下 | 支払保険料等×1/2+12,500円 |
50,000円超100,000円以下 | 支払保険料等×1/4+25,000円 |
100,000円超 | 一律50,000円 |
なお、新契約と旧契約の双方に加入していて両方の生命保険料控除の適用を受ける場合、それぞれの保険料に係る控除額の合計がその年の生命保険料控除額になりますが、4万円が限度です。
詳細は以下で確認してください。
地震保険料控除額
地震保険料控除は以下の表によって計算します。
年間の支払保険料の合計 | 控除額 |
---|---|
50,000円以下 | 支払金額の全額 |
50,000円超 | 一律50,000円 |
先述のように損害保険は2006年に税制改正があり、損害保険料控除が廃止されました。しかし、経過措置として以下の要件を満たす場合は、地震保険料控除の対象です。
- 2006年12月31日までに契約したもの(保険始期が2007年1月1日以降のものは除く)
- 満期返戻金等があるもので保険期間または共済期間が10年以上
- 2007年1月1日以降にその損害保険契約等を変更していない
上記の要件を満たす場合は、旧長期損害保険料として以下の金額の控除を受けることができます。
年間の支払保険料の合計 | 控除額 |
---|---|
10,000円以下 | 支払金額の全額 |
10,000円超20,000円以下 | 支払金額×1/2+5,000円 |
20,000円超 | 15,000円 |
こんなときどうする?ケースごとに対処法を解説
会社員であれば年末調整時に保険料控除を申告します。しかし、年末調整時に申告を忘れる場合や控除証明書を紛失してしまうことも想定しておかなくてはなりません。
ここでは保険料控除の利用時に起こりやすいトラブルの対処法をケースごとに解説します。
年末調整で保険料控除証明書を出し忘れた場合
勤務先において年末調整の時に申告ができますが、うっかり保険料控除証明書を出し忘れた場合は確定申告を利用しましょう。
年末調整を利用しないと各種保険料の控除分が源泉徴収票に未反映の状態です。確定申告で提出する書類に保険料控除を記入し提出することで、年末調整利用時と同様に所得税や住民税が控除されます。
確定申告の期限は毎年3月15日前後に設定されています。年末調整を逃したとしても確定申告までいくらかの猶予期間があります。その間に必要書類を揃えておきましょう。なお、確定申告に必要な書類については以下で確認してください。
関連記事:確定申告のために用意しておきたい必要書類とは?7つの事例も紹介
控除証明書を紛失した場合
手元に控除証明書が届いたもののうっかり紛失してしまった場合は、すみやかに保険会社に再発行を申し出ましょう。最近では保険会社の契約者専用ページから自分で再発行できることもあり、後日登録している住所に送付されます。
また、仮に保険を解約したとしても、その年の1月から12月に払い込んだ保険料は保険料控除の対象になります。保険契約自体は消滅していますが、年末調整や確定申告で忘れず申告してください。
控除証明書が届かない場合
控除証明書の多くは毎年10月から11月に発行されます。この時期を過ぎても控除証明書が届かない場合、たとえば転居したことを保険会社に申し出ていないといった原因が考えられます。直近で住所の変更がなかったかどうか確認しましょう。
住所の変更がなく控除証明書が届かないという場合は、再発行の手続きが必要です。再発行までにかかる時間は保険会社によって異なりますので、早めに対応することを心がけてください。
まとめ:年末調整で控除証明書を出し忘れた場合は確定申告の利用を
生命保険や地震保険に対して支払った保険料は各種保険料控除の対象です。会社員であれば年末調整を利用して控除利用を申告できます。
仮に年末調整で控除証明書を出し忘れた場合は、確定申告を利用することで保険料控除が利用可能です。年末調整、確定申告いずれの場合も保険料の控除証明書が必要になりますので、紛失時はすみやかに保険会社に申し出る必要があります。
各種控除額を確認した上で、必要に応じて保険料控除を利用しましょう。