サブリースの仕組みとは?知っておきたいメリット・デメリットを解説

谷仲 健彦

監修者:谷仲 健彦

早稲田大学理工学部建築学科卒業後、準大手のハウスメーカーにて設計と施工管理に従事。
その後、建築・不動産関連業界の複数社にての幅広い経験を積み、空き家再生を学び、空き家再生サポーターになる。
現在は、マンション管理会社にてマネジメントを経験後、長期修繕計画の作成に携わる。

物件の購入~リフォーム~入居者募集まで、実務経験を基にした、空き家再生の実践者。
資格は、二級建築士、宅地建物取引士、管理業務主任者などを保有する。

また、四人男児の父親でもあり、「仕事と家庭の両立」にも力を入れる。
これまでに、絵本の読み聞かせや子育て支援座談会参加、育休取得などの実績あり。

<参考>
「空き家の活用・保有・再生」ホームページ
https://akiya-katsuyo.net/
「仕事と家庭を両立できる父親になる!|父親のための「仕事と家庭の両立」研究所」ブログ
https://ameblo.jp/gorizon

サブリースは、入居者の有無にかかわらず安定した収入が期待できるなどさまざまなメリットがあるため、不動産投資の選択肢のひとつとして注目を集めています。しかし、「かぼちゃの馬車事件」などで問題点も明らかになり、「手を出しにくい」と感じる人もいるでしょう。

この記事では、サブリースの仕組みやメリット・デメリットについて解説します。サブリース契約のチェックポイントなども紹介するので、検討中の人は参考にしてください。

目次

サブリースとは

サブリースとは、不動産会社がオーナーから一括で借り上げた物件を、入居者に転貸する制度のことです。不動産会社を介して賃料収入を得る不動産投資の方法で、一括借り上げサービスと呼ばれることもあります。

実際には、不動産会社がオーナーから物件を借りるマスターリース契約とその物件を不動産会社が入居者に貸すサブリース契約がセットで締結されるため、両者をまとめてサブリースと呼ぶのが一般的です。

サブリース3つのメリット

サブリースには、一般的な不動産投資にはないメリットがいくつかあります。まず最初に、サブリースを行うメリットについて紹介します。

メリット①:空室や滞納に関係なく安定した賃料が得られる

不動産投資のポイントの1つは、長期にわたって安定した賃料収入を確保することですが、どれだけ好条件の物件であっても、空室リスクは避けられません。また入居者が家賃を滞納する可能性もあります。

しかし、サブリースなら、空室や家賃滞納が発生しても不動産会社が契約で定めた賃料を支払ってくれます。契約期間中は一定の収入が約束されるため、ローンの返済計画も立てやすくなります。

メリット②:管理業務を委託できる

不動産投資には、物件の管理業務が欠かせません。入居者募集はもちろん、賃貸契約や退去時の対応、家賃の回収、清掃や修繕などは、会社員の人などにとって大きな負担です。

しかし、サブリースでは不動産会社に物件の管理を一任できるため、不動産経営に関わる業務に煩わされることはありません。入居者間のトラブルなど、難しいケースにも対応してもらえるので、精神的な負担も軽減されます。

メリット③:融資が受けやすくなる可能性がある

サブリース期間中は不動産会社からオーナーに一定の賃料が支払われるため、一般的な不動産投資よりも収益の見通しが立てやすいといえます。そのため、金融機関からの融資が受けやすいこともメリットの1つです。

ただし、物件の資産価値やオーナーの資産状況などによっては、サブリースでも融資を受けられないケースもあります。資金計画をきちんと立てて、事前に複数の金融機関に相談することをおすすめします。

不動産投資ローンについては、こちらの記事も合わせてご覧ください。

サブリース3つのデメリット

次に、サブリースを利用するうえで知っておくべきデメリットを紹介します。

デメリット①:収益性が下がる

サブリース期間中は、不動産管理会社から決まった賃料を受け取りますが、オーナーが受け取る賃料は、管理業務などの必要経費を差し引いた金額です。入居者が支払う賃料のおおむね80~90%ほどの金額のため、自分で不動産経営するより収益性は低くなります

また、礼金や更新料は入居者と賃貸契約している不動産会社が受け取ることが多く、収益性は更に低下します。

デメリット②:免責期間がある

一般的に、サブリース契約では免責期間が設けられています。免責期間とは、退去者が出て空室が発生した場合、賃料が保証されない一定の期間のことです。すぐに空室が埋まらなければ、免責期間中は収入が減少します。

免責期間は、一般的には1~6ヶ月程度です。免責期間が長ければ収益が下振れするリスクが高くなるため、契約時にはきちんと確認しておきましょう。

デメリット③:賃料が値下げされる可能性がある

サブリース契約では、契約時の賃料がそのまま変わらないという保証はありません。物件の空室状況や周辺の相場に応じて、入居者の賃貸契約更新時などに見直しが行われ、賃料が値下げされることもあります。賃貸契約の更新は、2年に1回くらいのペースで行われます。

入居者と契約するのは不動産会社のため、オーナーは自分で家賃を決められません。更新時の家賃の設定方法などについては、サブリース契約をする前に不動産会社からきちんと説明を受けましょう。

マンション投資全般にかかるメリットとデメリットについては、こちらの記事も合わせてご覧ください。

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サブリース契約でチェックすべき項目とは

サブリース契約の内容は、不動産会社によってさまざまです。契約書の内容は詳細にチェックする必要があります。サブリースの契約時にチェックすべき項目は次の通りです。

賃料の保証賃料をチェックする

サブリースで保証される賃料は、周辺物件の相場の80~90%が一般的です。しかし、この保証率も不動産会社によって差があり、不当に低く設定されている可能性も考えられます。

不動産会社から保証賃料を提示されたら、まずは周辺の家賃相場をリサーチして、保証家賃が妥当かどうかを判断しましょう。

賃料の見直し期間をチェックする

一般的に、サブリースの契約書には、賃料の見直しについての記載があるので、見直しのタイミングや賃料の変更方法などを確認して下さい。

賃料の見直しで保証家賃が下がると、収入の減少に直結します。見直しのタイミングや家賃の値下げなどを考慮して、収益予測を立てることが必要です。

免責期間をチェックする

サブリース契約の免責期間はおおむね1~6ヶ月ですが、不動産会社によって開きがあります。免責期間中に空室が発生すると賃料は保証されないため、事前確認が必要です。

また、「新築物件で入居者が決まっていない部屋」に対する免責と、「退去者が出た部屋」に対する免責の2種類があるので覚えておきましょう。

修繕費や広告費などの負担割合をチェックする

サブリースでは日常的な物件の管理業務は不動産会社がしてくれますが、建物の修繕費や入居者募集の広告費などの経費は誰が負担するのかチェックが必要です。

たとえば、退去時の原状回復や入居者募集にかかる広告費は、オーナーが受け持つことは珍しくありません。また、物件の経年劣化に伴う修繕もオーナーが負担するのが一般的です。

広告費や修繕費はいつ発生するかわからないため、費用の負担範囲や割合を把握したうえで、いざというときに備えた資金準備が必要です。

解約条件をチェックする

不動産会社とオーナーで結ばれるマスターリース契約では、不動産会社は物件の借主です。借主は借地借家法で保護されるため、オーナーからの契約解除は難しいとされています。

ただし、契約書に中途解約ができる定めがあれば、条件次第で契約解除も可能です。いざというときに備えて、条件についてもきちんと確認しておきましょう。

サブリース契約でよくあるトラブル事例

サブリース契約でよくあるトラブルを紹介するので、トラブルを未然に防ぐために確認しておきましょう。

トラブル例①:免責規定の存在を知らず収益が得られない

よくあるトラブルの1つは空室発生時の免責期間に関するものです。

免責があることを知らされずに収益計画を立てていた場合、退去者がでて賃料が入ってこないと予定していた収益が得られなくなります。さらに、サブリースは安心だと考えて高額の融資を受けた場合には、ローン返済に行き詰まるケースもあります。

都合の悪い話を避けようとする不動産会社も存在するため、自分自身で契約書の詳細を確認しましょう。

トラブル例②:入居者によるトラブルにまきこまれる

入居者との対応は不動産会社に任せていると考えていても、オーナーが入居者によるトラブルにまきこまれる例もあります。

不動産会社の対応が悪いため入居者がオーナーに直接苦情を申し立てる、住宅設備の更新など不動産会社がタッチしない問題で、入居者と直接対応しなければいけないケースなどです。

また、不動産会社とのサブリース契約が解除されると、オーナー自身が対応を求められます。長期間継続しているトラブルなどでは、経緯がわからないため対応に苦慮するケースもあるでしょう。

トラブル例③:サブリース会社が倒産する

オーナーにとって大きなトラブルの1つが、サブリース会社の倒産です。

「かぼちゃの馬車事件」では、高めの家賃保証を前提に高額の融資を受けていた人が被害にあい、大きな社会問題となりました。この事件では、物件価格が割高なのに加え、審査書類の改ざんなどで過大な融資が行われていたことが被害を大きくしました。

高い賃料保証だけを理由に不動産投資すると、割高な物件を購入させられたり、不動産会社が倒産したときに困ることになりかねません。

サブリース契約における不動産会社の選び方のポイント

最後に、サブリース契約における不動産会社の選び方のポイントを紹介します。

ポイント①:経営状況が安定しているか

ポイントの1つ目は、不動産会社の経営状況が安定していることです。管理を委託した不動産会社が倒産したり経営が傾くなどして、サブリース契約が履行されないリスクを避けるためです。

上場企業であれば決算内容が開示されるため経営状況の概要を知ることができます。非上場企業の場合は、サブリース契約の実績やインターネット上の口コミ情報など可能な限り情報を収集して総合的に判断しましょう。

ポイント②:免責期間など契約条件が明確である

ポイントの2つ目は、免責期間など契約条件が明確であることです。投資家が契約をためらうような内容でも契約書に明記していることから、信頼できる会社である可能性が高いと判断できるからです。

サブリース契約にあたって注意すべき事項やデメリットなどを事前に調べておいて、不動産会社がきちんと説明してくれるかどうかを確認しましょう。不都合なことを曖昧(あいまい)にするような会社は避けたほうがいいでしょう。

ポイント③:事業計画が具体的で信頼できる

ポイントの3つ目は、事業計画が具体的で信頼できることです。不動産投資は長期間にわたるため、目先の収入より将来の収入がどう推移するかを適切に把握することが重要だからです。

高い家賃保証でサブリース契約を結んでも、契約更新のたびに保証額が大幅に減少したら期待通りの収益は上げられません。周辺の環境変化や家賃相場の推移、メンテナンスなどによる物件価値の維持など、不動産会社からの適切な情報提供やアドバイスがあれば安心です。

まとめ:契約内容をきちんと理解した上でサブリースの利用可否を判断しよう

サブリースは、安定した家賃が期待できるうえに管理の手間を省けるなど、メリットも多く魅力的です。一方、管理を委託する費用がかかり免責期間があるなど、自分で不動産経営するよりも収益性は下がるというデメリットもあります。

ただし、不動産会社によって契約内容は大きく異なるため、サブリース契約にあたっては契約内容理解が重要です。デメリットやリスクをきちんと把握して、サブリースを利用するかどうかを判断しましょう。

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