毎月の国民年金保険料を上乗せで納付することで、将来の年金額が増加する「付加年金」。
自営業者やフリーランスにとっては魅力的な制度ですが、「付加年金に欠点はないの?」と疑問に感じている人もいるのではないでしょうか。
そこで本記事では付加年金のデメリットと、それを補って余りあるメリットについて紹介します。付加年金に加入するか迷っている方は、ぜひ参考にしてください。
付加年金とは
付加年金とは、毎月の国民年金保険料に400円を追加納付することで、払い込んだ月数に応じて将来の年金額が加算される制度のことです。
払い込んだ保険料がそのまま加算されるわけではありませんが、老齢基礎年金の受給額が永続的に増額されます。生存中は増額した年金額を受け取れることが大きな魅力です。
基礎年金のみを受け取る人と厚生年金と基礎年金の両方を受け取る人は、受給できる金額に大きな違いがあります。
日本年金機構によると令和4年の年金の給付水準は以下のとおりです。
令和4年度(月額) | 令和3年度(月額) | |
---|---|---|
老齢基礎年金(満額) | 64,816円 | 65,075円 |
厚生年金※ (夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額) |
219,593円 | 220,496円 |
※平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)43.9万円)の条件で40年間就業した場合に受け取る年金
出典:日本年金機構|令和4年4月分からの年金額等について
付加年金を活用して老齢基礎年金に上乗せすることで、厚生年金との差を埋めることができるでしょう。
付加年金の加入条件
付加年金の加入は任意であり、加入するにはいくつかの条件が設定されています。
加入できる人 | ・国民年金第1号被保険者 ・国民年金の任意加入被保険者(65歳以上を除く) ※農業者年金に加入している場合、付加保険料納付該当届の提出が必要 |
---|---|
加入できない人 | ・第2号被保険者(会社員・公務員など) ・年金保険料の免除・猶予を受けている人 ・国民年金基金の加入者 |
付加年金に加入できるのは国民年金の第1号被保険者(自営業・フリーランス・学生など)です。会社員・公務員等の第2号被保険者、第2号被保険者に扶養される第3号被保険者は利用できません。
付加年金の試算例
付加年金として受け取れる金額は、「200円×納付月数」です。30年間付加年金保険料を納めた場合、受け取れる金額は以下のようになります。
・200円×360ヶ月(30年)=72,000円
この場合、毎年72,000円を老齢基礎年金にプラスして受け取ることができます。
一方、納付した金額は「400円×360ヶ月=144,400円」。つまり、2年間受け取れば元が取れる計算です。
年金の上乗せ金額は少額ながら、生存中は毎年受け取ることができる強みがあります。
上記のケースで65歳から85歳まで受け取り続けると仮定すると、年金受給額が144万円増えることになります。
付加年金にはデメリットがある?
「付加年金に欠点があるのでは?」と考えて、加入できていない人もいるのではないでしょうか。ここでは付加年金のデメリットについて紹介します。
デメリット1.65歳までに亡くなると納付額が全く還付されない
公的年金制度は本人が生存中に受け取ることができる制度です。
もし年金受給を開始する前に亡くなった場合、納めてきた保険料は年金として還付されません。
デメリット2.基礎年金の繰り上げをすると一緒に減額になる
老齢基礎年金は、原則として65歳からの受給開始ですが、受給開始時期を繰り上げることができます。最短で60歳から受給開始も可能ですが、1ヶ月早く受け取るごとに受給額が0.4%減額されます。昭和37年4月1日以前生まれの方の減額率は、0.5%(最大30%)となります。
繰り上げ受給をすると、付加年金も同率で減額されるため注意が必要です。
デメリット3.受給開始2年以内に亡くなると元が取れない
付加年金は受給開始してから2年経過すると納めてきた保険料の金額に達します。
65歳から年金を受給した場合、67歳まで付加年金を受け取ればそれ以降は増額分が丸ごと利益になる計算です。67歳までに亡くなった場合、保険料として納付した全額を回収できないまま受給が終了することになります。
デメリット4.物価上昇(インフレ)には対応していない
付加年金は、物価が上昇しても受け取る金額が増加しません。
老齢基礎年金は物価の上昇・下落に合わせてある程度受給額が変動するように設計されていますが、付加年金にはそのような機能はありません。
インフレが発生すると実質的に受け取れる金額が目減りする点は覚えておきましょう。
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付加年金にはデメリットに負けないメリットがある
付加年金には「受給開始までに死亡すると保険料が還付されない」、「インフレには対応できない」等のデメリットがあることが分かりました。
一方、加入することで以下のようなメリットを享受することができます。
メリット1.たった2年の受給で元が取れる
付加年金は月納付額が400円である一方、受給する際は1年ごとに「200円×納付月数」で受け取ることになります。
年金の受給が始まれば2年で元が取れ、それ以降も同額を受け取り続けることができます。
メリット2.基礎年金を繰り下げると付加年金も一緒に増額になる
年金は受給開始時期を後ろ倒し(繰り下げ受給)することで、一定の料率で年金を増額させることができます。
65歳で受け取らずに66歳以降75歳までの間で繰り下げることが可能で、1ヶ月繰り下げるごとに0.7%、75歳まで繰り下げることで最大84%も増額します。
老齢基礎年金の繰り下げ受給を選択することで、付加年金の分も同様の料率で増額させることが可能です。
メリット3.付加保険料は社会保険料控除として所得控除になる
国民年金保険料や健康保険料などは、社会保険料控除として所得から全額を控除することができます。付加年金も他の社会保険料と同じように、所得から全額を控除することが可能です。
各種所得の金額の合計額から各種所得控除の額の合計額を差し引くことができるため、課税所得から計算される所得税や住民税が減額されます。
社会保険料控除の詳細に関しては、以下の記事を参考にしてください。
メリット4.前納による割引もある
国民年金保険料は前納制度によって割引を受けることができますが、付加保険料も前納制度を利用することで保険料が若干安くなります。
2022年度の場合、前納による付加年金の割引額は以下のとおりです。
納付方法 | 納付期間 | 前納額 | 割引額(※) |
---|---|---|---|
現金・クレジットカード納付 | 6ヶ月前納 | 2,380円 | 20円 |
1年前納 | 4,710円 | 90円 | |
2年前納 | 9,250円 | 350円 | |
口座振替 | 6ヶ月前納 | 2,370円 | 30円 |
1年前納 | 4,700円 | 100円 | |
2年前納 | 9,220円 | 380円 |
※毎月400円納付する場合と比べた割引額
出典:士別市|2022年度国民年金保険料のお知らせ
付加年金の加入手続きの流れ
付加年金に加入するには、居住している地域の市区町村役場等の「保険年金課」に足を運んで手続きが必要です。
備え付けの「国民年金被保険者関係届書(申出書)」を記入することになりますが、あらかじめ日本年金機構でダウンロードすることもできます。
また、手続きに訪れる際は以下の書類も持参する必要があります。
【付加年金に加入する際に必要な書類】 ・年金手帳・基礎年金番号通知書 ・本人確認書類(運転免許証、パスポート、マイナンバーカードなど) ・委任状(本人が手続きするなら不要) |
窓口で手続きのうえ、申し込んだ月の分から保険料の納付が始まります。
まとめ:付加年金にはデメリット以上の魅力がある
国民年金の第1号被保険者の年金額を増やすことができる「付加年金」について解説しました。
デメリットとしては、年金を受給開始するまでに亡くなったり、受給開始から2年が経過するまでに亡くなったりすると納付分を取り戻せない点が考えられます。
一方、「受給を開始して2年経てば元がとれる」、「全額が社会保険料控除として所得控除になる」といった数々の魅力がある制度でもあります。
将来の受給額を増加させるためにも、積極的に付加年金の活用を検討してはいかがでしょうか。