給与所得者は1年に一度、「扶養控除申請書」の提出が必要です。「何を書けば良いの?」「提出しないとどうなる?」と疑問を持つ人も多いのではないでしょうか。
本記事では、扶養控除申告書の必要性や書き方、注意点をまとめて解説していきます。提出期限直前になって慌てないように、この記事を参考に扶養控除申告書について理解を深めてください。
そもそも扶養控除等(異動)申告書とは?
「扶養控除申告書」(正式名称:扶養控除等(異動)申告書)は、給与の支払いを受けている人が会社に提出して、正しく年末調整を受けるための書類です。
扶養控除とは、扶養控除対象となる親族がいる場合に、一定額の控除が受けられる制度のことです。会社員であれば年末調整を行うことで、扶養控除を受けられるようになります。
扶養控除申告書はなぜ必要?
扶養控除申告書を提出することで、年末調整で控除を受けられるメリットがあります。
扶養対象として、一例として子供が2人、大学生の娘(19才)と、高校生の息子(17才)がいると仮定しましょう。
この場合、大学生の娘は「特定扶養親族」に該当し、68万円の控除が受けられます。さらに高校生の息子は、「一般の控除対象扶養親族」に該当し、38万円の控除が適用。書を提出することで、2人合わせて106万円の控除を受けられます。
提出しないとどうなる?
申告書を提出しなかった場合、年末調整で扶養控除が適用されません。税務署が扶養控除の金額などを把握できなくなるため、本来受けられたはずの扶養控除が受けられず、必要以上に納税し手取りが減ってしまうでしょう。
年末調整に扶養控除が反映されないと、自分で確定申告を行う必要があります。会社員でほかに確定申告が必要な条件を満たしていない場合、無駄に労力がかかってしまいます。
提出時期は?
申告書は以下のタイミングで提出します。
- 年末調整を行うとき
- 1月に初給与をもらう前
- 新たに就職した際には初給与をもらう前
申告内容に変更があった場合は、追記をして再提出が必要です。例えば、以下のような変更が考えられます。
- 結婚・出産などのライフイベントにより、働き方に変化が配偶者にあった
- 配偶者が扶養対象の範囲におさまらなくなった
- これまで扶養対象でなかった家族が障害者に該当するようになった
- 勤労学生、または寡婦(寡夫)になった
- 結婚により、扶養していた家族が対象外になった
該当する際は忘れずに再提出をしましょう。
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扶養控除申告書の書き方を記入例をあわせて徹底解説
さて、ここからは具体的に申告書の書き方を記入例と共に解説していきます。
記入例
引用:国税庁HP
上記の図だとわかりにくい部分もあるので、今回は以下の図を参考します。
①〜⑦までのパートをひとつずつ解説していきます。
①勤務先・納税者の本人情報
①には本人情報を記入します。
「所轄税務署長等」の箇所には、勤務先企業本社の住所がある税務署名を記入してください。支店や営業所などに勤めている人は注意が必要です。「市区町村長」の箇所には、納税者自身の住所がある市区町村を記入しましょう。
個人番号の箇所はマイナンバーを記入すること、名前横の印鑑はシャチハタでないものを押すことに注意しましょう。
これ以降の②~⑥のパートは、該当する家族がいる場合にのみ対応すれば問題ありません。独身・単身の人、扶養家族等がいない人はここまでの記入で完了となります。
②源泉控除対象配偶者(A)
次の条件に当てはまる場合は、源泉控除対象配偶者として記載が必要です。
- 納税者の所得が900万円(年収1,120万円)以下
- 配偶者(生計を共にする)の所得の見積金額が85万円(年収150万円)以下
- 配偶者が青色申告の事業者として給与を受け取っていないこと、白色申告書の事業専従者でないこと
※ここでの所得とは、収入から必要経費を差し引いた後の金額を指します。
条件に該当する場合は、必要事項を記載してください。
③控除対象扶養親族(B)
控除対象扶養親族とは次の条件に当てはまる人を指します。
- 配偶者以外
- 給与所得者と生計を共にしている
- 合計所得金額の見積額が48万円(給与収入だけなら103万円)以下
- 青色事業専従者として給与が支払われていないこと及び白色事業専従者でないこと
対象者がいる場合は忘れずに記入するようにしてください。
④障害者、寡婦・寡夫、勤労学生(C)
扶養家族、もしくは納税者自身が以下のいずれかに該当する場合は記入してください。
- 障害者
- 寡婦・寡夫
- 勤労学生
障害者
納税者本人、もしくは、生計を一つにする配偶者や親族に障害があるときに控除の対象として申請ができます。
障害は「一般」と「特別」に分類でき、障害者手帳で判別することができます。障害の種類によって、控除額が異なるので、詳細は各自の状況に合わせて確認してください。
寡婦・寡夫
配偶者と死別・離婚をしたあと再婚しておらず、子どもがいる人が対象です。子どもの総所得金額は38万円以下で、他人の控除対象配偶者もしくは扶養親族になっていないという条件を満たしている必要があります。
詳細な条件は以下を参考にしてください。
勤労学生
納税者本人が学生の場合に受けることができる控除で、証明のための学生証が必要です。
以下の条件も合わせて満たさないと控除対象にはなりません。
- 勤労による所得(給与所得など)があること
- 合計所得が65万円以下、勤労以外の所得が10万円以下であること
- 高等学校や専修学校、認定職業訓練学校、もしくは大学などの生徒であること
⑤他の所得者が控除を受ける扶養親族等(D)
申告書提出者以外が、家族を扶養親族として申請するときに記載する項目です。ただし、この欄を記入しなかったから控除額が減少する、もしくは損をするということはないので空欄でも問題ありません。
⑥16歳未満の扶養親族
16歳未満の子供がいる場合、⑥の箇所への記載が必要です。納税者と同様、個人番号の箇所には必要であればマイナンバーを記載、続柄は「子」と記入し、その他の情報も記載してください。
⑦単身児童扶養者
こちらは令和2年分から設けられる項目です。2019年12月31日分時点で児童扶養手当を受けているシングルマザーとシングルファザーが対象の項目です。
単身児童扶養者で以下の条件に当てはまる場合、この欄にチェックをつけておくと、住民税の非課税措置が受けられます。(所得税の源泉徴収税額には影響はありません。)
住民税非課税措置適用条件
- 事実婚をしていない・婚姻届を出していない。または配偶者の生死が不明
- 受給者(親)の合計所得金額が135万円以下であること
- 児童扶養手当を受けている児童の該当年の年間所得見積額が48万円以下
扶養控除等(異動)申告書提出時の注意点
ここでは、申告書提出の際に注意すべき点について解説していきます。
住民票をうつしていない場合の対処方法
住民税は、対象年の1月1日に住所があった市区町村で前年分の所得に対し課税されます。通常、引越しが完了したら住民票も速やかにうつすのが基本ですが、単身赴任での引越しで住民票を移してない場合も考えられます。
もし、判断に迷った場合はお住まいの市長区村に問い合わせをしてみてください。
扶養控除と勤労学生控除の併用
扶養控除と勤労学生控除は、同時に申請できません。前者は納税者の親族に対象者がいる場合の控除、後者は納税者本人が学生の場合に利用できる控除です。
合計所得金額が1,000万円を超えると配偶者控除不可
平成29年度に行われた税制改正によって、配偶者控除について以下2点が改正されました。
- 配偶者控除の控除額を、年間合計所得金額38万円以下から48万円以下とする
- 給与所得者の合計所得金額が1,000万円を超える場合、配偶者控除の適用を受けられない
合計所得金額は、以下の種類の合算です。
- 事業所得
- 不動産所得
- 給与所得
- 配当所得
- 雑所得
- 退職所得金額
合計所得が1000万を超えていれば、配偶者控除の利用は不可となります。
まとめ:扶養控除申告書の書き方を理解し、期限までに提出しよう
さて、今回は扶養控除の必要性・書き方・注意点を解説してきました。
申告書を提出することで、必要な各種控除を受けることができます。結果的に納税額を抑えたり、確定申告の手間を省けるなど、自分自身にメリットがあることが多いので、期限までに忘れずに提出してください。