金融庁では「貯蓄から投資へ」の流れを積極的に促しており、資産形成のために投資を始める人も増えています。しかし、貯金からどれくらいの金額を投資に回すべきかわからないという人も少なくありません。
そこで本記事では投資と貯金の適切な割合について解説します。投資額に応じたおすすめの投資方法も併せてご紹介しますので、投資を始める際の参考にしてください。
日本は現預金資産の割合が高い
失業や災害といった不測の事態の備えとして、また教育資金や老後資金のために普段から貯金している人の多くは、資産を現金・預金という形で持っている人が多いです。
しかし、資産には現金・預金の他にも投資信託や株などもあり、資産運用を考える上ではそれぞれの適切な割合を考慮しなければなりません。投資と貯金の割合を考える上で、一般的な投資と貯金の割合を知ることは非常に重要です。
日本銀行では、日本と主要各国の金融資産の統計を公表しています。日本と米国、ユーロエリアの2021年3月末における金融資産の構成割合は以下の通りです。
上記の統計から分かる通り、日本は安全資産と呼ばれる現金・預金の割合が高く、50%を超えています。一方、ユーロエリアの現金・預金の割合は34.3%で、米国はさらに少ない13.3%です。ユーロエリアや米国では、代わりに債券証券や投資信託、株式等の割合が日本と比べて高いことが分かります。
米国やユーロエリアの資産割合が必ずしも適切というわけではないものの、低金利が続く日本では投資を利用した資産運用を積極的に検討すべきといえるでしょう。
投資と貯金の割合はどれくらい?
「家計の金融行動に関する世論調査(令和3年)」によると、世帯の人数や年代に応じて投資と貯金の割合にも違いが見られます。
単身世帯と二人以上世帯の資産構成割合はそれぞれ以下の通りです。
単身世帯の資産構成割合:
参考:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](令和3年)」
二人以上世帯の資産構成割合:
参考:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和3年)」
単身世帯、二人以上世帯共に現預金の割合が一番高い点が特徴です。
一方、株や投資信託といった投資商品の割合は、現預金の割合よりも低く、若年層を中心に二人以上世帯よりも単身世帯のほうが投資の割合が高くなる傾向があります。これは、単身世帯のほうがお金の使途を自由に決めることができるため、単身世帯の投資の割合が高くなっていると考えられます。
このデータからも分かる通り、投資と貯金の割合は年代や世帯人数によってさまざまです。そのため、投資と貯金の割合は、統計データを参考にした上で、自分自身の状況を踏まえて決めることが大切です。
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投資と貯金の割合を決める際のポイント
投資と貯金割合の目安を知ると、自分自身に合う適切な投資と貯蓄の割合をイメージしやすいでしょう。しかし、投資と貯蓄の割合は、調査の平均値通りにすれば良いというわけではありません。
以下の4点に留意しながら、投資と貯金の割合を決めましょう。
- 投資可能な資金額を把握しているか
- 投資目的は何か
- 生活防衛資金を確保できているか
- 許容できるリスクはどれくらいか
①投資可能な資金額を把握しているか
昨今は超低金利時代といわれ、普通預金を利用したとしても以前のようにお金はほとんど増えません。投資は有効な資産運用方法の1つといえるでしょう。しかし、投資に多くのお金をつぎ込むあまり、家計の収支や資産のバランスが崩れるという事態は避けなければなりません。
そのため、資産の現状を把握するためにバランスシートの作成がおすすめです。バランスシートは、左側に資産を記載します。資産には、現金や貯金などの流動資産のほかに土地などの固定資産があります。
バランスシートは、インターネット上でひな型や作成方法が公開されているので、参考にすると、簡単につくることができます。バランスシートの右側に負債として借入金を記載すると、資産と負債のバランスが一目で確認できるので、どれくらいの資金を投資に回すことができるのか把握する際に役立ちます。
また、家計簿などを利用して毎月・毎年の収支を確認し、投資と貯金の割合が適切かどうか適宜チェックしましょう。
②投資目的は何か
投資と貯金の割合を考える上で、「なぜ投資を行うのか」という目的を明確にすることも大切です。なぜなら、投資方法によってリスクや運用期間、さらに利益を受け取るタイミングなどが異なるからです。
投資を利用する人の中には、投資を利用しながら教育資金や老後資金準備などの目的を持っている人も多いです。手元の資金を増やしたい理由と共に、いつまでにどれくらいの資産を目指すのかもはっきりとさせましょう。
投資の目的がはっきりすると選ぶべき投資方法が定まり、投資と貯金の割合を決めやすくなります。
ただし、リスクの高い投資方法を選ぶ際には投資額を少額にするなど、投資と貯金の割合が大きく崩れることのないよう注意しましょう。
③生活防衛資金を確保できているか
投資を始める際には、生活防衛資金を確保しておくことも大切です。生活防衛資金とは、万が一の事態に備えて準備しておくお金のことをいいます。人生において、重病や失業といったリスクは誰もが抱えており、このような不測の事態でも生活防衛資金があれば当面の生活に困ることはありません。
しかし、仮に投資に貯金の全額をつぎ込んでいると手元の資金はわずかしかなく、万が一の事態に困る可能性があります。突然の支出に備えて、生活防衛資金は投資に回さずに確保しておきましょう。
なお、生活防衛資金の目安は一般的に生活費の3~6ヶ月分といわれていますが、家族構成や収入、生活費によって大きく異なる点には注意が必要です。
④許容できるリスクの大きさはどれくらいか
投資には少なからずリスクがあり、運用実績によっては元本を下回ることもあるでしょう。このようなケースを考え、投資による損失をどこまで受け入れられるかについても事前に考慮しておくことが大切です。
リスク許容度を考慮することで投資可能な金額が具体化します。なお、リスク許容度は、収入や貯金額に加え、投資経験や性格なども影響しますので、人それぞれ異なります。
例えば、FXや仮想通貨は値動きが激しく、債券など他の投資方法と比べるとリスクは高いといえるため、自分自身のリスク許容度に応じた投資方法かどうか確認しましょう。
【金額別】おすすめの投資方法
投資と貯金の割合を決めた上で、どのような方法で投資するかについて考えることも大切です。投資には株や不動産などさまざまな種類があり、手元の投資金額ごとに適した投資方法があります。
そこで、投資額に応じたおすすめの投資方法をそれぞれご紹介します。
下記の金額は、みなさんの資産額から生活防衛資金など生活用資金を差し引いた金額として、投資にあてても問題ない金額です。下記の資金額の範囲で投資先や割合が変動したり、また、資産額が変わった場合は、それに対応して投資額も変わることになります。
投資額30万円未満
投資に充てる金額が30万円未満であれば、中長期的な運用がおすすめです。投資額は高額ではないものの、時間をかけてコツコツと運用することで大きなリターンを得られる可能性があります。
少額で投資する際には投資信託を利用することで、運用の専門家である運用会社が株式や債券に分散投資してくれます。投資信託は100円から積み立てられる銘柄もあり、これまで投資の経験がない人でもチャレンジしやすいのが特徴です。
投資額30~100万円
投資と貯金の割合を考慮した上で、数十万円程度のまとまった金額が手元にある場合はETF(上場投資信託)への投資を検討しましょう。ETF(上場投資信託)とは投資信託の一種で、日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)といった指数に連動するよう運用されています。
ETF(上場投資信託)は金融商品取引所に上場しているため、基準価格の変動をリアルタイムでチェックしながら売買ができるのもメリットです。ETF(上場投資信託)は投資信託に比べて信託報酬が低いので、コストを抑えて投資できます。
投資額100万円~1,000万円
数百万円ほどの貯金があっても、1つの金融商品に全額を投資するのはリスクが高いため避けましょう。そこで、まとまった金額の資金を投資する際には投資先を複数に分け、リスク分散を心がけることが大切です。
まとまったお金がある場合は、例えば株式投資で複数の銘柄を購入してみるのも良いでしょう。株式投資の場合、売買による差益の他に、配当金や株主優待を受けることができる場合があります。決算情報や企業の動向をしっかりと調べた上で、投資先の銘柄を選定しましょう。
まとめ:投資と貯金の割合を決めた上で投資を始めよう
投資と貯金の割合に正解はなく、年代や家族構成、リスク許容度に応じて自分自身に合う割合を見極めることが重要です。
また、手元資金の金額やお金を使う時期・目的に応じて適切な投資方法を選ぶことで無理なく投資を続けることができます。自分に最適な投資と貯金の割合を考えながら、早速投資を始めてみましょう。