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家計

給料明細を見ると、基本給以外にさまざまな手当が記載されています。給与口座への振込額しか見ていない人の中には、「どんな手当があるの?」「どうやったら手当がもらえるの?」などの疑問を抱く人もいるでしょう。

今回の記事では、手当の種類とその内容について解説します。手当に関する基礎知識も紹介するので、家計の見直しや将来設計のために役立てて下さい。

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手当とは

まず最初に、手当の意味と大まかな分類について解説します。

手当は基本給以外の給与

手当とは、毎月の給与の中で基本給以外に会社から支給される賃金のことです。手当は条件を満たす人にのみ支払われます。同じ会社に勤めている人であっても、その働き方や家族構成などによって受け取れる手当が異なることが一般的です。

手当を支給する主な目的は次の通りです。

  • 法律で支給が義務付けられている
  • 社員のモチベーションを高める福利厚生として支給する
  • 必要経費を会社が補填する

手当について理解するために、2つの分類の仕方を紹介します。

手当の分類①法定の手当と会社独自の手当

分類方法の1つ目は、法律で定められた手当(以下、法定の手当)か、それ以外で分類する方法です。残業したら時間外手当が支給されますが、残業代は法定の手当です。

それ以外の手当とは、会社が独自で支給すると決めた手当です。たとえば、扶養家族のいる人に対する家族手当や、単身赴任者に対する単身赴任手当などが該当します。法律で決められている訳ではありませんが、従業員の福利厚生などを目的に独自の判断で支給する会社もあります。

手当の分類②仕事に関する手当と生活に関する手当

分類方法の2つ目は、仕事に関連する手当か、それ以外(主に生活に関する手当)かで分類する方法です。

仕事に関連する手当には、時間外手当や役職手当などがあります。生活に関連する手当は、家族手当や住宅手当などが該当します。

手当と福利厚生費の違いは?

手当と福利厚生費は従業員やその家族のために会社から支給されるものです。定義の仕方次第で両者の違いについて異なる解釈があることを前提に解説します。

企業会計上の違い

両者の違いは、従業員のために支払った費用を企業会計でどう処理するかです。給与になる場合は手当、福利厚生費として経費計上できる場合は福利厚生費です。給与の場合は従業員の課税対象となりますが、福利厚生費の場合は従業員に税金はかかりません。

現預金を支給されるか費用として払われるかの違い

給与と経費の違いもわかりにくいと感じる人は、概ね毎月の給与やボーナス、現金、金券などで支給されるものが手当、従業員の代りに会社が支払ってくれる費用を福利厚生費と考えるといいでしょう。

  • 給与に加算される住宅手当は手当、社宅を従業員に貸し出す費用は福利厚生費
  • 給与に加算される食事手当は手当、社員食堂で原価割れの価格で食事を提供する費用は福利厚生費 など

ただし、交通費など一定金額までは福利厚生費、一定金額を超える分は給与となるなど、例外があることに注意して下さい。

福利厚生費の種類

福利厚生費には、「法定福利厚生費」と「法定外福利厚生費」の2種類があります。

法定福利厚生費は、法律で企業に負担を義務付けている費用です。法定福利厚生費には、健康保険料や厚生年金保険料など企業と従業員と折半して負担するものや、労災保険料など企業のみに負担が義務付けられているものがあります。

法定外福利費は、企業が従業員のために任意で負担する費用です。慶弔金(結婚祝金や出産祝金、死亡弔慰金など)など一般的な費用のほか、新年会・送別会の費用や保養施設の利用料など企業によってさまざまな種類があります。

法律で定められている手当

法律で定められた主な手当は、時間外手当と休日手当、深夜手当です。労働基準法では、法定労働時間を超える労働時間に対し所定の割増賃金を支払うことを定めています。

手当①:時間外手当(残業代)

「時間外手当(残業代)」とは、所定労働時間を超える残業をした人に支給される手当です。また、法定労働時間を超える残業をした場合、割増賃金が加算されます。

  • 所定労働時間:会社が定めた労働時間(始業9時・終業17時・昼休み1時間なら7時間)
  • 法定労働時間:1日8時間・1週40時間

所定労働時間7時間で9時間仕事をした場合、1時間は所定労働時間を超える残業、1時間は法定労働時間を超える残業になります。法定労働時間を超える残業に対する残業代は、通常の賃金に「25%以上の割増賃金」が加算されます。

また、月60時間を超える残業に対する割増賃金率は、大企業は2010年4月1日から、中小企業は2023年4月から「50%」に変更されます。

手当②:休日手当

「休日手当」とは、休日に出勤して仕事をした人に支給される手当です。休日労働した場合、労働時間に応じて企業が定めた残業代が支給されますが、残業代は法定休日と法定外休日では異なることが一般的です。

週休2日制の場合、企業は2日の休日のうちどちらか一方を法定休日、もう一方を所定休日(法定外休日)としています。法定休日に仕事をさせると、企業は通常の残業代に「35%以上の割増賃金」を加算することを義務付けられています。

手当③:深夜手当

「深夜手当」とは、夜22時から翌朝5時までの労働(深夜労働)に対して支払われる手当です。深夜労働に対し、企業は「25%以上の割増賃金」を支払わなければなりません。

所定の勤務時間が9時から18時(休憩1時間・労働時間8時間)で、夜24時まで残業した場合の残業代の割増は次の通りです。

  • 18時~22時:割増賃金率25%
  • 22時~24時:割増賃金率50%(通常の割増+深夜労働の割増)

ただし、所定の勤務時間が深夜にあたる人は、深夜手当はつきません。深夜労働を前提に基本給が設定されているからです。

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会社が独自に定めている手当

会社が独自で定めた手当は数多くあるため、比較的多くの企業が設けている手当を紹介します。

手当④:役職手当(職務手当/職能手当)

「役職手当」とは、部長や課長などの役職者に対して支給される手当です。責任の重い役職になるほど手当は高額になることが一般的です。

また、営業職や技術職など特定の職務に従事する人に支給される「職務手当」や、特定の職務を遂行する経験やスキルを持った人に支給される「職能手当」などもあります。

手当⑤:資格手当

「資格手当」とは、企業の業務運営に必要な資格取得者に支給される手当です。不動産業界における「宅地建物取引士」や金融業界における「FP資格」などが該当します。

業務に関連する資格を取得することは、仕事に役立ったり給与がアップしたりするだけでなく、自分自身のスキルやキャリアを高めることにもなります。

手当⑥:皆勤手当・精勤手当

「皆勤手当」「精勤手当」は、一定期間無遅刻無欠勤だった場合や、欠勤が少ないなど所定の基準を達成した場合に支給される手当です。

支給基準は会社によって異なりますが、有給休暇を取ったことで不利な取り扱いを受ければ労働基準法違反です。また、原則毎月支給されるほかの手当と異なり、半年や1年に1度支給されるのが一般的です。

手当⑦:特殊作業手当・特殊勤務手当

「特殊作業手当」「特殊勤務手当」とは、危険や困難を伴う特殊な作業や仕事を行う人に支給される手当です。肉体的または精神的な負担の大きい仕事を担う代償として、プラスの賃金を支払います。

具体的には、放射線の除染作業や爆発物の処理業務、高所や坑内などでの作業、有害物質の取扱作業などが該当します。

手当⑧:通勤手当

「通勤手当」とは、自宅と会社との往復交通費の一部を会社が支給するものです。通勤手当を支払う企業が多いですが、企業が任意に支給するもので通勤手当がなくても法令違反にはなりません。

通勤手当は実際にかかった費用全額が支給されるとは限りません。上限が設けられているケースもあるので注意しましょう。

一方、従業員の利便性を高めたり人材の確保を目的に、新幹線や特急の利用料金を支給する企業もあります。通勤手当の支給により、従業員間の経済的負担の格差を解消できます。

手当⑨:住宅手当

「住宅手当」とは、従業員が居住する住宅の家賃補助として支給される手当です。また、持ち家の購入代金の一部を支給する企業もあります。家賃など住宅にかかる費用は高額になるため、住宅手当てがあると助かります。

住宅手当の対象となる地域を会社から一定範囲内に限定するケースもあるため、引っ越し予定がある人は事前に確認するといいでしょう。

住宅手当を支給する代わりに、独身寮や家族社宅などを準備する会社もあります。一定額の家賃(社宅費など)を支払うのが一般的ですが、自分で借りるより低額で利用できます。また、住宅手当は賃金として課税されますが、社宅の利用については一定の要件を満たせば、税金がかかりません。

手当⑩:地域手当

「地域手当」とは、企業が定めた地域(勤務地)に配属された人に支給される手当です。たとえば、全国に拠点のある企業では、東京や大阪など物価の高い地域では支出が大きくなることに配慮して地域手当を設けたりしています。

また、冬の降雪量の多い地域や気温の低い地域での勤務に対する「寒冷手当」、離島での勤務に対する「離島手当」などを設ける企業もあります。

手当⑪:家族手当・扶養手当

「家族手当」「扶養手当」とは、従業員が扶養する同居家族の人数などに応じて支給される手当です。扶養家族が多いと生活費もかかるため、従業員の生活を支えるなどを目的に支給されます。

対象となる家族の範囲や扶養の定義は企業によって異なります。課税所得が0円になる年収103万円以下の家族を扶養家族とするケースや、社会保険の被扶養者となる年収130万円以下を対象とするケースなどがあります。

手当⑫:教育手当・子ども手当

「教育手当」「子ども手当」は家族手当の1つとも言えますが、一定年齢の子どものみを対象とした手当です。国の児童手当とは別に、企業が子育て家庭を支援するためのものです。

子どもが生まれた後の生活設計をする上で、教育手当や子ども手当の有無や支給額は重要です。結婚したら勤務先で確認して夫婦で情報共有しておきましょう。

手当⑬:別居手当・単身赴任手当

「別居手当」「単身赴任手当」とは、単身赴任など自宅から勤務地まで通勤できないため家族と別居しなければならない人に支給される手当です。二重生活になるため、家族全員が同居して暮らすより生活費がかかるのが一般的であるため、経済的負担の緩和を目的としています。

日常生活の補填のために毎月支給されるケースや、一定期間ごとに単身赴任先から自宅に帰る費用を支給するケース、両方を支給するケースなどがあります。

手当⑭:海外赴任手当

「海外赴任手当」とは、外国に駐在する人に支給される手当です。海外赴任する人へのインセンティブ(動機づけ)や経済的負担の補填として設けられています。日本と異なる環境の中で生活や仕事をするため、ストレスを感じたり日本では必要のない経済的負担などもあるからです。

また、治安の悪い国に赴任する場合の「危険手当」や、家族とともに海外で暮らす場合の「家族帯同手当」、子供の教育費を補助する「子女教育手当」などが加算されるケースもあります。

海外赴任手当の金額は企業によって大きく異なりますが、海外赴任すると額面給与が約1.5倍、手取りで約1.8倍になるケースも多いようです。

手当⑮:出張手当

「出張手当」とは、出張で遠隔地に行った人や宿泊を伴う出張をした人に支給される手当です。交通費や宿泊代のほか、食事代や「出張日当」を支給する企業もあります。

ただし、交通費や宿泊代を会社の必要経費で落とす場合もあります。当然ですが、経費で支払った費用については、出張手当で支給されません。

出張日当の金額は、企業が独自に定める就業規則や「出張旅費規程」などで定められているのが一般的です。申請しないと支給されないこともあるため、出張に行くときは支給方法や申請方法を確認しましょう。

手当⑯:食事手当

「食事手当」とは、従業員への福利厚生を目的として昼食代など出勤日の食事代を補助する手当です。残業や深夜労働の多い職場で利用されるケースもあります。

また、手当ではなく、食事券を配布したり、社員食堂を設けて安い価格で食事を提供するなどして従業員を支援する企業もあります。

手当⑰:ライフプラン手当

「ライフプラン手当」とは、企業型確定拠出年金(企業型DC)を採用している企業が従業員の老後資金準備を支援するために拠出する手当です。

企業が拠出したお金を企業型DCの掛け金として運用するか、給与として現金で受け取るかは従業員が自分の意志で選択できます。給与で支給される場合、給与明細ではライフプラン手当欄にその金額が記載されます。

ライフプラン手当を受け取ったほうが目先の手取り給与は増えますが、老後資金づくりのため税制上のメリットの大きな企業型DCでの運用をおすすめします。具体的な税制上の取扱いは、次の記事を参照して下さい。

ちょっとユニークな手当

企業は業務運営上有益、または従業員のモチベーションアップに効果的などと判断して、独自の手当を設けることもあります。ちょっとユニークな手当や最近注目の手当をいくつか紹介します。

手当⑱:テレワーク手当・在宅勤務手当

「テレワーク手当・在宅勤務手当」とは、テレワークなどで在宅勤務する人に支給される手当です。テレワークを行う従業員にかかる通信機器やインターネット環境、冷暖房費、光熱費などの費用を補填するため設けられていることが多いです。

新型コロナウイルスの感染拡大でテレワークや在宅勤務する人が増えたため、この数年、テレワーク手当などを導入する企業が増えました

手当⑲:インフレ手当

「インフレ手当」とは、ロシアのウクライナ侵攻などをきっかけとした物価の高騰から従業員の生活を守るために設けられた手当です。

帝国データバンクのアンケート(2022年11月11日~15日)によると、インフレ手当の導入状況は次の通りです。インフレ手当を支給する企業は今後も増えるでしょう。

  • 回答した企業の6.6%がインフレ手当を導入済み
  • 支給予定(5.7%)、支給検討中(14.1%)を合わせると4社に1社が取り組んでいる
  • 一時金での支給額は平均5万3,700円、月額支給は平均6,500円

参考:帝国データバンク「インフレ手当に関する企業の実態アンケート」

手当⑳:健康増進手当

「健康増進手当」とは、健康づくりに取り組む人に支給する手当です。健康づくりの内容は、健康診断を受診することや、健康診断結果が良好であること、タバコを吸わないことなど、企業によってさまざまです。

従業員が健康に気を配り元気に仕事をしてくれることで、組織が活性化したり業務効率が上がるなどの効果を期待する企業もあります。

手当㉑:禁煙手当

「禁煙手当」とは、禁煙した人に対して支給される手当です。健康増進手当の1つということもできます。元々タバコを吸わない人にとっては不公平に感じられるため、非喫煙者全員に手当を支給するケースもあります。

タバコをやめたいと考えている人にとっては、いい機会かもしれません。

手当に関する基礎知識

最後に、手当に関して知っておきたい基礎知識を紹介します。

基礎知識①:原則手当にも税金がかかる

基礎知識の1つ目は、原則手当にも税金がかかることです。基本給と各種手当の合計金額が給与収入となり、所得税や住民税がかかります。

ただし、業務上の必要経費など税金のかからない手当もあります。具体的には次の通りです。

  • 通勤手当のうち一定金額(月15万円)以下のもの
  • 転勤や出張の旅費のうち通常必要と認められるもの
  • 宿直や日直の手当のうち一定金額以下のもの など

基礎知識②:同一労働同一賃金の適用で手当も変わる

基礎知識の2つ目は、「パートタイム・有期雇用労働法」の改正(大企業は2020年4月、中小企業は2021年4月)により手当の内容が変わる可能性があることです。改正内容は、正社員と非正社員(パートタイマーやアルバイト、契約社員など)の「同一労働同一賃金」の適用です。

罰則はありませんが、同法では正社員と非正社員の「不合理な待遇格差」を禁止しているため、これまで正社員だけに支給されていた手当の見直しが予想されます。非正社員の人には、待遇改善(または新しい手当の加算)の可能性があります。

基礎知識③:手当の内容は就業規則などで確認できる

基礎知識の3つ目は、賃金の一部である手当の内容は就業規則などに記載されていることです。労働基準法では「賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項」を就業規則に明記するよう定められているからです。

また、賃金に関する詳細は、就業規則とは別に給与規定に記載されていることもあります。手当の内容や支給額を確認したいときは、就業規則や給与規定などで確認しましょう。

基礎知識④:管理職(管理監督者)にも手当の支給は必要?

管理職(管理監督者)に対する手当は、給与規定で定められていれば支給されます。手当は給与の一部であるため、管理職も一般の従業員も給与規定に従って給与(基本給や手当など)が支給されます。

ただし、通勤手当など従業員全員に一律に支給される手当もあれば、管理職にだけ支給される手当、管理職にだけ支給されない手当などもあります。

管理職になると、重責に対する「管理職手当(名称は企業によって異なる)」が支給される一方、残業代が支給されないのが一般的です。労働基準法には、管理職(管理監督者)に対する残業手当(深夜労働に対する割増賃金を除く)の支給は規定されていません。

まとめ:手当について理解を深め生活設計に役立てよう

手当には、法律で定められた手当と企業が独自に設けた手当があります。また、仕事に関連する手当や生活に関する手当などさまざまな種類があります。

基本給に各種手当を加算したものが給与となるため、家計の収支を考える上でどんな手当をいくら受け取っているのか、また将来受け取れるのかを知ることは重要です。手当について理解を深め、今後の生活設計に役立てましょう。

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