育児休業を取得して職場に復帰する女性が増えていますが、小さい子どもを育てながらフルタイムで仕事をするのは時間的に大変だと感じる人もいるでしょう。そんなときに役に立つのが短時間勤務制度です。
今回の記事では、育児休業後に時短勤務はいつまで続けられるかについて解説します。時短中の給与や育児をサポートするための諸制度についても紹介しますので、負担を抑えながら育児と仕事を両立させようと考える人は参考にしてください。
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法律上は子どもが3歳になるまで時短勤務が可能
時短勤務は、仕事と家庭の両立を図る労働者の支援を目的とした育児・介護休業法に定められています。法律で定められた時短勤務の内容と注意したい点について解説します。
育児・介護休業法が定める短時間勤務制度
育児・介護休業法(第23条)では、「3歳に満たない子を養育する労働者」が請求した場合、事業主に「所定労働時間の短縮措置等」を行なうことを義務付けています。つまり、子どもが3歳になるまで(3歳の誕生日の前日まで)時短勤務が可能であるということです。
時短勤務の内容は、「1日の所定労働時間を原則6時間」とするものです。ただし、時短勤務ができない場合、次の措置が事業主に義務付けられます。
- 育児休業に準ずる休業
- フレックスタイム制度
- 始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ
- 事業所内保育施設の設置運営 など
参考:厚生労働省「育児・介護休業制度ガイドブックP8(PDF)」
所定労働時間の短縮措置等の導入状況
厚生労働省の令和3年度の調査によると、所定労働時間の短縮措置等を導入している事業所の割合は次の通りです。
- 短時間勤務制度 :68.9%
- 所定外労働の制限 :62.7%
- フレックスタイム制度 :17.8%
- 始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ:39.5%
- 事業所内保育施設 :5.0%
- 育児に要する経費の援助措置 :6.8%
- 育児休業に準ずる措置 :18.0%
- テレワーク(在宅勤務等) :11.8%
参考:厚生労働省「令和3年度雇用均等基本調査・事業所調査P28」
直前の2年間と比較すると、上記制度を導入する企業の割合は増加傾向にあります。
育児休業について詳しく知りたい人は、次の記事をご覧ください。
短時間勤務制度の対象にならないケース
時短勤務は、男女問わず原則全ての労働者を対象としていますが、「日雇い労働者」や「1日の労働時間が6時間以下の人」は対象外です。
また、次に該当する人は労使協定(会社と労働者代表の取り決め)が締結されている場合は対象外です。該当する場合は、勤務先や労働組合などに確認しましょう。
- 雇用期間が1年未満の労働者
- 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者 など
子どもが3歳になったあとの時短勤務
子どもが3歳になったあとも時短勤務を続けたいと考える人もいるでしょう。子どもが3歳以降の時短勤務について説明します。
子どもが3歳以降は勤務先の就業規則次第
子どもが3歳以降については、法律上事業主が時短勤務制度を設ける義務がないため、時短勤務ができるかどうかは勤務先の就業規則次第です。
厚生労働省の育児・介護休業制度等に関する事業所調査によると、短時間勤務制度を導入している企業の利用可能期間ごとの割合は次の通りです。
- 3歳未満:53.6%
- 小学校就学の始期に達するまで:16.1%
- 小学校入学以降も対象:25.8%
参考:厚生労働省「令和3年度雇用均等基本調査・事業所調査P28」
つまり、制度導入企業の4割以上で3歳以降も時短勤務が継続できるということです。
子どもが小学生になる前までの法律上の努力義務
3歳から小学生になるまでの間は、企業に時短勤務制度を設ける義務はありませんが、次の措置を講じるように企業は努めなければなりません。罰則はありませんが、努力義務が課されているということです。
- 育児休業に関する制度(原則子どもが1歳まで、延長により2歳まで)
- 所定外労働の制限に関する制度(子どもが3歳まで)
- 短時間勤務制度(子どもが3歳まで)
- フレックスタイム制度や始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ など
※()内は、企業に法律上の義務が課される期間です。
参考:厚生労働省「育児・介護休業制度ガイドブックP8(PDF)」
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時短勤務のときの給与
時短勤務したときの給与はどうなるのでしょうか。短縮した時間の賃金は有給とする企業や無給とする企業など、給与の取り扱いは企業によって異なります。厚生労働省の令和3年度の調査によると、短縮した時間の賃金の取扱状況は次の通りです。
- 有給:10.7%
- 一部有給:10.4%
- 無給:78.8%
参考:厚生労働省「令和3年度雇用均等基本調査・事業所調査P30」
8割近くの企業では、時短勤務で勤務を短縮した時間については無給です。1日の所定労働時間が8時間、時短勤務で実際の労働時間が6時間(2時間は無給)の場合、給与はフルタイムで仕事をしたときの75%になります。
時短勤務以外に活用できる制度
育児のために利用できる制度は、短時間勤務制度だけではありません。法律で定められたその他の制度を紹介します。
子どもの養育や医療費に関する制度について詳しく知りたい人は、次の記事をご覧ください。
子の看護休暇
子の看護休暇とは、小学校就学前の子どもが病気で看護が必要なときなどに、労働者の請求により年次有給休暇とは別に取得できる休暇です。
毎年4月から翌年3月までの1年間に5日間(子どもが2人以上の場合は10日間)取得でき、1日単位でも時間単位でも取得可能です。
ただし、雇用期間が半年未満の人や1週間の所定労働日数が2日以下の人などは、労使協定によって子の看護休暇を取れないこともあるため、勤務先などで確認しましょう。以下で説明する制度についても雇用期間が短い人などは対象外となることがあります。
残業の免除または残業時間の制限
育児のために残業を免除、または残業時間を制限する制度もあります。対象となる子どもは両制度で異なります。
3歳未満の子どもがいる場合、養育のために労働者が請求すれば、残業は免除してもらえます。1ヶ月以上1年以下の期間を定め、残業免除を希望する期間を勤務先に伝えましょう。
小学校就学前の子どもがいる場合、養育のために労働者が請求すれば、時間外労働(法定労働時間を超える残業)が1ヶ月24時間、1年150時間以内に制限されます。
深夜業の制限
深夜業とは、午後10時から午前5時までの深夜の時間帯での仕事です。小学校就学前の子どもがいる場合、養育のために労働者が請求すれば、深夜業を免除してもらえます。
ただし、雇用期間が短い人などに加え、次に該当する人は労使協定によって制限の対象外となることもあります。
- 深夜に子どもを保育できる16歳以上の同居家族がいる人
- 元々所定労働時間すべてが深夜であった人
介護のための時短勤務は通算93日
家族を介護する労働者についても、育児をする労働者と同じように、企業に対して所定労働時間短縮等の措置を設けることが義務付けられています。
制度内容は、時短勤務やフレックスタイム制度、労働者が利用する介護サービスの費用の助成などです。時短勤務の場合は、「所定労働時間が8時間の場合は2時間以上、7時間以上の場合は1時間以上の短縮が望ましい」とされています。
時短労働できる日数は介護が必要な家族1人につき通算93日です。介護休業を取得した場合は、介護休業と時短勤務を通算して93日までとなります。
介護のために時短勤務したときの給与について、考え方は育児のための時短勤務と同様です。短縮した時間の賃金が有給か無給かは勤務先次第です。「ノーワークノーペイ」の原則から、時短分は無給とする企業が多いでしょう。
まとめ:就業規則で時短勤務できる期間を確認してフルタイムへの復帰計画を
育児のための時短勤務は、勤務先に請求すれば子どもが3歳になるまで取得することができます。時短勤務によって、1日の所定労働時間を原則6時間に抑え、育児と仕事を両立しやすい環境が期待できます。
子どもが3歳以降も時短勤務を続けられるかどうかは勤務先次第ですが、3歳以降の時短勤務を認める企業も多いため、勤務先の就業規則で確認しましょう。
育児と仕事のバランスやフルタイムへの復帰時期を検討し、時短勤務など子育てを支援する諸制度を有効に活用して自分にあった働き方を見つけましょう。
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