2021年4月から70歳までの雇用が企業の努力義務になりますが、「65歳で仕事をやめて老後は大丈夫?」「65歳以降も働くと年金は減るの?」と不安を感じる人も多いでしょう。
今回の記事では、65歳以降も働いた場合の年金の受給について解説するとともに、繰り下げ制度も紹介します。この記事を読むと年金の仕組みがわかり、65歳以降も仕事を続けるかどうかの判断材料が得られるでしょう。
65歳以降に受給できる「老齢年金」の基礎
老齢年金の支給開始年齢は、60歳から65歳に段階的に引き上げられています。もともと年金制度は複数あり、また支給開始年齢も引き上げ途中であるため、人によって受け取る年金の種類や開始時期はそれぞれです。
そのため、年金はよくわからないという人も多いでしょう。まずは老齢年金の基礎知識を確認しましょう。
老齢年金の種類と支給開始年齢
老齢年金には次の3種類があり、支給開始年齢はそれぞれ異なります。
- 老齢基礎年金:65歳開始
- 老齢厚生年金:65歳開始
- 特別支給の老齢厚生年金:60歳~64歳
特別支給の厚生年金は、支給開始が60歳から65歳へ引き上げる途中の移行措置として設けられました。そのため、移行期間が終わる「昭和36年4月2日以降生まれの男性」と「昭和41年4月2日以降に生まれた女性」は受給できません。
つまり、これから年金を受け取り始める人のほとんどは、年金開始年齢が65歳となります。
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【無料】保険・年金相談会はコチラ ▶︎老齢年金額の計算方法
老齢年金がいくらもらえるかは、日本年金機構のねんきん定期便やねんきんネットで確認できますが、ここでは年金額の計算方法を簡単に紹介します。
老齢基礎年金額の計算
老齢基礎年金の受給額は、20歳から60歳まで国民年金の保険料支払い月数を使って下記の通り計算します。40年間(=480か月)すべて支払った場合の年金額は、78万1,700円(令和2年度の満額。毎年見直しあり)です。
(受給額)=(78万1,700円)×(保険料支払い月数)÷(480か月)
厚生年金の人も第2号被保険者として国民年金に加入しているので老齢基礎年金の対象です。また、国民年金保険料の免除期間がある人など、詳細は下記リンクを参照ください。
参照:日本年金機構「老齢基礎年金(昭和16年4月2日以後に生まれた方)」
老齢厚生年金額の計算
老齢厚生年金の受給額は、厚生年金に加入していた月数(20歳前と60歳から70歳を含む)と平均標準報酬額(※)によって下記の通り計算します。
(受給額)=(平均標準報酬額)×(5.481/1,000)×(加入月数)
(※)平均標準報酬額は下記リンクを参照。正確に計算するのは難しいので、在職中の平均年収を12で割った金額(賞与を含む月収)だと考えて概算しましょう。
参考:日本年金機構「老齢厚生年金(昭和16年4月2日以後に生まれた方)」
また、老齢厚生年金には下記要件を満たした人に「加給年金」が加算されます。加算期間は「本人が65歳になる翌月から配偶者または子が以下の年齢に達するまで」です。
- 本人:厚生年金の加入期間が20年以上
- 配偶者:65歳未満、かつ老齢厚生年金(※)または退職共済、障害年金を受給していない(※厚生年金加入期間が20年未満、または40歳(女性は35歳)以降15年未満であれば、老齢厚生年と加給年金を両方受給できます)
- 子:18歳になる年度の3月31日まで、または20歳未満で障害等級1級・2級の障害の状態にある
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【無料】保険・年金相談会はコチラ ▶︎65歳時の年金手続き
65歳の誕生日の3か月前に日本年金機構から手続き案内が届きますので、下記に留意して年金手続きを行います。
- 郵送ではなく予約をとって年金事務所で手続きを行う(郵送された手続書類のほとんどに不備がある、年金記録の確認が必要、などが理由)
- 予約のときに必要書類を教えてもらう(年金加入状況によって必要書類が異なる)
- 年金事務所で手続きする日は、誕生日の前日以降にする(誕生日前日より前は手続き不可)
特別支給の老齢厚生年金の受給者は、受給権発生時に上記手続きをするとともに65歳時にも手続きが必要です。65歳の誕生月に送付される「年金請求書(65歳はがき)」によって、年金を65歳から受け取るか、繰り下げするかを選択しなければなりません。
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【無料】保険・年金相談会はコチラ ▶︎働きながら年金を受け取ることができる「在職老齢年金」
65歳以降に仕事を続ける場合でも、原則、年金を受け取ることはできます。ただし、厚生年金の人は老齢厚生年金の一部または全額が支給停止される場合があります。
厚生年金に加入しながら受け取る老齢厚生年金を「在職老齢年金」といい、以下でその仕組や計算方法を解説します。
在職老齢年金の仕組み
年金と給与の合計収入が一定以上ある人の年金の一部または全部を支給停止する仕組みが在職老齢年金です。在職老齢年金について誤解の多いポイントを紹介しますので確認ください。
- 対象となる年金は老齢厚生年金のみで、老齢基礎年金は全額支給される。
- 70歳までの厚生年金に加入している期間が対象となる。
- 70歳以上の人や自営業者の人はいくら収入があっても支給停止されない。
支給停止されるのは、正確には基本月額(※1)と総報酬月額相当額(※2)の合計が47万円を超える人です。大雑把に1か月の年金と給与の合計が47万円を超える人と覚えてもいいでしょう。
(※1)老齢厚生年金の報酬比例部分
(※2)標準報酬月額と直近1年の標準賞与額の1/12の合計。詳細は下記リンクを参照。
「特別支給の老齢厚生年金」や「加給年金」の受給者は要注意
「特別支給の老齢厚生年金」や「加給年金」の受給者は、下記に注意しましょう。
- 特別支給の老齢厚生年金の受給者: 基本月額と総報酬月額相当額の合計が28万円を超えると年金の一部または全部が支給停止
- 加給年金の受給者: 老齢厚生年金が全額支給停止になったときは加給年金は支給されない
特に、加給年金は金額も大きく、全額支給停止になると、年金額は大きく変わってきます。
在職老齢年金の計算方法
65歳以上の人が在職老齢年金に該当した場合にもらえる金額は、下記で計算できます。
受給額=基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-47万円)÷2
下記のケースで在職老齢年金の受給額を計算してみましょう。
- 老齢厚生年金額:月23.25万円(報酬比例部分20万円+加給年金3.25万円(年間約39万円))
- 総標準報酬額:40万円(標準報酬月額30万円+標準賞与額120万円/12か月)
受給額=20万円-(20万円+40万円-47万円)÷2=13.5万円
受給額の13.5万円に加給年金3.25万円を加えた16.25万円が1か月の老齢厚生年金額です。
実際には、これに老齢基礎年金額(満額で月6.5万円)を加算します。
加給年金を除いて受給額を算出するのが、計算のポイントです。
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繰り下げ制度を利用すると年金額は最大84%アップ
年金法改正により、 老齢年金の繰り下げ支給の上限年齢が70歳から75歳に延長されることが決まりました。実施は2022年4月からですが、老後の生活設計を考える上で、65歳から年金をもらうか、70歳や75歳まで繰り下げてもらうかは重要な問題です。
以下では、繰り下げ制度の仕組みと注意点について解説します。
繰り下げ制度の仕組み
繰り下げ制度とは、65歳から始まる老齢基礎年金や老齢厚生年金の受給開始を遅らせることによって年金額を増やす仕組みで、主な取り扱いは下記の通りです。
- 受給開始年齢は66歳から70歳まで(2022年4月以降75歳まで)任意で選択できる。
- 1か月単位で受給開始する月を選択できる。
- 1か月受給を遅らせると年金額は0.7%増額する。
- 老齢基礎年金、老齢厚生年金の一方のみを繰り下げられる。
70歳まで繰り下げた場合、70歳以降の年金額は42%(=0.7%×60か月)も増額します。2022年4月以降に75歳まで繰り下げた場合は、年金額は最大82%の増額です。
65歳からの受給と70歳からの繰り下げを比べると、81歳まで年金を受け取ると受給総額はほぼ等しくなります。
繰り下げを利用するときの注意点
繰り下げを利用するときの注意点は、次の2つです。どちらのケースも、繰り下げによる年金額の増額というメリットを十分に受けることができません。
- 加給年金は繰り下げ期間中支給されず、繰り下げしても増額されない
- 在職老齢年金による支給停止がある場合、支給停止された年金部分は繰り下げしても増額されない
加給年金の受給権があり繰り下げのメリットを利用したい人は、老齢厚生年金は65歳から受給し、老齢基礎年金のみ繰り下げするという方法もあります。
まとめ:65歳以降も働きながら年金受給する時代に
これから年金をもらう人の大部分は、受給開始年齢が65歳です。65歳以降も働きながら年金をもらうことはできますが、厚生年金の人は年金額や報酬が多い場合、在職老齢年金による支給停止を受ける可能性があります。
70歳までの定年延長や繰り下げ75歳開始など、希望すれば65歳以降も働ける環境が整いつつあります。これからは、多くの人が65歳以降も働きながら年金を受け取る時代になるでしょう。