不動産投資に興味をもっている人のなかには、不動産投資信託についても知りたいと考えている人も多いでしょう。不動産投資と不動産投資信託を比較すると、利回りをはじめとしてさまざまな違いがあります。この記事では、不動産投資信託の利回りや具体的な特徴について解説します。投資を始める参考として役立ててください。
目次
不動産投資信託とは
ここでは、不動産投資信託とはどのようなものであるか解説します。
不動産投資信託の概要
不動産投資信託は、複数の投資家から集めたお金で買った不動産を運用し、賃料収入や売買の利益を投資家に分配する投資方法です。一般的に、「Real Estate Investment Trust」の略称である「REIT(リート)」とよばれる場合が多いです。なお、日本では、証券化して証券取引所に上場する「J-REIT」が行われています。
不動産投資信託の仕組み
不動産投資信託は、投資法人の形態をとって運用されているのが大きな特徴です。投資法人が運用そのものを行ってはいけないと法律で定められているため、運用は外部に委託しています。
具体的には、資産運用会社、資産保管会社、事務受託会社が連携し、それぞれの役割を果たしています。不動産投資の戦略を立てるのが資産運用会社、不動産を管理するのが資産保管会社、会計や納税に関する事務作業を行うのが事務受託会社です。
不動産投資信託の投資対象
不動産投資信託は、さまざまな不動産に対して投資します。たとえば、オフィスビル、ホテル、商業施設、物流施設のように、ビジネスを行う施設へ投資することも可能です。個人で行う不動産投資のように、マンションが対象となる場合もあります。ただし、投資法人によっても投資対象となる不動産は異なります。
J-REITにおける利回りの目安
2020年3月時点のJ-REITの分配金利回りは、4.80%となっています。ただし、この数値はあくまでも概算です。
なお、J-REITの分配金利回りは「年間の予想分配金÷投資額×100」で計算します。
参考:J-REIT分配金利回り(10年間)|J-REIT.jp
不動産投資と比べた場合の不動産投資信託の特徴
ここでは、不動産投資と比べた場合の不動産投資信託の特徴について解説します。
不動産を取得する手間がかからない
不動産投資を行えば、不動産を取得するための法的手続きや、利益が出た場合の納税などが必要となります。専門知識がないと対応できない部分も多いです。しかし、不動産投資信託なら不動産を自分で所有せず間接的に利益を得るため、不動産投資のような手間はかかりません。
所得の種類が異なる
不動産投資で得た所得は「不動産所得」として計上します。運用により損失が発生した場合、給与所得と損益通算することも可能です。
一方、不動産投資信託で得た所得は、種類によって計上の仕方が異なります。売却による所得は「譲渡所得(申告分離課税)」、配当金による所得は「配当所得」です。損失が発生した場合、上場株式等の配当等に係る利子所得の金額と配当所得の金額を損益通算できます。
自分で運用しない
不動産投資信託は、お金を出すだけで自動的に不動産の運用が行われます。自分で戦略を考えて運用しなくても、所有しているだけで利益や配当金を得られる可能性があります。また、複数の投資家からお金を集めて投資を行うため、個人では所有するのが難しい大型の不動産への投資も可能です。
レバレッジ効果が低い
不動産投資信託においても、信用取引を行えば手持ちのお金の3.3倍までの投資が可能です。しかし、不動産投資であれば、自己資金が無くても始められるケースがあります。そのため、レバレッジ効果を比べると、不動産投資信託よりも不動産投資のほうが高くなる可能性があります。
利回りの水準が安定している
不動産投資の利回りは、運用の仕方次第で大きく変化します。うまくいけば表面利回りが15%程度となる可能性もあるほどです。一方、不動産投資信託の利回りは、ある程度の相場が決まっています。利回りはそれほど高くはならないものの、安定性があるのが特徴です。
不動産投資信託の利回り
不動産投資信託の利回りは、だいたい4%前後といわれています。不動産投資信託の分配金利回りの計算式は、「年間の予想分配金÷投資額」です。
たとえば、年間予想分配金30,000円の不動産投資信託に対し、1口600,000円で投資した場合の利回りについて計算してみましょう。計算式は「25,000円÷600,000円」となり、分配金利回りは約4.2%だとわかります。計算上の利回りはあくまでも目安ですが、投資を検討する場合の目安にしてみてください。
不動産投資信託の利回りの水準が安定している理由
日本の不動産投資信託であるJ-REITは、投資法人により運営されています。不動産投資信託の利回りの水準が安定しているのは、租税特別措置法で投資法人に対する課税の特例が認められていることに大きな関係があります。
不動産投資信託は、投資法人の当期利益の90%以上を投資家に分配する代わりとして、税金の免除を受けているのです。税金の免除により浮いたお金をすべて投資家に分配できるので、投資家は安定的に利益を得られます。
不動産投資信託のメリット
ここでは、不動産投資信託のメリットについて解説します。
専門家に運用を頼める
不動産投資を始めるには、不動産の運用に関するさまざまな知識が必要です。しかし、不動産投資信託に投資すれば、お金を出すだけで運用そのものを専門家に任せられます。不動産投資に関する知識がなくても、不動産投資信託なら不動産に対する投資をより気軽に始められます。
収益の多くが分配される
不動産投資信託では、投資で発生した収益のほとんどが投資家に分配される仕組みになっています。投資家は効率的に利益を得られるため、安心して投資を始めることが可能です。収益の分配は毎期行われるため、お金を出した投資家は待っているだけで定期的に利益を得られます。
少額から投資できる
不動産投資に取り組むには、少なくとも数千万円の資金が必要です。基本的に、ローンを組まなければ、不動産投資ができない人がほとんどです。それに対して不動産投資信託なら100万円以内の手持ちの資金だけで投資を開始できます。少額で不動産に投資したいと考えている人でも、不動産投資信託ならチャレンジ可能です。
投資対象を分散できる
不動産投資信託では、投資家から集めたお金を使って複数の不動産を運用します。お金を出した投資家自身も複数の不動産に投資していることになるため、リスクを分散できます。不動産投資にはリスクもつきものですが、不動産投資信託を選べばリスクを最小限に抑えられる可能性が高いです。
換金しやすい
不動産そのものを所有して不動産投資に取り組んでいる場合、売却までに多くの時間や手間がかかります。一方、不動産投資信託は証券化されて、証券取引所に上場されています。他の証券と同様、不動産投資信託の証券を売却すれば、すぐに換金することが可能です。換金のしやすさを重視するなら、不動産投資信託は利便性が高いといえます。
不動産投資信託のデメリット
ここでは、不動産投資信託のデメリットについて解説します。
不動産そのものを所有できない
不動産投資信託は自分で所有するわけではないため、どれほど多額のお金を投じても本物の不動産は手に入りません。本物の不動産を所有する不動産投資であれば、不動産を運用するだけでなく、自分のためにも活用できます。たとえば、運用していた物件に自分や家族が住むことも可能です。
予期できないリスクがある
不動産投資信託の利益は、投資する不動産の価値に大きく左右されます。そのため、なんらかの事情により不動産の価値が減少してしまい、投資家に分配される収益も減少する可能性があります。また、不動産投資信託は投資家だけでなく金融機関からも借り入れをしているため、金利変動の影響を受けるリスクも考慮しなければなりません。
相場が変動しやすい
不動産投資信託は証券市場で取引されるため、証券の需要と供給のバランスによって価格が大きく変動する場合もあります。J-REITは元本保証のない金融商品なので、状況によっては短時間で価値が下落するリスクもないとはいえません。証券を入手したら、こまめに市場の様子をチェックする必要があります。
投資法人が倒産する恐れがある
投資法人は一般企業と同じく、倒産する可能性もあります。投資法人が倒産した場合、それまで所有していた不動産は売却され、投資家に資金が返金されます。ただし、売却によりどの程度の利益が出るかわからないため、投資した資金のすべてが返ってくるとは限りません。
上場が廃止される可能性もある
上場廃止基準に該当した場合、J-REITは上場廃止になります。上場廃止が決定されても1カ月間は整理銘柄として売買が可能ですが、価値が大きく下落する可能性が高いです。投資を始めた時期によっては、損をするリスクもあるため気をつけましょう。不動産投資にはないデメリットなので注意が必要です。
不動産投資信託を行う際の注意点
不動産投資信託は少額からでも始められるため、魅力的だと思う人も多いです。ただし、元本割れのリスクや、予想よりも分配金が少なくなる可能性もあるため、十分に注意しなければなりません。
それに対して不動産投資は、元本変動が小さいうえに、不動産投資信託より高い利回りを期待できます。長期的に投資で利益を得たいと考えている人には、不動産投資信託よりも不動産投資のほうが適している可能性もあります。それぞれの特徴を正しく理解したうえで、自分にあう投資方法を選びましょう。
まとめ
不動産投資信託は少額で始められるため、気軽に取り組みやすいです。ただし、注意点も多くあるので、人によっては不動産投資を選んだほうが成功しやすい可能性もあります。