皆さんは「厚生年金の保険料を会社も負担している」ことをご存知ですか?ご存知の方は多いですが、具体的に会社負担はどの程度なのか、保険料をどのように計算しているのかご存知の方は限られるのではないでしょうか。
この記事では、厚生年金保険料の会社負担割合や保険料、もらえる年金額の計算方法など、厚生年金に関する知識を深められる内容について解説します。厚生年金の仕組みについて詳しく知らないという方は必見の内容です。
厚生年金の会社負担の割合
厚生年金に加入している方は「厚生年金保険料」を納付する必要がありますが、厚生年金保険料の半額は会社負担です。
国民年金に保険料納付が必要であるのと同じように、厚生年金にも保険料を納付しなければならないルールがあります。保険料をいくら納付しなければならないのかについては後述しますが、計算された各人の保険料の全額を、その人が負担しているわけではありません。
決定された厚生年金保険料のうち、50%については雇用主、つまりその人が勤めている会社が負担しています。残りの50%については本人が負担し、給料からの天引きで納付します。
厚生年金の保険料の計算方法
厚生年金の保険料は、本人の収入がいくらであるかによって変動します。つまり、収入が多いほど厚生年金保険料の負担額も多くなります。
ここでは、保険料の計算式と、計算に使用する語句について紹介します。
保険料の基本の計算式
厚生年金保険料は、以下の計算式で求めることができます。
厚生年金保険料(月額)=標準報酬月額 × 保険料率
「賞与」がある場合には、以下の計算式のとおり厚生年金保険料を納付する必要があります。
厚生年金保険料(賞与)=標準賞与額 × 保険料率
標準報酬月額
被保険者ごとに変動する数値は「標準報酬月額」です。これに保険料率をかけて、その半額を給料から天引きして保険料として納付しています。
標準報酬月額は、各被保険者が受取る給与(基本給のほか残業手当や通勤手当などを含めた税引き前の給与)について、一定の幅で32段階に区分し、区分ごとの金額で決まります。
例えば、ある月の給料が21万5千円だった場合、15等級(21万円~23万円の区分)に該当するため、標準報酬月額は22万円になります。
参考:「令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表」
なお、標準報酬月額は毎年9月に「4月から6月の報酬月額」を基にして金額などの改定が行われます。
標準賞与額
「標準賞与額」とは、税引き前の賞与額から千円未満の端数を切り捨てた金額です。支給1回(同じ月に2回以上支給されたときは合算)につき150万円を上限としています。
厚生年金保険における標準賞与額の対象となる賞与とは、名称を問わず「労働者が労働の対償として受けるもの」のうち「年3回以下の回数で支給されるもの」とされています。なお、これには自社製品等の「現物で支給されるもの」を含む点に注意が必要です。
保険料率
現行の厚生年金保険料の保険料率は「18.3%」です。実際には、その半分が会社負担なので、被保険者自身が負担する保険料率は「実質9.15%」となります。
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厚生年金でもらえる年金額
ここまで、厚生年金における「負担する保険料」について説明しましたが、この項目では「もらえる年金額」について解説します。
厚生年金の年金額は「どのような形(理由)でもらうのか」「年金を受給するまでにいくら保険料を負担したのか」によって、もらえる年金額が異なります。
老齢厚生年金の年金額
老齢厚生年金とは、以下の条件を満たした方が受給できる厚生年金です。
- 「老齢基礎年金」の受給要件を満たしている
- 「厚生年金保険」の被保険者期間が1ヶ月以上ある(ただし、65歳未満の方が受け取る老齢厚生年金については1年以上の被保険者期間が必要)
老齢厚生年金は、受給者の年齢が65歳未満か65歳以上かで、年金額の計算方法が異なります。
- 65歳未満:定額部分 + 報酬比例部分 + 加給年金額
- 65歳以上:報酬比例年金額 + 経過的加算 + 加給年金額
参考:日本年金機構「老齢厚生年金(昭和16年4月2日以後に生まれた方)」
具体的な受給額については、以下の記事にて解説しておりますので、そちらを参考にしてください。
障害厚生年金の年金額
障害厚生年金とは、厚生年金加入者が一定以上の障害(障害等級3級以上)を負った場合に、保険料納付要件を満たしたうえで所定の手続きを行うことで受給できる年金です。
もらえる年金額は、認定された「障害等級」によって以下のように区分されます。
- 障害等級1級:報酬比例の年金額 × 1.25 + 配偶者の加給年金額(224,700円・令和3年度)
- 障害等級2級:報酬比例の年金額 + 配偶者の加給年金額(224,700円・令和3年度)
- 障害等級3級:報酬比例の年金額(最低保障額:585,700円・令和3年度)
参考:日本年金機構「障害厚生年金の受給要件・支給開始時期・計算方法」
障害厚生年金の年金額や受給資格について、詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
遺族厚生年金の年金額
遺族厚生年金とは、厚生年金加入者が亡くなった場合に、遺族の方が受給できる年金です。
以下の計算式のうち、基本的に①の金額を、②の金額が上回る場合には②の金額がもらえる年金額となります。
- ①(平均標準報酬月額 × 7.125/1000 × 平成15年3月までの被保険者期間の月数 + 平均標準報酬額 × 5.481/1000 × 平成15年4月以後の被保険者期間の月数)× 3/4
- ②(平均標準報酬月額 × 7.5/1000 × 平成15年3月までの被保険者期間の月数 + 平均標準報酬額 × 5.769/1000 × 平成15年4月以後の被保険者期間の月数)× 1.001 × 3/4
遺族厚生年金の年金額や受給資格について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
会社負担が存在する社会保険料
雇用されている方は、厚生年金保険料を合わせて5つの「社会保険料」について、その一部(または全部)を会社に負担してもらっています。
厚生年金保険
ここまで解説した「厚生年金」に加入するための保険料です。被保険者の収入によって保険料が決められ、その50%が会社負担、残り50%を被保険者本人が負担します。
健康保険
医療費の負担を軽減するための「健康保険」の保険料です、厚生年金保険料と同じく、保険料はその半分を勤め先が負担してくれます。
介護保険
40歳以上65歳未満の方が該当する「介護保険第2号被保険者」の保険料です。同じく、保険料の半分は勤め先が負担します。
雇用保険
失業時や教育訓練を受ける際に備える保険の保険料です。これまでの社会保険料と違い、勤め先の方が負担割合が大きく設定されています。
- 一般事業:保険料率0.9%(事業主負担0.6%+従業員負担0.3%)
- 農林水産・清酒製造の事業:保険料率1.1%(事業主負担0.7%+従業員負担0.4%)
- 建設の事業:保険料率1.2%(事業主負担0.8%+従業員負担0.4%)
参考:厚生労働省「令和2年度の雇⽤保険料率について」
おおよそ「勤め先:従業員=2:1」の割合で設定されています。
労災保険
仕事中の事故などに備えるための保険の保険料です。労災保険の保険料は、その全額を会社が負担しています。つまり、従業員側に労災保険料の負担は存在しません。
まとめ:厚生年金の保険料は労使折半
今回は、厚生年金保険料の会社負担を中心に解説しました。 以下の3つのポイントをおさえておきましょう。
- 厚生年金保険料の半分は会社負担である
- 厚生年金保険料は本人の収入によって金額が異なる
- 5つの社会保険料の一部を雇用先が負担している
厚生年金に加入することで、保険料負担はその分だけ増えますが、将来もらえる年金は充実しますし、半分は会社が負担してくれます。
年金には「何となく加入している」「仕組みをよく知らない」という方が少なくありませんが、将来に備えるためには年金の仕組みについて詳しく知っている方が有利です。不明な点があれば日本年金機構や専門の窓口、年金問題に詳しい専門家に相談しましょう。