「人生100年時代」といわれる高齢化社会の現代は、老後への備えが必須です。「自分は堅実に生活しているから老後も大丈夫」と思うかもしれません。しかし、普通に暮らしてきた人でも想定以上の長生きによって、老後破産に陥ることもあります。
本記事では、老後破産の割合と、老後破産する主な5つの原因、老後破産を防ぐ5つの対策を解説します。老後破産の原因には、はっと現実に気づかされる人も多いでしょう。現役世代のうちから5つの対策を実行することで、老後に安心して備えられます。
長寿をまっとうし幸せな人生をおくるために、老後破産の原因と予防対策を知って、今から少しづつ準備しておきましょう。
老後破産の割合
老後破産は「老後に生活できなくなるほど経済的に困窮すること」です。一般的な破産には、事業の失敗やギャンブル依存などによって、お金をすべて失うイメージがあります。一方、老後破産は事業やギャンブルをしたわけではなくても生活が困難な状況に陥る状態です。
多くの場合、老後の主な収入は年金になり、年金と預貯金など保有資産で暮らさなければなりません。しかし、年金や資産がない、または少額である場合、それまでの生活を続けることが困難となります。高齢のため働いて収入を得るのも容易ではありません。
そのため、老後破産に陥ると生活保護を頼ることになります。現在生活保護を受けている世帯のうち、55.5%を高齢者世帯が占めています。たとえ若い頃に堅実に暮らしていても、老後破産に陥るケースも多いのです。老後破産になる原因を次章で解説します。
老後破産する5つの原因
「自分は無駄遣いもせず、堅実に生きているから老後資産は関係ない」と思う人もいるでしょう。しかし、老後破産は予想外の原因によってもたらされます。老後破産する主な原因は次の5つです。
- 年金が想定より少ない
- 生活水準を落とせない
- 教育費など子供関連の出費がある
- 医療費や介護費などの出費がある
- 住宅ローンの支払いが残っている
堅実に生きていても想定外の事態によって、誰でも老後破産に陥る可能性があります。老後破産の原因について以下で解説します。ぜひ、自分の現在の生活と照らし合わせてみてください。
原因①年金が想定より少ない
年金が想定より少ないため、老後破産する場合があります。現役時代の収入と比べると、年金は少額になります。
最新調査では、自営業者や個人事業主などが受け取れる国民年金は平均月額5万6,358円、会社員などが受給する平均年金月額は14万6,145円です。これらの年金のみで、毎月生活できるという人は多くないでしょう。
年金は現役時代の収入よりも相当少ないという事実を、あらかじめ認識する必要があります。
参考:厚生労働省「令和2年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
原因②生活水準を落とせない
年金は現役時代の収入と比べて少ないにもかかわらず、生活水準を落とせないと老後破産に陥ります。生活の幅を縮めるのは容易ではありません。しかし、支出が収入を大幅に上回り続けると、たとえ貯金があってもすぐに生活が困窮します。
最新調査による、1カ月あたりの高齢者無職世帯の家計収支を見てみましょう。夫婦・単身の2通りに分けています。
- 高齢夫婦無職世帯:(実収入が25万6,660円)ー(支出が25万5,550円)=1,110円の黒字
- 高齢単身無職世帯:(実収入が13万6,964円)ー(支出が14万4,687円)=7,723円の赤字
参考:総務省統計局「家計調査報告[家計収支編]2020年平均結果の概要」
いずれも、収入と支出がほぼ同じ金額であることがわかります。単身世帯においては赤字が発生しており、貯金の取り崩しが必要です。老後の収入には余裕がないため、生活水準を落として支出を下げなければ、破産に陥るおそれがあります。
原因③教育費など子供関連の出費がある
子供がいる場合、教育費など子供関連の出費がかさんで老後資金が足りなくなることがあります。「子供には好きな習い事をさせてあげたいし、進学も望むところに行かせてあげたい」と思う親は多いでしょう。
しかし、教育費など子供関連の出費が増えすぎると、老後のための貯金ができなくなります。その結果、子供に生活費を援助してもらうなど、かえって子供に迷惑をかけかねません。高齢で親となった場合、子供の成人前に自分が退職する可能性もあります。
子供に多額のお金を注いだために退職段階で老後用の資産がないという事態は何としても避けましょう。子供の教育費は実際にどの程度かかるのか、以下の記事を参考にしてください。
原因④医療費や介護費などの出費がある
人生100年時代では、医療費や介護費などの出費も老後破産につながりかねません。長生きすることは、長い老後が続くことを意味します。高齢になるとどうしてもケガや病気で通院の頻度が増えます。そのため、医療費が家計にとって大きな負担となることが多いです。
また、自分やパートナーに介護が必要となったときには介護費が必要です。様々な介護サービスの利用や、介護施設への入居にはお金がかかります。医療費や介護費はどの程度必要か、現役時代には予測しづらいため、注意が必要です。
原因⑤住宅ローンの支払いが残っている
老後になっても住宅ローンの支払いが残っていると、老後破産になる可能性が高くなります。住宅ローンは現役時代の収入に基づいて組まれているため、少ない年金から支払うのは大変です。また、晩婚化にも注意しましょう。最新の平均初婚年齢は夫31.0歳、妻29.4歳です。
例えば男性が31歳で結婚し、35歳で35年ローンを組んでマイホームを購入した場合、70歳までローン返済が続くことなります。退職後の住宅ローン返済は家計に無理を強いるため、できるだけ避けましょう。
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老後破産を防ぐ5つの対策
「無駄遣いをしていなくても、自分も老後破産してしまうのでは」と心配になるかもしれません。安心して老後を迎えるために、現役時代から対策をしておきましょう。老後破産を防ぐ5つの対策をご紹介します。
- 老後に向けて貯蓄する
- 受け取れる年金額を増やす
- 資産運用で資産を増やす
- 住宅ローンを早めに返済する
- 困ったときは早めに相談する
いずれの対策も、今から地道にコツコツ継続すると無理せずに老後資金を用意できます。以下で各対策について詳しく解説します。
対策①老後に向けて貯蓄する
本記事を読了後すぐに始められるのが老後に向けた貯蓄です。「貯蓄なんて普通過ぎる」と思うかもしれません。しかし、少額でも今から定期的に貯め続けると、老後には一定のまとまった金額となります。
まずは、家計の収支を見直して「毎月の生活費としてどの程度必要か」を計算し、余ったお金を貯蓄に回しましょう。貯蓄を続けられるか自信がない人は、積立式定期預金など、先取り貯金で仕組化することをおすすめします。
対策②受け取れる年金額を増やす
老後破産を防ぐために、今のうちに受け取れる年金額を増やすことが大切です。「自分はパートだから厚生年金がない」と思うかもしれません。実は、2022年10月1日以降は法改正によって、パートやアルバイトの人が厚生年金に加入しやすくなります。
従来は、非正規雇用の人が厚生年金に加入するのは、勤務先の事業規模や勤務期間などの条件のため厳しい面がありました。2022年の法改正により、事業規模や勤務期間などの条件が緩和されます。
今まで厚生年金加入を諦めていた人も、ぜひ加入できるかどうか検討してみてください。
参考:日本年金機構「令和4年10月からの短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」
対策③資産運用で資産を増やす
既に一定額貯蓄がある人は、資産運用で資産を増やすことも検討してはいかがでしょうか。「資産運用は失敗するのが怖い」という人もいるでしょう。しかし、資産運用にはローリスクのものもあります。
貯蓄だけではなく、積極的に資産運用に取り組み老後の資産を増やしてください。以下でおすすめの資産運用4つを紹介します。
1.株式投資
株式投資は、自分で個別株に投資します。売買をすることで値上がり益を、保有することで配当金や株主優待を狙えます。リスクは他の投資と比較するとやや高いですが、その分リターンも高くなります。株式投資について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
2.投資信託
投資信託は、預けた資金を投資の専門家が運用します。資産運用の知識がない人でも、プロにお任せなので始めやすい方法です。また、少額から始められる点も魅力です。積立式の場合は、月100円から始められる投資信託もあります。
3.不動産投資
不動産投資もおすすめです。「マンションを買うなんて高額だから無理」と考える人もいるでしょう。実は、不動産投資にもREITという投資信託の仕組みがあります。預けた資金をプロが不動産で運用する仕組みです。
不動産投資信託も通常の投資信託と同様に少額で始められるので、投資初心者も取り組みやすいです。不動産投資信託に関しては、以下の記事を参考にしてください。
4.確定拠出年金
老後に備えた資産運用として近年注目されているのが、確定拠出年金です。特に、個人型確定拠出年金のiDeCoは利用者が増加しています。自分で決めた金額の掛け金を積み立てて自分で運用し、老後資金を作ります。掛け金の所得控除・運用益の非課税などメリットが多いのも特徴です。
確定拠出年金についての詳しい解説は、以下の記事を参考にしてください。
対策④住宅ローンを早めに返済する
住宅ローンを早めに返済すると老後が楽になります。できれば現役時代の間に完済するように努めてみてください。「退職金でローン残高を一括返済すれば良いのでは」と思うかもしれません。
しかし、退職金が予想より少ない場合もあり得ます。また、退職金は自宅の修繕費などにとっておく必要があります。住宅ローンを繰り上げ返済して、老後の支出を減らしましょう。
対策⑤困ったときは早めに相談する
生活に困ったときは早めに相談することも大事です。経済的な困窮は「恥ずかしい」と、誰にも相談せずに抱え込んでしまうかもしれませんが、相談することで解決することもあります。
老後破産に関しては、高齢者の生活を全面的に支える「地域包括支援センター」に相談してみましょう。また、お金の問題なら「消費生活センター」に相談できます。いずれも相談は無料なので、気軽に相談してください。
まとめ:老後破産に備えて早めに対策をしましょう
老後破産の実態と、5つの主な原因、老後破産を防ぐ5つの対策について解説しました。
老後破産は誰にでも起こり得る将来のリスクです。老後破産に陥ってからでは対応が難しいですが、今から資金の準備をしておくと老後破産を回避できます。老後に備えて早めに対策を始めましょう。