賃貸物件を借りる際、近年では保証会社の利用が一般的になっています。国土交通省の調査によると、家賃保証会社の利用率は2020年度に約8割まで上昇し、外国人や高齢単身者の増加、連帯保証人を頼みにくい社会環境が背景にあります。
こうした中、独立系保証会社の代表格として知られるのが「シノケンコミュニケーションズ」です。
不動産投資家の方々からは「審査が厳しいのでは？」との声も聞こえますが、本当のところはどうなのでしょうか。
この記事では、シノケンコミュニケーションズの審査基準、審査に通るためのポイント、投資家として知っておくべき注意点を、公式情報や専門レポートに基づいて解説します。
シノケンコミュニケーションズとは？
会社概要と事業内容
シノケンコミュニケーションズは、シノケングループに属する家賃保証会社で、グループ内でアパート開発・管理・保証を一貫して行うための保証業務を担っています。
公式サイトによると、同社は1999年2月10日に設立され、本社は福岡市中央区天神一丁目1番1号アクロス福岡に所在し、資本金は6億7,000万円（資本剰余金を含む）。シノケングループの100％出資会社であり、家賃などの債務保証事業を主業としています。
会社概要を見ると、貸金業者登録番号や日本貸金業協会への加盟などが明記されており、公的な登録制度のもとで事業を行っていることが確認できます。なお、保証サービスのメリットとして、滞納家賃の立替払い、保証人の代行、充分な資本金による安定経営などを掲げています。こうした安定した経営基盤とサービス内容が、入居者・不動産会社・オーナーの信頼につながっています。
家賃保証会社の仕組みと市場動向
一般に家賃保証会社は、入居者が家賃を滞納したときにオーナーへ代位弁済を行い、その後入居者から回収する仕組みです。連帯保証人との違いは、保証会社が債務履行を肩代わりする点であり、連帯保証人では保証上限の極度額を契約時に定めなければならないという民法改正（2020年施行）も利用増加の一因とされています。
保証会社には大きく三つのタイプが存在します
| 種類 | 特徴 | 審査の厳しさ | 代表的な審査項目 |
|---|---|---|---|
| 信販系 | クレジットカード発行会社などが運営し、クレジットカードの利用履歴や滞納状況等の信用情報を照会する【71159372201102†L85-L100】 | 厳しい | 信用情報・収入の安定性 |
| 協会系（LICC加盟） | 全国賃貸保証業協会（LICC）に加盟し、加盟社間で家賃滞納などのデータを共有して審査する | 中程度 | 過去の滞納歴・収入 |
| 独立系 | 信用情報や協会データを参照せず独自基準で審査する。申込内容と提出資料を基に判断 | 比較的緩い | 職業・収入・申込内容 |
シノケンコミュニケーションズは独立系保証会社に分類され、CICやJICCなどの信用情報機関を参照せずに自社基準で審査を行います。
そのため、一般的には信販系より審査が柔軟で、過去にクレジットカードの滞納がある人でも通過できる可能性が高いとされています。
シノケンコミュニケーションズの審査基準
審査項目と最低要件
エース不動産による2025年の審査解説では、シノケンコミュニケーションズの審査ポイントとして以下の4項目が挙げられています。
①審査要件をクリアしているか：仕事をしていて一定の収入があり（家賃の3倍が目安）、アルバイトの場合は連帯保証人を付ける必要があります。
②反社会的勢力に該当しないか：暴力団等の反社会勢力との関係がないことは必須です。
③本人確認時に虚偽がないか：申込書やヒアリング内容に虚偽がないかを確認します。
④エゴサーチで名前が表示されないか：ネット上で犯罪歴などが報じられていないかをチェックし、不適切な情報があれば否決となります。
審査要件の具体例として、家賃×3倍程度の収入がある、外国人ではないことなどが挙げられています。外国人でも日本語が流ちょうで大手日系企業に勤務している場合は審査対象になるとされ、一定の柔軟性があります。
審査の流れと期間
審査の手順は、物件申込 → シノケンコミュニケーションズによる入居審査 → 重要事項説明・賃貸借契約 → 物件引き渡しという順で進みます。審査期間は通常1～2日と短く、可否が迅速にわかるのが特徴です。ただし、申込者本人と連絡が取れない状態が1週間以上続くと申し込みを棄却される場合があるため、連絡がつきやすい環境を整えることが重要です。
必要書類と追加書類
審査には、身分証明書・健康保険証・収入証明書（源泉徴収票や給与明細など）に加え、状況に応じて在籍証明書や内定通知書のコピーなどが求められます。無職や収入が不安定な場合は通帳のコピーを提出して預貯金を証明することが推奨されます。学生であれば学生証、新社会人であれば内定通知書が追加されるなど、属性によって求められる書類が異なる点に注意が必要です。
属性別の通過傾向
収入や職業の安定性によって審査通過の難易度は変わります。会社員や公務員は有利ですが、勤続年数が1年未満だと厳しく見られる傾向があります。無職やアルバイトの場合でも貯金が家賃の2年分（24ヶ月分）程度あれば通過しやすく、連帯保証人を付けることで審査のハードルを下げられるとされています。逆に水商売や夜職、フリーランスなど収入が不安定な職種は審査が通りにくいので、残高証明や保証人の準備が重要になります。
シノケンコミュニケーションズの審査は本当に厳しいのか？実際の評価と誤解
独立系としては「比較的緩い」
複数の不動産関連メディアでは、シノケンコミュニケーションズは独立系保証会社のため審査が比較的緩いと紹介されています。信販系や協会系と異なり信用情報を照会しないため、過去にクレジットカード滞納歴があっても審査に通る可能性が高いことが理由です。また、保証料についても連帯保証人なしの場合は「初回総賃料の50％～、年間更新料1万円」、保証人ありの場合は同額だが審査通過率が30％上がるとされており、保証人を用意すればより通りやすくなります。
「厳しい」と感じる背景
一方で、ネット上には「審査が厳しい」「取り立てが強硬」といった口コミも散見されます。これらは保証会社全般に共通する側面であり、東京共同住宅協会のレポートでも保証会社からの督促が機械的になり厳しくなる可能性があるとデメリットが指摘されています。保証会社はオーナーに代わって家賃滞納者へ請求を行うため、電話連絡や郵送が複数回行われることがあります。しかし、これは法律に則った正規の督促であり、暴力的な取り立ては禁止されています。入居者が家賃を払える状態に戻れば督促は停止し、滞納分の分割相談も可能です。こうした業務フローを理解しておけば過度な不安を抱く必要はありません。
また、審査に落ちてしまうケースとして多いのは、家賃に対して収入が見合わない場合や本人確認で虚偽の申告をした場合です。審査基準そのものは他社に比べて厳格ではないものの、必要条件を満たしていなければ当然否決されるので、「厳しい」と感じる人もいるでしょう。投資家としては、入居希望者の属性と審査基準の整合性を理解し、適切に募集条件を設定することが重要です。
シノケンコミュニケーションズと他社の比較｜投資家が注意すべきポイント
保証会社タイプ別のメリット・デメリット
以下の表は、家賃保証会社を選ぶ際の視点として、主なタイプごとの特徴をまとめたものです（要点のみ記載）。
| 項目/タイプ | 信販系保証会社 | 協会系（LICC加盟） | 独立系保証会社（シノケン等） |
|---|---|---|---|
| 審査基準 | クレジットカードの滞納履歴などを照会し厳格【71159372201102†L85-L100】 | データベースで加盟社の滞納歴を共有し審査 | 申込内容と資料を基に独自基準で判断 |
| 通過率 | 低～中 | 中程度 | 比較的高い |
| 保証料 | 高め | 中程度 | 低め |
| 適している入居者 | 高収入・信用情報が良好な人 | 平均的な収入で滞納歴がない人 | 収入が低め／過去に事故歴があるが現状は安定している人 |
| 投資家への影響 | 滞納リスクが低いが空室期間が長くなる可能性 | 安定的だが中間的 | 入居が付きやすいが滞納リスクや督促業務が増える可能性 |
独立系のシノケンコミュニケーションズを利用する場合、空室を埋めやすい反面、滞納リスクや回収業務の負担が高まる点を理解しておくべきです。オーナーとしては、入居者の支払い能力を事前に確認し、家賃を収入の3分の1程度に抑えるよう案内することでリスクを軽減できます。
投資家が押さえておきたいポイント
- 賃貸募集のターゲット：シノケンコミュニケーションズではワンルーム物件が多く、学生や若手社会人の単身層が中心。ターゲット層の収入水準や転職率を把握し、賃料設定や設備投資を工夫すると空室期間を短縮できます。
- 保証人の有無による保証料の差：保証人を付けると審査通過率が30％上がるうえ、初回保証料は総賃料の50％～で同額なので、入居希望者には保証人の準備を促すと良い。
- 属性別対策：無職やアルバイトの応募者には貯金の提示や保証人の相談を促し、外国人には日本語能力や勤務先を確認するなど、事前に対策を打つことで審査落ちによる空室リスクを減らせます。
- 督促対応の理解：保証会社の督促が機械的になりがちであることを理解し、入居者からクレームがあった場合は適切に説明・フォローする姿勢が求められます。
シノケンコミュニケーションズの審査に通るためのコツと落ちた場合の対処
審査を通過するコツ
- 手取り収入に見合った家賃設定 – 手取り収入の1/3以下に家賃を抑えると通過率が高まります。
- 収入証明・残高証明の準備 – 給与明細だけでなく、貯金残高の証明を提出できれば収入が不安定でも評価されやすくなります。
- 連帯保証人の確保 – 親族に依頼できる場合は保証人を付けるのが理想。保証人を立てることで審査通過率が約30％上がるとされています。
- 申込書の正確な記入 – 働き方や年収、勤務年数などを正直に記載し、本人確認の電話にはすぐに対応することで信用が高まります。
- 必要書類の早期準備 – 身分証や健康保険証、学生証・内定通知書など、求められる書類は早めに用意し、不備がないか確認しましょう。
審査に落ちた場合の対応
シノケンコミュニケーションズの審査に一度落ちると、同じ物件・同じ内容での再申請は基本的に認められません。落ちてしまった場合の対応策として、以下の方法が挙げられています。
- 連帯保証人を付けて再申込する – 別物件であれば保証人を付けることで通過率を上げられます。
- 家賃を抑えた物件に変更する – 手取り収入の1/3以内に家賃が収まる物件を選ぶと審査に通りやすくなります。
- 審査の緩い保証会社を検討する – 他社の独立系保証会社（ロイヤルインシェア、ハウスリーブなど）を利用する方法もあります。ただし、会社によっては職業や犯罪歴により審査を断る場合があることを理解しておきましょう。
- アリバイ会社の利用は慎重に – 一部サイトではアリバイ会社の利用を紹介していますが、虚偽の在籍情報を作成する行為は道義的・法的なリスクが大きく、投資家や入居者双方に不利益をもたらします。専門の不動産業者や保証会社に相談し、正攻法で改善策を検討してください。
まとめ：投資家が知っておきたいポイント
- 独立系保証会社であるため、シノケンコミュニケーションズの審査は信販系に比べて緩やかであり、安定した収入や連帯保証人があれば通過しやすい。
- 審査基準は「収入」「反社会的勢力への関与」「虚偽の申告の有無」「ネガティブなネット情報の有無」という4本柱で構成されている。
- 必要書類を早めに準備し、家賃を手取り収入の3分の1に抑えるなど基本を押さえることで通過率を高められる。
- 保証人を付ければ審査通過率が約30％上がるうえ、保証料は変わらないので入居者には保証人の準備を促すと良い。
- 入居者ターゲットは若年単身層が中心であり、保証会社の督促は法律に基づき行われるため過度な心配は不要。投資家は督促の仕組みを理解し入居者対応に備えるべき。
シノケンコミュニケーションズは「審査が厳しい」と誤解されることもありますが、独立系保証会社の中ではむしろ通りやすい部類に入ります。投資家としては、審査基準や市場動向を正しく理解し、適切な家賃設定と入居者管理を行うことで、物件の収益性を高めることが可能です。
FAQ（よくある質問）
Q1. シノケンコミュニケーションズの審査に信用情報は関係ありますか？
A. いいえ。シノケンコミュニケーションズは独立系保証会社であり、CICやJICCなどの信用情報機関を照会しません。そのため、過去のクレジットカード滞納歴があっても現在の収入や職業が安定していれば審査に通る可能性があります。
Q2. 連帯保証人は必ず必要ですか？
A. 正社員など一定の収入がある場合は必須ではありませんが、アルバイトや無職の場合には連帯保証人が必要とされます。連帯保証人を付けると審査通過率が約30％上がるとされており、保証料も変わらないので準備を推奨します。
Q3. 審査にかかる時間はどのくらいですか？
A. 一般的に審査期間は1～2日と短く、結果はすぐに知らされます。ただし、本人確認が取れない場合は審査が長引いたり申込自体が棄却されることがあるため、連絡の取りやすい状況を保ちましょう。
Q4. 外国人でも審査に通りますか？
A. 外国人でも、日本語が流ちょうで大手日系企業に勤務している場合などは審査対象に含まれます。ただし、収入証明や在留カードの提出など追加書類が必要になることが多いので、事前に準備を整えましょう。
Q5. 滞納した場合の取り立ては厳しいのでしょうか？
A. 保証会社は滞納家賃を立替払した後、入居者に対して督促を行います。東京共同住宅協会の資料では、保証会社からの督促が機械的になり厳しくなる可能性がデメリットとして挙げられています。しかし、暴力的な取り立ては行われず、支払い計画の相談も可能です。滞納を防ぐことが最善策であり、支払いが難しいときは早めに保証会社へ相談することが大切です。
