不動産投資に興味がある方の中には、「家賃収入による不労所得を得たい」と考えているケースも多いのではないでしょうか。
不労所得とは、具体的にいうと「労働による対価以外の方法で得る所得」のことを指します。不動産投資だけでなく、株式投資や投資信託、コインパーキングの運営なども、不労所得を得る方法のひとつです。
しかし、上記の中でも不動産投資は不労所得を得るのが難しい分野だといわれています。不動産投資で安定的な収益を得るためには、リスクについて把握しておく必要があります。
この記事では、不動産投資で不労所得を目指せる理由や、不労所得を得るのが難しいといわれている理由について解説します。加えて、不動産投資におけるリスクも紹介するので、現在投資を検討中の方は参考にしてみてください。
不動産投資で不労所得を目指せる理由
不動産投資で不労所得を目指すことができるのは、なぜなのでしょうか。まずは、不動産投資によって不労所得を得られる理由と仕組みについて解説します。
不動産で所得を得られる
不動産投資で不労所得を目指すことができるのは、不動産の売買や保有によって所得を得られるためです。
不動産投資で収益を上げる方法は「インカムゲイン」と「キャピタルゲイン」の2種類があります。
インカムゲインインカムゲインは、保有している物件を賃貸物件として貸し出し、入居者から家賃収入を得る方法のことを指します。入居者が継続して入居し続けていれば、毎月賃料を得られる点が特徴です。複数の賃貸物件を貸し出す運用方法もあります。
キャピタルゲインキャピタルゲインは、保有している不動産を売却し、購入金額との差分利益を得る方法のことを指します。不動産の価格が上がらなければ、購入金額よりも売却額が下がってしまうリスクがある一方で、一度にまとまった金額を得られる点が特徴です。
家賃収入や売却差益で得た所得を貯蓄するなど、将来のための資産形成を目的として不動産投資を行う方も多くいます。
不動産投資の管理を任せることができる
不動産投資で不労所得を目指すことができるのは、不動産の運営や管理を委託できることも理由のひとつです。
賃貸物件の経営なども、契約から管理業務まで不動産会社に委託することができます。管理業務をすべて委託してしまえば、賃料から委託料が差し引かれることになりますが、その分オーナーは管理業務の負担なく不労所得を得ることができます。
また、賃貸経営の場合、不動産会社と「サブリース契約」を結ぶ方法もあります。サブリース契約とは、不動産会社が賃貸物件を入居者に貸し出し、空室の有無に関係なく賃料の約8~9割程度をオーナーに収益として支払う形態です。
通常の賃貸契約よりも賃料収入自体は減る方法ではあるものの、「空室時にも安定して収入を得続けたい」という方に適しています。
実際は無理?不動産投資で不労所得を得るのが難しいワケ
不動産投資で不労所得を目指すことができると前述しましたが、実際には「難しい」という意見も多いです。では、なぜ不動産投資で不労所得を得るのは難しいのでしょうか。
ここからは、不動産投資で不労所得を得るのが難しい理由について紹介します。
高い収益性が必要だから
不動産投資で不労所得を得るには、高い収益性が必要になります。インカムゲインの場合、安定的に家賃を得る必要がありますが、不動産の購入費用や維持管理費を上回る金額の家賃収入を得なければプラスになりません。
また、キャピタルゲインの場合でも、建物は築年数が経つほど価格が落ちる傾向にあるため、値上がりすることを予測して不動産を購入するのは難しい面があります。
不労所得を安定的に得るにしろ、売却によってまとまった所得を得るにしろ、収益性の高い不動産を所有する必要があるため注意が必要です。
多額の自己資金が必要だから
不動産投資で不労所得を得るためには、まず不動産を購入して保有する必要があります。物件にもよりますが、数千万円~数億円という購入費用が必要になります。少ない自己資金で不動産投資を始めた場合、ローン返済の支出が高くなることも少なくありません。ローンで支払う場合でも、不動産を購入するための頭金が必要になります。
また、家賃収入のみで生活していくためには、家賃収入の金額が保険や物件の維持管理費、ローン返済、固定資産税などの支払い金額を上回らなければなりません。
複数の物件を所有して家賃収入の金額を上げる、家賃を高く設定できる高級物件を保有するなど、安定的に収益を得るためには、やはり資金を投じる必要があります。
つまり、不動産投資は「自己資金がない人でも簡単にはじめられる投資方法ではない」といえるでしょう。不動産を購入できるだけの資金力が必要になる点も、不動産投資で不労所得を得るのは難しいといわれている理由のひとつです。
供給過剰になっているから
不動産投資で収益を得るためには、賃貸物件に入居者が安定的にいること、売却したいと考えている物件の需要が高いことが重要です。
しかし、近年は不動産の供給過剰により、空き物件が増加しています。
国土交通省の「平成30年住宅・土地統計調査の集計結果」では、全国の空き家は849万戸にのぼり、総物件数の約13%を占めています。
出典:「平成30年度住宅・土地統計調査の集計結果(住宅及び世帯に関する基本集計)の概要」(国土交通省)
空き家の数は年々増加しており、少子高齢化による人口減少の影響も理由のひとつです。
人口や世帯数に対して供給されている不動産の数はすでに飽和状態にあるとされており、そのようななかで不動産投資によって収益を得るのは難しいといわれています。
さまざまなリスクを考慮する必要があるから
不動産投資を行うにあたり、収益を上げるためには不動産投資におけるさまざまなリスクを考慮する必要があります。
不動産投資を行っていると、予期せぬトラブルが発生することがあるためです。
安定的に不動産投資で収益を上げるためには、不動産投資のリスクを把握し、どのようにして防ぐかが重要になります。
リスクマネジメントが重要であることも、不動産投資で不労所得を得ることが難しいといわれている理由のひとつです。
不動産投資における5つのリスク
不動産投資にはリスクがあり、リスクを理解して対策を講じなければ、不動産投資で継続的な不労所得を得ることはできません。
ここからは、不動産投資において対策が必要な5つのリスクについて解説します。
1.空室リスク
不動産投資におけるリスクの1つ目は「空室リスク」です。空室リスクは、インカムゲインによる収益が得られなくなる要因のひとつとして挙げられます。
入居者がいなければ家賃が支払われないため、場合によっては収益がゼロになる深刻なリスクです。
しかし、物件を保有している限り、ローン返済や物件の維持管理費用、固定資産税などの支払いは続けなければなりません。最悪の場合、収支がマイナスになることもあります。
安定した家賃収入を得るためには、空室リスクへの対策が必要不可欠だといえるでしょう。
2.金利変動リスク
不動産投資では、金利変動リスクがあります。金利は、不動産の購入資金をローンで返済している際に、借り入れ先に支払う利息のことです。
ローンを借り入れる際に、固定金利もしくは変動金利からローンの種類を選択することができます。
固定金利は、ローンの支払い終了まで金利が変化することがない一方で、割高に設定されている点が特徴です。
金利が固定になるものの、将来的にローン金利全体が下がっていった場合でも、契約時の金利を支払い続けなければなりません。
対して、変動金利は経済の状況に合わせて金利が変動するタイプのローンです。
契約時には固定金利よりも割安に設定されていることが多い反面、将来的な金利変動次第では、固定金利よりも高くなるリスクがあります。
変動金利を選択してローン契約している場合、金利変動リスクについて把握したうえで契約しなければ、支払い金額が高くなるため注意が必要です。
3.家賃滞納リスク
家賃滞納リスクは、賃貸経営における代表的なリスクのひとつです。
保有している賃貸物件の入居者が家賃を支払えず、滞納してしまうトラブルのことを指します。空室リスクと同様に、場合によっては収入がゼロになってしまう可能性のある深刻なリスクです。
空室リスクと異なる部分を挙げるとすれば、「早期に対応しなければ新たな入居者を迎え入れることができない」という点です。家賃滞納が続いてしまうと、それだけ収入が得られない期間も継続することになります。
さらに、滞納金額が膨れ上がりすぎてしまうと、入居者から回収するのも難しくなります。
家賃支払いの督促のほか、状況によっては退去手続きなども必要になるため、家賃滞納リスクへの対応方法について検討しておく必要があります。
4.災害リスク
不動産投資では、災害リスクも大きな課題のひとつです。災害リスクとは、思わぬ災害によって修繕費がかさむなど、支出が増加するリスクのことを指します。
火災や地震、津波、高潮、台風災害など、自然災害に備えるためには修繕積立金などを家賃に追加し、火災保険へ加入するなどの対策を講じなければなりません。
また、災害の程度によっては、物件そのものが消失する最悪のケースもあるため、災害リスクがあることを念頭に購入する物件を検討しましょう。
5.家賃下落リスク
不動産は、需要の高い立地や条件の整った物件を除き、基本的には価値が落ちていく資産です。そのため、保有している物件周辺の不動産価格の変動次第では、家賃を下げざるを得ない状況になることがあります。
家賃を下げれば、購入時に想定していた家賃収入を下回ることになるため、家賃下落リスクを想定した収益見込みを算出することが大切です。
不労所得を目的にしすぎない!不動産投資のリスクを回避するには
不動産投資では、不労所得を目的にしすぎないことが大切です。収益を得るためには不動産投資のリスクを理解し、回避するための対策を講じなければなりません。
ここからは、不動産投資のリスクを回避するための対策方法について紹介します。
収支計画を立てること
不動産投資では、収支計画を立てることが重要です。賃貸経営などで物件を運用していると、さまざまなリスクによって支出が発生することが予想されます。
シミュレーションを行って計画を立てながら、収益の見込みと支出予想を想定しておきましょう。
- 築年数や建物の構造と購入価格から、減価償却費を算出
- 将来的な下落を見込んだ家賃収入の想定
- 賃貸経営で必要な経費の算定(管理手数料・月額の固定費・固定資産税・災害対策の保険加入資金など)
- ローンを組む金額と月々の返済金額
収支計画をもとに、収益を上げられる見込みがあるかを検討したうえで、購入すべきか判断することが大切です。
また、空室リスクや家賃滞納リスク、災害リスクなどを分散させるために、複数の物件を所有する方法もあります。
そのほか、空室リスクを下げて安定的な収益を得るために、前述した「サブリース契約」を不動産会社と結ぶのも手段のひとつです。
自己資金や保有物件の需要、ローンをはじめとした支出金額など、総合的な要素を考慮したうえで、不動産投資の方法そのものを検討しましょう。
自己資金を十分に用意すること
不動産投資では、自己資金を十分に用意することも重要になります。頭金を多く用意できていれば、月々のローン返済額を圧縮することができるためです。
自己資金で全額まかなうことができれば、ローンを組む必要がなくなるため、金利変動リスクの心配もありません。
レバレッジ効果が高い物件を探してフルローンを組むか、頭金を大きくして返済を楽にするか、自己資金の範囲内で不動産購入を検討すると良いでしょう。
不動産投資を行う際には、不動産投資の収益ばかりに目を向けず、支出をいかにして抑えながらリスクを回避するかを検討する必要があります。
まとめ
不動産投資で不労所得を得ることは可能ですが、安定した収益を実現するためには、リスクについて把握しておくことが大切です。本記事でも紹介したリスク対策などを参考に、購入する不動産や家賃設定などを十分に検討する必要があります。
税理士や投資に詳しい不動産会社など、専門家の意見も参考にしながら、計画的な投資と運用を行いましょう。