ニュースレター登録

家計

生活保護の4つの受給条件とは?制度内容や受給状況も紹介!

病気などで仕事ができなくなり収入が途絶えたとき、生活を守る最後の砦が生活保護です。ただし、収入がなくても売却できる資産があると生活保護の対象にはなりません。

今回の記事では、生活保護を受給するための条件について解説します。現在、生活に困窮していて誰に相談すればいいかわからないと悩んでいる人は、本記事を参考に生活保護が受給できないかを確認してみましょう。

生活保護制度とは|定義と種類

まず最初に、生活保護制度とはどういうものか、どういった保護が受けられるのかについて確認しましょう。

生活保護制度とその目的

生活保護制度とは、「生活に困窮するすべての国民に対し困窮の程度に応じ国が必要な保護を行い、最低限度の生活を保障する」制度です。憲法25条が保障する「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を守るために設けられました。

具体的には、厚生労働大臣が定める「最低生活費」を確保できない人に対し、世帯単位で生活保護費を現金給付したり、医療費を無料にするなどの現物給付を行っています。

保険料を支払って保障を得る社会保険(健康保険や公的年金等)と異なり、国が税金で行う公的扶助(生活困窮者などに対する国・地方公共団体の支援)の1つです。

生活保護には8種類の扶助

生活保護には、次の8種類の扶助があります。

生活保護の種類

扶助の種類 扶助の対象となる費用 受給者数
生活扶助 日常生活に必要な費用(食費・被服費・光熱費など) 1,804,281人
住宅扶助 アパートなどの家賃 1,757,916人
教育扶助 義務教育を受けるために必要な学用品費 99,388人
医療扶助 医療サービスの費用 1,703,779人
介護扶助 介護サービスの費用 409,290人
出産扶助 出産費用 44,604人
生業扶助 就労に必要な技能の修得などにかかる費用
葬祭扶助 葬祭費用

参考:厚生労働省「生活保護の被保護者調査(令和3年1月分概数)の結果を公表します(PDF)」

医療扶助と介護扶助については現物支給(費用は医療機関や介護事業者に支払い)、それ以外の扶助は現金支給となります。

また、複数の扶助を併せて受給することも可能です。持ち家のない人の中には、生活扶助と住宅扶助を毎月受給した上で、病院に行ったときは医療扶助で受診費用を免除される人もいます。

生活保護費の支給額

生活保護費は、最低生活費から収入を差し引いて計算します。最低生活費の基準は、居住地域(級地)や家族構成に応じて厚生労働大臣が決定します。

参考:厚生労働省「生活保護制度における生活扶助基準額の算出方法(PDF)」
参考:厚生労働省「お住いの地域の級地を確認(PDF)」

実際には、地域所管の福祉事務所の生活保護担当に事前相談し、生活状況や資産内容などに関する調査を経た上で支給額が決定します。

生活保護の受給状況

次に、実際にどれだけの人が生活保護を受給しているのかを紹介します。

生活保護の受給者は205万人

厚生労働省の「生活保護の被保護者調査(令和3年1月分概数)の結果を公表します」
によると、令和3年1月時点で生活保護を受けている人は約205万人です。日本の人口の約2%に相当する人が、生活保護を受けていることになります。

平成7年度の生活保護の受給者数は約88万人でした。リーマンショックや世界金融危機などを経て受給者数は2倍以上に増加しました。

生活保護の大半は高齢者世帯

前述の厚生労働省調査によると生活保護世帯は約164万世帯で、内訳は次の通りです。

生活保護世帯の内訳

  世帯数 割合
高齢者世帯 90万1,805世帯 55.3%
母子世帯 7万5,638世帯 4.6%
障害者・傷病者世帯 40万6,595世帯 24.9%
その他 24万6,861世帯 15.1%

高齢者世帯が全体の55%を占めています。また、生活保護を受けている高齢者世帯の9割以上は単身世帯です。生活保護に関する報道などでは母子世帯が目立ちますが、障害者・傷病者世帯が2番目に大きな割合を占めます。

生活保護を受けるための4つの条件

生活保護費は、収入が厚生労働大臣が定めた最低生活費を下回った場合に支給されますが、それ以外にも満たさないといけない条件があります。

4つの条件を満たした上で保護が必要な場合に支給

生活保護法第4条は、生活保護を受けるための条件を次の通り定めています。

  • 生活困窮者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを最低限度の生活維持のために活用すること
  • 扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われること

つまり、下記の4条件をすべて満たした上で、収入が最低生活費を下回った場合に生活保護費が支給されるのです。

  • 条件①資産の活用
  • 条件②能力の活用
  • 条件③あらゆるものの活用
  • 条件④扶養義務者の扶養

わかりにくい表現ですが、1つずつ詳しく説明していきます。

条件①資産の活用

資産の活用とは、預貯金や生活に利用されていない土地・家屋等の資産があれば売却するなどして生活費に充てることです。資産を温存したまま、生活保護を受けることはできません。

資産には、未使用の土地・家屋以外にも次のものが該当します。

  • 車(仕事や通院などのため車が必要なケースを除く)
  • 貴金属やブランド品
  • 貯蓄性のある生命保険
  • 株式や債券 など

居住用の持ち家は原則、売却不要ですが、住宅ローンを支払っている場合は売却しないと生活保護は受けられません。

条件②能力の活用

能力の活用とは、働くことが可能な人は能力に応じた仕事をして収入を得ることです。病気で仕事ができないケースや、求職活動をしても仕事につけないケースは仕方がありませんが、就労可能であるにも関わらず仕事をしていない場合は生活保護は受けられません。

能力に応じて仕事をした上で、収入が最低生活費を下回った場合は、生活保護を受けられます。「仕事をしたら生活保護は受けられない」というわけではありません。

条件③あらゆるものの活用

あらゆるものの活用とは、公的年金や公的な融資制度などを活用することです。生活保護以外に利用可能な公的制度をまず利用した上で、最低生活費を上回る収入が得られない場合に初めて、生活保護制度を活用できます。

主な公的年金制度や融資制度は次の通りです。

  • 公的年金(老齢年金・障害年金・遺族年金など)
  • 健康保険(傷病手当金など)
  • 労災保険(休業補償給付など)
  • 雇用保険(失業給付など)
  • 生活福祉資金(総合支援資金、教育支援資金など)
  • 生活困窮者自立支援制度(住居確保給付金など)

参考:全国社会福祉協議会「福祉の資金 貸付制度・助成」
参考:厚生労働省「制度の紹介(生活困窮者自立支援制度)」

条件④扶養義務者の扶養

扶養義務者の扶養とは、親族等から援助を受けることです。別居している親族については、援助を受けられる場合と受けられない場合がありますが、同居の親族に一定の収入があれば、住民票の世帯は別でも生活保護は受けられません。

解説した4つの条件を満たしていることを確認するために、生活保護費の支給決定前にはさまざまな調査が行われるため、虚偽の申告をしても生活保護を受給できません。

また、生活保護の受給中は毎月、収入状況の申告が必要で、福祉事務所のケースワーカーによる訪問調査もあります。

まとめ:生活に行き詰まったら福祉事務所に相談を

生活保護は次の4条件を満たした上で、収入が最低生活費を下回った場合に支給されます。

  • 条件①資産の活用
  • 条件②能力の活用
  • 条件③あらゆるものの活用
  • 条件④扶養義務者の扶養

生活に困窮して今後の見通しが立たない場合は、すぐに福祉事務所に相談しましょう。生活保護以外にも利用可能な制度があれば教えてもらえるので、1人で悩まずに専門家の知恵を借りましょう。

CONTENTS 注目のコンテンツ

THIS WEEK’S RANKING 今週の記事ランキング