自分に適した保険を検討しようとしても保険制度は複雑で、保険制度の理解は難しいです。さらに、毎月もしくは1年分一括で支払う保険料は家計への負担も大きいでしょう。
しかし、保険はさまざまなリスクから自分自身や家族を守るために重要です。つまり、自分自身や家族を守るために保険は賢く利用すべきです。
ぜひ本記事で紹介する団体保険のメリットや注意点を理解し、賢く保険を利用するためにお役立てください。
団体保険はどのような内容の保険?
団体保険とは、会社などの団体が従業員(会社員)に提供する福利厚生のことです。会社が関与する保険は一般的に団体保険と呼ばれます。
そもそも保険の種類は、公的保険と民間保険に分かれ以下のように分類することができます。
種類 | 公的保険 | 民間保険 |
運営者 | 国や市区町村 | 民間企業 |
具体例 | 雇用保険 労災保険 国民健康保険 介護保険 厚生年金保険 |
生命保険 損害保険 医療保険 がん保険 介護保険 障害保険 |
公的保険は強制的に加入しなければならないものが多いですが、民間保険への加入は任意となります。つまり民間保険は、公的保険を補てんする位置付けです。
民間保険は個人で契約しますが、団体保険は会社が契約するのが基本です。このような位置付けから「団体保険と個人保険」と呼び分けられることもあります。
広義の団体保険には2つの種類がある
団体保険は、広く捉えると以下2種類があります。
- 団体保険
- 団体扱保険
団体保険
団体保険は民間の保険会社と勤め先の会社が契約し、会社員が被保険者となるものです。ポイントは、自分自身ではなく勤め先の会社が保険会社と契約する点です。
詳しくは「団体保険のメリット」で紹介しますが、団体保険は保険料が割安で、手続きが簡単な点が特徴です。
また、団体保険でしか利用できない保険商品(団体保険専用商品)もあります。
団体扱保険
団体扱保険では、契約の主体は社員個人で、勤め先の会社が保険に関する事務を取りまとめます。
保険料を給与天引きすることで、保険料が割安となる保険です。会社が保険契約する団体保険と比べ、保険料はそれほど割安ではありません。
また、団体保険では専用の保険商品を利用しますが、団体扱保険では一般の保険商品を利用します。
団体保険のメリットは?
分かりやすく説明すると、保険を利用するのに勤め先の会社が関わっているのが団体保険です。
それでは、会社を介さずに自分自身で契約する保険と団体保険は何が異なるのでしょうか。団体保険のメリットを確認していきましょう。
- 団体割引が適用されて保険料が安い
- 家族も加入できて世帯全体で保険料を抑えられる
- 個人契約より申込み手続きが簡単
団体割引が適用されて保険料が安い
団体保険の大きなメリットは、保険料が割安であることです。
団体保険は、本来は保険会社が行う業務を勤め先の会社が行っているので、保険会社からすれば経費が少なくなります。そのため、保険料を割安に設定できるのです。
また、保険料は保険会社の経費だけではなく保険金の支払い確率も考慮されることがあります。
優良割引制度とは、一定以上の被保険者数を有し、支払率が低率であると認められる団体保険契約について、純保険料率を軽減した特別の保険料率を適用することができる制度。
したがって、保険金の支払率が低い団体では優良割引によってさらに保険料が割安になっていることもあるでしょう。
家族も加入できて世帯全体で保険料を抑えられる
団体保険では割安な保険料が設定されています。さらに、自分自身だけでなく家族も団体保険を利用できます。
例えば、通常月額10,000円の保険料が団体割引20%で8,000円であるとします。通常であれば2人加入して保険料20,000円ですが、団体保険の場合は16,000円になります。
結果的に年間24.0万円の保険料が、団体保険で19.2万円になり大きな節約が見込めます。
家族も加入できて世帯全体で保険料を抑えられる
団体保険では割安な保険料が設定されています。さらに、自分自身だけでなく家族も団体保険を利用できます。
例えば、通常月額10,000円の保険料が団体割引20%で8,000円であるとします。通常であれば2人加入して保険料20,000円ですが、団体保険の場合は16,000円になります。
結果的に年間24.0万円の保険料が、団体保険で19.2万円になり大きな節約が見込めます。
個人契約より申し込み手続きが簡単
団体保険は保険料が割安なだけでなく、個人で契約するより申し込み手続きが簡単というメリットもあります。
申込書の記入などは個人契約の保険と団体保険で変わりませんが、団体保険では一括告知によって医師の診査不要で申し込めることが多いです。
なお、「告知」とは健康状態の悪い人が契約すると公平性が保たれないことから、あらかじめ健康状態などに関する事項を書面または指定医師の質問回答により事実を告げる義務のことです。
参照:公益財団法人 生命保険文化センター「契約申込みから契約成立までの流れと重要事項」
給与天引きで確実に保険を受けられる
団体保険では勤め先の会社から支払われる給与から保険料が天引きされます。そのため、保険料の払い忘れの心配がなく、確実に保障を受けられます。
ただし、退職や休職した場合には給与天引きができないため、支払方法を変更して自分で納付しなければなりません。
会社が年末調整で保険料控除の手続きを進めてくれる
団体保険で加入する保険の一部は、税金負担を軽減する生命保険料控除の対象です。生命保険料控除を受けるには、控除証明書を税務署に提出または提示する必要があります。
団体保険では勤め先の会社が保険会社から控除証明書を受け取って手続きするため、自分自身で手続きする必要はありません。
つまり、年末調整で提出する保険料控除申告書では、あらかじめ会社が手続きを代行して保険料が印字されていることが多いです。
注意したいのは、毎月支払った保険料と保険料控除の額が一致しない場合がある点です。すべての保障が保険料控除の対象とは限りません。
なお、控除証明書は会社経由もしくは保険会社に連絡すれば個別に発行してもらえます。控除証明書を必要とする手続きはありませんが記録として取ってくおことは可能です。
年の途中で退職した人は、支払った保険料の控除を受けるために必ず源泉徴収票を発行してもらいましょう。再就職したら再就職先の会社に提出、再就職しなければ確定申告の際に源泉徴収票が必要です。
団体保険のデメリットはある?
個人契約より割安な保険料となる団体保険ですが、会社が関わっているため以下のデメリットもあります。
- 退職すると保険を継続できないことがある
- 退職すると保険料が上がる
それぞれ解説していきます。
退職すると保険を継続できないことがある
団体保険は、退職すると継続して保険を利用できないことがあります。これは会社が団体保険の契約者であるためです。福利厚生の一環である以上、原則として退職すると保険を継続できません。
ただし、前述した団体扱保険であれば契約主体は個人の契約であるため、退職しても継続できます。
退職すると保険料が上がる
前述のとおり、団体扱保険であれば退職しても継続できますが、団体割引を利用できなくなってしまいます。そのため、退職すると保険料が上がってしまいます。
団体保険と共済の違いは?
冒頭で団体保険と通常の保険の違いについて紹介しました。併せて、保険と共済の違いについても確認しておきましょう。
種類 | 保険 | 共済 |
対象者 | 全員 | 組合員と家族v |
目的 | 営利 | 非営利 |
根拠法 | 保険業法 | 協同組合法 |
所管官庁 | 金融庁(内閣府) | 厚労省等 |
保険料 | 年齢、健康状態、職業、性別によって異なる | 一律 |
保障の充実度 | 充実 | シンプル |
告知義務 | 厳しめ |
緩め |
大まかに言ってしまえば、保険も共済もリスクに備えて保障を提供するものです。しかし、運営組織や内容が異なります。
保険は保険会社が運営し、共済は非営利の協同組合が運営しています。また、保険は年齢に応じて保険料も高くなる傾向にありますが、共済では基本的に一律の料金設定となっています。
利用する側からすれば、保障の充実度を求めるなら「保険」を、「保険」並みの保障が不要であれば割安な「共済」を選ぶと良いでしょう。いずれにしても、自分自身や家族に必要な保障内容をよく検討することが大切です。
まとめ:団体保険の加入者は退職後に気をつけよう
団体保険は、個人で契約するときより保険料が安くなる福利厚生の一つです。保険の案内や保険料の集金などの業務を勤め先の会社が代行することで保険会社の負担が軽減するため、保険料が割安に設定されていることが多いです。
ただし、勤め先の会社が関わることが前提となるため、退職すると解約になるか、団体割引なしの一般保険料を支払わなければなりません。
そのため、今後、退職や転職を検討している方は団体保険の注意点を押さえて、ご自身に最適な保険・保障を検討してください。
また、すでに団体保険に加入している人は、退職後の保険・保障をどうするか考えておくと良いでしょう。