節税のために不動産投資をしている人もいますが、不動産投資がどのように節税に繋がるのか、よくわからない人も多いでしょう。
この記事では、不動産投資と節税の関係や、税金の種類、確定申告に関して、わかりやすく解説します。節税する場合の注意点などを知り、不動産投資において効果的に税金対策しましょう。
不動産投資で節税できる主な税金
不動産投資では、家賃収入が得られる他、ほかの所得と損益通算することで所得税や相続税などが節税できます。
所得税の節税とは、不動産投資で赤字になった分を給与所得などと相殺することによって給与所得にかかる所得税などを下げることです。
給与所得があり不動産収入が20万円を超える場合、確定申告が必要です。不動産投資のコンサルティングも行っているMIRAP(ミラップ)では、面倒な確定申告をサポートします。事例によっては、申告にかかる時間を半分程度に抑えることも可能です。
また、相続税の節税とは、現金や預金を不動産化することによって資産の評価額が下がることを利用して、相続時などにかかる税金を抑えることです。それぞれについて詳しく説明します。
不動産投資によるサラリーマンの所得税・住民税の節税
不動産投資によってサラリーマンが節税できるのは、不動産投資で赤字になった分を給与所得と相殺する損益通算という制度があるからです。また、不動産投資の収益には、減価償却という制度が大きく影響します。減価償却と損益通算による節税の仕組みについて解説します。
減価償却により不動産所得を赤字化する
減価償却とは、購入した不動産の資産価値が低下した分を、毎年経費として計上することです。実際に費用は発生していないにも関わらず経費に計上できるため、不動産投資の収支は黒字でも所得税の計算上は赤字になることもあります。
ただし減価償却費は、建物の種類や「新築か中古か」により計上できる年数が異なります。建物の構造で比較すると、木造の法定耐用年数(減価償却できる期間)は22年、鉄筋コンクリート造は47年です。
物件の額が同じであれば、減価償却できる期間の短い木造建築物のほうが、1年あたりの減価償却費は大きくなります。不動産投資の赤字を利用して節税したいと考えるなら、減価償却期間のより短い構造の建物を所有するのが効率的でしょう。
また、新築と中古を比較したとき、中古物件の方が減価償却費は大きくなります。中古物件は、法定耐用年数をそのまま使用するのではなく、以下の計算をもとに耐用年数を見積もるためです。
- 法定耐用年数を全部経過した場合 法定耐用年数×20%
- 法定耐用年数を一部経過した場合 (法定耐用年数-経過年数)+経過年数×20%
木造の中古不動産を法定耐用年数が全部経過した状態で取得した場合、上記の計算を使用すると、法定耐用年数は4年(22年×20%)です。 木造の中古だと、より短い期間で減価償却できる計算になります。一方、新築の鉄筋コンクリート造などのマンションは、減価償却期間が長くなるため、投資初期の不動産投資は赤字になりにくく、短期の節税には向いていません。
不動産所得の赤字を給与所得と損益通算する
損益通算とは、不動産投資や運用で発生した赤字分を別の所得で相殺するものです。以下のケースで解説します。
- 給与の所得:年500万円
- 不動産投資の収入:年50万円
- 不動産投資の経費(マイナス):年200万円
このケースでは、不動産投資による所得(以下、不動産所得)は150万円の赤字(=50万円-200万円)です。
所得税は、給与所得と不動産所得を合計した総所得350万円(=500万円-350万円)に対して課税されるため、給与所得だけの場合と比べて税金は安くて済みます。
不動産投資では、実際の収支は黒字でも所得税の計算上は減価償却によって赤字になることもあります。また、さまざまな費用を漏れなく経費計上することで、不動産所得は赤字化しやすくなります。経費計上できる費用とできない費用は次の通りです。
経費計上できる費用
・管理費
・修繕費
・リフォーム費
・賃貸管理代行手数料
・借入利子
・損害保険
・賃貸管理代行手数料
・租税公課(固定資産税・不動産取得税など)
・減価償却費 など
経費計上できない費用
・自宅に関わる修繕費
・売却による譲渡益
・ローンの元本
・私生活の費用 など
所得税の節税シミュレーション
減価償却と損益通算によって所得税がどれだけ安くなるかシミュレーションしてみましょう。所得税は、速算表を用いて以下の式で計算します。
- 所得税額=課税所得金額×税率-控除額
引用:国税庁「No.2260 所得税の税率」 【モデルケース】
- 給与所得:年900万円
- 不動産収入:年100万円
- 不動産購入価格:2,000万円(法定耐用年数10年)
- 不動産投資の経費:年50万円
上記ケースでは、1年間の減価償却費は200万円(2,000万円÷10年)です。不動産所得は、不動産収入から減価償却費と経費を差し引いて150万円の赤字(=100万円-200万円-50万円)になります。
課税所得金額は、給与所得と不動産所得の合計金額から所得控除額を差し引いて550万円(=900万円-150万円-200万円)です。所得税の速算表より、所得税は次の通りです。
- 所得税=550万円×20%-42万7,500円=67万2,500円
給与所得だけの場合、課税所得は700万円(=900万円-200万円)、所得税は97万4,000円(=700万円×23%-63万6,000円)となるため、不動産投資によって約30万円も節税できたことになります。
不動産投資による資産家の相続税・贈与税の節税
次に、不動産投資によって資産家の相続税・贈与税が節税できる仕組みについて説明します。
相続税・贈与税における不動産の評価額
資産を相続・贈与する場合、現金よりも不動産の方が相続税・贈与税を抑えやすくなります。相続税や贈与税を計算するとき不動産の評価額は、路線価(土地)や固定資産税評価額(建物)を使用するため購入価格よりも低くなります。そのため、相続や贈与する際は現金よりも不動産の方が節税になるといわれています。
また、土地や建物を賃貸した場合、借りた人に借地権や借家権が発生するため、不動産の評価額をさらに下げることができます。不動産の評価額についてより詳しく知りたい人は、次の記事を参照ください。
相続税の節税シミュレーション
不動産投資により、相続税がどれだけ安くなるかシミュレーションしてみましょう。相続税は、速算表を用いて以下の式で計算します。
- (相続税の評価額-基礎控除額)×相続税率-控除額
基礎控除額とは、(3,000万円+600万円×法定相続人数)により計算した額のことです。相続税率と控除額は課税される遺産額に応じて変わります。相続税も所得税と同様に累進課税です。
【モデルケース】
・法定相続人1人、時価1億円の賃貸不動産のみを相続
・土地の評価額3,200万円、建物の評価額2,800万円
基礎控除額は3,600万円(=3,000万円+600万円×1人)、相続税の評価額は6,000万円(=3,200万円+2,800万円)です。相続税の速算表より、相続税は次の通りです。
- 相続税=(6,000万円-3,600万円)×15%-50万円=310万円
現金で相続した場合、相続税は次の通りです。
- 相続税=(1億円-3,600万円)×20%-200万円=1,080万円
不動産投資をした場合、しなかった場合と比べて相続税が700万円以上も節税できます。相続財産の評価額が下がることにより相続税率も下がると節税効果はより高くなります。
「自分にとって効率のいい投資って何かな?」とお悩みの方は、投資を始める上で重要なポイントを、まずは押さえておくことが大切です。それは、自分がどのような「投資タイプ」なのかを事前に把握しておくことです。 MIRAPの投資診断ではLINEでカンタンに「投資タイプ」を知ることができます。あなたは一体 なにタイプでしょう?
節税目的の不動産投資の注意点
最後に、不動産投資で節税する際の注意点を紹介します。重要なポイントでもありますので、しっかり確認しておきましょう。
節税だけを目的にしない
不動産投資の本来の目的は、収益獲得や資産形成です。将来の利益を見据えて行うもので、節税だけを目的にしてしまうと、かえって将来の投資リスクを高めてしまうこともあります。
たとえば、節税のことばかり考えて経営が赤字になることが考えられます。減価償却費を考慮しない実際の収支が赤字になると資金繰りが悪化します。
納税資金が準備できなかったり、ローンを利用して不動産投資を行っている場合はローンの返済すら難しくなることもあるでしょう。資金繰りが悪い状態が続くと、投資物件を手放さなければならない状況に陥るかもしれません。
また、不動産投資を将来的に拡大していこうと考えている場合、赤字経営が続くと不利になります。赤字経営だと銀行の審査が厳しくなり、追加で融資を受けにくくなるためです。
既存の物件を修繕するための融資も受けにくくなりますので、需要が低下している物件をリフォームしたくても、手を加えることが難しくなります。
節税のことばかり考えていると、不動産投資に伴うさまざまなリスクを見落とす可能性があります。不動産投資によって収益をあげ資産形成を行うという本来の目的を見失うことなく、節税はあくまで副次的な効果であると考えるのがいいでしょう。
譲渡所得であることを認識する
不動産を売却して得た利益は、不動産所得ではなく譲渡所得となります。譲渡所得は、給与所得や不動産所得のように損益通算ができないため、所得税の節税効果はありません。
同じ不動産投資における所得でも、不動産所得と譲渡所得では課税方法が異なることを理解しておきましょう。
外注管理費・損害保険料に関して知る
外注管理費・損害保険料は、投資開始からの年数に関わらずほぼ一定の金額です。火災保険や地震保険などの損害保険料は契約期間分を一括で支払うこともありますが、経費計上できるのは、その年の保障に要した費用のみです。
例えば、不動産購入時に20年分の損害保険料10万円を一括で支払った場合は、1年分の5000円だけを毎年経費計上することになります。
長期間の計上となるので、忘れず行うよう注意が必要です。
追加融資の可能性はないか検討する
不動産投資をする際、多くの人が銀行からの融資を考えるでしょう。不動産投資では、初期費用としての購入費以外にも、固定資産税や修繕費用など、さまざまな費用がかかります。利益が少なく赤字経営が続いてしまうと、銀行融資が受けづらくなります。
今後、追加融資の可能性がないかを考慮するなど、長期的な資金計画をしっかりと立てましょう。
築年数とローンのバランスを考慮する
物件を検討する際は、築年数と入居状況を確認する必要があります。不動産は築年数が長くなるほど入居希望者が少なくなる傾向があります。。築浅の段階で既に空室が多い場合は、今後更に入居率が下がる可能性があります。
資入居率が下がると資金繰りが苦しくなり、ローンの返済が滞ったり、最悪の場合は物件が差し押さえられたりすることもあります。築年数や入居状況などから、空室率や家賃低下の可能性などを考慮して、長期的な収支予想を立てて投資判断しましょう。
デッドクロスによる節税効果減少を回避する
不動産投資でのデッドクロスとは、減価償却費の額とローンの元本返済額が逆転することを指します。
減価償却費は実際の支出はないのに経費計上できるため、利益の圧縮(または赤字化)に役立ちます。一方、ローンの元本返済は支出を伴うにも関わらず、経費計上はできません。減価償却費がローンの元本返済額を上回っている場合は、利益の圧縮効果で所得税を節約できます。
一方、法定耐用年数が経過するなどしてローンの元本返済額の方が大きくなると、実際の支出があるのに経費計上できない費用が増えます。その結果、帳簿上の利益が増えて所得税が高くなる一方、資金繰りが悪化することもあります。
将来の納税に備えてあらかじめ資金を準備する、ローンの繰り上げ返済をするなどの対策が必要です。
サラリーマンが所得税を節税するには確定申告が必要
所得税を節税するには確定申告する必要があります。確定申告することで不動産所得を申告するとともに、給与所得と不動産所得の損益通算をするためです。不動産所得が赤字でも、年末調整だけでは損益通算できないため、確定申告をしたことのないサラリーマンは要注意です。
また、不動産経営の個人事業主として青色申告すれば、青色申告特別控除として最大65万円の所得控除が受けられるため、より大きな節税効果が得られます。サラリーマンでも、事前の開業届と青色申告承認申請書を税務署に提出すれば、青色申告特別控除を受けられます。
まとめ:サラリーマンの節税対策は投資額の少ないワンルームマンションから!
サラリーマンの方が大家となって、不動産投資で節税をするためには、減価償却や損益通算についての理解が必要です。また、節税だけに着目せず、利益を出すことも考えていかなければなりません。
サラリーマンが節税対策として不動産投資を検討するときは、投資額の少ないワンルームマンションがおすすめです。リスクを抑えながら節税できます。節税効果の高い法定耐用年数の短い物件も魅力的ですが、空室リスクなどに注意が必要です。自分で管理するのが不安な場合には、税理士や不動産のプロに相談してみてはいかがでしょうか。